てんかんの症状完全ガイド:発作タイプ別の見分け方から正確な診断まで
脳と神経系の病気

てんかんの症状完全ガイド:発作タイプ別の見分け方から正確な診断まで

ある日突然、ご自身や大切な人に起きた奇妙な感覚や動き。「もしかして、てんかん?」という、言葉にしがたい不安の始まりかもしれません。てんかんの症状は非常に多様で、情報が複雑に絡み合っているため、多くの方が混乱し、孤独を感じています。JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会は、その不安に寄り添い、確かな光を当てることを目指します。この記事では、国際てんかん連盟(ILAE)1や世界保健機関(WHO)2といった国際的な権威機関、そして日本の『てんかん診療ガイドライン2018』3など、最高レベルの科学的根拠のみに基づき、てんかんの症状に関するすべてを、どこよりも詳しく、そして分かりやすく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの疑問や不安が整理され、希望を持って次の一歩を踏み出すための「羅針盤」を手にしていることをお約束します。


この記事の科学的根拠

本記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている、最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したものです。

  • 国際てんかん連盟 (ILAE): 本記事における発作の分類は、ILAEが2017年に発表した国際基準に全面的に基づいています1。これは、現代のてんかん診療における世界的なゴールドスタンダードです。
  • 日本神経学会: 日本国内における診断、検査、治療に関する記述は、同学会が発行する『てんかん診療ガイドライン2018』およびその追補版に準拠しています34。これにより、日本の医療現場の実情に即した情報を提供しています。
  • 厚生労働省 (MHLW): 日本国内の患者数や国のてんかん対策に関する公式データは、厚生労働省の発表に基づいています5
  • 世界保健機関 (WHO): てんかんが世界的に重要な公衆衛生上の課題であるという位置づけは、WHOの見解を引用しています2

要点まとめ

  • てんかんは「100人に1人」が経験するありふれた脳の疾患であり、症状は全身けいれんだけでなく、一瞬意識が途切れる、奇妙な感覚を覚えるなど非常に多様です。
  • 最新の国際分類(ILAE 2017年分類)では、発作は脳の一部から始まる「焦点起始発作」と、脳全体で同時に始まる「全般起始発作」に大別されます1
  • 正確な診断には、発作の具体的な様子(前兆、発作中の動き、意識の状態、持続時間など)を家族などが観察し、医師に正確に伝えることが極めて重要です6
  • 診断は主に詳細な問診と脳波検査(EEG)、必要に応じてMRIなどの画像診断を組み合わせて行われます7
  • 適切な治療により、約7割の患者さんで発作が抑制可能であり8、運転免許や就労に関しても、法律や支援制度に基づいた道筋が整備されています9

もしかして、てんかん?- 不安の第一歩と正しい理解

「てんかん」と聞くと、多くの人は突然倒れて全身をけいれんさせる、といった劇的な場面を想像するかもしれません。しかし、それはてんかんの症状のほんの一面に過ぎません。てんかんの本質は、脳の神経細胞(ニューロン)が一時的に過剰に興奮し、いわば「脳の電気的な嵐」が発生する状態です10。この電気的な興奮が脳のどの部分で起こるかによって、実にさまざまな症状が現れます。

そして最も重要なことは、てんかんは決して特別な病気ではないということです。厚生労働省の資料などでは、日本における有病率は約100人に1人とされ、推定患者数は約100万人にのぼると言われています911。これは、学校のクラスや職場の部署に一人はいてもおかしくない、ごくありふれた疾患であることを意味します。しかし、厚生労働省の令和2年の患者調査では把握されている患者数が約42万人と、推定患者数との間に大きな乖離があります12。この差は、まだ診断されていない方や、てんかん以外の病名で治療を受けている方の存在を示唆しており、正しい知識の普及がいかに重要であるかを示しています。

