喉の痛みを自宅で治す完全ガイド：即時実践できる7つのセルフケア、市販薬の科学的選び方から危険なサインまで徹底解説

本記事は、日本の生活者が直面する「喉が痛い、どうすればいいの？」という疑問に対し、信頼性が高く、実践的で網羅的な情報を提供することを目的として、JapaneseHealth.org（JHO）編集部が作成しました。本稿で紹介する内容は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会などの専門学会が発行する診療ガイドライン¹²、厚生労働省などの公的機関の指針³、そして国際的に権威のある医療研究⁴に基づき、一般の方にも分かりやすい形に整理したものです。

なお、JHO編集部では、公的機関や専門学会、査読付き論文などの情報をもとに、AIツールも参考にしながら内容を構成し、最終的な確認と編集はすべて人間の編集委員が行っています。編集体制の詳細は、JHO（JapaneseHealth.org）編集委員会のページをご覧ください。

ここで解説するセルフケアや市販薬の情報は、あくまで一般的なものであり、個々の医学的診断や治療を直接指示するものではありません。危険なサインに当てはまる場合や、症状が長引く・悪化する場合には、本記事を読んだうえでも自己判断に頼らず、必ず医療機関を受診してください。

基本的なセルフケア：まず試したい喉の痛みを和らげる方法

喉に痛みを感じた際、多くは医療機関を受診する前に自宅で実践できる有効な対処法が存在します。ここでは、科学的根拠に基づき、専門家が推奨する7つの基本的なセルフケアを、その作用機序とともに解説します。これらは、喉の炎症を悪化させず、身体の自然治癒力をサポートするための基本となります。

1. 十分な水分補給

喉の痛みに対する最も基本的かつ重要なセルフケアは、十分な水分を摂取することです。喉の粘膜が乾燥すると、その表面を覆う繊毛の動きが鈍化し、ウイルスや細菌などの異物を体外に排出するバリア機能が低下します⁷。これにより、炎症が悪化しやすくなります。こまめに水分を摂ることで喉の粘膜を物理的に潤し、この防御機能を維持することができます⁸。

摂取する飲料は、刺激の少ない常温の水や白湯が最適です。一方で、コーヒーや緑茶に含まれるカフェインやアルコール飲料は、利尿作用があり脱水を助長する可能性があるため、喉の痛みが続く間は摂取を控えることが賢明です⁶。発熱がある場合や、高齢者・持病のある方では脱水になりやすいため、「喉が渇いたと感じる前」に少しずつこまめに水分を補うことを意識しましょう。

2. 加湿

室内の空気の乾燥は、喉の痛みの大敵です。ウイルスは湿度が低い環境で活発に浮遊しやすく⁹、また乾燥した空気は鼻や喉の粘膜から直接水分を奪い、炎症を悪化させます。室内の湿度をおおよそ50～60%に保つことが、粘膜を保護し、ウイルスの活動を抑制する上で有効とされています¹⁰。

加湿器の使用が最も効果的ですが、濡れたタオルを室内に干すことでも湿度を上げることは可能です¹¹。特に就寝中は口呼吸になりがちで喉が乾燥しやすいため、マスクを着用して眠ることも、自身の呼気で湿度を保つ有効な手段です¹²。加湿器を使用する場合は、カビや細菌の繁殖を防ぐため、取扱説明書に従って定期的な清掃を行いましょう。

3. うがい

うがいは、喉に付着したウイルス、細菌、ほこりなどの物理的な刺激物を洗い流し、口腔内と咽頭を清潔に保つ効果があります¹³。特別なうがい薬がなくても、水道水によるうがいで十分な効果が期待できるとされています⁷。

さらに、ぬるま湯に少量の食塩を溶かした塩水うがいは、浸透圧の作用で喉の腫れ（浮腫）を軽減する効果も期待できます⁶。ただし、うがい薬を頻繁に使用しすぎると、口腔内の常在細菌叢のバランスを乱す可能性もあるため、用法用量を守り、長期連用は避けましょう。

4. はちみつの活用

はちみつは、古くから喉の痛みを和らげるために用いられてきましたが、近年その有効性を支持する科学的研究が報告されています。はちみつには抗菌・抗炎症作用があるとされ、上気道感染症に伴う咳や喉の痛みを緩和する効果が、市販の咳止め薬と同等かそれ以上である可能性を示唆するシステマティック・レビューも存在します⁷¹⁴。お湯に溶かして飲む、温かいハーブティーや紅茶に小さじ1杯程度加えるなど、手軽に摂取できる点も利点です。

