【胎動が多い・少ない】赤ちゃんは大丈夫?動きの目安と受診のタイミング
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【胎動が多い・少ない】赤ちゃんは大丈夫?動きの目安と受診のタイミング

おなかの赤ちゃんが「ポコポコ」「グニャッ」とよく動くと、「元気でいてくれている」と安心する一方で、「こんなに激しく動いて大丈夫?」「さっきから急に静かになった気がする…」と不安になることも多いのではないでしょうか。

特に妊娠後期になると、胎動が激しく感じられたり、逆に今までより少なくなったように感じて、「赤ちゃんに何かあったのでは?」と心配になりやすい時期です。インターネットやSNSにはさまざまな体験談があふれており、「どこまでが正常で、どこから受診すべきか」がかえって分かりにくくなっているかもしれません。

本記事では、日本の公的機関や専門学会、海外のガイドラインなどの情報をもとに、胎動のしくみと正常な範囲、胎動が「多い」「少ない」と感じたときの考え方、胎動カウントの方法、受診の目安について整理して解説します。

「胎動が多すぎて心配」「急に胎動が減った気がする」「一日にどれくらい動けば安心なの?」と悩んでいる方が、ご自身と赤ちゃんの状態を冷静に振り返り、「今どう行動するべきか」を具体的にイメージできるようになることを目指しています。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事の内容は、厚生労働省、母子健康手帳関連の公的資料、日本産科婦人科学会などの学会資料や、イギリス・NHSなど海外の公的ガイドライン・患者向け資料を中心とした一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。

  • 厚生労働省・自治体・公的研究機関:母子健康手帳情報支援サイトの資料や、妊娠中のリスクと症状に関する案内、統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
  • 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:日本産科婦人科学会の資料や産婦人科診療ガイドライン、イギリス王立産婦人科医協会(RCOG)、NHSなどの胎動に関する解説をもとに、胎動の評価と受診の目安を整理しています。
  • 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:日本の産婦人科クリニックや周産期医療機関の情報、胎動カウントに関する解説、死産予防のための啓発資料などを、実際の日本の妊婦さんの状況に近い情報として参考にしています。

AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。

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要点まとめ

  • 胎動は、赤ちゃんが子宮の中で元気に動いているサインであり、「多い」こと自体が問題になることは多くありません。むしろ「いつもより明らかに少ない」「急に感じなくなった」ことの方が注意すべきサインになります。
  • 多くの人は妊娠18〜20週ごろから胎動を感じ始め、その後32週ごろまでは徐々に増え、その後も出産まで「動きのパターン」は続くとされています。妊娠後期であっても胎動が完全になくなることはありません。
  • 妊娠28週以降は、胎動カウント(10回動くまでの時間を測る方法など)を行うことで、「自分と赤ちゃんにとってのふだんの胎動パターン」を知り、変化に気づきやすくなります。
  • 赤ちゃんが激しく動くときは、寝返りや体勢の変化、食後や冷たい飲み物を飲んだ後、音や光への反応など、正常な刺激への反応であることが多い一方で、「ずっと激しく動いた後に急に静かになる」など、いつもと違う動き方が気になる場合には相談が必要です。
  • 「いつもより胎動が少ない」「丸一日ずっと弱い」「全く動きを感じない」「出血や強い腹痛、破水を伴う」などのときは、時間をおかずにかかりつけの産婦人科や産科病棟に連絡し、必要に応じて救急搬送(119)も検討しましょう。

第1部:胎動の基本と日常生活の見直し

まずは、胎動がどのような仕組みで起こるのか、妊娠週数によってどのように変化していくのかを確認し、日常生活の中で胎動の感じ方に影響しやすいポイントを整理します。これを理解しておくと、「心配しなくてよい変化」と「注意が必要な変化」を区別しやすくなります。

1.1. 胎動とは?いつから感じるのか

胎動とは、赤ちゃんが子宮の中で手足を動かしたり、体の向きを変えたり、伸びをしたりする動きのことです。超音波検査では妊娠初期(7〜8週ごろ)からすでに赤ちゃんが動いていることが分かっていますが、この時期は赤ちゃんがまだ小さく、子宮の中にも余裕があるため、妊婦さん本人が胎動として自覚することはできません。

