健康診断の結果を見たときに、「LDLコレステロールが高い」「要再検査」と書かれていてドキッとしたことはありませんか。 症状がほとんどないまま数字だけが高く、どれくらい危険なのか、すぐに薬が必要なのか、放っておいてよいのかがわかりにくく、不安を感じる方は少なくありません。
LDLコレステロールは、いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれ、動脈硬化と心筋梗塞・脳梗塞などの重大な病気のリスクと深く関係しています。 一方で、基準値を少し超えただけの状態から、遺伝性で非常に高い状態まで、危険度には幅があり、年齢や他の病気の有無によって「どこまで下げるべきか」も変わってきます。
この記事では、日本のガイドラインや厚生労働省の情報、公的な研究データにもとづいて、LDLコレステロールの基礎知識から、基準値、危険性、生活習慣でできる対策、薬による治療、そして「いつ受診したら良いか」の目安まで、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。 読み進めることで、ご自身や家族の検査値を冷静に理解し、「今なにをするべきか」「どこに相談すべきか」を具体的にイメージできるようになることを目指します。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。 膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、厚生労働省「e-ヘルスネット」、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」、 生活習慣病関連の公的統計資料、海外のコレステロール管理ガイドラインなどの一次情報源にもとづいて、 JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・自治体・公的研究機関:e-ヘルスネットや各種統計資料から、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
- 日本動脈硬化学会・循環器関連学会のガイドライン:LDLコレステロールの診断基準や管理目標についての最新の推奨を確認しています。
- WHOや欧米のガイドライン・査読付き論文:心血管疾患予防に関する国際的なエビデンスを補足情報として利用しています。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、 重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、 運営者情報(JapaneseHealth.org) をご覧ください。
要点まとめ
- LDLコレステロールは、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞へ運ぶ役割を持つ「低比重リポタンパク質」です。 血液中で増えすぎると動脈硬化を進めるため、「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。
- 日本の脂質異常症の診断基準では、LDLコレステロールが140mg/dL以上で「高LDLコレステロール血症」、120〜139mg/dLで「境界域高LDLコレステロール血症」とされます。 一方、どこまで下げるべきかという「目標値」は、年齢や心筋梗塞・脳梗塞のリスクによって変わります。
- 高LDLコレステロールは、多くの場合、症状がないまま進みますが、長期的には心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患などのリスクを高めます。 特に糖尿病や高血圧、喫煙、家族歴がある方では、リスクが重なり合って危険性が高くなります。
- 食生活(飽和脂肪酸・コレステロールの摂りすぎ)、運動不足、肥満、喫煙、飲酒などの生活習慣を見直すことで、LDLコレステロールを下げることができます。 遺伝性の家族性高コレステロール血症など、生活習慣だけでは不十分な場合は薬物療法が重要です。
- 「どの数値から治療薬が必要か」「薬は一生続けるのか」は、検査値だけでなく、年齢、性別、合併症、家族歴などを総合的に見て判断されます。 不安な場合は、一人で抱え込まず、かかりつけ医や循環器内科・脂質専門外来に相談することが大切です。
- 急な胸の痛みや締め付け感、片側の手足の麻痺やろれつが回らないなどの症状が出た場合は、心筋梗塞や脳卒中の可能性もあるため、迷わず救急要請(119番通報)を検討しましょう。
「LDLコレステロールが高いと言われたけれど、どれくらい危険なのか」「薬を飲むべきなのか、それとも食事だけで様子を見てよいのか」—— このような不安や疑問を抱えたまま、誰にも相談できず悩んでいる方も少なくありません。
この記事では、まずLDLコレステロールの役割や基準値などの基本から確認し、次に、食生活や運動習慣、喫煙など身近な要因を一つひとつ整理します。 そのうえで、遺伝性の病気や、甲状腺・腎臓・肝臓の病気など、生活習慣だけでは説明できない「身体の内側の原因」についても解説していきます。
