サロン帰りの美しさをキープ!髪色を守るシャンプーの選び方 - 科学的根拠と専門家が教える完全ガイド【2025年最新版】
皮膚科疾患

サロン帰りの美しさをキープ!髪色を守るシャンプーの選び方 – 科学的根拠と専門家が教える完全ガイド【2025年最新版】

美容室で染めたばかりの、あの透明感あふれる美しい髪色。鏡を見るたびに心が躍るものの、その喜びは長くは続きません。多くの人が経験するように、わずか1〜2週間で鮮やかさは失われ、黄ばみや赤みがかった「残念な色」に変わってしまう。これは、ヘアカラーを愛するすべての人にとって共通の悩みではないでしょうか。1
「きっと私の髪質が悪いから」「高いシャンプーを使わないとダメなのかも」「色落ちするのは仕方ない」――。そう諦めてしまう声も少なくありません。しかし、それは真実ではありません。ヘアカラーの褪色(色落ち)は、運や髪質のせいだけで起こるのではなく、明確な科学的メカニズムに基づいた現象なのです。そして、そのメカニズムを理解し、正しい対策を講じることで、色落ちは大幅に「コントロール」することが可能です。
この記事は、巷にあふれる表面的な情報とは一線を画します。私たちJapaneseHealth.org編集部は、毛髪科学の専門家、大手化粧品メーカーの研究開発者、そして実際に製品を使用する消費者の声という、多角的な視点から情報を徹底的に分析しました。なぜ髪は染まり、そしてなぜ色は抜けるのかという「Why(なぜ)」から、あなたの髪とライフスタイルに合った最適なシャンプーを選び、日々のケアをどう実践すべきかという「How(どうやって)」まで、科学的根拠に基づいて網羅的に解説します。
本稿を読み終える頃には、あなたは単に「おすすめのシャンプー」を知るだけでなく、自身の髪を守るための「知識」という最も強力な武器を手にしているはずです。サロン帰りのあの輝きを、1日でも長く保つための完全ガイドへ、ようこそ。


この記事の科学的根拠

この記事は、引用元として明示された最高品質の医学的・科学的エビデンスにのみ基づいて作成されています。以下は、参照された情報源とその医学的指導との関連性を示すものです。

  • 株式会社ミルボン (Milbon): 本記事におけるヘアカラーの色落ちメカニズム、特にお湯の温度やヘアアイロンの熱が褪色に与える影響に関する記述は、同社の公開する技術情報に基づいています。2
  • タカラベルモント株式会社 (Lebel): アルカリカラーが髪を染める化学的プロセス(キューティクルの開放、脱色、発色、定着)に関する詳細な解説は、同社の研究コラムを主要な典拠としています。3
  • Polymer Journal (高分子学会): シャンプー洗浄による染料の褪色を抑制する特定の高機能ポリマー(ポリクオタニウム-55)の効果に関する記述は、PubMedに収載された学術論文のデータを引用しています。4
  • 株式会社LIXIL: 水道水に含まれる残留塩素がヘアカラーの褪色を促進するという科学的見解は、同社が行った研究結果に基づいています。5
  • 日本ヘアカラー工業会 (JHIA): 化粧品の広告表現に関する薬機法の規制(例:「髪にやさしい」という表現の可否)についての解説は、同会が定める自主基準を典拠としています。6

要点まとめ

  • ヘアカラーの褪色は「染料の流出」と「染料の変質」が主な原因。毎日のシャンプー、紫外線、熱、水道水が大きく関与しています。
  • シャンプー選びは「洗浄成分」が最重要。「ラウレス硫酸Na」などの高級アルコール系や「オレフィン系」を避け、「アミノ酸系」「ベタイン系」を選びましょう。
  • シャンプー時の湯温は38℃以下が鉄則。高温は染料の流出を加速させます。
  • 紫外線やヘアアイロンの熱は染料を直接破壊します。髪用のUVスプレーや、アイロン温度を160℃以下に設定するなどの対策が不可欠です。
  • 日々のケアは「カラーケアシャンプー」で色落ちを抑制し、色落ちが気になり始めたら週2〜3回「カラーシャンプー」で色味を補充する戦略的使い分けが効果的です。