また、糖尿病がある方や血糖コントロールが必要な方は、はちみつの摂取量に注意しましょう。はちみつは自然由来とはいえ糖分を多く含むため、「体によいから」といって大量に摂取するのは避けるべきです。

5. 喉を休ませる（音声安静）

声がれを伴う喉の痛みは、声帯に炎症が起きているサインです。この状態で無理に声を出すと、声帯への機械的刺激で炎症が悪化し、回復が遅れる原因となります⁸。したがって、会話を控え、喉を安静に保つことが重要です。

特に注意すべきは「ささやき声」です。一般的に喉に優しいと思われがちですが、実は通常の会話よりも声帯に不自然な緊張を強いるため、かえって負担が大きくなることが専門家の間で指摘されています⁶。仕事や家庭の事情でどうしてもコミュニケーションが必要な場合は、筆談やチャットツールなどを活用し、発声を最小限に抑えることが最善です。

6. 刺激物を避ける

喉の粘膜が炎症を起こしているときは、外部からの刺激に非常に敏感になっています。喫煙（副流煙を含む）は、数多くの有害物質で粘膜を直接攻撃し、炎症を著しく悪化させます⁸。可能であれば、この機会に禁煙や減煙を検討するとよいでしょう。

アルコール、香辛料の多い食事、熱すぎる・冷たすぎる飲食物も、物理的な刺激となり痛みを増強させるため、症状が落ち着くまでは控えるべきです¹⁵。炭酸飲料や酸味の強いジュースも、人によっては刺激となることがあります。どうしても食欲がないときは、喉ごしがよく、常温に近いスープやおかゆなどから少しずつ摂取してみましょう。

7. 体を温め、十分な休養をとる

喉の痛みの多くは感染症が原因であり、体の免疫力が回復の鍵を握ります。十分な睡眠と身体的な安静は、免疫系がウイルスや細菌と戦うためのエネルギーを確保する上で不可欠です¹⁶。夜更かしを避け、可能であれば数日間は予定を調整し、体を休める時間を確保しましょう。

体を温めることは全身の血行を促進し、免疫細胞の働きを助けます。首元を保温することも、喉周辺の血流を改善し、痛みの緩和に繋がる可能性があります¹⁷。ただし、例外的に唾を飲むのも困難な激しい痛みと腫れがある場合（一部の新型コロナウイルス感染症で見られたような重度の炎症など）には、アイスクリームなどで局所的に「冷やす」ことが一時的な痛みの麻痺や腫れの軽減に役立つことがあります¹⁸。これはあくまで例外的な対症療法であり、基本は安静と保温が重要です。

市販薬（OTC医薬品）の賢い選び方と使い方

セルフケアで改善が見られない場合、市販薬（OTC医薬品）の活用が有効な選択肢となります。ここでは、製品の種類を正しく理解し、ご自身の症状に合わせて最適な成分を選ぶための実践的なガイドを提供します。

医薬品、医薬部外品、食品の違い

喉のケアを謳う製品、特に「のど飴」には、法律上の分類で期待できる効果が大きく異なる3つの種類が存在します。製品パッケージの表示を確認することが、適切な選択の第一歩です¹⁵。

• 医薬品：「治療」を目的とし、有効成分の効果が国に承認されています。「第2類医薬品」「第3類医薬品」などと明記されています¹⁵。
• 指定医薬部外品：「防止・衛生」を目的とします。喉の炎症緩和や殺菌・消毒といった効果を持つ有効成分が配合されています¹⁹。
• 食品（菓子類）：いわゆる一般的なのど飴。薬理効果は謳えず、喉を潤す目的で用いるものです¹⁹。

喉の痛みがつらい場合は、「医薬品」または「指定医薬部外品」から、症状に合った成分を含む製品を選ぶことが重要です。味やパッケージのイメージだけで選ぶのではなく、成分表示を確認し、「何に効く薬なのか」を意識して選びましょう。

症状別・成分別 市販薬選択ガイド（表）

市販薬を選ぶ鍵は、「自分の最もつらい症状は何か？」を明確にし、「その症状にどの成分が有効か？」を知ることです。以下の表は、科学的根拠に基づいた選択を可能にするための判断基準です。

