「胸のあたりがヒリヒリと焼けるように痛い」「飲み込むと胸や喉がしみる」「食べるのが怖くなって体重が落ちてきた」――そんなつらい症状が続くと、「もしかして食道が傷ついているのでは?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
食道潰瘍(しょくどうかいよう)は、口から飲み込んだ食べ物や飲み物が通る「食道」の粘膜が深く傷つき、えぐれたような潰瘍ができた状態です。逆流性食道炎や薬の影響、感染症、飲酒・喫煙など、さまざまな要因が重なって起こります1。放っておくと出血や狭窄(きょうさく:食道が狭くなる)、まれにがんとの関連が問題になることもあり、早めの対応が大切です1。
本記事では、厚生労働省や日本の専門学会、信頼できる医療情報サイト、海外のガイドライン・レビュー論文などをもとに、食道潰瘍の基礎知識から原因・症状・検査・治療、日常生活で気をつけたい点、受診の目安までをわかりやすく整理しました。疑わしい症状がある方はもちろん、「逆流性食道炎と言われたことがあり、食道潰瘍にならないか心配」という方にも役立つ内容を目指しています。
自分で病名を決めつけてしまうのではなく、「どんな仕組みで症状が起きているのか」「どのタイミングで医療機関に相談すべきか」を一緒に確認していきましょう。
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Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、次のような一次情報源に基づき、JHO編集部が生成AIツールのサポートを受けながら構成案を作成し、その後、原著資料と照合しつつ人の目で確認しながら執筆・編集しています。
- 日本の公的機関・学会:厚生労働省の情報、日本消化器病学会「消化性潰瘍診療ガイドライン2020」、胃食道逆流症(GERD)に関するガイドなどのガイドライン・解説資料2。
- 国内医療機関・医療情報サイト:済生会やメディカルノートなど、日本語で食道炎・食道潰瘍を解説している信頼性の高い情報源1。
- 海外の専門的なレビュー:米国国立衛生研究所(NIH)の医学書シリーズ「StatPearls」など、食道潰瘍の診断・治療に関する総説3。
AIツールは、文献の要約や構成案の作成、表現のバリエーションを検討する「アシスタント」として利用していますが、公開前には必ずJHO編集部が一次資料と照合し、重要な記述・数値・URLの妥当性を確認しています。
JHOの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 食道潰瘍は、食道の粘膜が深く傷つき、えぐれたような潰瘍ができた状態で、多くは胃酸の逆流(逆流性食道炎)や薬の影響、感染症などが原因になります1。
- 代表的な症状は、胸やけ、胸の痛み、飲み込み時の痛み(嚥下時痛)、食べ物がつかえる感じ、吐き気・嘔吐などで、重症になると吐血や黒色便などの出血症状がみられることがあります1。
- 診断には、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が用いられ、潰瘍の有無や範囲、出血や狭窄の有無を直接確認します。必要に応じて細胞や組織を採取して検査することもあります1。
- 治療の中心は、胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)や食道粘膜を保護する薬、原因が感染症なら抗真菌薬・抗ウイルス薬などの薬物療法です。生活習慣の見直しも重要な柱です23。
- 体重減少や飲み込みづらさの悪化、強い胸痛、繰り返す吐血や真っ黒な便などは危険なサインで、早急な受診・場合によっては救急受診が必要です。
- 日常生活では、食べ過ぎ・就寝前の飲食・アルコール・喫煙・刺激の強い食べ物などを避け、姿勢や服装にも気をつけることで、食道への負担を軽減できます1。