初めての妊娠では、妊娠18〜20週ごろに「おなかの中で小さな泡がはじけるような感じ」「小さな魚が泳いでいるような感じ」から胎動を感じ始める人が多いといわれています。2人目以降の妊娠では、16〜18週ごろと少し早めに気づく人もいますが、個人差が大きく、妊娠20週を過ぎてから初めてはっきり感じる人も少なくありません。

妊娠後半になると、胎動は「ツンツン」「ドンッ」というキックのような動きだけでなく、「グニャッ」とおなか全体がゆっくり波打つような大きな動きや、赤ちゃんが向きを変えるときの「グルッ」という回転のような感覚としても感じられます。おなかの張りやガスの動きと紛らわしいこともあるため、「これが胎動なのかな?」と戸惑う方も多いですが、だんだんと自分なりの感覚が分かってくることがほとんどです。

1.2. 妊娠後期になると胎動が「少なくなった気がする」理由

妊娠後期(特に妊娠30〜38週ごろ)になると、「前よりも胎動が少なくなった」「あまり激しく動かなくなった」と感じる方が増えます。これは、赤ちゃんが大きくなり、頭が骨盤の中に固定されることで、子宮の中で自由に大きく動き回るスペースが少なくなるためです。その結果、「ドンッ」と大きく蹴る動きは減る一方で、「グニャッ」「ムニュッ」といった体全体を伸ばしたり、押し広げたりするような動きが増えます。

ただし、「動きの感じ方」は変化しても、「胎動が完全になくなる」ということはありません。妊娠10か月になっても、赤ちゃんがまったく動かない状態は正常ではないため、「いつもと比べて明らかに動きが少ない」「一日中ほとんど動きを感じない」「突然ピタッと動かなくなった」と感じた場合は、妊娠週数にかかわらず医療機関への連絡が必要です。

1.3. 悪化させてしまう・気づきにくくしてしまうNG習慣

胎動そのものを「悪化させる」習慣というよりも、「胎動に気づきにくくなる」「赤ちゃんの状態が心配なときに変化を見逃しやすくなる」習慣があります。代表的なものを確認しておきましょう。

  • 常に忙しく動き回っていて休む時間がない:家事・仕事・育児で座る時間がほとんどないと、胎動に意識を向ける余裕がなくなり、「気づいたら今日はあまり動きを感じていなかった」と不安になることがあります。
  • 長時間仰向けで寝る・スマホを見続ける:妊娠中期以降に長時間仰向けでいると、子宮の重さで大きな血管が圧迫され、気分不良や胎盤への血流が一時的に低下する可能性があります。左側を下にして横向きに寝る姿勢の方が、母体と赤ちゃんの血流が保たれやすいとされています。
  • カフェインやエナジードリンクを多く摂る:一時的に赤ちゃんの動きが活発になることがありますが、妊娠中はカフェイン摂取量の上限が推奨されているため、長期的には控えめにする必要があります。カフェイン摂取による「いつもと違う胎動」が不安を強めてしまうこともあります。
  • 睡眠不足や強いストレス:妊婦さん自身が極端に疲れていると、胎動を感じてもすぐに眠りに落ちてしまい、「気づいたら今日はあまり数えていなかった」という状況になりがちです。ストレスが強いと、体の感覚にも鈍くなりやすくなります。

「今日は胎動が少ない気がする」と感じたとき、まずはスマホやテレビから一度離れ、深呼吸をして、静かな環境で左側を下にして横になり、胎動に意識を向ける時間を5〜10分だけでも設けてみましょう。それでも「やはり少ない」「ほとんど動かない」と感じる場合には、後述する胎動カウントや医療機関への相談につなげていきます。

表1:胎動に関するセルフチェックリスト
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
一日中バタバタしていて、ゆっくり胎動を感じる時間がほとんど取れていない 生活リズムの忙しさにより、胎動を自覚しにくくなっている可能性
最近、仰向けで長時間スマホを見る習慣が増えた 体勢の影響で血流が変化し、一時的に胎動の感じ方が変わることがある
カフェイン飲料やエナジードリンクを多く飲んでいる 一時的に胎動が激しく感じられ、不安を強めてしまう可能性
夜眠れず、慢性的な睡眠不足が続いている 母体の疲労により、胎動の変化に気づきにくくなっている可能性

