この記事の科学的根拠
本記事は、提供された研究報告書において明確に引用されている、最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示されている医学的ガイダンスとの直接的な関連性を示したものです。
- 複数の医学論文およびガイドライン(PMC, European Journal of Paediatric Dentistry等): 本記事におけるアフタ性口内炎の定義、原因、分類、および一般的な治療法に関する記述は、これらの国際的な学術誌に掲載された研究や総説に基づいています124。
- 医薬品添付文書(ケナログ口腔用軟膏、アフタッチ口腔用貼付剤等): オラコルチアの有効成分、禁忌事項、副作用、および具体的な使用方法に関する正確な情報は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に承認されたこれらの公式文書に基づいています58。
- フィラデルフィア小児病院(CHOP)等の医療機関情報: 小児におけるアフタ性口内炎の診断や管理に関する実践的な情報は、世界的に信頼性の高い小児医療機関が提供するガイドラインを参考にしています3。
要点まとめ
- オラコルチアの小児使用は、医師が「感染症ではないアフタ性口内炎」と確定診断した場合にのみ、厳格な条件下で可能です。
- ウイルス性・真菌性・細菌性の口内炎(カンジダ症、ヘルペス等)への使用は禁忌であり、症状を悪化させる危険性があります。自己判断での使用は絶対に避けるべきです。
- 有効成分は強力な抗炎症作用を持つステロイド(トリアムシノロンアセトニド)であり、処方箋医薬品に分類されています。
- 貼付剤(パッチ)形式のため、患部を物理的に保護し薬剤を集中させる利点がありますが、正確な貼付には技術が必要で、乳幼児は剥がしてしまう可能性があります。
- 治療の第一選択は、まず専門家による正確な診断を受けることであり、その後、症状に応じて非ステロイド薬、支持療法などを含めた最適な治療法が選択されます。
第1章 小児におけるアフタ性口内炎(再発性アフタ性口内炎)の医学的背景
アフタ性口内炎治療薬「オラコルチア」の小児への使用の是非を検討するにあたり、まず対象となる疾患、すなわちアフタ性口内炎(一般に口内炎として知られる)の正確な理解が不可欠です。治療薬の選択は、口腔内の病変が何であるかという正確な診断に完全に依存するため、この医学的背景の理解は極めて重要となります。
1.1 疾患の定義:アフタ性口内炎とは何か
再発性アフタ性口内炎(Recurrent Aphthous Stomatitis, RAS)は、口腔粘膜に発生する最も一般的な疾患の一つです1。臨床的には、痛みを伴う小さく、円形または卵形の浅い潰瘍として現れます。その特徴は、潰瘍の中心部が灰色または黄白色の偽膜で覆われ、その周囲が明確な赤い縁(発赤帯)で囲まれている点にあります1。
アフタ性口内炎は、その大きさ、数、治癒期間によって主に3つの臨床型に分類されます1。
- 小アフタ型(Minor aphthous ulcers): 最も一般的な形態で、全体の80%以上を占めます。通常、直径1 cm未満の潰瘍が1個から5個程度発生し、7日から14日以内に瘢痕(きずあと)を残さずに自然治癒します1。
- 大アフタ型(Major aphthous ulcers): 潰瘍は直径1 cm以上と大きく、より深部に達します。治癒には数週間から数ヶ月を要し、瘢痕を残すことがあります1。
- ヘルペス様アフタ型(Herpetiform ulcers): 直径1〜3 mmの非常に小さな潰瘍が多数(時には100個以上)集まって発生し、それらが融合して大きな不規則な形の潰瘍を形成することがあります1。
これらの潰瘍は、頬の内側、唇の内側、舌、口底など、角化していない(柔らかい)口腔粘膜に好発します2。重要な点として、アフタ性口内炎は感染症ではなく、したがって他者へ伝染することはありません3。
1.2 アフタ性口内炎の病因:免疫介在性の反応