市販薬を使うときの注意点

市販薬は正しく使えば心強い味方ですが、「長く飲めば安心」「多く飲めば早く治る」というものではありません。添付文書をよく読み、用法・用量・使用期間を必ず守りましょう。複数の市販薬を同時に服用すると、同じ成分を重ねて摂取してしまう危険もあります。

持病がある方（心臓病、腎臓病、肝臓病、胃潰瘍、喘息など）や、妊娠中・授乳中の方、小児・高齢者は、市販薬を使用する前に薬剤師や医師に相談することをおすすめします。また、市販薬を数日使用しても全く改善が見られない、むしろ悪化している場合は、自己判断で薬だけを続けるのではなく、医療機関を受診しましょう⁸。

喉の痛みの原因：なぜ痛くなるのか？

喉の痛みを効果的に対処するためには、その背景にある原因を理解することが重要です。原因は多岐にわたりますが、大きく「感染性」と「非感染性」に分類できます。

最も多い原因はウイルス感染

喉の痛みを引き起こす原因として、圧倒的に多いのがウイルス感染です²¹。「風邪（かぜ症候群）」と呼ばれる急性上気道炎の病原体の80～90%はウイルスが占めています²²。代表的な原因ウイルスにはライノウイルス、季節性コロナウイルス（新型コロナウイルスを除く）、RSウイルス、アデノウイルスなどが挙げられます¹⁰。これらのウイルスが粘膜に侵入すると、体の防御反応として炎症が引き起こされ、痛みとして感じられます⁸。

近年では、SARS-CoV-2（新型コロナウイルス）による感染症でも、喉の強い痛みや違和感が初期症状として現れるケースが多く報告されています²⁴。発熱や咳、味覚・嗅覚の異常、強い倦怠感などが同時に見られる場合は、新型コロナウイルス感染症の可能性も含めて、自治体や厚生労働省の最新の指針に沿って受診や検査を検討しましょう。

ウイルス感染による喉の痛みの重要な特徴は、多くが自身の免疫力によって1～2週間で自然治癒する「自己限定性疾患」であるという点です⁶。ここで強調すべき医学的大原則は、「抗生物質（抗菌薬）は細菌を標的とする薬であり、ウイルスには一切効果がない」ということです⁶。一般的な風邪に抗生物質を服用することは、効果がないばかりか、副作用や薬剤耐性菌のリスクを高める不適切な行為となります。

注意が必要な細菌感染

ウイルス性が大多数を占める一方で、細菌感染が原因となるものも存在します。最も注意すべきはA群β溶血性レンサ球菌（通称：溶連菌）です²¹。溶連菌感染症は、特に学童期の小児に多いですが、成人でも咽頭炎の原因の5～10%を占めます²¹。放置すると、数週間後に「リウマチ熱」や「急性糸球体腎炎」といった深刻な合併症を引き起こすリスクがあるため、適切な診断と治療が不可欠です³。

溶連菌感染症では、咳や鼻水が少なく、扁桃に白い膿が付着したり、舌に赤いブツブツ（いちご舌）が現れたりすることがありますが、最終診断は医療機関での迅速抗原検査などで行われます²³。確定した場合は、合併症予防のため処方された抗生物質を最後まで飲み切ることが極めて重要です³。

その他の原因

感染症以外にも、喉の痛みを引き起こす原因は様々です。

• 乾燥：空気の乾燥や口呼吸は喉の粘膜のバリア機能を低下させます¹²。
• 声の酷使：職業的な理由やカラオケなどで大声を出すと、声帯が物理的に傷つき炎症を起こします¹²。
• アレルギー：花粉やハウスダストが喉の粘膜を刺激し、痛みを引き起こします⁷。
• 胃食道逆流症（GERD）：胃酸が喉まで逆流し、粘膜を化学的に刺激して炎症や痛みを引き起こします²¹。
• 刺激物の摂取：喫煙、飲酒、辛い食べ物なども痛みの原因となり得ます¹²。

さらに、長引く喉の違和感や一側性の痛みが続く場合には、喉頭がんなどの腫瘍性疾患が背景にある可能性も否定できません²¹。多くの場合は良性疾患ですが、3週間以上続く声がれや飲み込みにくさ、体重減少などがある場合には、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