必要に応じて、 Japanese Health(JHO)の総合ガイド や、 より専門的な解説記事 などの関連ページに橋渡ししながら、段階的に理解を深められるように構成しています。
読み進めることで、「自分のLDLコレステロールの値が今どの段階にあるのか」「今日からどんな生活習慣を見直すべきか」「いつ医療機関に相談したらよいか」が具体的にイメージできるようになるはずです。
第1部:LDLコレステロールの基本と日常生活の見直し
まずは、「LDLコレステロールとは何か」「どの値から注意が必要なのか」といった基本を押さえたうえで、 日常生活の中で数字を悪化させやすい行動を整理していきましょう。 専門的な病気を疑う前に、多くの人に共通する生活習慣のポイントを振り返ることで、無理のない改善につなげやすくなります。
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1.1. LDLコレステロールとは?HDLとの違い
コレステロールは、細胞膜やホルモン、胆汁酸などをつくるために欠かせない「脂質(あぶら)」の一種で、体にとって必要な成分です。 しかし、水に溶けにくいため、そのままでは血液中を流れることができません。 そこで、たんぱく質と結びついて「リポタンパク」という粒子の形で運ばれます。
リポタンパクにはいくつかの種類がありますが、代表的なのが次の2つです。
- LDL(低比重リポタンパク): 肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に運ぶ役割があります。 必要以上に多くなると、血管の内側(血管内皮)にコレステロールが沈着し、動脈硬化を進めるため、一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれます。
- HDL(高比重リポタンパク): 血管の壁などにたまった余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ役割があり、「善玉コレステロール」と呼ばれます。
イメージとしては、LDLは「コレステロールを各地へ運ぶ宅配トラック」、HDLは「余った荷物を回収して倉庫(肝臓)へ戻す回収車」のような存在です。 どちらが多すぎても少なすぎても問題ですが、特にLDLが増えすぎると、血管の壁の中にコレステロールがしみこむようにたまり、固く・狭くなる「動脈硬化」を進めます。
1.2. 日本でのLDLコレステロールの基準値と「危険な高さ」の目安
日本では、脂質異常症(以前の「高脂血症」)の診断基準として、LDLコレステロールの値が次のように定められています(空腹時採血の場合)1,2。
- LDLコレステロール 140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症
- LDLコレステロール 120〜139mg/dL:境界域高LDLコレステロール血症
- HDLコレステロール 40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症
- トリグリセライド(中性脂肪)150mg/dL以上:高トリグリセライド血症
ここで重要なのは、「診断基準」と「薬を始める基準」「目標値」は必ずしも同じではないという点です。 日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、 心筋梗塞や脳梗塞の既往、糖尿病の有無などのリスクに応じて、より低いLDL目標値が設定されています3,4。 たとえば、心筋梗塞の既往がある人では70mg/dL未満を目指すなど、リスクが高いほど厳密な管理が推奨されます。
健康診断で「やや高め」と言われたときに不安になりすぎず、 自分がどのリスクグループに当てはまるか、ほかにどんな病気や生活習慣があるかを、医療機関で一緒に確認してもらうことが大切です。
1.3. 悪化させてしまうNG習慣とその理由
LDLコレステロールが高くなる背景には、遺伝や病気などの要因に加えて、日常生活の習慣が大きく関わっています。 次のような行動が続くと、知らず知らずのうちにLDLが高くなりやすくなります。
- 肉の脂身・バター・生クリームなどの「飽和脂肪酸」の摂りすぎ
牛・豚の脂身、ベーコン・ソーセージなどの加工肉、バターや生クリーム、チーズなどには飽和脂肪酸が多く含まれ、LDLコレステロールを上げやすいとされています5,6。 - 卵黄・レバーなどコレステロールの多い食品の摂りすぎ
高LDLコレステロール血症と診断された人では、1日のコレステロール摂取量を200mg未満にするよう推奨されています。 卵類や内臓肉を毎日大量にとる習慣は、見直しが必要です6。 - 野菜・海藻・きのこ・豆類の不足
食物繊維や植物性タンパク質は、腸からのコレステロール吸収を抑えたり、LDLを下げたりするのに役立ちます。 白いご飯やパン・麺類中心で、野菜・海藻・豆類が少ないと、コレステロールのバランスが崩れやすくなります。 - 運動不足と座りっぱなしの生活
