はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって、外出や人が集まる場所への移動を極力避ける生活様式が広まっています。その一環として、多くの方が自宅にいながら生活必需品を手に入れられる「オンラインショッピング」を活用しています。外出機会を減らすことは有効な対策のひとつですが、「注文した商品にウイルスが付着していないか」「配送時に感染のリスクはないか」など、不安を抱える方も少なくありません。本記事では、オンラインで商品を購入する際に知っておきたいウイルス感染のリスクと、そのリスクを下げるための対策方法を詳しく解説いたします。
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本記事では、感染症や公衆衛生の知見をもとにまとめた情報を紹介しています。また、医療・公衆衛生の分野に携わる専門家の見解を参照しつつ、一般的な対策をわかりやすくお伝えするよう心がけています。なお、本記事の内容はあくまでも参考情報であり、最終的な判断や対策については必ず医療機関や公衆衛生の専門家にご相談ください。
ここで挙げる専門家として、記事中に言及のあった医師の意見を補足します。本記事は一部、内科医・総合内科を専門とする「Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh」のアドバイスをもとに制作されています。ただし、個別の症状やリスクに応じて必要な対応は異なるため、個人の健康状態については各自が専門家に直接確認し、適切な治療や指導を受けることが望ましいです。
新型コロナウイルスとオンラインショッピングにおける感染リスク
新型コロナウイルスの特徴
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、主に飛沫感染やエアロゾル感染、接触感染を通じて拡大しているとされています。咳やくしゃみなどで排出されたウイルスを他者が吸い込んだり、ウイルスが付着した物体表面に触れた手で口や鼻を触ったりすることで感染リスクが高まります。
感染症対策として、人との距離を保つ「ソーシャルディスタンシング」や「マスク着用」「手指衛生の徹底」などが推奨され、多くの方が外出機会を減らすためにネット通販を利用するようになりました。しかしネット通販で購入した商品や梱包材にウイルスが付着している可能性はゼロではないと考えられ、注意が必要です。
商品の梱包材や表面にウイルスが付着する可能性
2020年3月に医学誌 New England Journal of Medicine に掲載された研究によれば、新型コロナウイルスは段ボール上で最大24時間、プラスチックやステンレス鋼などの表面で最大72時間(3日間)生存可能と報告されています。ただし、これは「ウイルスが理想的な条件下でどれくらい長く生存しうるか」を示すデータであり、実際に段ボールや包装に付着したウイルスが必ず感染能力を維持するわけではありません。
例えば、梱包や配送に関わる人が感染症を発症していた場合、その人がウイルスを付着させてしまう懸念は否定できません。ただし、配送中や保管中に時間が経つほどウイルスの量は減少すると考えられています。また、海外から取り寄せる商品に関しても輸送に長い時間がかかることから、生存するウイルス量はさらに減り、結果として人に感染させるリスクは低いとされています。
アメリカの公的機関であるCDC(Centers for Disease Control and Prevention)も「輸入品を介した感染リスクを示す証拠は今のところない」としています。しかし、配送担当者が直接くしゃみや咳をしてウイルスを付着させたばかりの状態で受け取りをした場合、理論上は感染が起こり得るため、完全にゼロリスクではないという点は踏まえておかなければなりません。
オンラインショッピング時の最大のリスクは「人同士の接触」
物理的な商品の表面に付着したウイルスによるリスクも完全には否定できませんが、多くの専門家は「人と人が接触すること」による感染拡大のリスクのほうが圧倒的に高いと指摘しています。つまり、商品受け取り時に配送担当者と近距離・長時間接触することや、必要以上に外出して買い物を行うことが、感染リスク上昇の主因になりやすいのです。
日本国内でも行政や医療関係者が「不要不急の外出自粛」「3密(密閉・密集・密接)を避ける」「マスク着用」「こまめな手洗い」などを継続的に呼びかけています。オンラインショッピングはこれらのリスクを下げるうえで非常に有効な手段ではありますが、受け取り時の注意を怠ると想定外の場面で感染リスクが生じる可能性があるため、適切な対処法を身につけることが重要です。
