はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、以前「ウイルス性肺炎」として注目されていたSARS-CoV-2によって引き起こされる呼吸器疾患であり、世界中で大きな脅威となってきました。最初に中国・武漢で発生したこのウイルスは、急速に国境を越えて拡大し、私たちの日常生活、経済活動、医療体制に大きな影響を及ぼしています。実際に感染拡大当初は中国国内だけでなく、あっという間に世界各地へ波及し、多くの国・地域が厳重な隔離措置や入国制限を行う事態となりました。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
日本でも一部地域で集団感染が確認されたり、感染拡大防止のために休校やリモートワークが推奨されたりするなど、日常生活に変化が生じました。こうした状況の中、「どうやって自分や家族を守ればいいのか」という不安の声は今なお根強く残っています。ワクチンや治療薬については各国の研究機関・製薬会社が開発を進めており、日本でも接種が進められてきましたが、新たな変異株の出現や感染再拡大への懸念も続いています。そのため、日常生活においてできる限りの感染対策を実践し、自分自身と周囲の人々を守る意識が非常に大切です。
本記事では、ウイルスを防ぐ実践的な方法について、具体的な場面ごとにわかりやすく解説しています。もともとの情報として、以下の9つのポイントを中心に取り上げていますが、ここではそれをさらに詳しく掘り下げ、日常生活での注意点や国内外の研究結果を補足しながら紹介します。新型コロナウイルスに限らず、呼吸器感染症全般への対策として役立つ内容を目指していますので、ぜひ最後までお読みいただき、ご自身や大切な方々の健康を守る参考にしてください。
なお、ここで挙げる情報はあくまで現時点での知見や公的機関のガイドライン、各種研究を踏まえた一般的な情報であり、個々の症状や体調は人によって異なるため、実際に体調不良を感じたり強い不安がある場合は、必ず医師や専門家に相談するようにしてください。
専門家への相談
本記事で取り上げる情報は、海外を含む複数の公的機関・研究機関が発表している知見や提言を元に作成されています。たとえば、世界保健機関(WHO)や各国の厚生労働当局などが随時更新している感染症対策ガイドライン、医療専門誌に掲載された臨床研究などを参考にしています。記事内には、これらの情報源として取り上げられたリンク・文献も掲載していますので、より詳しく知りたい場合にはそちらを参照してください。
また、記事中で言及しているLaurie Garrett氏(ピュリッツァー賞を受賞した科学ジャーナリストで、Council on Foreign Relationsでグローバルヘルスを担当していた元上級研究員)の見解も報道を通じて広く知られています。専門家や公的機関の知見を参考にしながらも、最終的には個々の体調や生活状況に合わせた判断が必要ですので、ご不安な点がある場合は必ず医療機関や信頼できる専門家に相談してください。
以下では、具体的な感染予防策として9つのポイントを取り上げ、各項目ごとに国内外の研究や実例なども交えながら丁寧に解説します。
1. 外出時に手袋を着用する
外出時の最大のリスクは、ウイルスが付着した物や場所に触れることです。電車やバス、エレベーターのボタン、ドアノブ、買い物カートなど、多くの人が接触する場所は常にウイルス存在のリスクが考えられます。そこでおすすめなのが、状況に応じて手袋を着用する方法です。
- 屋外での手袋着用のコツ
- 気候に合わせて使い分ける:寒い時期であれば厚手の手袋、暑い時期には薄手の手袋や使い捨て手袋を活用する。
- 毎日交換・洗濯する:手袋に付着したウイルスや雑菌が残らないように、使ったらすぐに洗濯または破棄する。
- 濡れた状態での使用を避ける:湿った状態はウイルスや細菌が繁殖しやすいため、できるだけ乾いた状態で使用する。
外での移動が多い方は、公共交通機関に乗る際にも手袋を着用するだけでなく、降車後は速やかに手袋を外し、手を洗うかアルコール消毒をすることでさらなる感染予防が期待できます。特に密閉空間になりやすい電車やバス、タクシーなどを利用する場合、手袋は比較的簡単に導入できる有効な対策として注目されています。
2. 手や指を顔に触れないようにする