- 自己判断で薬を中断したり、市販薬だけで様子を見続けたりせず、気になる症状があれば早めに医療機関に相談することが、重い合併症を防ぐ近道です。
「胸やけが長く続いているけれど、忙しくて病院に行けていない」「市販の胃薬で何とかしているが、本当に大丈夫なのか不安」という声は少なくありません。特に、日本では長時間労働やストレス、飲み会文化なども重なり、胃や食道に負担がかかりやすい環境にある方も多いでしょう。
本記事では、まず日常生活の中で見直しやすいポイントから整理し、それでも良くならない場合に考えるべき病気として食道潰瘍を位置づけ、原因・検査・治療の全体像を段階的に解説していきます。逆流性食道炎や胃潰瘍など、関連する病気との違いもあわせて確認します。
必要に応じて、消化器全般を取り上げる総合的なガイドページや、逆流性食道炎・胃潰瘍などを扱うより専門的な記事へ橋渡しを行い、「自分の症状がどこに当てはまりそうか」を整理しやすくすることを目指します。例えば、日常的な胸やけや酸っぱい逆流がメインであれば、逆流性食道炎の情報が参考になるかもしれません。
この記事を読み進めることで、「今の自分の状態をどう捉えたらよいか」「どこまで自分で対策し、どのタイミングで医療機関に相談すべきか」が具体的にイメージできるようになるはずです。気になる点があれば、メモをとりながら読み進めていただくと、受診時の説明にも役立ちます。
第1部:食道潰瘍の基本と日常生活の見直し
まずは、食道潰瘍がどのような病気なのか、その基本と、日常生活の中で悪化や再発を防ぐために見直したいポイントを整理します。いきなり「重い病気かもしれない」と考えると不安になりますが、多くの場合は生活習慣の見直しや薬による治療で改善が期待できます。
1.1. 食道潰瘍とは?基本的な仕組み
食道潰瘍とは、口から胃へとつながる「食道」の内側を覆っている粘膜が深く傷つき、クレーターのようにえぐれた状態になっていることを指します1。表面的なただれ(びらん)よりも深い傷で、出血や痛みを伴うことが多くなります。
食道の粘膜は、胃の粘膜と比べて胃酸への耐性が弱く、本来は逆流防止の仕組みによって守られています。ところが、何らかの理由で胃酸や胃内容物が食道側に頻繁に逆流したり、薬の錠剤が長時間食道にとどまったり、感染症が起こったりすると、食道の粘膜に強い刺激が加わります。その結果、炎症(食道炎)が進み、さらに深い傷として食道潰瘍が形成されます12。
「潰瘍」という言葉は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍で聞いたことがある方も多いかもしれません。食道潰瘍も広い意味では消化性潰瘍の一種であり、日本消化器病学会のガイドラインでは、胃酸や消化酵素によって消化管の粘膜が深く傷つく病態の一つとして位置づけられています2。
1.2. 食道潰瘍を悪化させやすいNG習慣
逆流性食道炎や食道潰瘍は、日常生活のちょっとした習慣によって悪化しやすい病気です。日本消化器病学会がまとめた胃食道逆流症(GERD)のガイドなどでも、生活習慣の調整が治療の重要な柱の一つとされています24。次のような習慣に心当たりはないでしょうか。
- 食べ過ぎ・早食い:一度に大量に食べると胃が急に膨らみ、胃と食道の境目にかかる圧力が高くなります。その結果、胃酸が食道に逆流しやすくなります。
- 食後すぐ横になる・就寝前の飲食:食後すぐに横になると、重力によるサポートが効かなくなり、胃の内容物が食道側に上がりやすくなります。特に就寝直前の食事や飲酒は、夜間の逆流を招きやすく要注意です4。
- アルコールの飲み過ぎ:アルコールは食道の括約筋を緩め、胃酸逆流を起こしやすくするほか、粘膜自体にもダメージを与えます。強いお酒をストレートで飲む習慣は特に負担になります。