ウイルスが段ボールや梱包材に付着した場合の対処法
1. 梱包のまましばらく放置する
購入した商品が食品や生鮮品など「すぐに開封しなければならないもの」でなければ、届いてすぐに開けずに、できるだけ人の往来が少ない場所(玄関先や車庫など)で24時間程度放置すると、ウイルスの多くが失活すると考えられています。先述した研究でも、段ボール表面で24時間後にウイルス量は大きく減少していたという報告があります。
もしどうしても早めに開封する必要がある場合は、以下の手順で対策するとリスク低減に役立ちます。
- 梱包材をできるだけ外側で開封し、中身を取り出す
- 開封直後の梱包材は密封してゴミ箱へ処分
- その後、すぐに石鹸を使った入念な手洗いを行う
このように、不要な接触を減らし、ウイルスが付着しているかもしれない包装材を速やかに処分することで、手指や室内環境への二次汚染リスクを下げられます。
2. 食品や日用品の取り扱い
オンラインスーパーなどで購入した食料品や日用品(缶詰、ボトル飲料など)をすぐに使用したい場合、以下のような工夫が考えられます。
- 容器表面の簡易消毒
アルコールや次亜塩素酸ナトリウムを含む市販の消毒液で軽く拭き取り、乾いた布やペーパータオルで拭き取る。食品の直接の表面ではなく、パッケージ表面を軽く消毒するだけでも安心感が高まる。 - 生鮮食品の洗浄
野菜や果物などは流水で洗うだけでも大部分の汚れが除去されます。洗剤や消毒液で洗うと体に有害になりかねないため、食品衛生上は水洗いが基本です。
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、「食品や食品包装を経由した感染例の確たる報告は見当たらない」と公表しており、過度に恐れる必要はありません。しかし、万が一のリスクを減らすために、適度な洗浄・消毒を行ったうえで手指を洗う習慣を続けることが望ましいでしょう。
3. 配送担当者との接触を最小限にする
ウイルス感染の主な経路が飛沫感染やエアロゾル感染と考えられている現在、物の表面よりも人と人との距離感が重要です。そのため、受け取り時に「対面・至近距離で長時間のやり取り」をしないように工夫することが大切です。
- 置き配や宅配ボックスの活用
可能な場合、宅配ボックスを使って非対面で受け取る、玄関先に商品を置いてもらう「置き配」を利用するなど、直接の受け渡しを回避する。 - オンライン決済の導入
商品代金を事前にクレジットカードや電子マネーで支払っておくことで、受け取り時の現金やカード手渡しを減らし、人との接触や共用物への接触機会を減少させる。 - 最低2メートルの距離を保つ
直接サインが必要な場合でも、配送員と2メートル以上の距離を取るように意識し、マスクや手袋などを適宜利用して対策を行う。
CDCの見解では、感染症対策として「人との距離を保つこと(フィジカルディスタンス)」が最優先事項であり、配送員と接近しすぎなければウイルスへの暴露リスクは格段に低下すると考えられています。
研究事例から見るオンラインショッピングの感染リスクと対策
近年、世界各国で新型コロナウイルスの感染様式や予防策に関する多数の研究が行われています。その中で「オンラインショッピングとウイルス伝播」に焦点を当てた直接的な大規模研究は限定的ですが、関連が深い幾つかのエビデンスを総合すると以下のような知見が得られています。
- 段ボールやプラスチック表面でのウイルスの生存性
前述の New England Journal of Medicine の研究(2020年)以降も、段ボールやプラスチックに付着したウイルスは時間とともに活性が著しく低下するという報告が重なっています。 - 接触感染よりも飛沫感染のリスクが高い
2021年に Infect Dis Rep に掲載された文献(Noor R. 2021, doi:10.3390/idr13040182)によれば、SARS-CoV-2の主な感染拡大は、やはり飛沫やエアロゾル、または人同士の密接状態でのウイルス拡散に大きく依存すると考えられています。物体表面に付着したウイルスも無視はできないものの、人同士の接触機会や密室環境のほうがリスクは高いという解釈です。 - ワクチン接種の普及に伴う重症化リスクの軽減
