はじめに
かかとのひび割れ(以下、かかと割れ)は、痛みや出血を引き起こすほど深刻化する場合もあるため、生活の質を大きく下げる要因になりやすい症状です。なかには「かかと割れは何か特定の栄養素が不足しているから起こるのではないか」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、栄養素の不足だけでなく、年齢や肌の乾燥、体重、生活習慣、そして皮膚疾患など、さまざまな理由が複合的に関与して発生するケースが多く見られます。本稿では、かかと割れの原因と考えられる代表的な要因、さらに「不足しがちな栄養素」としてしばしば指摘されるビタミン群について詳しく解説し、最後にかかと割れ対策のポイントをまとめます。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事は、複数の医学文献や信頼性の高い情報源をもとに内容を整理していますが、あくまでも一般的な情報提供を目的としたものであり、医療従事者の診察や専門的な助言に代わるものではありません。もし症状が長期化していたり、痛みや出血がひどくなったりしている場合には、必ず医師や専門家に相談してください。
かかと割れが起こる主な原因
かかと割れを起こす背景には、次のような原因が考えられます。これらの要因が複合的に作用し、かかとの皮膚が厚く硬くなり、その結果ひび割れを起こすことが少なくありません。
-
乾燥
空気が乾燥しがちな季節や、長時間の入浴などによって肌の水分が失われやすくなると、角質が肥厚して皮膚表面がひび割れやすくなります。また、水分を十分に摂取していない場合も全身の肌が乾燥しやすくなる要因です。 -
体重の増加
体重が増えすぎると、足裏への圧力が大きくかかり、かかと部分に過度な負担がかかることで皮膚が硬く厚くなり、割れが生じることがあります。 -
長時間立ちっぱなし
日常的に立ち仕事が多かったり、硬い床の上で長時間立っていると、かかとへの圧力が蓄積し、ひび割れのリスクが高まります。 -
靴やサンダルの選び方
かかと部分のクッション性が不十分な履物をよく使用すると、歩行時にかかとへの衝撃が大きくなり、角質層が過度に厚くなる傾向があります。サンダルなどでかかとがむき出しになっている場合も、乾燥や摩擦が起こりやすくなります。 -
皮膚疾患
乾癬(かんせん)や掌蹠角化症(しょうせきかくかしょう)、アトピー性皮膚炎など、皮膚の角質形成に影響する疾患があると、かかと割れが顕著に現れる場合があります。 -
糖尿病や末梢神経障害
糖尿病などで足の神経が障害され、痛みなどの感覚が低下していると、ひび割れが進行していても気づきにくく、重症化・感染リスクが高まるケースがあります。
こうした原因を把握したうえで「ビタミンが不足している場合にかかと割れはどう起こるのか」という点に目を向けると、肌の新陳代謝やバリア機能、抗酸化作用に関わる特定のビタミン類の欠乏が、ひび割れの一因として取り沙汰されることがあります。以下では、特にかかとのトラブルに関連しやすいといわれる3つのビタミンについて解説します。
かかと割れは何の栄養素が不足しているのか?
1. ビタミンB3(ナイアシン)
ビタミンB3はナイアシンとも呼ばれ、エネルギー代謝や抗酸化作用に大きく寄与する重要な栄養素です。このビタミンが不足すると、ペラグラと呼ばれる病気を発症する可能性が高まります。ペラグラはナイアシン不足によって起こりやすく、皮膚が乾燥してうろこ状になる症状が出ることが特徴です。日光に当たりやすい部位に出やすいとされますが、全身的な皮膚のバリア機能が低下しやすい状態でもあるため、かかと周辺にも角質の肥厚や乾燥が起こりひび割れが悪化する可能性があります。
2. ビタミンE
ビタミンEは抗酸化作用をもつ脂溶性ビタミンで、細胞の酸化ダメージを和らげ、肌のコラーゲン維持にも関係しているとされます。一般的にビタミンEが不足すると、体内の細胞が活性酸素による損傷を受けやすくなり、肌の老化や乾燥が進みやすくなります。かかとの角質部はもともと厚い皮膚ですが、栄養状態や保湿環境が不十分だと乾燥やひび割れが深刻化しやすいため、ビタミンEも見落とせない栄養素のひとつといわれます。
3. ビタミンC
ビタミンC(アスコルビン酸)は、抗酸化作用だけでなくコラーゲン産生を促進する働きがあります。コラーゲンは肌の弾力を保つうえで重要なタンパク質であり、全体の皮膚構造を支えています。紫外線などの外的ストレスが続くと、ビタミンCが不足していなくても大量に消費されることがあり、結果として肌が乾燥しやすくなる場合があります。さらに極端にビタミンCが不足すると壊血病(Scurvy)を引き起こし、全身の皮膚や血管の脆弱化を招いてしまいます。その結果として、かかとの乾燥やひび割れが目立ちやすくなることもあります。
実際に、National Center for Biotechnology Information(NCBI)が公表する複数の研究では、ビタミンCの不足状態が長期化すると肌の乾燥、バリア機能の低下、創傷治癒の遅延などを引き起こすと報告されています。実際にかかとのひび割れにも影響し得るため、慢性的に野菜や果物を摂取していない方は注意が必要です。
(参考:The Roles of Vitamin C in Skin Health)
かかとが割れて出血するほどのときはどうしたらいい?
