なかなか消えない青あざ、原因は？放置は危険？医師が教える正しい見分け方と最速対処法

青あざ（皮下出血）とは何か？色の変化の謎を解明

青あざは、医学的には「皮下出血（ひかしゅっけつ）」と呼ばれ、皮膚の下にある毛細血管が何らかの原因で破れ、血液が皮下組織に漏れ出た状態を指します。⁵ この漏れ出た血液が皮膚を通して見えるため、特徴的な色調の変化が現れます。最初は赤紫色っぽく見え、その後、時間の経過とともに青紫色、緑色、そして黄色へと変化し、やがて薄くなって消えていくのが一般的です。⁵
この色の変化は、血液中のヘモグロビンが分解される過程で起こります。受傷直後は血液が酸素を多く含んでいるため赤っぽく見えます。酸素を失うと暗赤色から青紫色に変わります。その後、ヘモグロビンがビリベルジン（緑色）に、さらにビリルビン（黄色）へと分解され、最終的には体内に吸収されていきます。⁵ この一連の変化を理解することは、青あざの治癒過程を把握する上で役立ちます。

青あざの主な原因：なぜできるのか？

青あざができる原因は多岐にわたります。最も一般的なのは、身体をどこかにぶつけることによる「打撲（だぼく）」ですが、それ以外にも様々な要因が考えられます。

1. 打撲・外傷によるもの

日常生活での転倒、スポーツ中の衝突、事故など、外部からの物理的な衝撃によって皮下の血管が損傷し、青あざが生じます。これは最も一般的な原因であり、特に活動的な子供⁴やスポーツ選手によく見られます。打撲の強さや部位によって、青あざの大きさや治癒期間は異なります。重度の打撲では、骨にまで影響が及ぶ「骨挫傷（こつざしょう）」を伴うこともあります。¹⁶

2. 加齢による皮膚の変化

高齢者³では、さほど強くぶつけたつもりがなくても青あざができやすくなることがあります。これは、加齢に伴い皮膚が薄く、弱くなる「皮膚の菲薄化（ひふのひはくか）」や、血管を支える結合組織や脂肪組織が減少するためです。¹⁴ 特に腕や手の甲など日光にさらされやすい部位にできる青あざは「老人性紫斑（ろうじんせいしはん）」または「日光性紫斑（にっこうせいしはん）」と呼ばれ、毛細血管が非常にもろくなっていることが原因です。^{14 17} 最近では、このような加齢による皮膚の脆弱化を「スキンフレイル」^{6 7}と呼び、注意が喚起されています。

3. 薬の副作用

特定の薬剤の使用が、青あざができやすくなる原因となることがあります。⁸

• 抗凝固薬・抗血小板薬：血液をサラサラにする薬（ワーファリン、アスピリン、クロピドグレルなど）は、血液が固まりにくくなるため、わずかな衝撃でも内出血しやすくなります。^{8 18}
• 非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）：イブプロフェンやロキソプロフェンなどの痛み止めも、種類によっては血小板の働きを抑え、出血しやすくする可能性があります。
• ステロイド薬：長期間の使用は皮膚や血管壁を弱くし、青あざができやすくなることがあります。

これらの薬を服用中の方は、青あざができやすいことを理解し、主治医に相談することが大切です。厚生労働省と医薬品医療機器総合機構（PMDA）は、薬剤による血小板減少症¹⁹や出血傾向²⁰に関する注意喚起を行っています。

4. 栄養不足

特定の栄養素の不足も、血管壁を弱くしたり、血液凝固機能を低下させたりすることで、青あざの原因となり得ます。

• ビタミンC：コラーゲンの生成に不可欠で、血管壁を丈夫に保つ役割があります。不足すると血管がもろくなり、出血しやすくなります（壊血病の症状の一つとして紫斑が現れることがあります）。^{9 21}
• ビタミンK：血液凝固因子の生成に関与しており、不足すると血が止まりにくくなり、青あざができやすくなります。^{10 22}