ワクチンの普及が進んだ2022年以降、重症化や死亡リスクが大きく低減したとする研究が多数報告されています。例えば、2022年に BMJ で報告された研究(Lauring AS ら, doi:10.1136/bmj-2021-069761)では、ワクチン接種後の重症化率が大幅に下がったとされ、ウイルスに対する社会全体の抵抗力は高まりつつあります。これにより、オンラインショッピングに限らず、日常生活全般のリスク軽減が期待されています。 - 変異株や新たなウイルス動向のモニタリング
2023年に The Lancet Infectious Diseases に掲載された文献(Robert DM ら, doi:10.1016/S1473-3099(22)00777-X)によると、オミクロン株などの新たな変異株の伝播速度や免疫回避能力にも注意が必要とされています。ただし、変異株の広がりによっても「飛沫感染や密接環境での拡大が中心」という基本構造は大きく変わりにくいと考えられるため、オンラインショッピングや非対面での受け取りに関する推奨は変わりません。
以上のような研究成果は主に海外事例や一般的な公衆衛生上の視点に基づいており、日本国内でもその傾向は概ね同様と考えられています。大切なのは、物品表面の感染よりも、実際には人同士が直接接触する状況や密閉空間における飛沫・エアロゾル拡散による感染リスクが非常に高いという事実です。
商品受け取りの際の実践的なアドバイス
ここでは、感染リスク低減に役立つ具体的な工夫を改めて整理します。
- 受け取り方法の指定
宅配ボックスや置き配を利用するなど、配送員と直接対面しなくても良い方法を選ぶ。可能であればオンライン決済も利用し、人同士の接触を最小限に抑える。 - 梱包材の扱い
すぐに開封しなくても問題ない場合は、届いた箱を玄関先などにしばらく置いて、開封時期を遅らせる。開封する場合はすぐに箱を廃棄し、手指を丁寧に洗う。 - 食品や消耗品の表面清拭
すぐに使う必要があるパッケージ類は、アルコール消毒液で軽く拭いてから取り扱うとより安心。 - 手指衛生の徹底
物品を受け取ったあと、または開封作業や梱包材の廃棄を行ったあとは、石鹸やハンドソープなどを使って20秒以上かけて手を洗う。アルコール消毒液を使った手指消毒も有効。
オンラインショッピングを安全に利用するメリット
オンラインショッピングを利用することによるメリットは次のとおりです。
- 外出頻度の削減
実店舗に出向く必要がないため、公共交通機関や人混みの多い場所を避けられ、飛沫感染リスクを大幅に下げられる。 - 多様な商品の購入が容易
食品や日用品だけでなく、医療用品や書籍なども含め、さまざまなジャンルの商品を自宅にいながら注文できる。 - 非対面・非接触の受け取りが可能
宅配ボックスや置き配サービスを利用すれば、人と直接会う機会を減らせる。 - 時間の有効活用
移動時間やレジ待ちなどが不要になるため、余分な手間をかけずに必要なものを手に入れられる。
一方で、注文時に在庫状況や配送遅延のリスクを確認し、余裕を持って必要なものを頼むことも大切です。新型コロナウイルスの流行に伴って物流が混雑する場合もあるため、早めの計画や少し長めの納期を想定すると安心できます。
おすすめしたい追加対策と注意点
1. 配送タイミングの調整
オンラインショップによっては、配送日時を細かく指定できるサービスがあります。外出が多い日は避け、人が周りにいないタイミングで受け取りやすい時間を選ぶことで、人との接触機会をさらに減らすことが可能です。
2. マスク・手袋の活用
万一、受け取り時に直接対面やサインなどが必要な場面では、マスク着用、状況に応じて使い捨て手袋の装着も検討しましょう。特に高齢者や基礎疾患を持つ方は自身を守るうえで有効です。ただし、手袋をしている間も絶対に安心というわけではなく、手袋を外したあとは必ず手洗いやアルコール消毒を行うようにしてください。
3. 家の中の動線管理
荷物を玄関や特定の場所で受け取るようにして、開封作業も同じ場所で行うと、ウイルスが家の中に拡散する可能性を最小限にできます。たとえば、床に新聞紙やビニールシートを敷いて開封し、そのまま梱包材を包んで捨てると、他の部屋を汚染しにくくなります。
4. 高齢者や基礎疾患を持つ方へのフォロー
オンラインショッピングの操作や支払い方法の登録などに不慣れな方もいるため、家族や地域コミュニティでサポート体制を整えると安心です。また、受け取り時に近距離でのサポートが必要な場合は、十分な感染対策(マスク、手袋、手洗いなど)を行いながら協力しましょう。
5. 最新情報の定期確認
新型コロナウイルスの状況は変化が激しく、新たな変異株の出現などで推奨される対策やガイドラインも随時アップデートされます。厚生労働省や地元自治体、医療専門家の公式発表を定期的に確認し、最新の知見を取り入れながら安全なオンラインショッピングを継続することが望ましいです。
