【2025年決定版】肌タイプ別日焼け止めの選び方:皮膚科学に基づく究極ガイド
皮膚科疾患

【2025年決定版】肌タイプ別日焼け止めの選び方:皮膚科学に基づく究極ガイド

日焼け止めを選ぶという行為は、かつての「日焼けによる黒化を防ぐ」という単純な目的をはるかに超え、現代のスキンケアにおいて最も重要な自己投資の一つとなっています。単に肌の色を守るだけでなく、光老化、深刻な色素沈着、さらには皮膚がんのリスクから自らを守るための、科学に基づいた防御戦略です1。しかし、市場には無数の製品が溢れ、その成分や表示は複雑を極めます。どの情報が本当に信頼でき、自分の肌にとって最善の選択は何なのでしょうか?本稿は、日本の消費者が抱えるその切実な問いに答えるため、国内外の最新の科学的知見を結集し、作成された包括的なガイドです。肌タイプごとの最適な製品選びから、成分の深掘り、そして誤解されがちな常識の解説まで、あなたが自信を持って「完璧な一本」を選び抜くための知識を、ここに余すことなく提供します。

この記事の要点

  • 紫外線対策はUVA・UVBだけでなく、シミや色素沈着の大きな原因となる「可視光線(特にブルーライト)」まで防ぐことが新常識です2
  • 日焼け止め成分は「紫外線散乱剤(物理的)」と「紫外線吸収剤(化学的)」に大別されます。特に、安全性が高く効果も優れた「最新世代の吸収剤」の理解が重要です3
  • シミ・そばかす対策には、従来の紫外線対策に加え、色付きの日焼け止めに含まれる「酸化鉄」がブルーライト対策に必須の成分となります4
  • 乾燥肌、脂性肌、敏感肌など、各肌タイプの特性に合わせたテクスチャーと有効成分(セラミド、ナイアシンアミド等)を選ぶことが、肌トラブルを避け効果を最大化する鍵です5

第1章:見えざる敵を理解する – 太陽光の全貌

私たちが日常的に浴びる太陽光は、目に見える光(可視光線)だけではありません。肌に影響を与える光線は多岐にわたり、それぞれが異なる特性とリスクを持っています。効果的な紫外線対策は、まず敵を正しく知ることから始まります。

UVA・UVBだけではない:太陽光スペクトルとその影響

一般的に、肌への脅威として知られているのは紫外線(UV)のB波(UVB)とA波(UVA)です6。UVB(波長290-320 nm)は肌の表面(表皮)に作用し、日焼けによる炎症(サンバーン)やシミの主な原因となり、皮膚がんのリスクを高めます6。一方、UVA(波長320-400 nm)はより波長が長く、肌の奥深く(真皮)まで到達し、シワやたるみといった光老化を引き起こす主要因です6
しかし、現代の皮膚科学では、この理解は十分とは言えません。UVAはさらに、UVA2(320-340 nm)と、全UVAの大部分を占め、最も肌の奥深くまで届くUVA1(340-400 nm)に分けられます2。特にUVA1は、DNA損傷、光老化、そしてアジア人の肌で懸念の大きい色素沈着障害に深く関与しています2
さらに重要なのが、これまで見過ごされがちだった「可視光線(Visible Light, VL)」、特にエネルギーの高い青色光(ブルーライトまたはHEV光、波長400-500 nm)の存在です。近年の研究では、可視光線がUVA以上に強力かつ持続的な色素沈着を引き起こす可能性が示唆されており、特にアジア人に多いスキンフォトタイプⅢ~Ⅵの肌ではその影響が顕著です2。資生堂の研究でも、太陽光由来のブルーライトは電子機器のそれとは比較にならないほど強く、肌に酸化ストレスを与えることが確認されています7
この事実は、私たちが目指すべき「ブロードスペクトラム(広範囲防御)」の概念を更新する必要があることを意味します。米国FDAの基準では、「ブロードスペクトラム」はUVA1の370nmまでをカバーすれば表示可能ですが8、シミやそばかすを最も懸念する日本の消費者にとっては、その防御は不十分です。真に有効な防御とは、UVA1の長波長域と可視光線までをも遮断できる製品を指すのです。