アフタ性口内炎の正確な原因は未だ完全には解明されていませんが、特定のウイルスや細菌による一次感染が原因ではないことが広く受け入れられています。その本質は、自己の免疫系が誤って口腔粘膜の細胞を攻撃してしまう「免疫介在性」の疾患であると考えられています。具体的には、Tリンパ球(T細胞)が介在する免疫応答が上皮細胞を破壊し、潰瘍形成に至るとされています1。
この免疫応答の引き金(誘因)となりうる因子は多岐にわたり、小児においては以下のようなものが一般的です。
- 局所的な外傷: 誤って頬を噛む、歯ブラシによる刺激、歯科治療など1。
- ストレス: 精神的または身体的なストレス1。
- 栄養不足: 鉄分、ビタミンB群(特にB12)、葉酸などの欠乏1。
- 食物への感受性: チョコレート、柑橘系の果物、チーズなど特定の食品に対するアレルギーや過敏反応4。
- 遺伝的素因: 家族内で発生しやすい傾向が報告されています1。
1.3 診断の重要性:感染性口内炎との鑑別
ステロイド含有薬剤の使用を検討する上で、このセクションが最も重要です。なぜなら、ステロイド薬は強力な抗炎症作用を持つ一方で、免疫を抑制する作用も併せ持つため、誤った診断のもとで使用すると、かえって症状を悪化させる危険性があるからです。
特に、アフタ性口内炎と以下の感染性口内炎とを正確に鑑別することが、安全な治療の絶対条件となります。
- 口腔カンジダ症(鵞口瘡): カンジダという真菌(カビ)の増殖によって起こります。ガーゼなどで擦ると容易に剥がせる白い苔状の斑点が口腔内全体に広がるのが特徴です5。ステロイド薬を使用すると、カンジダ菌の増殖をさらに助長させてしまう可能性があります6。
- ヘルペス性口内炎: 単純ヘルペスウイルスの感染が原因です。小さな水疱(水ぶくれ)が多発し、発熱や全身の倦怠感といった全身症状を伴うことが多いのが特徴です5。ステロイド薬はウイルスの増殖を抑える免疫力を低下させるため、感染を重症化させる恐れがあります。
- 細菌性口内炎: 細菌感染によるもので、黄色い膿を伴うことがあります5。ステロイド薬は細菌に対する抵抗力を弱め、感染の拡大を招く可能性があります7。
これらの鑑別は、保護者自身で行うことは極めて困難です。したがって、ステロイド薬であるオラコルチアの使用を検討する以前に、医師または歯科医師による正確な診断を受けることが、何よりも優先されるべき安全対策となります。診断プロセスには、視診に加え、必要に応じて病変の培養検査や血液検査が含まれることもあります3。この診断プロセスこそが、治療の出発点であり、薬剤の安全性を担保する基盤となるのです。
第2章 オラコルチアの薬理学的プロファイル
オラコルチアがどのような薬剤であり、どのように作用するのかを理解することは、その適正使用に不可欠です。本章では、有効成分、製剤の特徴、そしてなぜ処方箋医薬品に分類されるのかを詳述します。
2.1 有効成分:トリアムシノロンアセトニド
オラコルチアの有効成分は「トリアムシノロンアセトニド」(Triamcinolone Acetonide)です8。これは、副腎皮質で産生されるホルモンであるコルチゾールの作用を模倣して作られた、強力な合成副腎皮質ステロイド(合成ステロイド)の一種です。
その主な作用機序は、強力な「抗炎症作用」にあります。潰瘍部位では、体の防御反応として様々な炎症性物質(プロスタグランジンやロイコトリエンなど)が産生され、免疫細胞が集まることで、痛み、腫れ、発赤といった症状が引き起こされます。トリアムシノロンアセトニドは、これらの炎症性物質の産生を抑制し、免疫細胞の活動を抑えることで、アフタ性口内炎に伴うつらい症状を和らげ、治癒を促進する効果が期待されます9。
2.2 製剤と適応:口腔内付着型の貼付剤
オラコルチアの正式な効能・効果は「アフタ性口内炎」です8。この薬剤の最大の特徴は、その製剤形態にあります。オラコルチアは、口腔粘膜に直接貼り付けて使用する「口腔内付着型」の錠剤(パッチ、貼付剤)です8。
この特殊な剤形には、以下のような利点があります。