ウォーキングなどの有酸素運動には、HDLコレステロールを増やし、LDLや中性脂肪を減らす効果が期待できます。 一日を通して座っている時間が長い生活では、体重が増えやすくなり、LDLも高くなりやすくなります5,7。 - 喫煙
喫煙はHDLを下げ、LDLを増やし、血管の内側を傷つけて動脈硬化を進めることが知られています。 「コレステロールの数字がそこまで高くないから大丈夫」と思っていても、喫煙があるとリスクは大きく跳ね上がります3,5。 - 飲酒量が多い・深酒になりやすい
アルコールは中性脂肪を上げやすく、結果として脂質全体のバランスを崩すことがあります。 一時的にHDLが上がる場合もありますが、飲みすぎは肝臓の負担や体重増加につながり、全体としてマイナスになることが多いとされています。
| こんな習慣・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| ほぼ毎日、肉料理や揚げ物を食べている(脂身・唐揚げ・フライなど) | 飽和脂肪酸・コレステロールの過剰摂取 |
| 野菜や海藻、豆製品を1日1回も食べない日が多い | 食物繊維・植物性タンパク質の不足 |
| 通勤や買い物以外でほとんど歩かない、デスクワーク中心で一日座りっぱなし | 運動不足・エネルギー過剰・体重増加 |
| タバコを吸う、あるいは同居家族の喫煙による受動喫煙が多い | HDL低下・LDL増加、血管内皮障害 |
| 毎晩のように飲酒し、つまみに揚げ物やラーメンを選びがち | 中性脂肪増加・総エネルギー過剰・肝機能への負担 |
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第2部:身体の内部要因 — 遺伝・ホルモン・隠れた病気
生活習慣を見直してもLDLコレステロールがなかなか下がらない場合や、若い年代なのに非常に高い数値が出る場合には、 背景に遺伝性の体質や、ホルモン・臓器の病気など「身体の内側の要因」が隠れていることがあります。 ここでは、その代表的なものを見ていきます。
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2.1. 家族性高コレステロール血症(FH)とは?
家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)は、LDL受容体などの遺伝子の変異により、 生まれつきLDLコレステロールが非常に高くなる病気です3,4。 典型的には、成人でLDLコレステロールが180〜200mg/dL以上、場合によっては300mg/dLを超えることもあります。
特徴として、次のような点が挙げられます。
- 若い年代(10〜20代)からLDLコレステロールが極端に高い。
- 親・兄弟・祖父母など、家族にも高コレステロール血症や心筋梗塞の人が多い。
- アキレス腱や手の甲などにコレステロールが沈着した「腱黄色腫」や「皮膚黄色腫」が見られることがある。
- 未治療の場合、若くして心筋梗塞などを起こすリスクが非常に高い。
FHが疑われる場合は、早い段階から専門医による評価と、スタチンなどの薬物療法を含む積極的な治療が重要になります。 「若いのにLDLがすごく高い」「家族に心筋梗塞が多い」といった場合は、早めに循環器内科や脂質専門外来で相談しましょう。
2.2. 甲状腺・腎臓・肝臓などの病気による二次性高LDL血症
遺伝性ではなく、別の病気が原因でLDLコレステロールが高くなる場合もあります。 日本動脈硬化学会では、こうしたケースを「続発性脂質異常症」として整理しています3。
- 甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンが不足すると、肝臓でのLDL受容体の働きが弱まり、血液中のLDLが増えます。 だるさ、寒がり、むくみ、体重増加などの症状を伴うことがあります。 - ネフローゼ症候群・慢性腎臓病
尿に大量のタンパクが出る病気や、腎機能が低下した状態では、LDLや中性脂肪が高くなりやすくなります。 - 肝臓病
肝臓はコレステロールの合成・分解の中心的な臓器です。 肝硬変や脂肪肝などの状態によって、脂質のバランスが崩れることがあります。 - 糖尿病・メタボリックシンドローム
インスリンの働きが弱くなると、中性脂肪が高くなり、LDLの質(小型で酸化されやすいLDLなど)が悪化し、動脈硬化リスクが高まります3,5。
健康診断でLDLコレステロールが高いと言われた場合には、単に「コレステロールだけ」を見るのではなく、 甲状腺機能や血糖値、腎機能、肝機能なども含めて総合的にチェックしてもらうことが大切です。
2.3. 薬の影響によるLDLコレステロールの上昇
一部の薬は、服用している間だけLDLコレステロールを上げてしまうことがあります。 代表的なものとして、以下のような薬剤が知られています3。
- 一部の利尿薬(高血圧治療に用いるサイアザイド系など)
- 一部のステロイド薬(長期・高用量の使用時)
- 免疫抑制薬、ホルモン剤など
もちろん、これらの薬は必要があって処方されているものなので、自己判断で中止するのは危険です。 「薬を飲み始めてからコレステロールが上がった気がする」と感じた場合は、まずは処方医に相談し、 必要に応じて薬の種類や量、LDLコレステロールの管理方針について話し合ってみましょう。