5. 病気が原因となる青あざ

時に、青あざは単なる打撲ではなく、何らかの病気のサインであることがあります。以下のような病気が背景にある可能性も考慮する必要があります。

• 血小板減少症（けっしょうばんげんしょうしょう）：血液を固める役割を持つ血小板が減少する病気です。特発性血小板減少性紫斑病（ITP）²³などが代表的で、明らかな原因なく青あざ（紫斑）や点状出血が現れます。日本ではITPの推定有病者数は10万人あたり約21.7人（2017年）、年間新規患者数は10万人あたり約2.16人（2013年）と報告されています。²³ 厚生労働省/PMDAは血栓性血小板減少性紫斑病（TTP）に関する情報も提供しています。²⁴
• 白血病（はっけつびょう）：血液のがんの一種で、正常な血液細胞が作られなくなるため、血小板も減少し、出血傾向（青あざ、鼻血、歯肉出血など）が見られることがあります。¹¹
• 肝臓病（かんぞうびょう）：肝臓は血液凝固因子を生成する重要な臓器です。肝機能が低下すると、これらの因子の生成が不十分になり、血が止まりにくく、青あざができやすくなります。
• アレルギー性紫斑病（IgA血管炎）：主に子供に見られる血管の炎症で、足やお尻に特徴的な紫斑（盛り上がりのある青あざ）が出現します。^{25 26} 日本皮膚科学会が情報を提供しています。²⁶
• 単純性紫斑（たんじゅんせいしはん）：特に若い女性に見られることがあり、明らかな原因がないのに下肢などに小さな青あざが多発する状態です。多くは心配いりませんが、他の病気との鑑別が必要です。²⁷
• 血友病などの血液凝固異常症：遺伝的に特定の血液凝固因子が欠乏または機能不全であるため、出血が止まりにくい病気です。

これらの病気が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが極めて重要です。

危険な青あざの見分け方：いつ病院へ行くべきか？

ほとんどの青あざは自然に治癒しますが、中には医療機関での診察が必要な危険なサインを示しているものもあります。以下のような場合は、自己判断せずに医師に相談しましょう。¹

• ぶつけた覚えがないのに、頻繁に青あざができる、または広範囲に大きな青あざができる。^{27 28}
• 青あざが3～4週間以上たってもなかなか消えない、または徐々に大きくなる。¹
• 青あざと共に、原因不明の発熱、体重減少、全身の倦怠感が続く。¹
• 鼻血、歯肉からの出血、血尿、血便など、他の部位からの出血傾向が見られる。¹
• 爪の下に青あざ（血腫）ができ、強い痛みを伴う。
• 非常に強い痛みや腫れを伴う青あざで、骨折の可能性がある場合。
• 抗凝固薬や抗血小板薬など、血液をサラサラにする薬を服用中に、これまでと異なるパターンの青あざが多発するようになった場合。^{8 18}