日本の日焼け止め指標を解読する

製品選びの基準となるのが、パッケージに記載された指標です。これらは日本化粧品工業会(JCIA)の監督のもと、国際基準に準拠して定められています9

  • SPF (Sun Protection Factor): UVBからの防御効果を示す指標です。日本の測定法は国際基準ISO 24444に準拠しています10。SPF30は、塗らない場合と比較して日焼けで赤くなるまでの時間を30倍遅らせることを意味します。表示上の最大値は「50+」であり、測定値が50を大幅に超える場合にこの表示が許可されます11。ただし、防御率の差は直線的ではなく、SPF30がUVBの約97%を遮断するのに対し、SPF50では約98%となります12
  • PA (Protection Grade of UVA): UVAからの防御効果を示す日本独自の指標で、現在は国際的にも広く認知されています。ISO 24442を基準とし10、「+」の数でレベルを表します。2013年には、より高いUVA防御への需要に応え、最高レベルの「PA++++」が導入されました13
  • UV耐水性: 汗や水への強さを示す新しい基準で、国際規格ISO 18861に基づきます14。星の数でレベルが示されます:
    • UV耐水性★: 40分間の耐水試験後もSPF効果が持続することを示します。
    • UV耐水性★★: 80分間の耐水試験後もSPF効果が持続することを示します14

しかし、これらの数値は「1平方センチメートルあたり2mg」という規定量を塗布した実験室での理想的な条件下でのみ保証されるという、極めて重要な事実があります8。実際の使用量は、多くの人がその1/4から1/2程度に過ぎないという研究結果があり2、その場合、SPF50の製品でも実際の効果はSPF15~20程度まで低下してしまいます。したがって、これらの指標は「メーカーとの契約」のようなものであり、約束された効果を得るためには「十分な量を塗り、こまめに塗り直す」という使用者の義務を果たす必要があるのです。

第2章:成分表を解読する – あなたの日焼け止めの「武器」

日焼け止めの性能は、その中に含まれる「紫外線防御剤(UVフィルター)」によって決まります。これらの成分は、その作用機序から大きく二つのカテゴリーに分類されます。

紫外線散乱剤(物理的フィルター) vs. 紫外線吸収剤(化学的フィルター)

現在流通している日焼け止めは、主に「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」のいずれか、または両方を組み合わせて作られています。

紫外線散乱剤(ノンケミカル)

酸化亜鉛(Zinc Oxide)と酸化チタン(Titanium Dioxide)が代表的な成分です15。これらは肌の表面に物理的な膜を形成し、紫外線を反射・散乱させることで肌への侵入を防ぎます16。刺激性が低いため、伝統的に敏感肌や子供向けの製品に推奨されてきました。しかし、白浮きしやすく、テクスチャーが重くなりがちという欠点がありました。この使用感を改善するために「ナノ粒子」技術が用いられていますが、その安全性について懸念の声もありました17。これに対し、日本の厚生労働省(MHLW)や日本化粧品工業会(JCIA)などの機関による研究では、化粧品に配合されたナノ粒子は皮膚上で凝集し、健康な皮膚のバリアを通過することはほとんどなく、安全に使用できると結論付けられています1819

紫外線吸収剤(ケミカル)

紫外線のエネルギーを吸収し、それを熱などの無害なエネルギーに変換して放出することで肌を守ります16。軽やかで透明なテクスチャーを作りやすいのが最大の利点です。しかし、このカテゴリーは世代によって特性が大きく異なるため、一括りにはできません。

  • 旧世代の吸収剤: オキシベンゾン(Oxybenzone)やオクチノキサート(Octinoxate)などが含まれます。特にオキシベンゾンは、光に対する安定性が低く、体内に吸収される可能性について内分泌かく乱作用への懸念が指摘されたことがあります15。FDAなどの主要な規制機関は規定濃度内での安全性を認めていますが15、これらの背景を知っておくことは重要です。
  • 新世代(モダン)の吸収剤: ヨーロッパや日本で広く使用されているこれらの成分は、飛躍的な進歩を遂げています。代表的なものに、チノソーブS(Tinosorb S / Bemotrizinol)、チノソーブM(Tinosorb M / Bisoctrizole)、ユビナールAプラス(Uvinul A Plus / Diethylamino Hydroxybenzoyl Hexyl Benzoate)などがあります3。これらの成分は、非常に広い防御範囲(UVBからUVA1まで)、極めて高い光安定性、大きな分子サイズによる皮膚への浸透のしにくさ、そして優れた安全性プロファイルといった、多くの利点を兼ね備えています20