人は無意識のうちに、目や鼻、口などの粘膜部分を手で触れることが多いといわれています。これはウイルスにとって体内へ侵入する最も直接的なルートになりかねません。もし外出先でドアノブやテーブル、他人の手などに触れてウイルスが手についた場合、目や鼻、口を触ることで容易に感染へつながります。
- 具体的な回避法
- 顔まわりがかゆくなったら、できるだけティッシュなどの清潔な紙やハンカチで触る。
- 食事や手洗いのタイミングで一度しっかりと手を洗うまでは、むやみに顔を触らないよう意識する。
- 外出先でどうしても目などに触らざるを得ないときは、使い捨てのウエットティッシュや消毒シートで手を拭いてから行う。
さらに日本では礼儀として握手をする機会は少ないものの、昨今の国際的なビジネスシーンでは握手をする場面もあります。握手の機会がある場合は、すぐに手が洗えないならハンドサニタイザーを常備しておくなどの対策をとるとよいでしょう。
3. マスクを正しく着用する
マスク着用は、感染予防策として広く推奨されています。ただし、マスクを着用していても、誤った使用方法では効果が下がると指摘されることもあります。とくに同じマスクを長時間使い続けたり、不潔な状態で再利用したりするのは避けるべきです。
- マスク着用のポイント
- 不織布マスクは1日1枚を目安に取り換えるか、口や鼻部分が汚れたら早めに交換する。
- 表裏を間違えないようにし、鼻と口をしっかり覆う。
- 着脱の際はゴムの部分を持ち、布や不織布部分にはできるだけ触れない。
- 使い終わったマスクはすぐに捨て、捨てる際はビニール袋に入れて封をする。
マスクとあわせて重要なのが距離を保つことです。例えば、感染症の飛沫は1メートル程度飛ぶといわれていますので、咳やくしゃみをしている人が近くにいる場合は、十分な物理的距離を取ることが推奨されます。実際、Li Q.ら(2020)が発表した武漢での早期感染拡大に関する研究では、「飛沫や直接接触による感染が主要な伝播経路であった」と報告されており、マスクや距離確保の重要性が示唆されています。
4. 個人用のタオルや食器を使いまわさない
ウイルスは湿度の高い環境や布・タオルの表面でも一定時間生存する場合があるとされています。家族全員が同じタオルで手や顔を拭くと、ウイルスや細菌を共有するリスクが高まります。そこで各自専用のタオルを持ち、頻繁に洗濯することが望ましいのです。
- 具体的な対策
- バスタオル・フェイスタオルは一人ひとり別に用意し、週に2回以上は洗濯する。
- キッチンでも菜箸やフライ返しを共用する際には、使用後すぐ洗う・消毒するなどの習慣をつける。
- 湿ったタオルはそのまま放置せず、乾燥させるか取り換えるようにする。
特に家族内に咳や熱がある方がいる場合は、洗濯物をこまめに分けて洗う、部屋を分けるなど、一段と徹底した衛生管理が大切です。ウイルスに限らず、インフルエンザなど他の呼吸器ウイルス感染症でも同様に有効です。
5. 共同で触る物品への対処に注意を払う
外出先や職場、自宅でも共用部分やみんなが触る物品には注意が必要です。たとえば、ドアノブ、手すり、パソコンやスマートフォン、テレビのリモコン、あるいは職場のコピー機など、多くの人の手が触れやすいところでウイルスが付着している可能性は否定できません。
- 具体的な注意点
- ドアノブや手すりなどは、可能であれば肘や肩で押すなど直接手のひらで触らない工夫をする。
- スマートフォンは定期的にアルコールシートなどで拭く。
- 職場でのパソコンやデスクワーク時にも、デスクやキーボード、マウスを1日1回は簡単に消毒する。
- どうしても他人のスマホやタブレットを操作しなければならない場合は、そのあとすぐに手を洗うかアルコール消毒をする。
さらに、ウイルスはプラスチックや金属の表面に付着すると、条件によっては数時間から数日生き残る可能性があると報告されています(Zou L.ら(2020))。したがって、こまめな除菌・消毒は日常的な習慣として定着させることが推奨されます。
6. 免疫力を高める生活習慣を取り入れる
感染予防には、ウイルスへの接触を減らすだけでなく、自分自身の免疫力を底上げすることも重要です。免疫力が高いほど、体内にウイルスが侵入した際のダメージを最小限に抑える可能性が高まります。特に、高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化しやすいといわれているため、日頃から健康的な生活習慣を意識することが大切です。