これらの症状が見られる場合は、かかりつけ医、または症状に応じて皮膚科¹⁵、血液内科、整形外科などの専門医を受診することを強くお勧めします。

年齢や状況に応じた青あざへの特別な配慮

青あざは誰にでもできますが、特に高齢者やお子様の場合、注意すべき点や背景が異なることがあります。

1. 高齢者の青あざ：「老人性紫斑」と「スキンフレイル」

高齢者³では、軽くぶつけただけでも腕や手の甲、すねなどに青あざ（紫斑）ができやすくなることがあります。これは「老人性紫斑（ろうじんせいしはん）」¹⁴と呼ばれ、主な原因は加齢による皮膚の菲薄化（ひふのひはくか）、血管壁の脆弱化、そして血管を支える皮下脂肪や結合組織の減少です。¹⁷ 日光への長年の曝露も皮膚の老化を促進し、紫斑をできやすくします（日光性紫斑）。¹⁷ 日本皮膚科学会も紫斑に関する情報を提供しており、老人性紫斑はその一種として認識されています。²⁹
近年、このような加齢に伴う皮膚のバリア機能低下や脆弱化は「スキンフレイル」^{6 7}として注目されており、感染症のリスク増加やQOL（生活の質）低下にも繋がるため、適切なスキンケア（保湿など）や保護が重要となります。スキンフレイルに関する詳しい解説は、持田ヘルスケア株式会社などの情報源で得られます。⁶ 老人性紫斑自体は、通常痛みもなく、数週間で自然に消えることが多いですが、頻繁に繰り返す場合や他の出血傾向が見られる場合は、薬剤の影響や基礎疾患の可能性も考慮し、医師に相談することが推奨されます。¹⁴ 消費者庁の調査によると、高齢者の家庭内事故では転倒による打撲が多く報告されており³⁰、これも青あざの一因となります。

2. 子供の青あざ：活発さの証か、注意すべきサインか

子供、特に幼児期は非常に活発で、よく転んだりぶつけたりするため、手足などに青あざができることは日常的です。^{4 31} これらは成長過程の一環として自然なものが多いですが、いくつか注意すべき点があります。横浜内科・在宅クリニックなどの医療機関も子供のあざに関する情報を提供しています。³²

• 青あざの場所と数：膝や肘、すねなど、活発に動くことでぶつけやすい場所以外（例えば、背中、お腹、顔の特定の部位など）に頻繁に青あざができる場合や、全身に多数の青あざが見られる場合は注意が必要です。
• 説明のつかない青あざ：どのようにできたか説明がつかない青あざが多い場合や、青あざの形状が不自然な場合（例えば、手形やベルトの跡など）は、残念ながら虐待の可能性も考慮に入れる必要があります。³³
• 他の症状：青あざ以外に、頻繁な鼻血、歯肉出血、関節の腫れや痛み、原因不明の発熱などが伴う場合は、アレルギー性紫斑病（IgA血管炎）^{25 26}や血液疾患（血友病、白血病¹¹、血小板減少症²³など）の可能性も考えられます。

心配な場合は、小児科医に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。必要に応じて、専門医への紹介や検査が行われます。

青あざができた時の応急手当と家庭でのケア

青あざができた直後の適切な応急手当は、治癒を早め、症状を軽減するのに役立ちます。³⁴

1. RICE処置：基本の応急手当

打撲による青あざの応急手当の基本は、RICE（ライス）処置です。¹² オムロン ヘルスケア株式会社などもこの処置の重要性を解説しています。³⁵

• Rest（安静）：負傷した部位をできるだけ動かさず、安静にします。
• Ice（冷却）：ビニール袋に入れた氷や冷却パックをタオルで包み、患部に20～30分当てて冷やします。⁵ これを数時間おきに、受傷後24～48時間程度行うことで、内出血や腫れを抑えます。直接氷を皮膚に当てないように注意しましょう。あい鍼灸院・接骨院のウェブサイトでも同様の解説があります。³⁶
• Compression（圧迫）：伸縮性のある包帯などで患部を軽く圧迫することで、内出血や腫れの広がりを抑えます。ただし、締めすぎると血行が悪くなるため注意が必要です。
• Elevation（挙上）：負傷した部位を心臓より高い位置に保つことで、内出血や腫れを軽減します。特に手足の青あざに有効です。⁵

2. その後のケアと市販薬の活用

受傷後48時間程度が経過し、急性期の炎症が落ち着いたら、今度は温めることで血行を促進し、吸収を早めることができます。³⁶ 蒸しタオルや入浴で患部を温めましょう。また、痛みが強い場合は、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を使用できます。¹ アスピリンや一部の非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）は血液を固まりにくくする作用があるため、医師の指示がない限り、自己判断での使用は慎重にしましょう。
市販薬としては、ヘパリン類似物質¹³を含む塗り薬が、血行促進や保湿効果により青あざの治癒を助けることがあります。これらは「ヒルドイド」という名称で医療用医薬品としても知られていますが、同等成分の市販薬も存在します。ある研究では、ヘパリンおよびヘパリン類似物質含有製品が静脈疾患の治療に有効であることが示されており、その抗血栓作用や抗炎症作用が青あざにも応用できると考えられます。³⁷ また、伝統的にアルニカ³⁸などのハーブ由来の製品も、青あざや痛みの軽減に使われることがあります。