結論と提言
オンラインショッピングは、外出機会の削減という点で非常に有効な感染症対策の一つです。新型コロナウイルスは梱包や商品表面にも一定期間生存し得る可能性が指摘されていますが、時間の経過や環境要因によって急速に感染力が失われると考えられます。何よりも大切なのは、人が密集する場所へ行くリスクや配送員との密接なやり取りを減らすことであり、非接触・非対面の環境を整えるほど安全性は高まります。
- 段ボールの放置
商品が届いても急ぎでなければ、すぐに開封せず24時間程度待つことでウイルス残存リスクを大幅に低減できる。 - 食品包装の簡易消毒
必要に応じてアルコールで表面を拭くなどの対策を行うと安心感が増す。ただし、食品自体に消毒液をかけるのは適切ではない。 - 配送員との距離確保
マスク着用や玄関先への置き配などを利用して、直接対面を避ける。カード払いなど事前決済を選べばさらなる接触削減が可能。 - 手洗いの徹底
梱包材や商品を触ったあとは必ず石鹸で手を洗う。あるいはアルコール消毒液で手指を除菌する。
これらの対策を講じることで、オンラインショッピングによる感染リスクを極力抑えながら、必要な物資を安心して入手できます。特に高齢者や基礎疾患を持つ方など、重症化リスクが高い方々やそのご家族は、より慎重な接触回避と手洗いなどを意識して生活を続けることが望まれます。
最後に、新型コロナウイルスに関する知見は日々更新されています。自治体や医療機関、厚生労働省の最新情報に目を配りつつ、必要に応じて適切な医療機関や専門家の指示を仰ぐことが大切です。日常生活を守りながら感染リスクを低減するために、オンラインショッピングを上手に取り入れ、安全かつ快適な生活を実現していきましょう。
参考文献
- Coronavirus (COVID-19) Prevention: 12 Tips and Strategies
アクセス日: 17.04.2020 - Tips to prevent coronavirus transmission
アクセス日: 17.04.2020 - 3 Ways to Avoid Picking Up Germs From Takeout
アクセス日: 21.04.2020 - Lauring AS ほか (2022)「Clinical severity of, and effectiveness of mRNA vaccines against, Covid-19 from omicron, delta, and alpha SARS-CoV-2 variants in the United States: prospective observational study.」BMJ, 376:e069761, doi:10.1136/bmj-2021-069761
- Noor R. (2021)「Transmission of SARS-CoV-2: a review of viral, host, and environmental factors.」Infect Dis Rep, 13(4):10182, doi:10.3390/idr13040182
- Robert DM ほか (2023)「Comparative Effectiveness of COVID-19 Vaccine Boosters」The Lancet Infectious Diseases, 23(1):e34–e46, doi:10.1016/S1473-3099(22)00777-X
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この記事は一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、医療専門家の診断や治療の代替ではありません。ご自身の健康状態について疑問や不安がある場合は、必ず医師をはじめとする専門家に直接ご相談ください。
受診・相談のすすめ
本記事で紹介した内容はあくまで一般論であり、新型コロナウイルス感染症の症状やリスクは個々人で異なります。基礎疾患をお持ちの方、ご高齢の方、妊娠中の方などは特に重症化しやすい可能性があるため、少しでも体調に不安を感じたら早めに医療機関や専門家へ相談しましょう。オンラインショッピングの活用は日常生活を維持する上で有効ですが、状況に応じた適切な予防策を行うことが大切です。十分な注意を払いながら、生活の中での感染リスクを最小限に抑え、お互いに安全を守り合いましょう。