効果を高める「スーパーヒーロー」補助成分

最先端の日焼け止めは、単一のUVフィルターに頼るだけではありません。特定のニーズに応えるため、様々な補助成分がその効果を飛躍的に高めています。

  • 酸化鉄(Iron Oxides): これは可視光線、特にブルーライトから肌を守るための「ゴールドスタンダード」成分です4。色付きの日焼け止めやBB/CCクリーム、トーンアップ製品の「色」を作り出しているのがこの鉱物顔料です2。シミや色素沈着を本気で防ぎたい人にとって、酸化鉄の配合はもはや必須条件と言えるでしょう。
  • 抗酸化成分 & DNA修復サポート: ビタミンC、ビタミンE、ナイアシンアミドなどの成分は「第二の防御線」として機能します。UVフィルターをすり抜けてしまった紫外線や可視光線によって発生するフリーラジカルを中和し、細胞レベルのダメージを最小限に抑えます2
  • 医薬部外品(薬用)の有効成分: 日本では、厚生労働省が効果を承認した有効成分を規定濃度で配合した製品を「医薬部外品」として販売できます21。これにより、「ニキビを防ぐ」(グリチルリチン酸など)や「メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ」(トラネキサム酸やナイアシンアミドなど)といった、化粧品の範囲を超える具体的な効果を謳うことが可能になります22

賢い消費者になるためには、単一の成分だけで製品を判断するのではなく、処方全体を評価する視点が必要です。例えば、新世代の吸収剤であるチノソーブSは、比較的安定性の低い他の吸収剤(アボベンゾンなど)を安定化させ、処方全体の防御力を高める相乗効果を発揮することがあります23。成分の組み合わせがもたらす総合力を見極めることが、真に優れた製品を見つける鍵となります。

表1:紫外線防御フィルターの比較

フィルターの種類 代表的な成分 (INCI名) 作用機序 防御範囲 利点 欠点
紫外線散乱剤 (物理的) Zinc Oxide, Titanium Dioxide 紫外線を物理的に反射・散乱・吸収 非常に広い (UVB, UVA1, UVA2) 刺激性が低い、光安定性が高い、塗布後すぐに効果を発揮 白浮きしやすい、重いテクスチャーになりがち
紫外線吸収剤 (旧世代) Oxybenzone, Octinoxate 紫外線を吸収し、熱に変換 主にUVB, UVA2 (比較的狭い) 軽やかで透明なテクスチャー 刺激の可能性、安全性への懸念、光安定性が低い
紫外線吸収剤 (新世代) Tinosorb S, Tinosorb M, Uvinul A Plus 紫外線を吸収し、熱に変換 非常に広い (UVB, UVA1, UVA2) 光安定性が極めて高い、安全性が高い、高性能、使用感が良い コストが高い、世界的には未承認の地域もある

第3章:最適な選択のための実践ガイド – あなたの肌の「相棒」を見つける

科学的な知識を、日々の生活で実践できる具体的なアドバイスに落とし込むことが、このガイドの核心です。あなたの肌質や悩みに最適な一本を見つけるための、詳細な指針を以下に示します。