- 喫煙:たばこの成分は逆流防止の機能を弱め、胃酸分泌を増やすとされています。長期的には食道がんのリスクにも関係するため、食道潰瘍とあわせて禁煙が強く勧められます1。
- きついベルト・きつめの下着やガードル:お腹まわりを強く締め付けると、胃が圧迫されて逆流を起こしやすくなります。特に座りっぱなしのデスクワークでは影響が大きくなりがちです。
- 猫背の姿勢・長時間の前かがみ姿勢:前かがみになると、やはり腹圧が高まり、胃の内容物が食道方向へ押し上げられやすくなります。
- 辛いもの・酸っぱいもの・脂っこい食べ物のとり過ぎ:唐辛子の効いた料理、柑橘類、揚げ物などは胃酸分泌を刺激し、食道粘膜を刺激しやすいとされています1。
こうした習慣は、多忙な生活やストレスの中で「つい」続けてしまいがちなものばかりです。食道潰瘍が疑われるときはもちろん、逆流性食道炎を指摘されたことがある方、胸やけが続く方は、一つずつ見直していくことが重要です。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 飲み込むと胸や喉のあたりが強くしみる・痛む | 食道粘膜の炎症・潰瘍、薬剤性食道炎、逆流性食道炎 |
| 胸やけが長期間続き、市販薬を飲んでも十分に改善しない | 胃酸逆流(GERD)、逆流性食道炎、食道潰瘍の可能性 |
| 食事のたびに食べ物が胸のあたりでつかえる感じがする | 食道狭窄、炎症後の瘢痕(はんこん)、腫瘍性病変の可能性 |
| 体重が意図せず減ってきた、固形物が飲み込みにくい | 進行した潰瘍・狭窄、食道がんなど重篤な病気の可能性 |
| 黒っぽいタール状の便や吐血がみられた | 上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血、緊急受診が必要 |
第2部:身体の内部要因 ― 胃酸・薬・感染症・持病の影響
生活習慣を見直しても症状が続く場合、その背景には身体の内部で起こっているさまざまな要因が関係していることがあります。ここでは、食道潰瘍を起こしやすくする代表的な内部要因について整理します。
2.1. 胃酸の逆流(逆流性食道炎・GERD)
食道潰瘍の原因としてもっとも頻度が高いのが、胃酸の逆流による逆流性食道炎です12。胃と食道の境目には「下部食道括約筋」という筋肉があり、通常は胃の内容物が食道側に戻らないようバルブのような役割をしています。ところが、この機能が弱まったり、胃の圧力が高くなったりすると、胃酸や胃の中身が食道側に逆流しやすくなります4。
胃の粘膜は粘液に守られていますが、食道粘膜にはそのような強い防御機能がありません。そのため、強い酸に長時間さらされると、まずは赤くただれたり、表面にびらんができたりします。それがさらに進行すると、粘膜の深部にまでダメージが及び、食道潰瘍に発展します14。
日本消化器病学会のGERDガイドでは、重症のびらん性食道炎では食道狭窄や出血などの合併症を防ぐために、胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など)による積極的な維持療法が推奨されています4。逆流性食道炎と診断されながら治療を中断している場合、食道潰瘍のリスクが高まることがあるため注意が必要です。
2.2. 薬剤性食道潰瘍(錠剤の影響)
錠剤やカプセル薬が食道に引っかかったり、少量の水で飲んで食道内に長くとどまったりすると、その部分だけに強い刺激が加わり、薬剤性食道炎や食道潰瘍を起こすことがあります13。特に次のような薬は注意が必要とされています。
- 一部の鎮痛薬・消炎薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDsなど)
- 一部の抗生物質
- 骨粗しょう症治療薬(ビスホスホネート系)
- カリウム剤など、粘膜刺激性のある薬剤