- 物理的な保護: 潰瘍表面を物理的に覆うことで、食事や会話、舌の接触による刺激から患部を保護します10。
- 標的指向性の高い薬剤送達: 有効成分を患部に直接、かつ持続的に作用させることができます。これにより、薬剤の全身への吸収を最小限に抑えつつ、局所での効果を最大化することが可能となり、全身性の副作用のリスクを低減します10。
一方で、この貼付剤という形態は、後述するように、特に小児への適用において特有の課題ももたらします。軟膏剤と比較した場合、貼付剤は唾液で流れにくく長時間効果が持続する可能性がある一方で、正確な貼付には技術を要し、小児の協力が得られにくい場合にはその利点を十分に発揮できない可能性があります。
2.3 規制上の位置づけ:処方箋医薬品
オラコルチアは、日本では「処方箋医薬品」に分類されています。これは、医師または歯科医師の診断と処方箋がなければ入手・使用することができない薬剤であることを意味します。このような医薬品の規制は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のような規制当局の管轄下にあります11。
このような厳格な管理が求められる理由は、主に二つあります。第一に、有効成分であるステロイドが強力な薬理作用を持つため。第二に、そしてより重要なこととして、本レポートの第1章で詳述したように、使用前に「アフタ性口内炎である」という正確な医学的診断が不可欠であるためです5。感染性の口内炎に誤って使用した場合の潜在的なリスクの高さから、専門家による監督下での使用が絶対条件とされているのです。
第3章 オラコルチアの小児使用におけるナビゲーション:保護者のためのガイドライン
本章では、保護者が最も知りたいであろう「オラコルチアの小児への使用」について、リスクと必要な注意点を科学的根拠に基づいて詳細に分析します。
3.1 公式なガイダンスと年齢に関する考察
オラコルチアの添付文書には、小児への使用に関する具体的な年齢制限は明記されていません。しかし、極めて重要な注意喚起として、「乳幼児への使用においては、貼付後指ではがしとるおそれがあるので注意するよう指導すること」という一文が記載されています8。
この記述は、乳幼児への使用が不可能ではないものの、薬剤を指で剥がしてしまうという重大な実践的課題と、それに伴うリスク(誤飲、治療効果の喪失など)が存在することを示唆しています。このため、薬剤を理解し、触らないように協力できる年齢であることが、安全かつ効果的な使用の一つの目安となります。参考として、他の口腔用薬では、市販のステロイド貼付剤「トラフルダイレクトa」が「5歳以上」12、一部の市販薬が「1歳以上」を目安としている例もあり13、年齢に応じた推奨が一般的であることがわかります。
3.2 絶対的禁忌:オラコルチアを絶対に使用してはならない場合
安全な使用のためには、オラコルチアを使用してはならない「絶対的禁忌」を理解することが不可欠です。オラコルチアの添付文書8には詳細な禁忌リストがありませんが、有効成分が同一である「ケナログ口腔用軟膏」の添付文書に記載されている禁忌事項は、臨床安全上、オラコルチアにも同様に適用されるべきです。
以下に、ケナログの添付文書情報5に基づく「使用してはいけない」状況をまとめます。
- 感染症が疑われる場合: ウイルス性、真菌性、細菌性のいずれの感染症も禁忌です。以下の兆候が見られる場合は絶対に使用しないでください。
- 口腔内全体に広がる、ガーゼで擦ると剥がれる白い斑点(カンジダ症の疑い)
- 患部の黄色い膿(細菌感染症の疑い)
- 米粒大〜小豆大の小水疱の多発、または口唇・皮膚にも水疱がある(ウイルス感染症の疑い)
- 発熱、食欲不振、全身倦怠感、リンパ節の腫脹などの全身症状(ウイルス感染症の疑い)
- 既知のアレルギー: トリアムシノロンアセトニド、または本剤のその他の成分に対してアレルギー歴がある場合8。
- 症状の改善が見られない、または悪化する場合: 5日間使用しても症状が改善しない、あるいは1〜2日間の使用で症状が悪化した場合は使用を中止し、医師・歯科医師に相談してください。診断が誤っているか、別の疾患の可能性があります5。