肌タイプ別・悩み別 詳細ガイド

肌は一人ひとり異なります。自分の肌が何を求めているのかを理解し、それに合った日焼け止めを選ぶことが、美肌への最短ルートです。

表2:肌タイプ・悩み別 日焼け止め推奨早見表

肌タイプ / 悩み 解決すべき主要課題 推奨テクスチャー 探すべき主要成分 推奨SPF/PA 特記事項
乾燥肌 (乾燥肌) 水分不足、バリア機能の低下 クリーム、ミルク、エッセンス 乾燥しにくいフィルター; セラミド, ヒアルロン酸, グリセリン 日常: SPF 30/PA++; 屋外: SPF 50+/PA++++ 高濃度のアルコール(エタノール)配合製品は避ける。
脂性肌・ニキビ肌 (脂性肌) 過剰な皮脂、毛穴の詰まり ジェル、フルイド、ローション 「ノンコメドジェニック」表示; ナイアシンアミド, グリチルリチン酸 日常: SPF 30/PA++; 屋外: SPF 50+/PA++++ オイルフリー処方を優先する。
敏感肌 (敏感肌) 刺激への感受性、赤み クリーム、ミルク(低刺激処方) 選択肢1: 酸化亜鉛, 酸化チタン
選択肢2: チノソーブ, ユビナールAプラス
日常: SPF 30/PA++; 屋外: SPF 50+/PA++++ 必ずパッチテストを行う。香料、アルコールを避ける。
混合肌 (混合肌) Tゾーンのべたつき、Uゾーンの乾燥 ジェルクリーム、ミルク、フルイド ナイアシンアミド(肌のバランス調整) 日常: SPF 30/PA++; 屋外: SPF 50+/PA++++ 部位によって2種類の製品を使い分けるのも有効。
エイジングケア (エイジングケア) シワ、弾力低下、色素沈着 エッセンス、セラム、クリーム 広範囲防御フィルター (特にUVA1); 抗酸化物質 (Vit C, E), ナイアシンアミド 日常・屋外: SPF 50+/PA++++ UVA1からの防御が最優先。
色素沈着しやすい肌 (色素沈着) シミ、そばかす、くすみ 任意(色付きを推奨) 酸化鉄; トラネキサム酸, ナイアシンアミド; UVA1/VL対応フィルター 日常・屋外: SPF 50+/PA++++ 酸化鉄を含む色付き(ティンテッド)製品の使用が強く推奨される。

詳細な分析と推奨

  • 乾燥肌: 最大の課題は、紫外線防御と同時に保湿を行い、弱ったバリア機能をサポートすることです。リッチな使用感のクリーム、ミルク、美容液タイプが理想的です5。ヒアルロン酸やグリセリンといった保湿成分はもちろん、肌の細胞間脂質を補うセラミド配合の製品を探しましょう24。成分表示の上位に「エタノール」や「アルコール」と記載されている製品は、肌を乾燥させる可能性があるため注意が必要です。
  • 脂性肌・ニキビ肌: 毛穴を詰まらせず、テカリを助長しない、軽やかなテクスチャーが最優先です。オイルフリーのジェル、フルイド、ローションタイプが最適でしょう5。「ノンコメドジェニックテスト済み」の表示がある製品は、ニキビができにくい処方であるため一つの目安になります。成分としては、皮脂分泌を調整し、抗炎症作用も持つナイアシンアミドがこの肌タイプの「スター成分」です。また、グリチルリチン酸などの抗炎症成分を含む医薬部外品もニキビ予防に有効です22
  • 敏感肌: 最も慎重な選択が求められる肌タイプです。アプローチは二つあります。
    1. 伝統的で最も安全なアプローチ: 紫外線散乱剤(酸化亜鉛、酸化チタン)のみを使用した、いわゆる「ノンケミカル」処方を選ぶ方法です25。香料、アルコール、特定の防腐剤など、刺激となりうる成分を含まないシンプルな処方の製品が望ましいです。NOVやキュレルのようなブランドは、敏感肌向け製品で定評があります26
    2. 現代的で美容的に優れたアプローチ: 散乱剤のきしみや白浮きが苦手な敏感肌の方には、新世代の紫外線吸収剤(チノソーブ、ユビナールAプラスなど)を使用した製品が素晴らしい選択肢となります。これらの成分は分子が大きく肌に浸透しにくいため、刺激のリスクが非常に低いことが分かっています20

    どちらを選ぶにせよ、顔全体に使う前に、目立たない部分でパッチテストを行うことは絶対条件です。

  • 色素沈着しやすい肌・エイジングケアをしたい肌: これらの悩みを持つ肌が最も警戒すべきは、UVAと可視光線です2。特に、シミやそばかす、肝斑の悪化を防ぐためには、従来のUVフィルターだけでは不十分で、可視光線をブロックする能力が求められます。そのための唯一無二の解決策が、酸化鉄を含む色付きの日焼け止めを使用することです。酸化鉄は可視光線を吸収・遮断する最も効果的な成分であり、色素沈着の根本原因にアプローチします2。また、エイジングケアの観点からは、真皮にダメージを与えるUVA1からの鉄壁の防御が不可欠であり、PA++++の製品を選ぶことが最低条件となります。