薬剤性食道潰瘍を防ぐためには、十分な量の水で薬を飲むこと、飲んだ直後に横にならないことが重要です。高齢の方や、寝たきり・嚥下機能が低下している方では、特に薬が食道にとどまりやすくなるため、医師や薬剤師と相談し、剤形(粉薬や液剤など)の変更を検討することもあります3。
2.3. 感染症による食道潰瘍(カンジダ・ヘルペスなど)
胃酸や薬だけでなく、感染症が原因で食道潰瘍ができることもあります。真菌(かび)の一種であるカンジダ、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどの感染が代表的です15。特に次のような方では、こうした感染症が起こりやすいとされています。
- 免疫力が低下している方(HIV感染症、がんの化学療法中、ステロイドや免疫抑制薬を長期使用している方など)
- 糖尿病など、感染症にかかりやすい基礎疾患がある方
- 高齢で、口腔内の衛生状態が悪い場合 など
感染性の食道炎・食道潰瘍では、内視鏡で特徴的な白い付着物や多発する浅い潰瘍が見られることがあり、組織を一部採取して検査を行うことで原因菌・ウイルスを特定します5。治療では、原因に応じて抗真菌薬・抗ウイルス薬などを使用し、同時に免疫力低下の背景疾患への対応も重要になります3。
2.4. その他の要因:腐食性物質の誤飲・放射線治療・手術後の変化など
それほど頻度は高くありませんが、次のような要因が食道潰瘍の原因になることもあります15。
- 強い酸・アルカリの誤飲:家庭用洗剤や工業用薬品などの誤飲によって、食道粘膜が化学的に強く損傷され、深い潰瘍や狭窄を残すことがあります。子どもや認知症の方では特に注意が必要です。
- 放射線治療の影響:胸部のがん(肺がん・乳がん・縦隔腫瘍など)や食道がんへの放射線治療により、周囲の正常な食道粘膜にも炎症や潰瘍が起こることがあります。
- 胃の手術後の解剖学的変化:胃切除後や噴門側胃切除後など、胃・食道のつながり方が変化する手術を受けた場合、逆流が起こりやすくなり、食道潰瘍のリスクが高まることがあります。
こうした特殊な要因が考えられる場合は、担当医と共有し、検査の際にもその情報を伝えることが大切です。
第3部:症状から考えられる病気と検査・診断
胸やけや胸の痛み、飲み込みづらさといった症状は、食道潰瘍に限らず、さまざまな病気で起こることがあります。ここでは、食道潰瘍と関連の深い疾患や、見逃したくない重い病気について整理し、検査・診断の流れを確認します。
3.1. 食道潰瘍の主な症状と、逆流性食道炎などとの違い
食道潰瘍でみられやすい症状として、次のようなものが挙げられます17。
- 胸やけ(胸のあたりが焼けるように熱く感じる)
- 胸やみぞおちの痛み(鋭い痛み・締め付けられるような痛みなど)
- 飲み込むときの痛み(嚥下時痛)や、食べ物がつかえる感じ
- 酸っぱい液体や苦い液体が喉元まで上がってくる感じ
- 吐き気・嘔吐、時に血の混じった嘔吐(吐血)
- 声のかすれ、慢性的な咳
- 食欲低下や体重減少、だるさ など
逆流性食道炎でも似たような症状が起こりますが、潰瘍を伴う場合には飲み込んだときの強い痛みや、出血による貧血、黒色便(タール状の便)が目立つことがあります17。ただし、症状だけで「どこまで粘膜が傷ついているか」を判断することは難しく、内視鏡検査で直接確認することが重要です。
また、胸の痛みは心筋梗塞や狭心症など心臓の病気でも起こり得るため、「今までに経験したことのない激しい胸痛」「冷や汗や息切れを伴う胸痛」がある場合は、消化器疾患に限らず緊急性の高い病気も想定して、迷わず救急要請(119番)や救急外来受診を検討してください。
3.2. 食道潰瘍と関連する代表的な疾患
食道潰瘍は単独で起こることもありますが、多くの場合、何らかの背景疾患の一部として現れます。代表的なものは次の通りです13。
- 逆流性食道炎・胃食道逆流症(GERD):先に述べた通り、胃酸の逆流によって食道粘膜が傷つき、その延長として潰瘍がみられることがあります。