3.3 潜在的な副作用とモニタリング
オラコルチアの局所的な副作用として最も注意すべきは「口腔内感染症」です。ステロイドの免疫抑制作用により、もともと口の中に常在しているカンジダ菌などが異常増殖し、二次的に口腔カンジダ症を引き起こす可能性があります6。
保護者は、治療中に以下の点を注意深く観察する必要があります。
- 元々の潰瘍以外の場所に、新たな白い斑点ができていないか。
- 口の中全体の赤みが増していないか。
- その他、普段と違う変化がないか。
これらの異常が認められた場合は、直ちに使用を中止し、専門家に相談する必要があります。全身性の副作用のリスクは、適切に局所使用している限り低いですが、長期間、広範囲に、あるいは不適切に使用した場合にはそのリスクが高まる可能性があります14。
3.4 保護者のための臨床判断マトリクス:オラコルチアの使用は検討可能か?
以下の表は、保護者がお子様の症状を客観的に評価し、医療機関への相談の緊急性を判断するための一助となるよう作成したものです。これは自己診断を促すものではなく、専門家との対話に向けた準備のためのツールです。
評価項目 | アフタ性口内炎が示唆される症状(医師との相談を検討) | 専門家の診断が必須な危険信号(オラコルチアは使用せず、速やかに受診) |
---|---|---|
見た目 | 1個〜数個の円形・卵形の潰瘍。中心が白っぽく、周りが赤い1。 | 口腔内全体に広がる白い苔状の膜。黄色い膿。小さな水疱(水ぶくれ)5。 |
場所 | 頬の内側、唇の内側、舌の上など、柔らかい粘膜3。 | 口唇の外側や口の周りの皮膚にも病変がある5。 |
全身症状 | 本人は比較的元気で、発熱はない3。 | 発熱、ぐったりしている、首のリンパ節の腫れ、食欲不振5。 |
経過 | 過去にも同様の口内炎を繰り返している1。 | 初めてのひどい症状。病変が急速に広がっている5。 |
第4章 オラコルチアの段階的臨床適用ガイド
本章では、オラコルチアが処方された場合に、その効果を最大限に引き出し、安全に使用するための具体的な貼付方法を、公式な情報に基づいて段階的に解説します。この適用プロセスの複雑さ自体が、本剤が単純な応急処置薬ではなく、専門家の指導のもとで慎重に使用されるべき薬剤であることを物語っています。
4.1 貼付前の準備プロトコル
正確な貼付は、治療の成否を左右します。以下の準備を確実に行ってください。
- ステップ1: 保護者の手指を石鹸と流水で十分に洗浄します。これにより、患部に細菌を持ち込むのを防ぎます。
- ステップ2: お子様に水で口をすすがせ、口腔内を清潔にします。
- ステップ3: 清潔なティッシュペーパーやガーゼで、潰瘍表面とその周辺の唾液を軽く拭き取ります。これは、貼付剤が湿った表面にはうまく付着しないため、極めて重要なステップです8。
4.2 精密な貼付技術
添付文書8に記載された手順を、より分かりやすく解説します。
- ステップ1: 保護者の指先を唾液でわずかに湿らせます。
- ステップ2: 錠剤の色の付いている面(淡黄赤色)を湿った指先につけ、錠剤を指先に付着させます。
- ステップ3: 錠剤の白い面が、薬剤を含む有効面であることを確認します。
- ステップ4: この白い有効面を、潰瘍を完全に覆うように直接患部粘膜に軽く当てます。
- ステップ5: 指先で2〜3秒間、軽く押さえた後、ゆっくりと指を離します。
- ステップ6: 錠剤が粘膜に付着したことを確認します。
4.3 貼付後の管理と経過
貼付後も適切な管理が必要です。
- 貼付剤がしっかりと粘膜に固着するまで、貼付後数分間は舌などで触らないようにお子様に指導してください8。
- 薬剤が十分に作用するよう、貼付後しばらく(例えば30分程度)は飲食を避けるのが望ましいです。就寝前の貼付は、唾液の分泌が少なく、長時間効果が期待できるため特に効果的です5。
- 本剤は数時間かけて徐々に溶けていき、自然に口腔内から消失します。付着している薬剤を無理に剥がさないでください。無理に剥がすと患部を傷つける恐れがあります8。