てんかんに対する古いイメージや誤解を解き、多様な症状の可能性を知ることが、不安を解消し、適切な対応への第一歩となります。


てんかん発作の「新・分類法」:ILAE 2017年分類がなぜ重要か

てんかんの症状を正しく理解するためには、信頼できる「地図」が必要です。現代のてんかん診療において、その世界標準の地図となるのが、国際てんかん連盟(ILAE)が2017年に発表した発作の分類法です1。この分類は、症状を正確に記述し、原因を推測し、最終的に最も効果的な治療法を選択するための基礎となるため、極めて重要です。日本の『てんかん診療ガイドライン2018』も、この国際分類に完全に準拠しています3

ILAE 2017年分類の最も重要なポイントは、発作が「脳のどこから始まるか(起始)」に注目している点です。これにより、発作は大きく3つに分けられます13

  1. 焦点起始発作(Focal Onset Seizure): 脳の限られた一部分から電気的な興奮が始まるタイプ。以前は「部分発作」と呼ばれていました。
  2. 全般起始発作(Generalized Onset Seizure): 脳の両半球の広範囲から、ほぼ同時に電気的な興奮が始まるタイプ。
  3. 起始不明発作(Unknown Onset Seizure): 発作の始まり方がはっきりと分からない場合。

この「どこから始まるか」という視点は、治療薬の選択に直結するため、臨床現場で非常に重視されます。これから、この分類法に沿って、具体的な症状を詳しく見ていきましょう。


「焦点起始発作(部分発作)」の多彩な症状と見分け方のポイント

焦点起始発作は、脳の特定の領域から興奮が始まるため、その領域が司る機能に応じた、非常に多彩な症状が現れます。発作中に意識が保たれているかどうかで、さらに2つのタイプに分けられます1

意識が保たれる発作(焦点意識保持発作)

このタイプでは、発作中も意識ははっきりしており、周囲の状況を認識できます。そのため、本人は発作中の奇妙な体験を後から詳しく説明することができます。症状は、興奮が起きる脳の部位によって様々です。

  • 運動症状: 手や足、顔の一部が本人の意思とは関係なくリズミカルにピクピク動く(間代)、あるいは突っ張る(強直)など。
  • 感覚症状: 実際にはないはずの光がチカチカ見える(視覚症状)、金属のような変な味がする(味覚症状)、焦げたような臭いがする(嗅覚症状)、体の一部がしびれる、チクチクするといった異常な感覚を覚える。
  • 自律神経症状: 胃から何かが込み上げてくるような感覚、吐き気、動悸、鳥肌が立つ、顔が青ざめる、といった症状が現れます。
  • 精神症状: 初めての場所なのに来たことがあるように感じる「既視感(デジャヴ)」、理由のない恐怖感や不安感、あるいは幸福感を覚えるなど、感情や思考の変化として現れます。

これらの症状は、本人にしか分からない内的な体験であるため、周囲からは気づかれにくいことがあります。「前兆(アウラ)」と呼ばれることもありますが、これ自体が発作の始まりです。

意識が損なわれる発作(焦点意識減損発作)

このタイプでは、発作中に意識が朦朧としたり、完全に途切れたりします。本人は発作中の出来事を覚えていないことがほとんどです。周囲から見ると、呼びかけに反応しなくなったり、一点をぼんやりと見つめたりします。この発作で特に重要なのが「自動症(オートマティズム)」と呼ばれる行動です1415

  • 自動症の例:
    • 口をもぐもぐさせる、舌なめずりをする
    • 意味もなく服をまさぐる、ボタンをいじる
    • 手をゴシゴシこすり合わせる
    • 無目的に歩き回る、周囲をキョロキョロ見回す

これらの行動は一見すると奇妙な癖のように見えるかもしれませんが、診断の非常に重要な手がかりとなります。発作は通常30秒から2〜3分程度続き、発作後はしばらくぼんやりしていることが多いです。

焦点発作から全身けいれんへ(焦点から両側への強直間代発作)

脳の一部から始まった焦点発作が、興奮の波として脳全体に広がり、二次的に全身けいれん(強直間代発作)に移行することがあります915。この場合、発作の始まり(例えば、本人が感じた前兆や、家族が目撃した片方の手足のピクつきなど)を注意深く観察することが、焦点起始であることを特定する鍵となります。


