はじめに
「オンラインゲーム」は、今や世代を問わず多くの人々に楽しまれている代表的な娯楽の一つです。近年はスマートフォンやコンピュータの性能向上、インターネット回線の高速化などが進み、自宅でも外出先でも気軽にオンラインゲームをプレイすることが可能になりました。オンラインゲーム自体は適度に楽しめば脳の認知機能を高めたり、リラックスや気晴らしとしての効果が期待できます。しかしながら、過度にのめり込んでしまうと、生活習慣や対人関係、さらには心身の健康に深刻な影響を及ぼすことも明らかになっています。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
この文章では、オンラインゲームの持つ代表的なメリットと、やりすぎたときに陥る危険性、そして実際に「ゲームをほどほどに楽しむ」ためのヒントについて、さまざまな研究を交えながら詳しく解説します。誰もが取り入れやすい対策を検討し、オンラインゲームの利点を活用しながらも依存を避けて、健全でバランスの取れた生活を送るにはどうすればよいか、一緒に考えていきましょう。
専門家への相談
オンラインゲームに関する科学的知見は、さまざまな研究機関・専門家によって蓄積されてきました。とくに近年は、オンラインゲームのメリットや依存にかかわる複雑なメカニズムについて、多方面から研究が進められています。たとえば、Behavioral Addictions: Criteria, Evidence, and Treatment(Kenneth Paul Rosenberg, Laura Curtiss Feder編)や、Granicら(2014)の研究報告(American Psychologist, 69巻1号, 66–78)などは、ゲームのポジティブな面と、過剰プレイによる懸念材料の両面を明確に示しています。また、近年の研究としては、Billieuxら(2021)がゲーム依存症の分類をめぐる議論を指摘しており(Journal of Behavioral Addictions, 10巻4号, e1189, doi:10.1556/2006.2021.00063)、King & Delfabbro(2022)は電子ゲームの心理学的影響を取り上げ、過度利用が引き起こすリスクを論じています(Current Opinion in Behavioral Sciences, 46, 101157, doi:10.1016/j.cobeha.2022.101157)。
本記事は、これらの研究結果や公的機関からの情報をもとに執筆しております。ただし、ここで提供する内容はあくまで一般的な情報であり、個々の状況に合わせた診断・治療の代替にはなりません。ご自身やご家族でオンラインゲームの問題を抱えている場合は、心療内科や精神科など適切な専門家へ相談しながら対処を検討することをおすすめします。
オンラインゲームがもたらす3つの主なメリット
オンラインゲームには、プレイヤーが正しく活用すれば認知機能の向上やリラックス効果など、いくつものメリットがあると示唆されています。以下では代表的なメリットを3点に分け、どのような仕組みでポジティブな効果が得られるのかを解説します。
1. 認知機能や問題解決力の向上
多くの研究が、アクションゲームなどをプレイすると選択的注意力(集中力)や視覚的空間認知力が高まると報告しています。たとえば、素早く敵や障害物を見分けながら同時に周囲の状況を把握する必要があるシューティングゲームを継続的にプレイすると、複数の対象を同時に捉えるマルチタスク能力や短期的な記憶力が鍛えられる可能性があります。さらに、迷路のような複雑なマップを探索し、最短ルートを探すゲームや、複雑な謎解きを伴うパズルゲームは、問題解決能力を高めるための一種のトレーニングとして働く側面もあると考えられています。
2. 前向きな感情・ストレス緩和
お気に入りのゲームを楽しく遊ぶことで得られるポジティブな感情は、ストレスを和らげたり気分転換を図ったりする際に有効です。特にパズルやパーティ系のミニゲームなど、比較的シンプルで短時間でも楽しめるものは、気軽に達成感を味わったり、繰り返しプレイしても過度なストレスを感じにくいという特徴があります。こうした小さな成功体験の積み重ねは、心の健康を保つうえで大きな役割を果たすともいわれています。
3. 挑戦を乗り越える動機づけの強化
ゲームは多くの場合、クリア目標が明確化され、プレイヤーが試行錯誤しながら課題を達成すると報酬が与えられるという仕組みが組み込まれています。失敗しても何度でも挑戦できることや、ゲーム内での成果が見える形で示されることで、「次こそはうまくいきたい」という強い動機づけが生まれます。このプロセスで培われる粘り強さや挑戦意欲は、実生活における学習や仕事などにも良い影響を与え得るでしょう。
過度なプレイがもたらすリスクと症状