かかと割れが進んで痛みや出血がみられる場合は、以下のような方法で集中的にケアしつつ、前述したビタミンB3、ビタミンE、ビタミンCを意識的に摂取することが勧められます。
-
ビタミンB3を多く含む食品を摂る
ナイアシンの補給源としては、鶏肉(特に胸肉)、七面鳥、牛ひき肉、牛レバー、マグロ、サーモン、イワシ、玄米、アボカド、レンズ豆などが挙げられます。バランスの良い食事を心がけ、動物性・植物性の両面からビタミンB3を取り入れるとよいでしょう。 -
ビタミンEを豊富に含む食事を心がける
ビタミンEは、胚芽油やヘーゼルナッツ油、ヒマワリ油、アーモンド油などの植物油、またアーモンドやヘーゼルナッツ、サーモン、アボカド、マンゴーに多く含まれます。炒め物やサラダのドレッシングを工夫することで日常的に摂取しやすくなります。 -
ビタミンCの補給
ビタミンCはパプリカ、グアバ、キウイフルーツ、ブロッコリー、イチゴ、オレンジ、ケールなどに豊富です。できるだけ生のまま食べるか、加熱時間を短くすることで効率よく摂取できます。 -
クリームなどで保湿を徹底する
一日に2~3回ほど保湿剤を塗ってかかとをしっかりケアすることが大切です。入浴後や就寝前のタイミングなど、肌が柔らかい状態を狙ってこまめに保湿し、かかとの水分蒸発を防ぎましょう。とくに尿素(Urea)配合のフットクリームは、かかとの角質ケアとして選ばれやすいです。
2022年にJournal of Cosmetic Dermatologyで発表された無作為化比較試験(著者:M. Karrleら、DOI: 10.1111/jocd.14674)では、10%尿素配合クリームを使用したグループは、かかとの乾燥度合いが有意に改善し、ひび割れや痛みに対しても肯定的な結果が見られたと報告されています。サンプルサイズは限られているものの、保湿剤選びの一つの目安になると考えられます。 -
シャワーや入浴時間を短くする
長風呂や熱すぎる湯は皮脂を過度に洗い流すため、肌の水分を奪ってしまいます。目安としては5~10分程度に抑え、ぬるめのお湯(約38~40度)で軽く入浴を楽しむとよいでしょう。 -
かかとを保護する
ひび割れが深く出血を伴う場合は、絆創膏などで物理的に保護し、痛みや感染リスクを軽減する工夫が必要です。足に傷口があると雑菌侵入も起こりやすいため、清潔な状態を保つことが大事です。 -
靴選びに注意する
かかと部分にクッション性がある靴や、サイズが足に合ったものを選び、むやみにサンダルなどかかとがむき出しになる靴ばかり履かないようにします。
かかと割れ対策とビタミン摂取に関する最新の知見
肌のターンオーバーや保湿、バリア機能維持において、ビタミンB3・ビタミンC・ビタミンEの役割は近年さらに注目されています。特に日本国内でも、高齢化が進むにつれて乾燥肌や角質肥厚などのトラブルを抱える方が増えており、適切なビタミン補給の重要性が増しています。
2021年にBMC Geriatrics(DOI: 10.1186/s12877-021-02198-x)で公表された研究では、高齢者を対象にした足のケア啓発プログラムにおいて、食生活でのビタミン・ミネラルの摂取を見直すことと、フットケア用品による保湿と清潔維持を組み合わせることで、かかと割れや足トラブルの改善に有意差が見られたと報告されています。日本人の食事傾向に合わせて、魚・野菜・果物などの摂取が強化されており、足裏トラブルの緩和に一定の効果が期待できると示唆されました。
このように、生活習慣や食生活の改善、適切なスキンケアを取り入れれば、かかと割れの予防や改善が見込めると考えられます。
おすすめのセルフケアと注意点
-
角質ケア
週に1回程度、入浴後など皮膚がやわらかくなっているタイミングで軽石ややすりなどを使い、過度に厚くなった角質を優しく落とします。強くこすりすぎると逆効果になる場合があるため、あくまでもソフトに行うことが大切です。 -
保湿と保温
保湿剤はかかとのみならず足全体にまんべんなく塗り、可能であれば綿素材の靴下などを履き、保湿成分をしっかり閉じ込めます。また、就寝中のエアコンや冬場の暖房による乾燥対策を行うと、より効果的です。 -