第2部:胎動の「多い」「少ない」を左右する身体の要因

生活習慣だけでなく、赤ちゃんの向き・体格、胎盤の位置、羊水量、妊婦さん自身の体格や子宮の状態など、身体の内側の要因も胎動の感じ方に大きく影響します。「他の妊婦さんと比べてどうか」よりも、「自分と赤ちゃんのいつものパターン」を知ることが大切です。

2.1. 赤ちゃんの性格や向き、胎盤の位置による違い

胎動の感じ方には、赤ちゃん自身の動き方や体の向き、胎盤の位置などによる個人差があります。たとえば、前壁胎盤(おなか側に胎盤がついている場合)では、胎盤がクッションのような役割をするため、胎動が弱く感じられることがあります。一方、後壁胎盤(背中側)では、同じ強さの動きでもはっきり感じられやすい傾向があります。

また、赤ちゃんによって「よく動くタイプ」「比較的おとなしいタイプ」があります。ある妊婦さんは、一日中こまめにポコポコ動く胎動を感じるかもしれませんし、別の妊婦さんは、決まった時間帯にまとめてグルグルと大きく動くパターンかもしれません。どちらかが「必ずしも異常」というわけではなく、「その赤ちゃんにとってのふだんのパターン」を把握することが何より重要です。

妊婦健診の超音波検査で、医師・助産師から「赤ちゃんの成長や羊水量、胎盤などに問題はない」と説明されている場合には、胎動が多くても少なくても、「急な変化」がない限り、大きな異常を意味するとは限りません。不安なときは、健診や助産師外来で「自分の胎動の感じ方がこれで大丈夫か」を遠慮なく相談してみましょう。

2.2. 妊婦さんの体格・筋肉量・子宮の状態と胎動の感じ方

妊婦さん側の要因として、BMI(体格)、腹筋の厚さ、子宮の位置、羊水量なども胎動の感じ方に影響します。一般的には、おなか周りの脂肪や筋肉がしっかりしているほど、おなかの外からの触診や母体の自覚としては胎動を感じにくい傾向がありますが、これは決して「赤ちゃんがあまり動いていない」という意味ではありません。

また、子宮が前傾しているか後傾しているかによっても、おなかのどの位置で胎動を感じやすいかが変わることがあります。妊娠が進むにつれて子宮の位置は変化していくため、「妊娠中期は下腹部のあたりでよく感じたのに、後期はみぞおちのあたりで感じることが多くなった」といった変化もよく見られます。

こうした体格や子宮の状態は、自分でコントロールできるものではありません。大切なのは、「今日はどのあたりで胎動を感じることが多いか」「いつもと同じような時間帯に、同じような強さやリズムで動いているか」を意識して、変化がないかどうかを見ていくことです。

2.3. 栄養状態・貧血・体調不良と胎動の関係

母体の栄養状態や貧血、低血糖、脱水なども、胎動の感じ方に影響する可能性があります。たとえば、空腹で血糖が下がっているときや、脱水気味で血流が減っているときに胎動が弱まっているように感じることがあります。一方、食後や甘いものを食べた後、冷たい飲み物を飲んだ後には、赤ちゃんの動きが一時的に活発になることもよくあります。

妊娠中に重い貧血や持病(心臓病・腎臓病・糖尿病など)がある場合には、母体と胎児の両方の状態を慎重に評価する必要があります。定期的な妊婦健診で指摘されている持病や栄養問題がある方は、胎動の変化もあわせて医師・助産師に伝え、必要に応じて検査や入院管理が検討されます。

「最近食事が偏っている」「水分不足かもしれない」「めまいや立ちくらみが多い」など、母体の体調不良が重なっている場合には、胎動の変化とセットで医療機関に相談すると、より適切な評価につながりやすくなります。

第3部:胎動が「少ない」「多すぎる」と感じたときに考えること

ここからは、胎動が少なく感じるとき、多すぎると感じるとき、それぞれの考え方と、受診の目安について整理します。大切なのは、「自分と赤ちゃんのいつものパターン」から見て明らかに違うかどうか、そして「他の症状(出血・強い腹痛・破水など)」も伴っていないかどうかです。