「全般起始発作」の典型的な症状と見分け方のポイント

全般起始発作は、脳の両半球の広い範囲が最初から同時に興奮するため、多くの場合、発作の開始と同時に意識を失います。いくつかの代表的なタイプがあり、症状は大きく異なります。

強直間代発作(いわゆる大発作)

一般的に「てんかん発作」として最もよく知られているタイプです。以下の経過をたどることが典型的です10

  1. 突然の意識消失: 前触れなく突然意識を失い、叫び声やうめき声をあげて倒れることがあります。
  2. 強直期(約10〜20秒): 全身の筋肉が硬直し、体を強く突っ張らせます。呼吸が止まり、顔色が悪くなることがあります。
  3. 間代期(約30〜60秒): 手足をガクンガクンとリズミカルに曲げ伸ばしします。この際に舌を噛んだり、失禁したりすることがあります。
  4. 発作後: けいれんが収まると、深い眠りに入ることが多く(発作後朦朧状態)、目覚めた後も頭痛や筋肉痛、だるさが残ることがあります。本人は発作中の記憶がありません。

欠神発作(いわゆる小発作)

主に小児期に見られる特徴的な発作で、以下のような症状が見られます10

  • 数秒から数十秒間、突然動きが止まり、一点を凝視してボーッとする。
  • 会話の途中であれば、話が途切れる。
  • 呼びかけに全く反応しない。
  • 発作は突然終わり、何事もなかったかのように直前の行動に戻る。

本人も周囲も発作だと気づきにくく、学校などで「集中力がない」「不注意だ」と誤解されてしまうことが少なくありません。1日に何十回も起こることもあります。

ミオクロニー発作

自分の意思とは無関係に、手、足、肩などの筋肉が一瞬「ビクッ」と収縮する発作です10。電気が走ったように見えることもあります。特に朝の起床後によく見られ、食事中に箸を飛ばしてしまったり、歯磨き中に歯ブラシを落としてしまったりすることで気づかれることがあります。意識は通常保たれています。

脱力発作

突然、全身の筋肉の緊張が失われ、ぐにゃりと崩れるように倒れる発作です。持続時間は1〜2秒と非常に短いですが、何の前触れもなく倒れるため、頭や顔に大怪我をする危険性が非常に高い、注意が必要な発作です。


正確な診断への道筋:専門医は何を調べ、どう判断するのか

てんかんの診断は、パズルのピースを一つひとつ集めて全体像を明らかにしていくような作業です。専門医は、様々な情報を統合して慎重に判断を下します。そのプロセスを知ることは、患者さんやご家族が安心して医療を受けるための助けとなります。

最も重要な「問診」:医師に伝えるべきこと【チェックリスト付】

日本てんかん学会の診断ガイドラインでも強調されているように、てんかん診断において最も重要な情報は、発作そのものの詳細な状況です76。しかし、本人は発作中の記憶がないことが多いため、家族や同僚など、発作を目撃した人からの客観的な情報が不可欠となります。可能であれば、スマートフォンなどで発作の様子を動画で撮影しておくと、非常に有力な診断材料となります。

医師に伝えるべきポイントを、以下のチェックリストにまとめました。受診前に整理しておきましょう。

【医師に伝えるための発作観察チェックリスト】

  • いつ?: 日付と時間。
  • どこで?: 自宅の寝室、学校の教室、職場など。
  • 何をしていた時?: 睡眠中、食事中、テレビを見ていた時、仕事中など。
  • 発作の直前(前兆): 何か変わった感覚(既視感、吐き気など)を訴えていたか。様子がおかしかったか。
  • 発作の始まり:
    • 突然倒れたか、それとも徐々に意識が遠のいたか。
    • 体のどの部分から動きが始まったか(例:右手がピクピクし始めた)。
    • 視線はどこを向いていたか。
  • 発作中の様子:
    • 意識の状態:呼びかけに反応があったか。目は開いていたか、閉じていたか。
    • 体の動き:全身が硬直したか。手足はガクガクしていたか(左右対称か)。自動症(口をもぐもぐ、服をいじるなど)はあったか。
    • 顔色や呼吸:顔色は青ざめていたか。呼吸は止まっていたか。
    • その他の症状:舌を噛んだか。失禁はあったか。
  • 持続時間: 発作全体の時間はどのくらいだったか(秒単位、分単位で)。
  • 発作後:
    • すぐに意識が戻ったか、それともしばらくぼーっとしていたか(朦朧状態)。
    • 発作後にすぐ眠ってしまったか。
    • 頭痛や体の痛みを訴えていたか。
    • 手足の麻痺はあったか。
    • 発作中の記憶はあったか。