- 感染性食道炎(カンジダ性・ヘルペス性など):免疫力低下などを背景に、真菌やウイルスの感染により潰瘍が形成されます。
- 薬剤性食道炎・食道潰瘍:特定の薬剤が食道に長く接触することで局所的な潰瘍ができます。錠剤がとどまりやすい中部〜下部食道に好発します。
- 腐食性食道炎:強酸・アルカリの誤飲による広範な粘膜障害の一環として、深い潰瘍や狭窄が残ることがあります。
- 放射線性食道炎:胸部への放射線治療後に起こり得る炎症・潰瘍です。
- 食道がん:がんの一部が潰瘍のような形で見えることがあり、良性の食道潰瘍と区別が必要です。内視鏡での生検(組織を採取して顕微鏡で調べる検査)が重要です。
3.3. 検査・診断の流れ ― 胃カメラを中心に
食道潰瘍が疑われる場合、もっとも重要な検査は上部消化管内視鏡検査(いわゆる「胃カメラ」)です15。細い内視鏡を口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸の内部を直接観察します。
胃カメラでは、以下のような点を確認します。
- 食道粘膜の色の変化(赤み・白い付着物・茶色っぽい変化など)
- びらんや潰瘍の有無、数、大きさ、深さ
- 出血の有無(出血点や血の塊がないか)
- 狭窄や隆起性病変(ポリープ・腫瘍など)の有無
感染性が疑われる場合や、がんとの区別が必要な場合には、内視鏡の先端から小さな鉗子で組織をとり、顕微鏡や培養検査で詳しく調べます5。また、胃潰瘍・十二指腸潰瘍をあわせて確認するため、胃や十二指腸も同時に観察します2。
必要に応じて、X線造影検査(バリウムを飲んでレントゲン撮影する検査)や、胸部CTなどが行われることもありますが、現在では内視鏡検査が診断の中心になっています。症状や既往歴(既に診断されている病気)、服用中の薬、生活習慣なども総合的に評価されます。
第4部:治療と今日から始める改善アクションプラン
食道潰瘍と診断された場合、治療の柱は「原因への対応」と「潰瘍そのものを治す治療」、そして「再発を防ぐ生活習慣の見直し」です。ここでは、治療の概要と、今日から始められるセルフケアの具体例を整理します。
4.1. 医療機関で行われる主な治療
治療の内容は、食道潰瘍の原因や重症度、合併症の有無によって異なりますが、一般的には次のような治療が組み合わされます13。
- 胃酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI、カリウムイオン競合型酸分泌抑制薬など):胃酸の量を減らし、食道の傷を治りやすくします。逆流性食道炎・消化性潰瘍のガイドラインでも標準的治療とされています24。
- H2受容体拮抗薬:胃酸分泌を抑える別のタイプの薬で、症状や病状によりPPIなどと使い分けられます。
- 粘膜保護薬:胃や食道の粘膜表面を覆い、胃酸や刺激物から守ることで症状の軽減や治癒を助けます。
- 原因に対する薬物療法:感染性の場合は抗真菌薬・抗ウイルス薬、薬剤性の場合は原因薬の中止や変更などを行います35。
- 止血処置:出血を伴う重症例では、内視鏡を使って止血の処置が行われることがあります。
- 手術・内視鏡的拡張術など:高度な食道狭窄やがんが疑われる場合には、バルーン拡張やステント留置、外科手術などが検討されます。
薬物治療は一定期間継続することが重要です。症状が良くなっても、自己判断で薬を中断すると潰瘍が治りきらず再発しやすくなります。必ず処方された期間・飲み方を守り、途中で気になることがあれば主治医や薬剤師に相談してください。
4.2. 日常生活でできること ― レベル別アクション