第1部:褪色の科学 – 髪が染まる仕組みと色が抜ける本当の理由

効果的な対策を立てるためには、まず敵を知ることから始めなければなりません。ヘアカラーがどのように髪を染め、そしてどのようなメカニズムで色が失われていくのか。その科学的な基礎を理解することが、美髪をキープするための第一歩です。

1-1. 髪が染まる仕組み:アルカリカラーの科学

現在、美容室や市販品で主流となっているヘアカラーは「酸化染毛剤」、通称「アルカリカラー」と呼ばれるものです。2 これは、髪の内部で化学反応を起こすことで、色を長持ちさせる画期的な技術です。タカラベルモント株式会社の技術資料によると、そのプロセスは大きく3つのステップに分けられます。3
Step 1: キューティクルを開く – 染料の通り道作り
ヘアカラー剤は、主に「1剤」と「2剤」を混ぜ合わせて使用します。7 1剤にはアルカリ剤(アンモニアなど)と、まだ色のない小さな染料(酸化染料)が含まれています。このアルカリ剤が髪に塗布されると、髪の表面を覆うウロコ状の組織「キューティクル」をアルカリの力で膨潤させ、こじ開ける役割を果たします。3 これにより、染料が髪の内部(コルテックス)へ侵入するための通り道が確保されるのです。
Step 2: 脱色と発色 – 内部での化学反応
キューティクルが開いて染料が内部に浸透すると、2剤に含まれる酸化剤(過酸化水素)が本格的に働き始めます。ここで行われるのは、2つの重要な化学反応です。3

  • 脱色(ブリーチ): 過酸化水素が発生させる酸素が、髪の元々の色を決定しているメラニン色素を分解します。これにより、髪の色が明るくなります。日本人の髪に多いユーメラニン(黒褐色系)は脱色されやすい一方、フェオメラニン(黄赤色系)は脱色されにくいため、ブリーチすると赤みや黄みが残りやすい傾向があります。3
  • 発色(酸化重合): 同時に、酸素は髪の内部に侵入した小さな染料同士を化学的に結合させます。これを「酸化重合」と呼びます。結合した染料は分子量が大きい「高分子」となり、ここで初めて特定の色を発するようになります。2

Step 3: 染料の定着 – 色の閉じ込め
髪の内部で大きく、かつ色を持つようになった染料分子は、入り口であるキューティクルの隙間よりも大きくなっているため、簡単には外に出られません。8 最後に髪を乾かすことでキューティクルが閉じ、染料が髪の内部に物理的に閉じ込められることで、色が定着します。これが、アルカリカラーが「永久染毛剤」と呼ばれ、色持ちが良い理由です。
しかし、この染色のための化学プロセスこそが、後に続く褪色の根本的な原因を生み出しているという事実を見過ごしてはなりません。アルカリによって一度こじ開けられたキューティクルは、残念ながら完全に元の状態に戻ることはないのです。9 つまり、ヘアカラーをした髪は、いわば「ドアが少し開いたままの状態」にあり、常に染料が流出するリスクを抱えていると言えます。この視点を持つことが、真のカラーケアを理解する上で極めて重要です。色持ちを良くすることは、単に色落ちを防ぐだけでなく、「カラーリングによって必然的に生じた髪の構造的脆弱性を、いかに管理し、補うか」という、より高度なダメージケアそのものなのです。