状況や特定の対象者に合わせた選択

最適な日焼け止めは、肌質だけでなく、使用するシチュエーションによっても変わります。

  • 使用シーン別: 日本皮膚科学会(JDA)は日常生活ではSPF10/PA+程度でも良いといった指針を示していますが27、これはやや古い見解です。米国皮膚科学会(AAD)は、室内で窓際にいる場合も含め、日常的にSPF30以上を推奨しています12。これは、多くの人が規定量を塗れていない実態を考慮し、最低限の防御効果を確保するための安全策です。現代の製品ラインナップを鑑みると、日常使いでは最低でもSPF30/PA++、屋外での活動や汗をかく場面ではSPF50+/PA++++で「UV耐水性」表示のあるもの、と考えるのが現実的で安全な推奨と言えるでしょう。
  • 子供: 6ヶ月未満の乳児への日焼け止めの使用は避け、衣服や帽子、日陰で物理的に紫外線を防ぐことが推奨されています15。それ以上の年齢の子供には、刺激のリスクが低い紫外線散乱剤を主成分とした、子供向けに設計された低刺激性の製品を選びましょう28
  • 妊娠中・授乳中の方: 一部の化学フィルターの胎児への影響について明確な有害性の証拠はありませんが、懸念が完全に払拭されているわけでもありません。そのため、多くの専門家は、この期間中は最大限の安全を期して、紫外線散乱剤(酸化亜鉛、酸化チタン)ベースの製品を優先的に使用することを推奨しています29

第4章:効果を最大化する「正しい使い方」の技術

どんなに優れた日焼け止めも、使い方を間違えればその効果は半減してしまいます。製品の性能を100%引き出すための「黄金律」を学びましょう。

黄金の塗布量:2mg/cm²の壁

日焼け止めの効果測定の基準となる「2mg/cm²」とは、具体的にどのくらいの量なのでしょうか。一般的に、顔全体に塗る場合、「指2本分(人差し指と中指の第一関節から指先まで)」の量が目安とされています12。これは多くの人が普段使っている量よりもかなり多いと感じるかもしれませんが、この量を守ることが、表示通りの効果を得るための絶対条件です。

塗り直しのタイミングと頻度

高いSPF値は、保護効果の「強さ」を示すものであり、「持続時間」を示すものではありません。SPF50+の製品であっても、その効果は時間と共に、また汗や摩擦によって低下します。原則として、2~3時間おきに塗り直すことが推奨されています。特に、泳いだ後や汗をかいた後、タオルで肌を拭いた後などは、時間を問わずすぐに塗り直す必要があります12

スキンケアとメイクの中での正しい順序

日焼け止めを塗る順番も効果に影響します。正しい順序は以下の通りです。
朝のスキンケア → 日焼け止め → メイクアップ下地・ファンデーション30
日焼け止めはスキンケアの最後のステップであり、メイクアップの最初のステップです。また、虫除けスプレーを併用する場合は、先に日焼け止めを塗り、その上から虫除けスプレーを使用してください31