医師の治療と並行して、生活習慣を整えることは、食道潰瘍の改善と再発予防にとても大切です。ここでは、今日からできることをレベル別に整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 胃酸逆流を起こしにくい過ごし方に変える | 就寝2〜3時間前以降は食事を控える/夕食の量を控えめにする/夕食後すぐに横にならない/枕やベッドの頭側を少し高くする など |
| Level 2:今週から見直したい習慣 | 食べ方と飲酒・喫煙習慣の見直し | よく噛んでゆっくり食べる/辛いもの・脂っこいもの・酸味の強い食品を控える/アルコールの量と頻度を減らす/禁煙外来なども視野に入れて禁煙を検討する |
| Level 3:1〜3か月かけて取り組むこと | 体重管理と運動習慣 | 標準体重を目指して少しずつ減量する(肥満の場合)/無理のない範囲でウォーキングやストレッチを続ける/お腹周りを強く締め付ける服装を避ける |
| Level 4:薬の飲み方・治療方針の見直し | 医師・薬剤師と相談しながら長期的な再発予防を考える | NSAIDsやビスホスホネート系薬を服用している場合は、服用方法や代替薬の可能性を主治医と相談する/定期的に内視鏡検査が必要かどうか確認する |
4.3. 食事の工夫とメニューの考え方
詳細なレシピではなく、「どのような考え方で食事を選ぶか」が大切です。一般的には、次のようなポイントが推奨されます15。
- 刺激の少ない、消化にやさしい食品を中心に:おかゆ・うどん・やわらかく煮た野菜・白身魚・豆腐・卵料理など。
- 脂肪分の多い料理を控える:揚げ物・脂身の多い肉・濃厚なクリーム系ソースなどは、胃酸分泌を増やし、逆流を起こしやすくします。
- 酸味の強い飲食物は様子を見ながら:柑橘類やトマトジュース、炭酸飲料などは、症状を悪化させる場合があります。
- カフェイン・アルコールを控える:コーヒーやエナジードリンク、アルコールは逆流を促しやすいため、症状が落ち着くまでは控えめに。
- 食事量を分ける:1回の食事量を減らし、回数を増やすことで胃の急激な膨張を避けることができます。
ただし、持病や栄養状態によって適切な食事は変わります。糖尿病や腎臓病など別の病気で食事療法をしている場合は、自己判断で大きく変更せず、主治医や管理栄養士に相談しましょう。
第5部:専門家への相談 ― いつ・どこで・どのように?
食道潰瘍は、軽症のうちに適切な治療を始めれば改善が期待できる一方、放置すると出血や狭窄、まれにがんとの関連が問題になることもあります。ここでは、受診のタイミングや、どの診療科に相談すべきか、診察に役立つ準備について紹介します。
5.1. すぐに受診を検討すべき危険なサイン
- 飲み込むたびに強い痛みが走り、水やお茶を飲むのもつらい
- 食事の途中で食べ物がつかえて飲み込めなくなる、むせて戻してしまう
- 胸の中央〜みぞおちにかけて、今までにない強い痛みが突然出現した
- 吐いたものに鮮やかな血が混じる、もしくはコーヒーかすのような黒っぽいものが混じる
- 真っ黒でタール状の便が続く(上部消化管出血が疑われます)
- 短期間で急に体重が減った、食欲が極端に落ちた
- 息切れ・動悸・立ちくらみなど、貧血を疑う症状が出てきた
これらの症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。夜間や休日などで対応している医療機関がわからない場合や、「救急車を呼ぶべきか迷うほどつらい」症状がある場合は、119番に連絡し、状況を説明して指示を仰ぎましょう。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- まず相談しやすいのは内科(消化器内科):胸やけや胸の痛み、飲み込みづらさなど、消化管に関連する症状は消化器内科が担当することが多く、上部消化管内視鏡検査も行われます。
- かかりつけ医がいれば、まず相談を:地域のクリニックなどで定期的に診てもらっている医師がいれば、最初に相談し、必要に応じて専門医療機関を紹介してもらう方法もあります。