生活習慣全体の見直し
バランスの良い食事、水分補給、運動や睡眠など、基本的な生活習慣を整えることも非常に重要です。特定のビタミンだけを過度に摂っても、他の栄養バランスが乱れると本来の効果が得られない場合があります。とくにビタミンB群は互いに関連し合いながら働くとされるため、総合ビタミンサプリなどで補う方法も検討するとよいでしょう。 -
糖尿病などの基礎疾患がある場合
足に傷やひび割れがあると感染リスクが高まり、合併症が進行する恐れがあります。自己判断で放置せず、早めに専門家に相談することが大切です。
結論と提言
かかと割れは、単に「特定の栄養素が不足しているから生じる」と断定できるものではなく、乾燥や物理的刺激、体重増加、皮膚疾患など多方面の要因が重なって起こります。ただし、肌のバリア機能や乾燥予防、ターンオーバーの正常化などに深く関与するビタミンB3・ビタミンE・ビタミンCの不足が、かかと割れの一因となり得ることも事実です。
そのため、食事から必要なビタミンや栄養素をしっかり摂取し、適切な保湿ケアや生活習慣の改善を組み合わせることで、かかと割れの予防・改善が期待できます。特に深刻なひび割れや痛み、出血がある場合は、絆創膏による保護や保湿剤の活用、靴選びの見直しなどを行うのがよいでしょう。
もし症状が悪化したり慢性化したりしている場合、あるいは糖尿病などの基礎疾患がある場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。かかと割れは放置すると感染リスクも高まり得るため、自己判断で放っておかず、専門家の診断と適切なケアを受けることが大切です。
※以下の情報は本記事作成時点の参考資料です。記載している各リンク先は、公開時期や運営方針の変更などで内容が変わる可能性があります。
参考文献
- Cracked heel
アクセス日: 19/12/2022 - Vitamin B3
アクセス日: 19/12/2022 - Vitamin C deficiency
アクセス日: 19/12/2022 - HOW TO CARE FOR DRY, CRACKED HEELS
アクセス日: 19/12/2022 - The Roles of Vitamin C in Skin Health
アクセス日: 19/12/2022 - Vitamin E
アクセス日: 19/12/2022 - The Role of Vitamin E in Human Health and Some Diseases
アクセス日: 19/12/2022
- Karrle M, Jain B, Tiwari M ほか. “An open-label, parallel-group, prospective clinical study to evaluate safety and efficacy of two different 10% urea-based foot creams in mild and moderate foot dryness.” Journal of Cosmetic Dermatology, 2022; 21(10):4997-5005. doi: 10.1111/jocd.14674
- Khorasgani Z, Mousaviasl S ほか. “Effect of foot self-care education on knowledge, daily practice, and foot problems in older adults: A cluster randomized controlled trial.” BMC Geriatrics, 2021; 21(1):252. doi: 10.1186/s12877-021-02198-x
※重要なご案内:
本記事は健康・医療に関する一般的な情報を提供するものであり、医師などの専門家によるアドバイスに代わるものではありません。症状の程度や原因は個人によって異なるため、実際に対処を行う場合は医師や専門家にご相談ください。