一方で、ゲームにはまってしまい、コントロールがきかなくなる状態——いわゆる「ゲーム依存」や「ゲーム障害」——を引き起こす可能性も無視できません。世界保健機関(WHO)が国際疾病分類(ICD-11)にて「ゲーム障害」を行動成瘾のひとつとして位置づけたことも大きな話題となりました。以下のような状態に陥る場合は、要注意です。
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オンラインゲームが生活の中心になる
起きている時間の大半をゲームに費やすようになると、食事や睡眠など基本的な生活習慣が崩れ、学業や仕事、家事などの日常業務に大きな影響が出ます。 -
プレイ時間を減らそうとしてもやめられない
ゲームをやめよう、プレイ時間を減らそうと決めても、焦燥感や落ち着かなさに耐えられず、結局ゲームを再開してしまうことがあります。 -
感情やストレスの調整手段がゲームのみ
日常生活で感じる不安やストレス、寂しさなどを解消する手段としてゲームに依存し、リアルの人間関係や趣味、現実世界での達成感をほとんど得られなくなる恐れがあります。 -
身体的症状の悪化
長時間画面を見続けるためのドライアイや頭痛、肩こり、腰痛、同じ姿勢を続けることによる疲労感や倦怠感、睡眠不足による慢性的な体調不良などが起きやすくなります。 -
社会的孤立の深刻化
家族や友人との会話・交流が激減し、人付き合いを避けるようになるため、孤独感が強まります。その結果、さらにゲーム世界へ没入してしまう悪循環を招きがちです。
シンガポールやアメリカなどの調査結果
かつて発表された複数の調査では、若年層を対象にした場合にゲーム依存に陥る割合が一定数報告されています。たとえば、シンガポールの子どもを対象とした研究では、約9%の児童が過度プレイ(週42時間以上)に相当し、学業成績や友人関係に悪影響が見られたとされています。また、アメリカの調査では97%の少年と83%の少女がなんらかの形でゲームに接触していると報告され、うち数%が深刻な依存リスクを示唆されました。
こうした数字は文化的背景や社会環境によって変動しますが、「ゲームが趣味」と言えるレベルを超えて、家庭や学業・仕事に支障をきたす状態にまで発展するケースが少なからずあることは世界的に共通しているといえます。
うまくゲームを活用して依存を防ぐには?
1. プレイ時間を自己管理する
オンラインゲームのメリットを引き出すには、何よりまずプレイ時間のコントロールが欠かせません。研究結果でも、長時間(特に1日数時間以上)連続で遊ぶことで依存リスクが高まると示唆されています。もしすでにゲームをしすぎている実感がある人は、少しずつプレイ時間を短縮する計画を立ててみましょう。いきなり完全にやめようとするとストレスが増す場合もあるため、1日30分ずつ減らすといった段階的な目標を設定すると取り組みやすくなります。
2. 運動やほかの趣味と組み合わせる
ゲームは座ったまま行うことが多いため、運動不足や睡眠障害を招きやすい面があります。そこで、日々の生活の中に軽い体操やウォーキング、あるいは別の趣味(音楽演奏や料理など)を取り入れることをおすすめします。たとえば運動の場合は、身体を動かしてからゲームをプレイすると適度な疲労感が生まれ、ゲームのやりすぎを防ぎやすくなるでしょう。家族や友人と一緒にスポーツをする、あるいはゲーム以外のレクリエーション活動に参加するのも、社会的交流を保ちつつ依存を防ぐ有効な方法です。
3. 家族や身近な人のサポート
とくに未成年の場合、親がゲームを全面禁止するのではなく、「一緒にプレイする」機会をつくったり、コミュニケーションのきっかけにしたりすることが、依存リスクを下げる鍵になるといわれています。子どもの視点を理解するうえでゲームの内容に関心を持ち、適切な年齢制限や時間制限を設定することが大切です。実際、子どもが安心して遊ぶために「友達と一緒に遊ぶ場合は何時間まで」など、具体的なルールを決めると受け入れられやすいという報告もあります。
4. スマホ・PC環境を見直す
常にアクセスしやすい環境下では、誰でもつい手軽にゲームを立ち上げがちです。たとえばスマホにゲームアプリが大量に入っている場合は、通知機能をオフにする、あるいは起動しやすいトップ画面に置かないなどの対策で、自然とプレイ回数を減らせることがあります。また、PCでオンラインゲームをプレイする方は、時間管理アプリを活用し、一定時間でアラームが鳴るように設定しておくと、長時間プレイを回避しやすくなるでしょう。
5. 自分の心身の状態に意識を向ける
オンラインゲームを続けていると、いつのまにか何時間も経過していた、という経験を持つ人は多いかもしれません。体の不調(首や肩の凝り、目の疲れ、頭痛など)や気分の変化(イライラ、落ち込みなど)を見逃さないようにしましょう。休憩を定期的に取り、部屋の空気を入れ替える、ストレッチをする、目を休ませるために窓の外を眺めるなどの「画面から離れる時間」を積極的に確保することが重要です。
6. ゲーム内外の人間関係を区別する