3.1. 胎動が少ない・弱いと感じるとき

胎動が少ない・弱いと感じるときは、まず次のようなステップで確認してみましょう。

  • 静かな部屋で、左側を下にして横になる(もしくは楽な姿勢で座る)
  • スマホやテレビから離れ、胎動だけに集中できる環境にする
  • 30分〜1時間ほど、赤ちゃんの動きを意識して感じてみる

このように落ち着いて胎動に集中しても、「いつもより明らかに少ない」「1時間たってもほとんど動きを感じない」場合には、胎動カウントや受診を検討する段階です。特に、妊娠28週以降で胎動が減ったと感じる場合や、妊娠後期に入って「いつもよりずっと静か」「丸一日ほとんど動かない」と感じる場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、かかりつけの産婦人科や産科病棟に連絡しましょう。

胎動の減少は、まれではありますが、胎盤のトラブルや胎児の状態悪化(酸素不足など)のサインである可能性があります。母子健康手帳などでも、「胎動を感じにくくなること」が異常の兆候の一つとして挙げられています。出血や強い腹痛、破水(透明な水っぽい液体が大量に出る)などが同時にある場合は、緊急性が高くなるため、救急外来や救急搬送(119)も含めた対応が必要になります。

3.2. 胎動が「多すぎる」「激しすぎる」と感じるとき

「おなかの中で赤ちゃんが暴れているように感じる」「一晩中激しく動いて眠れない」といった相談もよくあります。結論からいうと、「胎動が多い・激しい」ことだけで異常と判断されることは多くありません。むしろ、赤ちゃんが元気に動いているサインである場合がほとんどです。

例えば、次のようなタイミングでは胎動が多く・激しく感じられることがあります。

  • 妊婦さんが横になってリラックスしたとき(特に夜寝る前)
  • 食事やおやつを食べた後、特に甘いものを食べた後
  • 冷たい飲み物を飲んだ後
  • 周囲の音が静かになり、胎動に意識を集中しやすい夜間
  • 突然の大きな音や強い光に対して、赤ちゃんがびっくりしたとき

一方で、「いつもとは明らかに違う激しい動き」が続いたあとに、突然胎動が少なくなる・感じなくなる場合などは、念のため医療機関に相談した方がよいとされます。赤ちゃんが子宮の中で苦しい状態になったとき、一時的に激しく動いた後、力尽きて静かになってしまうケースが報告されているためです。ただし、これはあくまで稀なケースであり、「激しい胎動=必ず危険」というわけではありません。

「激しすぎる胎動が不安」「数時間以上落ち着かないほど動き続けている気がする」と感じるときは、その時点でかかりつけの産婦人科に電話し、「妊娠週数」「胎動の様子」「他の症状(張りや痛み、出血など)の有無」を具体的に伝えて、指示を受けるようにしましょう。

3.3. 胎動カウント(キックカウント)の基本と目安

胎動カウントは、赤ちゃんの動きを定期的に数えることで、ふだんの胎動のパターンを把握し、変化に気づきやすくするための方法です。妊娠28週以降から行うことが多いとされ、病院や自治体によっては母子健康手帳や冊子で方法を説明されることもあります。

代表的な方法の一つが、「10回胎動カウント法」です。

  • 毎日、できるだけ同じ時間帯に、静かな場所で左側を下にして横になります。
  • 最初に「グニッ」「ポコッ」と胎動を感じた瞬間を1回目として、そこから時計をスタートさせます。
  • その後、胎動を10回感じるまでの時間を測ります(連続した動きは1回とカウントし、しゃっくりのような一定リズムの小刻みな動きは数えません)。

妊娠後期では、多くの妊婦さんで10回の胎動を15〜30分程度で確認できると報告されていますが、個人差があります。大切なのは「一般的な平均値」よりも、「自分と赤ちゃんにとってのふだんの時間」です。数日〜1週間ほど記録してみて、「いつもは20分前後で10回なのに、今日は1時間以上かかる」といった変化があれば、医療機関に相談する目安になります。

また、「2時間以上かかっても10回の胎動を感じない」「丸一日ほとんど胎動をカウントできない」場合には、時間をおかずに産科を受診することが推奨されています。夜間や休日でも、迷わず電話で相談し、必要であれば夜間救急や当直の産科病棟での受診が検討されます。