脳波検査(EEG):脳の電気活動を捉える

脳波検査は、頭皮に電極を貼り付け、脳の微弱な電気活動を波形として記録する検査です7。てんかんを持つ人の脳では、発作がない時でも「てんかん性放電(棘波、鋭波など)」と呼ばれる特徴的な異常波が見られることがあります。この異常波を捉えることが、診断の客観的な証拠となります。検査自体に痛みや苦痛は全くありません。特に睡眠中は異常波が出やすいため、検査中に眠ってもらうことも重要です。

画像診断(MRI・CT):脳の構造的な原因を探る

MRIやCTなどの画像検査は、てんかんの原因となりうる脳の「形」の異常(構造的異常)を見つけるために行われます7。例えば、脳腫瘍、過去の脳卒中の痕、出生時の脳損傷、あるいは海馬硬化(焦点てんかんの代表的な原因)などです。原因が特定できれば、治療方針の決定に大きく役立ちます。特にMRIは、より詳細な脳の構造を調べることができるため、てんかんの精密検査には不可欠です。

これらの問診、脳波検査、画像診断の結果を総合的に判断し、ILAEの分類に沿って発作のタイプを特定し、最終的にてんかんの診断が下されます。場合によっては、国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センターのような専門機関で、数日間にわたって脳波と行動を同時に記録する「長時間ビデオ脳波モニタリング」などのより詳細な検査が行われることもあります16


日本におけるてんかんとの向き合い方:運転、就労、社会の理解

てんかんの診断は、ゴールではなく、病気と上手に向き合っていくためのスタートラインです。特に日本では、自動車の運転や就労といった、生活に直結する現実的な課題が存在します。正しい知識を持つことは、これらの課題を乗り越える上で不可欠です。

自動車の運転免許について

てんかんを持つ方の運転免許については、道路交通法で具体的な規定が設けられています9。かつては一律に免許が取得できない時代もありましたが、現在は病状に応じて個別に判断されるようになっています。主な要件は以下の通りです。

  • 発作が原因で意識障害や運動障害をもたらす恐れがある場合でも、「過去2年間、発作が起きておらず、今後も一定期間、発作が再発する恐れが低いと医師が診断した場合」など、特定の条件を満たせば免許の取得・更新が可能です。
  • ただし、睡眠中に限って発作が起こる場合など、条件は個々の状況によって細かく定められています。
  • 免許の取得・更新時には、公安委員会への病状の正確な申告が義務付けられています。

最も重要なのは、自己判断で運転の可否を決めるのではなく、必ず主治医と相談し、法的な要件を遵守することです。適切な治療で発作をコントロールすることが、安全な運転への第一歩となります。

仕事(就労)とキャリアについて

てんかんを持つことは、職業選択や職場での人間関係において、様々な課題を生む可能性があります。民間のある調査では、てんかん患者は無職やパート・アルバイトの割合が高いというデータもあり、就労が大きな課題であることが示されています17

職場に病状を伝えるかどうか(告知・ディスクロージャー)は、非常にデリケートな問題です。告知することで配慮を得やすくなるメリットがある一方、偏見に繋がる危険性も否定できません。しかし、一人で悩む必要はありません。日本には、てんかんを持つ方の就労を支援する公的な仕組みがあります918