オンラインゲームではボイスチャットやテキストチャットを通じて、他人と協力プレイを楽しめるのが大きな特徴です。これによって新たな交友関係が広がる場合もある反面、ゲーム世界のみでのつながりに依存すると、現実での人間関係がおろそかになるケースがあります。オンライン上のフレンドやギルドに熱中しすぎてリアルなコミュニケーションを避けるのではなく、「ゲーム内で培ったチームワークやコミュ力を、現実の会話や仕事仲間との連携にも生かす」という発想で、バランスをとるよう心がけましょう。
7. 適切な医療やカウンセリングを検討
もしゲーム依存が疑われるほど深刻な状態にある場合は、できるだけ早い段階で専門家に相談することが望ましいです。心療内科や精神科だけでなく、インターネット依存やゲーム障害に詳しいカウンセラー、医療機関も存在します。恥ずかしい、気が進まないといった気持ちがあるかもしれませんが、早期にケアを受けるほど回復が期待でき、本人と周囲の負担が軽減されます。
まとめ:楽しさと健康の両立を目指す
オンラインゲームは適度にプレイすれば、認知機能の向上やポジティブな感情の獲得など、多くのメリットをもたらしてくれます。一方で、プレイ時間やプレイスタイルを制御できない状態が長く続けば、生活習慣の乱れや身体的・心理的トラブルをも招きかねません。実際、世界保健機関(WHO)がゲーム障害を疾患として定義するに至った背景には、多くの事例研究や臨床データが蓄積されていることが挙げられます。
ゲームが趣味の一環で終わるか、依存症として大きなトラブルになるかは、プレイする本人の意識と習慣次第です。もし「ゲームが原因で生活や人間関係に支障が出てきている」と感じたら、自分の気持ちや行動を振り返り、客観的に見直すタイミングかもしれません。必要に応じて専門家のサポートを受けることも大切です。適度なゲーム利用はストレス解消や知的刺激となり得ますが、限度を超えれば心身の健康を蝕むリスクが高まります。
オンラインゲームと上手につきあうために大切なのは、「どれくらいの時間を費やし、どこまでのめり込むか」を明確にし、自己管理を意識すること。そして、現実世界での学業や仕事、家族との交流、友人とのコミュニケーションなど、他の重要な要素とのバランスを保つことです。ゲームを楽しむことで得られるクリエイティブな刺激や達成感を、ぜひ健全な形で活用しながら、より充実した日常を築いていきましょう。
参考文献
- Behavioral Addictions: Criteria, Evidence, and Treatment(Kenneth Paul Rosenberg, Laura Curtiss Feder編)
- Granic, I., Lobel, A., & Engels, R. C. M. E. (2014). The benefits of playing video games. American Psychologist, 69(1), 66–78
- https://pewresearch.org/fact-tank/2018/09/17/5-facts-about-americans-and-video-games/ (アクセス日: 2021/06/11)
- https://kidshealth.org/en/kids/video-gaming.html (アクセス日: 2021/06/11)
- https://kidshealth.org/en/parents/good-gaming.html (アクセス日: 2021/06/11)
- https://www.mayoclinichealthsystem.org/hometown-health/speaking-of-health/are-video-games-and-screens-another-addiction (アクセス日: 2021/06/11)
- https://www.health.state.mn.us/people/tvviewing/index.html (アクセス日: 2021/06/11)
- Billieux, J., King, D. L., Achab, S., 他 (2021). Controversies in the classification of gaming disorder: Critically appraising the WHO diagnostic approach. Journal of Behavioral Addictions, 10(4), e1189, doi:10.1556/2006.2021.00063
- King, D. L., & Delfabbro, P. H. (2022). The Psychology of Electronic Gaming. Current Opinion in Behavioral Sciences, 46, 101157, doi:10.1016/j.cobeha.2022.101157
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