医療機関での診断と治療法

ほとんどの青あざは自然に治癒しますが、原因が不明な場合、症状が重い場合、または基礎疾患が疑われる場合は、医療機関での適切な診断と治療が必要です。¹
医師はまず、問診（いつから、どのようにして、症状の経過、既往歴、服用中の薬など）と視診（青あざの部位、大きさ、色調、数など）を行います。必要に応じて、血液検査（血小板数、凝固機能など）²³や画像検査（X線、超音波など）が行われ、骨折の有無や内臓損傷、基礎疾患の特定を進めます。
治療は原因によって異なります。

• 単純な打撲：上記のRICE処置や対症療法が中心となります。
• 薬剤性の場合：原因となっている可能性のある薬剤の中止や変更を検討します（自己判断せず必ず主治医に相談）。^{8 19 20}
• 栄養不足の場合：食事指導やサプリメントによるビタミンC^{9 21}やビタミンK^{10 22}などの栄養補給が行われます。
• 基礎疾患が原因の場合：それぞれの病気（特発性血小板減少性紫斑病²³、白血病¹¹、肝臓病、IgA血管炎^{25 26}など）に対する専門的な治療が行われます。
• 漢方薬：打撲や内出血に対して、治打撲一方（ぢだぼくいっぽう）^{39 40 41}や桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん）などの漢方薬が処方されることもあります。これらは血行を改善し、炎症を抑える効果が期待されます。Hijikata Yらの研究では、治打撲一方が打撲や捻挫の症状を緩和することが示されています。⁴⁰
• レーザー治療：一部の美容皮膚科などでは、青あざ（特に長引くものや色素沈着）に対してNd:YAGレーザー⁴²などを用いた治療が行われることもありますが、適応は限られます。

受診する診療科は、一般的な青あざであればまず皮膚科¹⁵、骨折や重度の打撲が疑われれば整形外科¹⁶、血液疾患が疑われる場合は血液内科となります。かかりつけ医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうのも良いでしょう。

青あざの予防策：日常生活でできること

完全に青あざを防ぐことは難しいですが、日常生活でいくつかの点に注意することで、リスクを減らすことができます。

• 転倒予防：特に高齢者やお子様の場合、住環境を整え（段差をなくす、滑りにくい床材にする、手すりを設置するなど）、転倒しにくい環境を作ることが重要です。³⁰
• 保護具の使用：スポーツをする際は、適切なプロテクターやサポーターを使用し、衝撃から身体を守りましょう。
• バランスの取れた食事：血管壁を丈夫にするビタミンC^{9 21}や、血液凝固に関わるビタミンK^{10 22}などをバランス良く摂取しましょう。
• 適切なスキンケア：特に高齢者の方は、保湿を心がけ、皮膚の乾燥を防ぐことで、スキンフレイル^{6 7}の進行を遅らせ、皮膚のバリア機能を保つことが大切です。
• 薬剤の確認：服用中の薬で青あざができやすくなっている場合は、主治医に相談し、適切なアドバイスを受けましょう。⁸

よくある質問

結論

青あざは、多くの場合は一時的なもので心配ありませんが、その背景には様々な原因が潜んでいる可能性があります。「たかが青あざ」と軽視せず、その色や大きさ、でき方、伴う症状などを注意深く観察することが大切です。特に、ぶつけた記憶がないのに頻繁にできる、なかなか消えない、あるいは他の気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切なアドバイスと治療を受けるようにしましょう。この記事が、皆様の青あざに対する正しい理解を深め、健康維持の一助となることを心より願っております。