第4部:今日からできる胎動との付き合い方とセルフケア

原因が何であれ、「胎動が心配」という気持ちそのものが、妊娠生活の大きなストレスになることがあります。ここでは、「今この瞬間からできること」「今週から試せること」「長期的に続けたいこと」をレベル別に整理し、胎動と上手に付き合うためのヒントをまとめます。

表2:胎動が気になるときの改善アクションプラン
ステップ アクション 具体例
Level 1:今すぐできること(〜今夜) 姿勢と環境を整えて胎動を感じやすくする スマホやテレビを一旦オフにし、静かな部屋で左側を下にして横になる。手をおなかに添えて、「今日はどんな動きかな?」と意識を向ける。
Level 2:数日〜1週間で試してみること 簡単な胎動メモ・カウントをつけて、パターンを知る 「10回の胎動にかかった時間」と「その時の体勢・時間帯・体調」をメモし、数日分を並べてみる。自分なりの「ふだんのパターン」を把握する。
Level 3:長期的に続けたいこと 睡眠・食事・水分・ストレスケアを整える 就寝前1〜2時間はカフェインを控え、スマホの使用時間を減らす。日中こまめに水分をとり、軽い散歩などで血流を促す。心配なことは一人で抱え込まず、家族や助産師に共有する。
Level 4:不安が強いときに検討すること 助産師外来・母親学級・相談窓口の活用 健診時に「胎動が多くて(または少なくて)不安」と具体的に相談する。自治体の妊婦相談や電話相談窓口を利用し、夜間・休日も必要に応じて産科に電話する習慣をつける。

「心配しすぎかもしれない」と思って相談をためらう方も多いですが、産科の医師や助産師にとって、「胎動がいつもと違う」という訴えは、非常に大切な情報です。「何もなければそれで安心」「何かあれば早く対応できる」という意味で、遠慮なく相談してよいテーマだと考えておきましょう。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

ここでは、胎動に関して「今すぐ受診した方がよいサイン」「近いうちに相談したいサイン」、そして受診時に役立つ情報のまとめ方について解説します。日本の医療制度や保険診療の仕組みも踏まえながら、実際に行動しやすい形で整理します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 妊娠週数にかかわらず、胎動を全く感じなくなった、またはほとんど感じない状態が数時間以上続いている
  • いつもより明らかに胎動が少ない・弱い状態が、一日以上続いている
  • 激しい胎動がしばらく続いたあと、突然ピタッと胎動を感じなくなった
  • 性器出血(生理のときのような出血、またはそれ以上)がある
  • 生理痛以上の強い腹痛・おなかの持続的な張り(規則的な陣痛のような痛み)が続いている
  • 破水が疑われる(透明〜薄黄色の水っぽい液体が大量に出る、ナプキンを替えてもすぐに濡れてしまうなど)
  • 激しい頭痛・視界のチカチカ・突然のむくみの悪化など、妊娠高血圧症候群を疑う症状がある

これらの症状がある場合は、「様子を見る」よりも、早めに産科の外来や救急外来に連絡することが重要です。夜間や休日であっても、かかりつけ病院の代表番号や妊娠中に案内された時間外連絡先に電話し、必要な場合は119番通報をして救急搬送を依頼することも選択肢となります。

5.2. 症状に応じた診療科・相談先の選び方

  • 妊娠経過中の胎動の変化が心配な場合:まずは妊婦健診を受けている産科・産婦人科、もしくは紹介状がある周産期センターに連絡します。
  • 出血・強い腹痛・破水を伴う場合:妊娠週数にかかわらず、救急対応が可能な産科を受診します。かかりつけがない場合は、地域の救急案内や自治体の相談窓口、119で相談し、受診先を教えてもらう方法もあります。
  • 不安やストレス・うつ症状が強い場合:胎動に直接関連していなくても、精神的な負担が大きいと感じるときは、産科に加えてメンタルヘルスの専門家(心療内科・精神科)や、自治体の保健師に相談することも検討しましょう。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと、費用の目安