第5章:専門家が答えるQ&A – よくある疑問と誤解

日焼け止めにまつわる様々な疑問や都市伝説。科学的根拠に基づいた正しい知識で、長年の悩みを解消しましょう。

日焼け止めを毎日使うと、ビタミンDが不足しませんか?
これは最もよくある懸念の一つですが、結論から言うと、健康な人が日常的に日焼け止めを使用してビタミンD欠乏症になる可能性は極めて低いとされています。JDAやAADなどの専門機関は、紫外線対策による皮膚がんや光老化の予防という多大な利益は、ビタミンD欠乏のわずかなリスクをはるかに上回るとの見解で一致しています2。ビタミンDは食事やサプリメントから効率的に摂取することが可能です。
「飲む日焼け止め」だけで紫外線対策は万全ですか?
いいえ、万全ではありません。「飲む日焼け止め」として販売されている製品は、日本では「医薬品」や「医薬部外品」ではなく、「栄養補助食品(サプリメント)」に分類されます32。法律上、「日焼けを防ぐ」「紫外線をカットする」といった医薬品的な効果を謳うことはできません。抗酸化成分などが肌の健康をサポートすることは期待できますが、塗るタイプの日焼け止めの代替品には絶対になり得ず、信頼できる紫外線防御効果は提供しません。
SPFやPAの値が高い製品は、肌への負担も大きいのでしょうか?
必ずしもそうとは限りません。かつては高SPF製品が刺激の強い成分に頼ることがありましたが、技術の進歩により、新世代の紫外線吸収剤やカプセル化技術などを用いることで、高い防御力と肌への優しさを両立した製品が数多く開発されています。重要なのはSPF/PAの数値そのものよりも、自分の肌質に合った成分や処方(例:敏感肌向け処方、ノンコメドジェニックテスト済みなど)が採用されているかを確認することです。
去年の日焼け止めを使っても大丈夫ですか?
推奨されません。日焼け止めは、一度開封すると酸化や成分の劣化が進みます。一般的に、開封後は1年以内に使い切ることが推奨されています。また、高温多湿の場所や直射日光の当たる場所での保管は、成分の分離や劣化を早める原因となります。最高の効果を得るためには、毎シーズン新しいものを購入するのが賢明です。