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第3部:専門的な診断が必要な疾患とLDLコレステロールの関係
LDLコレステロールが高い状態が長く続くと、血管の壁の内側にコレステロールがたまり、やがて「粥状(じゅくじょう)プラーク」と呼ばれる膨らみをつくり出します。 これが進行した状態が「動脈硬化」です。 動脈硬化は、多くの生活習慣病に共通する土台であり、心臓や脳をはじめとした全身の血管に影響を及ぼします3,4,10。
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3.1. 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
心臓に酸素と栄養を送る血管を「冠動脈」といいます。 LDLコレステロールが高い状態が続くと、この冠動脈の内側にもプラークがたまり、血管の内腔が徐々に狭くなります。 これが進行すると、次のような病気につながります3,4,10。
- 狭心症:労作時(階段を上る、坂道を歩くなど)に胸の締め付け感や痛みが出て、しばらく休むと治まる状態。
- 心筋梗塞:プラークが破れ、その部分に血の塊(血栓)ができて血管が急につまることで、心筋に血液が届かなくなり、激しい胸痛・冷や汗・息苦しさなどを起こす緊急事態。
LDLコレステロールが高い人では、このような冠動脈疾患のリスクが高くなることが、数多くの疫学研究や介入試験から示されています。 特に、喫煙、高血圧、糖尿病、家族歴などのリスクが重なると、危険性はさらに上がります。
3.2. 脳梗塞・末梢動脈疾患
動脈硬化は、心臓だけでなく、脳や脚の血管にも起こります。 LDLコレステロールが高いと、次のような病気のリスクも高まります3,10。
- 脳梗塞:脳の血管がプラークや血栓でつまることで起こる脳卒中の一種。 片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、視野の異常、突然の激しい頭痛などを生じます。
- 末梢動脈疾患(PAD):足の血管が細く・つまることで、歩くとふくらはぎが痛くなる、足先が冷たい・しびれる、傷が治りにくいなどの症状が出る病気。
これらの病気は、生命にかかわるだけでなく、後遺症により日常生活や仕事、介護負担などにも大きな影響を与える可能性があります。 LDLコレステロールの管理は、単に「数字をきれいにする」ことが目的ではなく、こうした重大な合併症を予防することが最大の目的です。
3.3. 糖尿病・メタボリックシンドロームとの関係
糖尿病やメタボリックシンドロームの人は、LDLコレステロールがそこまで高くなくても、心血管病のリスクが高いことが知られています3,5。 これは、血糖コントロール不良やインスリン抵抗性が、LDLの質を悪化させたり、血管内皮を傷つけたりするためと考えられています。
そのため、日本動脈硬化学会をはじめとするガイドラインでは、糖尿病のある人やメタボリックシンドロームの人を「高リスク群」として位置づけ、 LDLコレステロールの目標値をより厳しく設定することが推奨されています3,4。
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第4部:今日から始めるLDLコレステロール改善アクションプラン
原因が何であれ、多くの人に共通して取り組めるのが「生活習慣の見直し」です。 ここでは、「今夜からできること」「今週末から試したいこと」「数か月単位で続けたいこと」といったレベル別に、 LDLコレステロールを下げ、動脈硬化を予防するためのアクションプランを整理します。
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| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今夜からできること | 「あぶら」の質と量を意識して選ぶ | 揚げ物を1品減らして、代わりに煮物や蒸し料理にする/ 肉の脂身を取り除く/バターの代わりにオリーブオイルを使う など |
| Level 1:今夜からできること | 野菜・海藻・豆類を必ず1食に1皿プラス | 夕食にサラダや煮物、味噌汁の具として海藻や豆腐を加える/ コンビニでは、主食+おにぎりだけでなくサラダや冷ややっこを一緒に選ぶ |
| Level 2:今週から始めること | 1日30分を目安に歩く時間を増やす | 通勤で一駅分歩く/エレベーターではなく階段を使う/ 昼休みに10分だけ早歩きの散歩をする |
| Level 2:今週から始めること | 卵・内臓肉の量と頻度を意識する | 卵は1日1個までを目安にし、レバーやモツ料理は週1回程度までにするなど、コレステロールの多い食品の頻度をコントロールする6 |
| Level 3:数か月単位で取り組むこと | 体重・腹囲を少しずつ減らす(目標:3〜5%減) | 間食・甘い飲み物を減らす/夕食の主食を少し減らし、代わりに野菜を増やす/ 週3日以上のウォーキングや軽い筋トレを継続する |