この一連のプロセスは、痛みを訴える、あるいは協力的でない低年齢の小児に対して行うには相当な困難を伴う可能性があります。この技術的なハードルの高さが、オラコルチアの使用には保護者の深い理解とコミットメント、そして専門家による事前の十分な説明が不可欠である理由の一つです。
第5章 小児の口腔内潰瘍に対する治療法の比較分析
オラコルチアの位置づけをより明確にするため、本章では小児の口内炎に用いられる他の治療法と比較分析し、保護者が全体像を把握できるよう支援します。
5.1 処方箋ステロイド薬:貼付剤 vs. 軟膏
- オラコルチア(貼付剤): 前述の通り、物理的保護と標的指向性の薬剤送達という利点がありますが、小児への適用と固着維持が難しい場合があります8。
- ケナログ口腔用軟膏: オラコルチアと同一の有効成分トリアムシノロンアセトニドを含有する軟膏剤です515。
- 利点: 届きにくい場所にも塗布しやすく、適用が比較的容易です。
- 欠点: 唾液で流れやすく、効果の持続時間が短い可能性があります。また、貼付剤のような物理的な保護作用はありません14。
5.2 市販(OTC)の非ステロイド薬
軽症の場合や、専門家の診断を待つ間の対症療法として、市販薬は第一選択肢となり得ます。
- 抗炎症・保護軟膏: トラフル軟膏などの非ステロイドタイプは、子供への使用も推奨されています。抗炎症成分(アズレン、グリチルレチン酸)と殺菌成分を含み、患部を保護する軟膏です12。
- 殺菌・鎮痛スプレー: ムヒののどスプレー17やチョコラBB口内炎リペアショット18など、抗炎症成分(アズレンスルホン酸ナトリウム)と殺菌成分を含有する製品があります。奥まった場所にも噴霧しやすく、子供向けのフレーバーが付いている製品もあります。
- 貼付剤(非ステロイドまたは弱ステロイド): 口内炎パッチ大正クイックケアのように、市販の貼付剤にも「指定第2類医薬品」に分類され、ステロイドなど薬剤師からの説明を要する成分を含む可能性がある製品も存在し、市販薬にも強さの段階があることを示しています16。
5.3 支持療法と全身的ケア
- 栄養補給: アフタ性口内炎とビタミンB群の欠乏との関連が指摘されています1920。チョコラBBジュニアのような子供向けのビタミン剤は、潜在的な根本原因に対処する選択肢となり得ます16。
- 疼痛管理: 痛みが食事や睡眠を妨げる場合は、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を使用することができます3。
- 口腔衛生: 口腔内を清潔に保つことは重要ですが、新たな外傷を避けるため、歯磨きは優しく行う必要があります3。
5.4 小児の口内炎治療薬の比較概要
以下の表は、利用可能な治療選択肢を整理し、その特徴を比較したものです。
製品名(例) | 主な有効成分 | 分類・作用機序 | 規制区分 | 剤形 | 小児への主な注意点 |
---|---|---|---|---|---|
オラコルチア | トリアムシノロンアセトニド | 副腎皮質ステロイド(抗炎症) | 処方箋医薬品 | 付着錠 | 乳幼児は指で剥がす恐れあり8。 |
ケナログ口腔用軟膏 | トリアムシノロンアセトニド | 副腎皮質ステロイド(抗炎症) | 処方箋医薬品/要指導医薬品 | 軟膏 | 保護者の指導監督のもと使用5。 |
トラフル軟膏 | アズレン、グリチルレチン酸 | 非ステロイド性抗炎症薬 | 第3類医薬品 | 軟膏 | 子供への使用が推奨されている12。 |
ムヒののどスプレー | アズレン、セチルピリジニウム | 非ステロイド性抗炎症薬、殺菌成分 | 第3類医薬品 | スプレー | 子供向けフレーバーあり17。 |
チョコラBBジュニア | ビタミンB群など | 栄養補給 | 第3類医薬品 | 錠剤 | 潜在的な栄養不足に対応16。 |
よくある質問
Q1: 子供の口内炎に、大人が使っているオラコルチアを自己判断で使っても良いですか?