  • ハローワークの専門援助部門: 障害のある方の就職を専門にサポートする窓口があり、専門の相談員が個々の状況に合わせた求人紹介や職業相談に応じてくれます。
  • 就労移行支援事業所: 一般企業への就職を目指す障害のある方に対し、職業訓練や職場探し、就職後の定着支援などを提供するサービスです。

これらの支援機関を活用し、自分の病状や特性を理解した上で、適したキャリアを築いていくことが可能です。

社会的偏見という「見えない壁」を乗り越えるために

残念ながら、日本の社会には、てんかんに対する根強い偏見や誤解が未だに存在します1920。就労や結婚の場面で、不当な差別を経験したという声も聞かれます。この「見えない壁」は、病気そのもの以上に患者さんやご家族を苦しめることがあります。

この問題を解決する唯一の方法は、社会全体がてんかんに関する「正しい知識」を持つことです。てんかんが、適切な治療でコントロール可能な脳の疾患であること、発作の症状は多様であること、そして決して特別な病気ではないことを、一人ひとりが理解すること。この記事が、そのための小さな一助となることを願っています。正しい知識は、患者さん自身が自信を持って社会参加するための鎧となり、周囲の人々が温かい理解を示すための架け橋となるのです。


よくある質問

発作が1回起きただけでも、てんかんと診断されるのですか?

はい、その可能性があります。ILAEの実践的定義によれば、明らかな原因がない発作(非誘発発作)が1回起きた場合でも、その後の再発の危険性が高いと評価されれば(例えば、脳波で明らかな異常が見つかるなど)、てんかんと診断されることがあります21。従来は「2回以上の非誘発発作」が基準でしたが、早期治療の利益を考慮して、より柔軟な診断が可能になっています。

てんかんは遺伝するのでしょうか?

てんかんの中には遺伝的要因が関与するものもありますが、大部分のてんかんは直接的に親から子へ遺伝するものではありません。遺伝的要因が強いとされる一部のてんかん症候群(例:ドラベ症候群)もありますが、多くの場合は複数の遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。ご家族にてんかんの方がいても、過度に心配する必要はありませんが、気になる場合は主治医にご相談ください。

てんかんは子どもに多い病気ですか?

てんかんは、発症率で見ると乳幼児期と高齢期に2つのピークがあります15。子どもの頃に発症するタイプが多いのは事実ですが、近年は高齢化社会を背景に、脳卒中や認知症などをきっかけとして高齢で初めて発症する「高齢発症てんかん」が増加しており、どの年齢層でも起こりうる病気として認識されています。

適切な治療を受ければ、てんかんは治りますか?

「完治」という言葉の定義にもよりますが、最新の系統的レビューによれば、適切な薬物治療によって、新たに診断されたてんかん患者さんの約7割で発作が完全に抑制される(発作がなくなる)と報告されています8。また、数年間発作がなく、脳波の異常も消失した場合、医師との相談の上で薬の中止を検討することもあります。多くの人にとって、てんかんは発作をコントロールし、通常の社会生活を送ることが可能な疾患です。

結論

てんかんの症状は、全身けいれんから僅かな感覚の変化まで、驚くほど多様です。その多様性こそが、診断を難しくし、多くの人々の不安を掻き立てる根源となっています。しかし、この記事で見てきたように、私たちには国際基準という信頼できる「地図」があります。その地図を手に、発作の様子を注意深く観察し、専門医に正確に伝えることが、正しい診断と適切な治療への確実な一歩となります。

重要なのは、てんかんが「特別な病気」でも「不治の病」でもないという事実です。適切な治療によって多くの発作はコントロール可能であり、社会には運転や就労を支えるための制度も整っています。最も大きな壁は、病気そのものではなく、社会や自分自身の心の中にある誤解や偏見かもしれません。

もし、あなたやあなたの大切な人がてんかんの可能性で悩んでいるなら、最初の、そして最も重要な一歩は、脳神経内科やてんかんを専門とする医師に相談することです。この記事で得た知識が、あなたの不安を和らげ、健康と希望を取り戻すための力強い羅針盤となることを、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会一同、心から願っています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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