1-2. 褪色の二大原因:「染料の流出」と「染料の変質」

サロン帰りの美しい髪色が失われるプロセスは、主に2つの科学的な原因に大別されます。この2つを区別して理解することで、対策もより明確になります。
原因1:染料の流出(褪色)
これは、髪の内部に定着していた染料が、物理的に外へ流れ出てしまう現象です。3 最大の原因は、毎日のシャンプーです。髪が濡れるとキューティクルは再び開きやすくなり、その隙間から高分子化したはずの染料が少しずつ溶け出し、洗い流されてしまいます。3
特に、ヘアカラーやブリーチを繰り返したダメージ毛は、キューティクルが剥がれたり、内部のタンパク質が流出して空洞化(ポーラス化)したりしているため、染料を繋ぎとめておく力が弱くなっています。8 そのため、健康な髪に比べて染料の流出が格段に早く、激しくなります。また、染料の種類によっても流出しやすさは異なり、一般的に赤系の染料は水に溶けやすく、アッシュ系の染料は分子が比較的小さいため、どちらも褪色が早い傾向にあります。8
原因2:染料の変質(変色)
これは、髪の内部にある染料が、外部からのエネルギーによって化学構造自体を破壊・変化させられてしまう現象です。2 染料が本来の色を発せなくなったり、全く別の色に変わってしまったりするため、「変色」とも呼ばれます。
主な原因は、紫外線とヘアアイロンの熱です。3 これらの強力なエネルギーは、染料分子の化学結合を直接的に攻撃し、分解してしまいます。Tシャツを天日干しすると色褪せるのと同じ原理が、髪の内部で起こっているのです。10 特に、アッシュ系などの寒色系カラーは紫外線や熱の影響を受けやすいと言われています。2
つまり、美しい髪色をキープするためには、「染料をいかに流れ出させないか(流出対策)」と「染料をいかに破壊させないか(変質対策)」という、2つの側面からのアプローチが不可欠なのです。

第2部:髪色を奪う4つの日常的要因 – あなたの習慣は大丈夫?

褪色の科学的メカニズムを理解したところで、次に私たちの日常生活に潜む具体的な「褪色要因」を詳しく見ていきましょう。知らず知らずのうちに行っている習慣が、実は髪色を奪う犯人かもしれません。

2-1. 毎日のシャンプー:お湯の温度と洗浄成分の脅威

ヘアカラーの色持ちにとって、毎日のシャンプーは最大の試練です。ここで注意すべきは「お湯の温度」と「シャンプーの洗浄成分」です。
お湯の温度:38℃が運命の分かれ道
「熱いお湯の方が汚れが落ちそう」と思うかもしれませんが、これはカラーヘアにとっては禁物です。大手化粧品メーカーのミルボンが行った実験では、染めた毛束を38℃と42℃のお湯にそれぞれ浸したところ、わずか4℃の違いで42℃の方が明らかに色落ちが激しいという結果が出ています。2
これには2つの科学的理由があります。第一に、染料は水温が高いほど水に溶け出しやすくなる性質があります(溶解度の増加)。第二に、髪のタンパク質は熱によって膨潤し、キューティクルがさらに開きやすくなるため、染料の流出経路を広げてしまうのです。2 サロンカラーを長持ちさせたいなら、シャワーの温度は38℃以下のぬるま湯に設定することが鉄則です。
洗浄成分:シャンプーの心臓部を見極める
シャンプーによる色落ちの最大の鍵を握るのは、ボトルデザインや香りではなく、その洗浄力、すなわち「洗浄成分(界面活性剤)」です。洗浄力が強すぎるシャンプーは、汚れだけでなく、髪内部の染料まで根こそぎ洗い流してしまいます。
特に注意が必要なのが、市販のシャンプーに多く使われている「高級アルコール系(硫酸系)」と呼ばれる洗浄成分です。11 成分表示に「ラウレス硫酸Na」や「ラウリル硫酸Na」と記載されていたら要注意。これらは優れた泡立ちと高い洗浄力を持ちますが、その分、脱脂力も非常に強く、カラーの色落ちを著しく早める原因となります。11
さらに、「サルフェートフリー」と謳っていても安心はできません。その代わりに配合されていることが多い「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」も、硫酸系に匹敵する、あるいはそれ以上に強い洗浄力を持つ成分です。12 これらはカラーヘアにとっては避けるべき成分と言えるでしょう。13
pHの影響:アルカリから弱酸性へ
ヘアカラー直後の髪は、アルカリ剤の影響でpHがアルカリ性に傾いています。この状態ではキューティクルが開きやすく、染料が非常に流出しやすい状態です。9 髪や頭皮が最も安定するのはpH4.5〜5.5の弱酸性の状態。したがって、弱酸性のマイルドなシャンプーを使い、髪のpHを速やかに正常な状態に戻してあげることが、キューティクルを引き締め、染料の流出を防ぐ上で非常に重要になります。9