- 生活習慣で意識すべきポイント
- 日光浴:ビタミンDの産生を助け、免疫機能をサポートする。
- バランスの良い食事:野菜や果物を積極的に取り入れ、良質なタンパク質や食物繊維、ビタミン類をバランスよく摂る。
- 発酵食品やプロバイオティクス:腸内環境を整えることで免疫活性に関わるとされる。
- 適度な運動:1回30~45分、週3回程度の有酸素運動や軽い筋トレで代謝や免疫を整える。
- 禁煙・節酒:喫煙は呼吸器の粘膜防御を弱め、アルコール過剰摂取も免疫力を下げる要因となる。
- ストレス管理:過度なストレスはホルモンバランスを乱し、免疫力低下を招く可能性がある。
- 十分な睡眠:7~8時間程度の睡眠を確保し、疲労をためない。
ある研究(Lavezzo E.ら(2020))では、イタリア北部のVòという地域で大規模な検査・追跡を行い、早期の対策と健康管理の徹底が集団発生を抑制したと報告されています。このように、免疫力向上とウイルス対策を組み合わせることは、ウイルス拡散の阻止にもつながる大きな要素とされています。
7. 大人数で食事をする際の注意
日本では大皿料理をみんなで取り分ける家庭や会食の場面が多くあります。しかし、感染症拡大が懸念される時期や免疫力が低下しやすい時期には、個々が自分専用の箸やスプーンを使って料理を取り分ける「取り箸・取りスプーン方式」を徹底することが推奨されます。
- 食事時の予防策
- 大皿からの取り分けには共有の取り箸やスプーンを使い、個人の箸で直接料理に触れないようにする。
- いわゆる回し飲みや同じグラス、コップの使い回しは避ける。
- テーブル、椅子、トレイ、箸置きなど食事関連の道具は使用後にしっかり洗浄・消毒する。
また、衛生状態があまり良くないと感じる飲食店では、使い捨てのおしぼりやアルコール除菌シートを活用しつつ、なるべく安心して食事ができる環境を選びましょう。食事中はマスクを外すシーンが多くなるため、会話を最小限にしたり、十分な距離を保つなどの配慮も必要です。
8. 室内の換気を心がける
ウイルスを室内から追い出す有効策のひとつが換気です。密閉空間にウイルスが漂っている場合、飛沫やエアロゾルによる感染リスクが高まります。可能であれば、換気扇の使用や窓を開けるなどして室内の空気を外気と入れ替えることを意識しましょう。
- 換気のポイント
- 天候や気温、空調設備によっては難しい場合もあるが、1時間に数分でも窓を開けて空気を入れ替える。
- サーキュレーターや扇風機を使って室内の空気を循環させる。
- 職場や学校でも定期的に換気の時間を設ける。
温度の低い時期は窓を開けるのが辛い場合がありますが、短時間でも換気を行うだけでも効果は期待できます。とくに大人数で集まる部屋では、こまめな換気を行うことで飛沫や浮遊するウイルスの濃度を下げる助けとなります。
9. 看病時の注意と感染対策
家族や身近な人が熱や咳、喉の痛みなどの症状を訴えた際に大切なのは、速やかな医療機関への相談と、看病する側がしっかり感染予防策をとることです。もしその症状が新型コロナウイルス感染症かどうか判明していない段階でも、念のため下記のような対策を講じましょう。
- 看病の際の具体的な対策
- 症状がある人とは別室で過ごしてもらい、看病する側も医療用手袋やマスクを着用する。
- 使い捨てマスクを交換するときは、ゴムひも部分だけを持って外し、汚れた面には触れない。取り外したらビニール袋に密封して廃棄する。
- 部屋やドアノブ、タオルなど症状がある人が触れるものはこまめに消毒する。
- 看病後は着衣をできるだけ早く洗濯し、看病する人自身の体調管理にも注意を払う。
- 症状が続いたり悪化したりする場合、医師への連絡や自治体の相談センターへの問い合わせを早めに行う。
実際に、感染が疑われる家族を在宅でケアする場合、手袋やガウン、マスクなどを正しく着用し、使用済み物品は速やかに密封して廃棄するなど、医療現場に近いレベルの衛生管理が推奨されています。日本国内でも保健所や医療機関に連絡し、症状や接触状況などを伝えて対応を仰ぐことが望ましいです。