- 胸痛が強い場合は循環器内科も念頭に:胸の痛みが「押しつぶされるような感じ」「左肩やあごまで広がる」「動くと悪化する」といった特徴を伴う場合、心臓の病気(狭心症・心筋梗塞など)も見逃せません。救急外来や循環器内科を含めた総合的な評価が必要です。
- がんが疑われる場合は専門のがん診療拠点へ:内視鏡検査でがんが疑われた場合、食道がんの診療に慣れたがん拠点病院などで詳しい検査・治療が行われます。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 症状のメモ:いつから・どのような症状が・どのくらいの頻度で起きているか、どんなときに悪化/軽くなるかなどを書き留めておくと、診察がスムーズになります。
- お薬手帳・現在服用している薬のリスト:市販薬やサプリメントも含めて、すべての服用中の薬を伝えることが大切です。薬剤性食道潰瘍の可能性を評価するためにも重要です。
- 健康診断の結果:最近の血液検査やバリウム検査の結果があれば持参しましょう。
- 費用の目安:医療機関や検査内容により異なりますが、上部消化管内視鏡検査は、日本の公的医療保険3割負担の場合で数千円〜1万円台半ば程度が一般的な目安とされています(別途診察料や追加検査費用がかかることがあります)。詳しい金額は、受診予定の医療機関に事前に確認しましょう。
不安な症状があっても、「忙しいから」「恥ずかしいから」と受診を先延ばしにしてしまう方は少なくありません。しかし、食道潰瘍は早期に対応するほど治療の選択肢も広がり、合併症を防ぎやすくなります。迷ったときは、一人で抱え込まず、身近な医療機関に相談してみてください。
よくある質問
Q1: 食道潰瘍は自然に治ることがありますか?
A1: 軽い炎症や浅いびらんであれば、生活習慣の見直しだけで改善することもありますが、明らかな潰瘍まで進行している場合、自然に完全治癒するとは限りません。特に、原因となる胃酸の逆流や薬の服用、感染症などが続いていると、潰瘍が長引いたり再発したりするリスクが高くなります13。自己判断で「そのうち治るだろう」と放置せず、症状が続く場合は内視鏡検査も含めて医師に相談することが大切です。
Q2: 食道潰瘍はがん(食道がん)になりますか?
A2: 良性の食道潰瘍そのものが直接がんに変わるケースは一般的ではありませんが、潰瘍に見える病変の中に初期のがんが紛れていることがあるため、内視鏡でしっかりと観察し、必要に応じて組織検査(生検)を行うことが重要です1。また、長期にわたる強い胃酸逆流は、バレット食道や食道腺がんとの関連が指摘されており、ガイドラインでも注意喚起されています4。定期的な内視鏡フォローを含め、主治医と相談しながら管理していきましょう。
Q3: 薬で治療中ですが、症状が軽くなったので自己判断で中止してもいいですか?
A3: 症状が軽くなっても、自己判断で薬をやめることはおすすめできません。痛みや胸やけが落ち着いても、粘膜の傷が完全には治っていないことがあります。途中で薬をやめると潰瘍が再燃し、かえって治療期間が長引くことがあります24。必ず処方された期間と飲み方を守り、「いつまで続けるのか」「今後はどうフォローしていくのか」は主治医と相談しながら決めましょう。
Q4: 市販の胃薬だけで様子を見ても大丈夫ですか?
A4: 一時的な軽い胸やけであれば、市販薬で様子を見ることもありますが、次のような場合は市販薬の自己判断だけに頼らず受診が必要です。
- 胸やけや胸の痛みが2週間以上続く
- 飲み込みづらさや強い痛みがある
- 体重減少や食欲不振が目立つ
- 吐血や黒色便など、出血が疑われる症状がある
背景に食道潰瘍やがんなどの重い病気が隠れている可能性もあるため、繰り返し同じ症状が出るときは、一度医療機関で原因を確認することをおすすめします1。
Q5: 食道潰瘍と診断されました。どのくらいで治りますか?