2-2. 紫外線(UV):見過ごされがちな最強の褪色要因

肌への影響はよく知られていますが、髪はさらに過酷な状況にあります。研究によれば、髪や頭皮は顔の約3倍もの紫外線を浴びているとされています。10 紫外線は、ヘアカラーにとってまさに「天敵」であり、二重のダメージを与えます。
第一に、前述の通り、紫外線のエネルギーは髪の内部にまで到達し、染料の化学結合を直接破壊して「変色」を引き起こします。2 特にアッシュやマットなどの寒色系カラーは、この紫外線による変色の影響を受けやすいと美容師の間でも言われています。2
第二に、紫外線は髪そのものを構成するケラチンタンパク質、特にその強度を支えるS-S結合(ジスルフィド結合)を破壊します。14 これによりキューティクルはダメージを受けて剥がれやすくなり、髪は内部の成分が流出しやすい多孔質な状態になってしまいます。15 つまり、紫外線は染料を直接破壊するだけでなく、染料が「流出」しやすい環境をも作り出してしまうのです。
さらに恐ろしいのは、髪が濡れている状態だと、このダメージが加速することです。14 夏の海やプールで髪色が急激に抜けるのは、濡れた髪が無防備な状態で強い紫外線を浴びるためです。

2-3. 熱ダメージ:ヘアアイロンが髪色を「焼く」仕組み

毎日のスタイリングに欠かせないヘアアイロンやコテも、使い方を誤ると強力な褪色要因となります。これも紫外線と同様、熱エネルギーが染料の化学構造を直接変化させ、破壊してしまうためです。3
ミルボンの実験では、160℃と180℃のヘアアイロンをそれぞれ毛束に当てた場合、わずか20℃の差で180℃の方が圧倒的に色落ちが進むことが示されています。2 高温で長時間同じ場所に当て続ける行為は、髪色を文字通り「焼いて」いるのと同じことなのです。

2-4. 水道水の罠:残留塩素と金属イオンの影響

シャンプー、紫外線、熱。これらは比較的よく知られた要因ですが、もう一つ、ほとんどの人が見過ごしている、しかし科学的にその影響が指摘され始めている要因があります。それが、毎日使う「水道水」です。
近年、大手住宅設備メーカーLIXILの研究により、水道水に含まれる残留塩素がヘアカラーの褪色に影響を与えることが初めて科学的に明らかにされました。5 塩素は強力な酸化作用を持ち、髪のタンパク質を変性させ、キューティクルを傷つけます。16 これにより髪のダメージが進行し、結果として染料が流出しやすい状態が作られてしまうのです。5
さらに、信州大学の研究では、褪色の原因は塩素だけでなく、水道管から溶け出す可能性のある銅などの金属イオンも関与していることが示唆されています。17 髪に付着した金属イオンが紫外線と反応することで、髪へのダメージがさらに増幅されるという報告もあり18、水道水が持つ潜在的なリスクは決して無視できません。
これらの要因は、それぞれ独立して作用するわけではありません。紫外線や塩素でダメージを受けた髪は、シャンプーによる色落ちがより激しくなる。ダメージでパサついた髪を整えようと高温のアイロンを使えば、さらに変色が進む。このように、各要因は相互に影響し合い、「ダメージの悪循環」を生み出しています。したがって、真のカラーケアとは、個別の問題に対処するだけでなく、この負の連鎖を断ち切り、髪の防御力を総合的に高めるという、ホリスティックな視点が不可欠なのです。