| Level 3:数か月単位で取り組むこと | 禁煙・減煙に本格的に取り組む | 禁煙外来やニコチンパッチ・ガムの利用を検討する/家族や同僚に宣言してサポートしてもらう/ 喫煙の代わりにガムやストレッチなど「手持ちぶさた対策」を準備する |
生活習慣の改善だけで十分にLDLが下がる人もいれば、遺伝的な要因や合併症のために、薬物療法が必要になる人もいます。 「どこまで生活で頑張るべきか」「いつ薬を考えたほうが良いか」は、人によって異なります。 自己判断でサプリや極端なダイエットに走るのではなく、定期的に検査を受けながら、医療者と相談してバランスを取ることが大切です。
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第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
LDLコレステロールが高いとわかったとき、「今すぐ病院に行くべきなのか」「どの診療科にかかればよいのか」「検査や治療にどれくらいお金がかかるのか」など、さまざまな不安が出てくると思います。 ここでは、受診のタイミングと医療機関へのかかり方の目安をまとめます。
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5.1. すぐに医療機関を受診すべき警告サイン
- 突然の強い胸の痛み・締め付け感・圧迫感(数分以上続く、冷や汗を伴うなど)
- 安静にしていても胸の痛みが続く、繰り返し起こる
- 片側の手足の麻痺、顔のゆがみ、ろれつが回らない、急な視力低下などの症状
- 突然の激しい頭痛、意識がもうろうとする
- 歩くと足が痛くなり、少し休むとまた歩けるが、距離がだんだん短くなってきている
これらの症状は、心筋梗塞や脳卒中、末梢動脈疾患などのサインである可能性があります。 「様子を見るべきか迷うほどの強い症状」の場合は、ためらわずに救急車(119番)を呼ぶか、近くの救急外来に相談してください。
5.2. 健康診断で「要精査」「要受診」と言われた場合
毎年の健康診断でLDLコレステロールが高く、「要受診」「要再検査」と判定された場合は、できれば1〜3か月以内を目安に、かかりつけの内科や循環器内科、生活習慣病外来などを受診しましょう。
- これまでの健康診断結果(数年分)がわかるものを持参する。
- 家族の病歴(心筋梗塞・脳卒中・糖尿病・脂質異常症など)を整理しておく。
- 普段飲んでいる薬やサプリメント、お酒・タバコの習慣をメモしておく。
医師は、これらの情報をもとに、 「生活習慣の見直しで様子を見るのか」「すぐに薬物療法を始めるのか」「別の病気が隠れていないか」などを総合的に判断します。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 健康診断の結果通知(できれば過去数年分)
- これまで受けた検査結果(心電図、腹部エコー、脳ドックなどがあれば)
- お薬手帳(市販薬・サプリメントも含めて記録しておくと便利)
- 1〜2週間分の血圧や体重、食事内容のメモ(可能であれば)
日本の公的医療保険(健康保険)に加入している場合、自己負担は通常3割です。 初診時の診察料+血液検査(脂質、肝機能、腎機能、血糖など)で、数千円〜1万円前後が目安となりますが、検査の内容や医療機関によって異なります。 薬物療法が始まった場合も、ジェネリック医薬品を含め、月数百〜数千円程度の自己負担になることが多いですが、具体的な金額は医師・薬局で確認してください。
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よくある質問
Q1: LDLコレステロールはどれくらいなら「安全」と言えますか?
一般的な診断基準では、LDLコレステロール140mg/dL以上が「高LDLコレステロール血症」とされますが、 「どこまで下げれば安全か」は年齢や心筋梗塞・脳梗塞のリスクによって変わります1,3。
たとえば、日本動脈硬化学会のガイドラインでは、心筋梗塞の既往がある人や糖尿病などの高リスクの人では、LDLを70〜100mg/dL未満など、より低く保つことが推奨されています3,4。 自分にとっての目標値は、必ず医師と相談して決めるようにしましょう。
Q2: LDLコレステロールが高くても、症状がないなら放置しても大丈夫ですか?
LDLコレステロールが高くても、多くの場合、動脈硬化がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません。 症状が出てからでは、すでに心筋梗塞や脳梗塞などを発症してしまっている可能性があります3,10。
「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状がないうちに対策する」ことが大切です。 健康診断で異常を指摘されたら、生活習慣の見直しと医療機関での相談を早めに始めるようにしましょう。
Q3: 食事や運動だけでLDLコレステロールはどのくらい下がりますか?