結論:賢い選択で、あなたの肌の未来を守る

この記事を通じて、私たちは日焼け止め選びが単なる製品選択ではなく、自身の肌の健康と美しさに対する深い理解に基づいた戦略的な行動であることを明らかにしてきました。紫外線だけでなく可視光線まで見据えた広範囲な防御の重要性、肌質と悩みに寄り添った成分の選択、そして製品の効果を最大限に引き出す正しい使用法。これら3つの柱が、あなたの紫外線対策を次のレベルへと引き上げます。
今日から始める日焼け止めの習慣は、未来のあなたへの最高の贈り物です。このガイドが、あなたが無数の選択肢の中から自信を持って「自分だけの一本」を見つけ出し、生涯にわたって健康的で美しい肌を育むための一助となることを心から願っています。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 【未開拓のサンケアを見直し、潜在顧客にリーチする】日本人男性の4/5人は日焼止めの選び方を知らない. ミンテルジャパン – Mintel. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.mintel.com/jp/insights/consumer-research/reaching-potential-customers-by-reviewing-untapped-sun-care/
  2. Passeron T, et al. Photoprotection according to skin phototype and dermatoses: a consensus statement from the “Société Française de Photodermatologie”. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2021;35(Suppl 2):1-12. doi:10.1111/jdv.17242. 入手可能: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8252523/
  3. Goh CL, et al. Safer and More Broad-spectrum Ultraviolet Protective Sunscreens Available in Other Countries: Need FDA Approval for Public Health of Americans STAT. Open Dermatol J. 2022;16:e187437222208110. 入手可能: https://opendermatologyjournal.com/VOLUME/16/ELOCATOR/e187437222208110/FULLTEXT/
  4. 長時間化するスクリーンタイムが肌に与える影響を考える. 朝日新聞GLOBE+. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://globe.asahi.com/article/13461872
  5. 【美容皮膚科医監修】日焼け止めのタイプ(テクスチャー)ごとの特徴について。肌質別におすすめのタイプもご紹介!. Regalis(リーガリス)ドクターズコスメ公式通販. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.regalis.shop/view/news/20220805170714
  6. Jain SK, et al. Sunscreening Agents: A Review. J Cutan Aesthet Surg. 2012;5(3):193-9. doi:10.4103/0974-2077.101379. 入手可能: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3543289/
  7. 資生堂、ブルーライトが肌に与える影響を確認. ニュースリリース詳細. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002971
  8. Nelson B, et al. Commentary: Sunscreen Compliance with American Academy of Dermatology Recommendations: A 2022 Update and Cross-Sectional Study. J Cutan Med Surg. 2023;27(1):68-70. doi:10.1177/12034754221142516. 入手可能: https://www.dermatoljournal.com/articles/commentary-sunscreen-compliance-with-american-academy-of-dermatology-recommendations-a-2022-update-and-cross-sectional-study.pdf
  9. 紫外線防止. 日本化粧品工業会. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.jcia.org/user/business/guideline/uvprotection
  10. ※紫外線防御指数SPF/PAは通常、メガネレンズに使用しない評価方法です。. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.tsl-opt.co.jp/wl/main/images_menimo/menimo-presen8.pdf
  11. 上手に選ぼう 日焼け止め化粧品. 東京都健康安全研究センター. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_shoku/cosme/suntan/
  12. Sunscreen FAQs. American Academy of Dermatology. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.aad.org/media/stats-sunscreen
  13. 2012-11 資生堂、新サンケア指数「PAA E ++++E A」の紫外線防御…. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001469/1469_r9y47_jp.pdf
  14. 【解説】「UV耐水性」と「ウォータープルーフ」、日やけ止めの新しい表示ルールをQ&Aで徹底理解. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://legalx.co.jp/knowledge/uvtaisuisei-hyouji-kijun
  15. Kaliyadan F, et al. Sunscreens and Photoprotection. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-. 入手可能: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537164/
  16. Geisler AN, et al. Sunscreen Safety and Efficacy for the Prevention of Cutaneous Neoplasm. J Cutan Med Surg. 2018;22(1):86-91. doi:10.1177/1203475417739502. 入手可能: https://pdfs.semanticscholar.org/db2f/8a3df7975e66dc792ed638cbcb669c0e8b0c.pdf
  17. ナノ粒子一化粧品における安全性. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.jcia.org/user/common/download/approach/nanomaterial/nedop.pdf
  18. 酸化チタン(ナノ酸化チタンを含む)の安全性等について. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.sankatitan.org/cms/wp-content/uploads/2022/08/2016.12ansen.pdf
  19. ナノマテリアルの経皮毒性に関する評価手法の開発に関する研究. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2008/084051/200839014A/200839014A0001.pdf
  20. Azoia NG, et al. Boosting the effectiveness of UV filters and sunscreen formulations using photostable, non-toxic inorganic platelets. Chem Commun (Camb). 2024;60(11):1455-1458. doi:10.1039/d3cc05279f
  21. 化粧品・医薬部外品に関する基準・規格について調べる. リサーチ・ナビ | 国立国会図書館. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/stm/post_434
  22. 【薬剤師が解説】敏感肌でも使用できる?薬用日焼け止めの…. くすりの窓口. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.kusurinomadoguchi.com/column/articles/sensitive-skin-sunscreen
  23. Pehlivan M, et al. Sunscreen Safety and Efficacy for the Prevention of Cutaneous Neoplasm. Ann Pharmacother. 2024;58(5):543-546. doi:10.1177/10600280231206696. 入手可能: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11022667/
  24. 【2025年最新】敏感肌におすすめの日焼け止め28選。皮膚科 …. ELLE. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.elle.com/jp/beauty/makeup-skincare/a39041070/best-sunscreenlotion-for-sensitiveskin-22-02/
  25. 日やけ止め(日焼け止め)を選ぶポイント. NOV. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://noevirgroup.jp/nov/pages/sunscreen_01.aspx
  26. 敏感肌向け日焼け止め人気ランキング2025|美容のプロおすすめの11選. カスタムライフ. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://customlife.co.jp/cl-med/sunscreen-sensitive-skin/
  27. 日焼け Q13. 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会). [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/q13.html
  28. こどもの紫外線対策について. 日本小児皮膚科学会. [2025年6月16日引用]. 入手可能: http://jspd.umin.jp/qa/03_uv.html
  29. Sunscreens: A Complete Overview. DermNet. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://dermnetnz.org/topics/topical-sunscreen-agents
  30. How to Use Sunscreen. Sun Safety – American Cancer Society. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.cancer.org/cancer/risk-prevention/sun-and-uv/how-to-use-sunscreen.html
  31. Dermatology & Sunscreen. Andrew Rader Army Health Clinic. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://rader.tricare.mil/Patient-Resources/FAQs/Dermatology-Sunscreen
  32. 飲む日焼け止めはサプリ?医薬品?分類と違いを解説. ヒロクリニック Generio. [2025年6月16日引用]. 入手可能: https://www.hiro-clinic.or.jp/generio/2025/05/08/%E9%A3%B2%E3%82%80%E6%97%A5%E7%84%BC%E3%81%91%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%81%AF%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA%EF%BC%9F%E5%8C%BB%E8%96%AC%E5%93%81%EF%BC%9F%E5%88%86%E9%A1%9E%E3%81%A8%E9%81%95%E3%81%84%E3%82%92/
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