さらに、まだ感染者が少数であった段階(2020年初頭)から、ウイルス拡散を抑える有効手段として「早期の発見・連絡・隔離・ケア」を徹底する重要性が各種研究で指摘されてきました(Voysey M.ら(2021)などワクチン開発に関する報告でも、ワクチンとともに早期介入が鍵とされる)。身近な人が体調不良になったときは、一時的な煩わしさを感じても積極的に対策を取ることが、周囲全体のリスク低減につながります。
結論と提言
ここまで、新型コロナウイルスの感染予防策として9つの実践ポイントを具体的に見てきました。それらは以下のとおりです。
- 外出時に手袋を着用する
- 手や指で顔を触れないようにする
- マスクを正しく着用する
- 個人用のタオルや食器を使いまわさない
- 共用物品の取り扱いに注意する
- 免疫力を高める生活習慣を実践する
- 大人数で食事をする際は取り分け箸や個別の食器を使う
- 室内の換気を意識する
- 看病やケア時に徹底した感染対策をとる
いずれも、基本的な衛生管理と生活習慣の見直しによって感染リスクを抑えるための方法です。ワクチン接種が進んだとはいえ、変異株などの発生により感染は再度拡大する可能性もあります。引き続き、マスクや換気、手洗いなどの基本的な感染対策が重要です。
また、普段から十分な休息とバランスの良い食事を心がけることで、身体の抵抗力を高めることができます。特に高齢者や基礎疾患を持つ方は重症化しやすいため、本人だけでなく周囲も予防策を徹底して協力し合うことが求められます。
参考文献
- 「The Latest on the Coronavirus: Cases Jump in China, 110 Monitored in U.S.」
https://www.healthline.com/health-news/what-to-know-about-the-mysterious-coronavirus-detected-in-china
アクセス日: 2020年1月29日 - 「What’s to know about coronaviruses?」
https://www.medicalnewstoday.com/articles/256521.php
アクセス日: 2020年1月29日 - 「The Wuhan Virus: How to Stay Safe」
https://foreignpolicy.com/2020/01/25/wuhan-coronavirus-safety-china
アクセス日: 2020年1月29日 - Zou L. ら(2020)「SARS-CoV-2 Viral Load in Upper Respiratory Specimens of Infected Patients」New England Journal of Medicine, 382(12), 1177–1179.
https://doi.org/10.1056/NEJMc2001737 - Li Q. ら(2020)「Early Transmission Dynamics in Wuhan, China, of Novel Coronavirus–Infected Pneumonia」New England Journal of Medicine, 382(13), 1199–1207.
https://doi.org/10.1056/NEJMoa2001316 - Lavezzo E. ら(2020)「Suppression of a SARS-CoV-2 Outbreak in the Italian Municipality of Vò」Nature, 584, 425–429.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2488-1 - Voysey M. ら(2021)「Safety and Efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 Vaccine (AZD1222) against SARS-CoV-2」The Lancet, 397(10269), 99–111.
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32661-1
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