個人差はありますが、飽和脂肪酸やコレステロールの摂取を控え、野菜・海藻・豆類を増やす地中海食に近い食事と、 定期的な有酸素運動を組み合わせることで、LDLコレステロールが10〜20%程度低下することが報告されています5–7。
ただし、遺伝性の家族性高コレステロール血症(FH)や、すでに心筋梗塞などを起こしている高リスクの人では、 生活習慣の改善だけでは目標値に達しないことが多く、薬物療法が重要になります。 自分のリスクに応じた目標値とアプローチを、医師と相談しながら決めることが大切です。
Q4: スタチンなどのコレステロールを下げる薬は、一度飲み始めたら一生続けないといけませんか?
スタチンは、肝臓でのコレステロール合成を抑えることでLDLを下げ、心筋梗塞や脳梗塞の予防効果が確認されている薬です4,8,9。 多くの場合、薬をやめるとLDLコレステロールは再び上がってしまうため、「長期的に続ける」ことを前提に処方されることが多くなります。
ただし、「一生必ず同じ量を飲み続けなければならない」というわけではなく、生活習慣の改善や体重減少、他の病気のコントロール状況によって、 用量を調整したり、必要に応じて減量・変更したりすることもあり得ます。 副作用が心配な場合や、飲み続けることに不安がある場合は、自己判断で中止せず、必ず処方医と相談しましょう。
Q5: 「善玉コレステロール(HDL)」が高ければ、LDLが少し高くても大丈夫ですか?
HDLコレステロールは、血管の壁からコレステロールを回収する働きがあるため、一般的に値が高いほど動脈硬化のリスクが低いとされています2,4。 しかし、HDLが高いからといって、LDLが高くても必ずしも安心とは言えません。
特に、糖尿病や喫煙、高血圧、家族歴などのリスクが重なっている場合には、HDLが高くても心血管病のリスクが上昇することが報告されています3,4。 HDL・LDL・中性脂肪など、脂質全体のバランスと、他のリスク因子を総合的に見ることが大切です。
Q6: サプリメントでLDLコレステロールを下げることはできますか?
一部のサプリメントや特定保健用食品(トクホ)には、植物ステロールや水溶性食物繊維など、LDLコレステロールの低下に役立つ成分が含まれているものがあります。 しかし、公的なガイドラインでは、これらはあくまで食事の補助的な位置づけであり、薬や生活習慣の改善を置き換えるものではありません3,5,6。
持病や服用中の薬との相互作用が懸念される場合もあるため、サプリメントの利用を検討する際には、必ずかかりつけ医や薬剤師に相談するようにしましょう。 「サプリだけで何とかしよう」と考えるよりも、まずは食事・運動・禁煙・体重管理といった基本を整えることが重要です。
Q7: 妊娠中や授乳中でもLDLコレステロールの薬は飲めますか?
多くのスタチン製剤は、妊娠中や授乳中には使用が推奨されていません。 妊娠を希望している方や、妊娠の可能性がある方は、スタチン治療を始める前に必ず医師と相談し、妊娠のタイミングや治療方針を一緒に考える必要があります3,9。
妊娠中は、生理的にコレステロールが上がりやすくなりますが、一時的な変化であることも多く、 多くの場合は生活習慣の工夫と経過観察が中心になります。 高リスクの基礎疾患がある場合などは、産婦人科と循環器内科が連携して、母体と胎児の安全を最優先にした治療方針を検討します。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
LDLコレステロールは、体にとって必要な成分でありながら、増えすぎると動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気のリスクを高める要因でもあります。 多くの場合、症状がないまま進行するため、健康診断や定期的な血液検査で「早めに気づく」ことが何より大切です。
「少し高いだけだから」と放置するのではなく、自分の年齢や家族歴、糖尿病・高血圧・喫煙歴などのリスクを含めて、 医療機関で総合的に評価してもらいましょう。 生活習慣の見直しで改善できる部分と、薬物療法が必要になる部分を見極めながら、無理なく続けられる対策を一緒に探していくことが重要です。
不安や疑問があるときは、一人で悩みを抱え込まず、かかりつけ医や専門医に相談してください。 「自分の数字を知ること」と「今日からできる小さな一歩」を積み重ねることで、将来の心臓や脳の病気のリスクを大きく減らすことができます。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、 JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、 内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。 最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
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