  • 母子健康手帳・保険証・診察券:妊娠週数やこれまでの妊娠経過、検査結果を確認するために必須です。
  • 胎動メモ・カウントの記録:いつから胎動の変化に気づいたか、10回胎動カウントにどれくらい時間がかかったか、どの時間帯に起こりやすいかなどのメモは、医師や助産師が状況を判断する上で大きな手がかりになります。
  • 服用中の薬やサプリメントのリスト、お薬手帳:基礎疾患や薬の影響を評価するために役立ちます。
  • 費用の目安:保険診療の場合、モニタリング(胎児心拍数モニタリング)や超音波検査、採血検査などが行われることがあり、3割負担で数千円〜1万円前後となることが一般的です。夜間・休日や救急外来では、時間外加算などにより費用が高くなる場合がありますが、「赤ちゃんの命を守るための受診」であることを忘れないようにしましょう。

よくある質問

Q1: 胎動が多すぎると、赤ちゃんに何か問題があるのでしょうか?

A1: 胎動が多い・激しいと感じるだけで、すぐに異常と判断されることはあまりありません。多くの場合、赤ちゃんが元気に動いているサインと考えられます。特に、妊婦さんが横になってリラックスしたときや、食後・甘いものを食べた後、夜間の静かな時間帯には胎動が多く感じられやすくなります。

ただし、「今までとは全く違う激しい動きが続いたあと、突然胎動が少なくなる・感じなくなる」「激しい胎動に加えて強い腹痛や出血、破水がある」などの場合は、念のため早めに産科に連絡してください。心配なときは、「こんなことで電話してもいいのかな」と迷わず、症状や妊娠週数を具体的に伝えて相談することが大切です。

Q2: 1日中胎動をあまり感じない日があります。様子を見ても大丈夫ですか?

A2: 「いつもより少ない程度」で、一日のうちに適度に胎動を感じられている場合は、体勢や忙しさなどの影響であることもありますが、「丸一日ほとんど動きを感じない」「静かな姿勢で1時間以上集中してもほとんど胎動が分からない」場合は、自己判断で様子を見続けるのはおすすめできません。

まずは静かな部屋で左側を下にして横になり、30分〜1時間ほど胎動に集中してみて、それでもいつもより明らかに少ないと感じたら、妊娠週数にかかわらずかかりつけの産科に連絡しましょう。妊娠28週以降で胎動の減少を感じる場合は、より積極的に相談することが推奨されています。

Q3: 胎動カウントは毎日しないといけませんか?

A3: 胎動カウントは、赤ちゃんの元気さを「数値」として確認し、不安を軽減するのに役立つ方法ですが、必ず全員が毎日行わないといけないわけではありません。妊娠28週以降で、「胎動が心配」「最近の動きが前と違う気がする」と感じる方にとって、自分と赤ちゃんのパターンを知る手がかりになります。

逆に、毎日何度も胎動カウントをして不安が強まってしまう場合や、数字ばかりに意識が向いてストレスになっている場合には、やり方や頻度を助産師と相談するのがおすすめです。「胎動が少ないかな」と感じたときだけ確認する方法など、ご自身に合ったスタイルを一緒に考えてもらいましょう。

Q4: 10回胎動カウントで、どれくらいの時間なら安心してよいのでしょうか?

A4: 多くの妊婦さんでは、妊娠後期に10回の胎動を15〜30分程度で確認できると報告されていますが、個人差があります。大切なのは「一般的な平均」よりも、「自分と赤ちゃんにとってのふだんの時間」です。数日〜1週間ほど同じ時間帯で計測し、「いつもは20分前後だが、今日は1時間以上かかる」といった変化がないかを見ていくことが重要です。

一般的な目安としては、「2時間以上かかっても10回の胎動を感じない」「今までより明らかに時間が延びている」場合には、胎動減少の可能性があると考えられます。そのようなときは、迷わず産科に連絡し、受診の必要性について指示を仰ぎましょう。

Q5: 夜になると胎動が激しくて眠れません。どうしたらよいですか?

A5: 夜間は周囲が静かになり、日中の疲れもあって胎動に意識が集中しやすくなるため、胎動が激しく感じられることがよくあります。赤ちゃん自身も、「寝て起きて」を20分前後のサイクルで繰り返しているとされ、ちょうど夜間に活動が活発なタイプの赤ちゃんもいます。

就寝前は、スマホやパソコンの使用時間を減らし、部屋の明かりを暗めにして、リラックスできる音楽や深呼吸などを取り入れてみましょう。それでも眠れないほど不快感が強い場合や、胎動に加えて強い張りや痛み、出血などがある場合は、必ず産科に相談してください。

Q6: 前回の妊娠と比べて胎動の感じ方が違います。問題はありますか?