A5: 潰瘍の大きさや深さ、原因、全身の状態によって治るまでの期間は変わりますが、胃酸分泌抑制薬などによる治療を行うと、多くのケースで数週間〜数か月で粘膜の修復が進むとされています23。ただし、糖尿病や免疫低下などの持病がある場合や、喫煙・飲酒・食生活の乱れが続いている場合は、治癒までに時間がかかったり再発しやすくなったりします。症状だけでなく、内視鏡検査で実際の潰瘍の状態を確認しながら治療方針を決めることが大切です。
Q6: 食道潰瘍のときに絶対に避けたほうがよい飲食物はありますか?
A6: 個人差はありますが、一般的には「胃酸分泌を増やす・食道粘膜を刺激する可能性が高いもの」は控えることが推奨されます15。
- 強いアルコール(特に空腹時の飲酒)
- 辛い料理(唐辛子など)
- 酸味の強い飲食物(柑橘類・トマトジュース・炭酸飲料など)
- 脂っこい料理・揚げ物
- 濃いコーヒーやカフェインの多い飲み物
ただし、症状の出方は人それぞれです。実際に食べてみて「これは大丈夫」「これはつらくなる」というものをメモし、自分なりの「避けたいものリスト」を作っておくと、再発予防にも役立ちます。
Q7: 妊娠中ですが、胸やけや飲み込みづらさがあります。食道潰瘍の心配はありますか?
A7: 妊娠中はホルモンの影響や子宮の増大により、胃酸が逆流しやすくなり、胸やけや酸っぱい逆流が起こりやすくなります。しかし、それがすべて食道潰瘍に直結するわけではありません。飲み込むときの強い痛みや出血、体重減少などがない場合は、軽〜中等度の逆流性食道炎であることも多いとされています4。
とはいえ、市販薬の使用や治療方針は妊娠週数や胎児への影響も考慮する必要があるため、自己判断で薬を飲まず、産婦人科または内科・消化器内科の医師に相談してください。必要に応じて妊娠中でも安全性が高いとされる治療法が検討されます。
Q8: 食道潰瘍を再発させないために、どのくらいの頻度で検査を受ければよいですか?
A8: 再発予防のための検査頻度は、潰瘍の原因・重症度・合併症の有無・年齢・ほかの病気の有無などによって異なります。日本消化器病学会のガイドラインでも、「何年ごとに必ず検査をするべき」という一律の基準ではなく、個々のリスクに応じたフォローが推奨されています24。
例えば、出血を伴う重症潰瘍や、狭窄・バレット食道などを合併している場合は、より短い間隔でのフォロー内視鏡が必要になることがあります。一方、原因が明らかな薬剤性で、原因薬を中止・変更してから症状・内視鏡所見ともに安定している場合は、医師と相談のうえ、症状が出たときに再度検査を行う方針となることもあります。自分のケースについては、担当医と具体的な計画を話し合うことが大切です。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
食道潰瘍は、「胸やけ」「飲み込みづらさ」「胸の痛み」といった比較的ありふれた症状から始まる一方で、進行すると出血や狭窄、まれにがんとの関連が問題となることもある病気です。逆流性食道炎や薬の影響、感染症、誤飲、放射線治療など、原因はさまざまですが、共通して言えるのは早めに原因を特定し、適切な治療を行えば、多くのケースで改善が期待できるということです。
日常生活の中では、食べ過ぎや就寝前の飲食、飲酒・喫煙、きつい服装や前かがみ姿勢といった「逆流を起こしやすい習慣」を少しずつ減らしていくことが、再発予防にもつながります。同時に、「どこまで自分で対策し、どのタイミングで医療機関に相談するか」の目安を知っておくことが、安心して日々を過ごすうえで大切です。
つらい症状を一人で抱え込まず、気になるサインがあれば、早めに内科や消化器内科に相談してみてください。この記事が、食道潰瘍の不安を少しでも軽くし、「自分の体と向き合う第一歩」を踏み出すきっかけになれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、生成AIを活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(日本消化器病学会のガイドライン、国内医療機関の解説ページ、海外の総説論文など)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
参考文献
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