【最重要】医療機関を受診すべき危険なサイン

医療機関での専門的な治療

医療機関では、問診や視診に加え、原因を特定するために迅速抗原検査や喉頭ファイバースコープ検査などが行われることがあります²¹⁹。症状の程度や持病、服用中の薬などを総合的に判断し、「今はセルフケア中心でよいのか」「抗生物質やその他の薬が必要か」が決められます。

主な治療法

• 抗生物質（抗菌薬）：細菌感染（主に溶連菌）と診断された場合にのみ処方されます。ウイルス性咽頭炎に対するルーチンでの使用は、国際的なガイドラインでも明確に否定されています⁴²⁵。
• 抗炎症薬：喉の痛みや腫れを和らげる目的で、トラネキサム酸などが処方されることがあります⁹。
• ステロイド：炎症や腫れが非常に強く、気道が狭くなる危険性がある場合に、強力な抗炎症作用を期待して短期間使用されることがあります⁶。
• ネブライザー治療：薬剤を霧状にして吸入し、患部に直接薬を届ける治療法です。耳鼻咽喉科の外来で受けることができます⁹。
• 漢方薬：症状や体質に合わせて、桔梗湯（ききょうとう）などが処方されることがあります⁷。

医師の指示に従い、処方された薬は決められた期間・回数を守って服用することが大切です。症状がよくなったからといって自己判断で中止したり、逆に処方期間を超えて飲み続けたりすることは避けましょう。

喉の痛みを予防するためにできること

喉の痛みは「なってから」対処するだけでなく、「ならないように予防する」こともとても重要です。日常生活の中で取り入れやすい予防策をいくつか紹介します。

• こまめな手洗い・アルコール消毒：風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスなどの多くは、手指を介して口や鼻、喉の粘膜に入り込みます。外出先からの帰宅後、トイレの後、食事の前など、こまめな手洗いを習慣にしましょう。
• マスクの活用：人混みや換気の悪い場所ではマスクを活用することで、飛沫の吸い込みをある程度減らすことができます。喉が荒れているときにマスクを着用すると、自分の呼気で適度な湿度を保つ効果も期待できます。
• 室内環境を整える：適度な湿度（おおよそ40〜60%）と室温を保ち、こまめな換気を行いましょう。エアコン使用時は特に乾燥に注意が必要です。
• 禁煙・節煙：喫煙は喉の粘膜を直接傷つけ、慢性的な炎症やがんのリスクを高めます。禁煙が難しい場合でも、少しずつ本数を減らし、副流煙から家族や周囲の人を守る工夫をしましょう。
• 規則正しい生活とバランスのよい食事：睡眠不足や偏った食事は免疫力を低下させます。極端なダイエットや過度な飲酒も控え、野菜・果物・たんぱく質をバランスよく摂ることを心がけましょう。

日常生活・仕事・学校での工夫

喉の痛みがあるときに無理をして働き続けたり、学校や家事をいつも通りこなそうとすると、回復が遅れたり周囲に感染を広げたりする原因になります。次のような工夫も取り入れてみてください。

• 在宅勤務や時差出勤の活用：可能であれば、テレワークや時差出勤を利用し、人との接触や長時間の会話を減らしましょう。
• 会議や授業での負担軽減：長時間の発表や司会を任されている場合は、喉の状態を正直に伝え、別の人に代わってもらう、発言時間を短くしてもらうなどの相談をしてみましょう。
• 家族との役割分担：小さな子どもがいる家庭では、家事や育児を一時的にパートナーや家族に多めにお願いし、自分の休息時間を確保することも大切です。
• 水分補給しやすい環境づくり：デスクやリビング、寝室など、すぐ手の届く場所に水やお茶を置いておくと、こまめな水分補給がしやすくなります。

よくある質問

結論

喉の痛みはありふれた症状ですが、その対処法は原因によって大きく異なります。重要なのは、まず「加湿」「水分補給」「休養」といった基本的なセルフケアを徹底することです。市販薬を利用する際は、自身の症状に合った「有効成分」で選ぶことが賢明です。そして何より、抗生物質はウイルスには効かないという事実を理解し、安易な使用を避けることが、ご自身の健康と社会全体の利益に繋がります。

「呼吸困難」や「唾も飲めない激痛」などの危険なサインを見逃さず、適切なタイミングで専門医である耳鼻咽喉科を受診することが、重篤な疾患から身を守る鍵となります。この記事が、皆様が喉の痛みに対して適切な知識を持ち、不要な不安なく、健やかな毎日を送るための一助となることを心より願っています。