A6: 同じお母さんでも、妊娠ごとに赤ちゃんの性格や胎盤の位置、子宮の状態などが違うため、胎動の感じ方が変わるのは珍しいことではありません。「前の子は常にバタバタ動いていたのに、今回はおとなしい」「前回は前壁胎盤で胎動が弱く感じられたが、今回ははっきり分かる」といった違いはよくあります。

大切なのは、「今回の妊娠でのふだんのパターン」を知ることです。「前の妊娠と違う」という理由だけで異常とは限りませんが、妊婦健診で気になることは必ず相談し、必要に応じて超音波検査やモニタリングで確認してもらいましょう。

Q7: 妊娠中期でまだ胎動をはっきり感じません。いつまでに感じられないと問題ですか?

A7: 初めての妊娠では、妊娠18〜20週ごろに胎動を感じ始める人が多いとされていますが、20週を過ぎてからはっきり分かる人や、体格・子宮の状態などによりさらに遅くなる人もいます。一般的には、妊娠24週ごろまでには多くの人が胎動を自覚するとされており、この時期を過ぎてもまったく胎動が分からない場合には、念のため産科で確認してもらうことがすすめられます。

不安なときは、妊婦健診を待たずに電話で相談し、「妊娠何週か」「今までに一度でも胎動らしきものを感じたか」「出血や腹痛など他の症状はないか」を伝えましょう。超音波検査や胎児心拍の確認によって、赤ちゃんの状態を評価してもらえます。

Q8: 仕事中や通勤中に胎動が気になります。無理をしても大丈夫でしょうか?

A8: 立ち仕事や長時間のデスクワーク、満員電車での通勤など、妊娠中の仕事や通勤はそれだけで大きな負担になります。胎動が気になるときに無理を続けると、母体の疲労やストレスが高まり、体調不良から胎動の変化に気づきにくくなることもあります。

可能であれば、職場と相談して休憩時間を増やしたり、座って作業できる環境を整えてもらったり、ラッシュを避けた通勤時間に変更してもらうなどの調整を検討しましょう。医師から母健連絡カードや診断書を発行してもらい、勤務内容の調整や休職を行うケースもあります。日本の労働法制では、妊娠中の女性の健康を守るための配慮義務が定められているため、一人で抱え込まず、医療機関と職場双方に相談することが大切です。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

胎動は、おなかの赤ちゃんが「ここにいるよ」「元気だよ」と教えてくれる大切なサインです。「多すぎるのでは?」「少ないのでは?」という不安は、多くの妊婦さんが一度は抱えるものですが、重要なのは「他の人と比べること」ではなく、「自分と赤ちゃんにとってのふだんのパターン」を知り、その変化に気づくことです。

妊娠28週以降は、必要に応じて胎動カウントを取り入れながら、「今日もいつもどおり動いているかな?」と日々確認していくことで、赤ちゃんとのつながりを感じながら、異常の早期発見にもつなげることができます。一方で、「胎動がいつもより明らかに少ない」「全く感じない」「出血や強い腹痛、破水など他の症状もある」といったときは、時間をおかずに産科に相談することが何より大切です。

「こんなことで電話してもいいのかな」と遠慮する必要はありません。胎動に関する不安は、医師や助産師にとっても重要な情報であり、「何もなければそれで安心」「何かあれば早く対応できる」という点で、相談すること自体に大きな意味があります。この記事が、胎動と上手に付き合いながら、妊娠期間を少しでも安心して過ごすための一助となれば幸いです。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。

本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。胎動の感じ方や妊娠経過には大きな個人差があるため、気になる症状がある場合や、治療・生活指導の変更を検討される際は、必ず医師や助産師などの医療専門家にご相談ください。

記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。

免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。胎動や妊娠経過に不安がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。緊急性が疑われる症状(激しい腹痛・大量出血・破水・意識障害など)がある場合は、ためらわず119番などの緊急連絡先を利用してください。

参考文献

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