いいえ、絶対におやめください。オラコルチアは処方箋医薬品であり、その使用には医師または歯科医師による正確な診断が不可欠です。お子様の口内炎が、ステロイドの使用が禁忌である感染症(ヘルペスやカンジダ症など)の可能性があり、誤った使用は症状を著しく悪化させる危険性があります5。必ず専門家を受診してください。
Q2: オラコルチアは何歳から使えますか?
添付文書に明確な年齢制限はありませんが、「乳幼児は指で剥がしてしまう恐れがある」と注意喚起されています8。安全かつ効果的に使用するためには、薬剤を貼る意味を理解し、剥がさないように協力できる年齢(個人差はありますが、一般的には学童期以降)が一つの目安と考えられます。最終的な判断は、処方する医師・歯科医師が行います。
Q3: オラコルチアを貼ってからどのくらいで効果が出ますか? 5日使っても治らない場合はどうすれば良いですか?
効果の発現には個人差がありますが、通常は数日以内に痛みの軽減などの改善が見られます。添付文書の類薬(ケナログ)情報によれば、5日間使用しても症状が改善しない場合、あるいは1~2日の使用で症状が悪化した場合は、診断が異なるか別の原因が考えられます。直ちに使用を中止し、処方した医師または歯科医師に相談してください5。
Q4: オラコルチアの副作用が心配です。どのような点に注意すればよいですか?
最も注意すべき局所的な副作用は、ステロイドの免疫抑制作用による二次的な口腔内感染症(特にカンジダ症)です6。治療中に、元々の口内炎以外の場所に新たな白い斑点が出現したり、口全体の赤みが増したりした場合は、副作用の可能性があります。速やかに使用を中止し、専門家にご相談ください。
結論
本レポートで提示したすべての情報を統合し、保護者の疑問に対する明確かつ実行可能な結論を提示します。「はい、オラコルチアは小児に使用可能ですが、その使用は極めて厳格な条件下でのみ許容されます。」
オラコルチアが安全かつ有効に使用できるのは、以下の3つの条件がすべて満たされた場合に限られます。
- 医師または歯科医師が、病変を「感染症ではないアフタ性口内炎」であると確定的に診断したこと。
- お子様が、適切な貼付を許容し、貼付剤を剥がしたりしないだけの年齢と協力性を持っていること。
- 保護者が、本レポートの第4章で詳述した貼付方法を正確に遵守し、副作用や症状の悪化がないか注意深く観察すること。
本レポートで提供される情報は、あくまで教育的な目的のためのものであり、専門的な医学的助言に代わるものではありません。保護者自身の判断で子供の口腔病変を自己診断し、処方箋医薬品であるステロイド剤による治療を開始することは、誤診された感染症を悪化させるという重大なリスクを伴うため、断じて避けるべきです5。
お子様の口内炎に直面した際は、まず危険信号がないか冷静に観察し、判断に迷う場合はいかなる薬剤も使用せず、直ちに小児科医または歯科医を受診してください。専門家との対話を通じて、お子様にとって最も安全で効果的な治療法を選択することが何よりも重要です。
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