第3部:プロが教えるカラーケアシャンプー選びの決定版

褪色の原因が複雑に絡み合っていることがお分かりいただけたでしょう。その中でも、私たちが毎日コントロールできる最も重要な要素が「シャンプー選び」です。ここでは、専門家の視点から、本当に髪色を守るシャンプーを自ら選び抜くための、具体的かつ実践的な知識を伝授します。

3-1. 最重要ポイントは「洗浄成分」:避けるべき成分・選ぶべき成分の全知識

シャンプー選びで最も重視すべきは、華やかな広告コピーやボトルのデザイン、香りではありません。製品の裏面に記載されている「成分表示」こそが、そのシャンプーの品質を物語る最も正直な情報源です。特に、成分表示の最初の方に記載されている「洗浄成分(界面活性剤)」が、色持ちを左右する最大の鍵となります。

【絶対に避けるべき洗浄成分】

  • 高級アルコール系(硫酸系): 成分表示に「ラウレス硫酸Na」「ラウリル硫酸Na」「ラウレス硫酸アンモニウム」などと書かれているものです。石油由来で安価に製造でき、非常に強い洗浄力と豊かな泡立ちが特徴ですが、その分、髪と頭皮への刺激が強く、必要な油分まで奪い去ります。ヘアカラーの染料を洗い流す力も極めて強く、色落ちの最大の原因とされています。11 ドラッグストアで安価に手に入るシャンプーの多くが、この成分を主成分としています。
  • オレフィン系: 近年、「サルフェートフリー(硫酸系不使用)」を謳う製品が増えていますが、その代わりに「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」が配合されている場合があります。これも石油由来で、洗浄力は硫酸系と同等か、それ以上に強力です。12 刺激性も高いため、カラーヘアにとっては硫酸系と同様に避けるべき「隠れ脱脂系成分」と認識してください。13
  • 石けん系: 「石ケン素地」「カリ石ケン素地」「脂肪酸Na」などがこれにあたります。天然由来で安全性は高いものの、洗浄力が強く、アルカリ性であるためキューティクルを開きやすくしてしまいます。髪がきしみやすく、カラー染料の流出を招きやすい性質があります。19

【選ぶべき髪に優しい洗浄成分】

  • アミノ酸系: カラーケアシャンプーの王道とも言える成分です。「ココイルグルタミン酸TEA」「ラウロイルメチルアラニンNa」「ココイルアラニンTEA」などが代表的です。アミノ酸は髪や皮膚と同じタンパク質を構成する成分であり、洗浄力が非常にマイルド。髪と頭皮の潤いを保ちながら、汚れだけを優しく洗い流します。19 色落ちを最小限に抑えたい場合の第一選択肢となります。
  • ベタイン系(両性イオン系): 「コカミドプロピルベタイン」「ラウラミドプロピルベタイン」などがこれにあたります。単体で主成分になることは少なく、主にアミノ酸系と組み合わせて洗浄力や泡立ちを補助する役割を担います。非常に低刺激で、ベビーシャンプーにも使用されるほど安全性が高いのが特徴です。20
  • PPT系(タンパク質系): 「ココイル加水分解ケラチンK」「ラウロイル加水分解シルクNa」など、洗浄成分自体が髪の補修成分(タンパク質)でできている、最も贅沢な洗浄成分です。髪を補修しながら洗うという理想的なケアが可能ですが、非常に高価なため、配合されている製品は限られます。20

これらの成分を一覧で比較できるよう、以下の表にまとめました。ご自身のシャンプーがどこに分類されるか、ぜひ確認してみてください。

洗浄成分の比較表
系統名 代表的な成分名 洗浄力 刺激性 色持ちへの影響 価格帯 特徴
高級アルコール系 ラウレス硫酸Na, ラウリル硫酸Na 非常に強い 強い 非常に悪い 安価 泡立ちが良いが、脱脂力が強く褪色を最も促進する。
オレフィン系 オレフィン(C14-16)スルホン酸Na 非常に強い 強い 非常に悪い 安価 サルフェートフリーの謳い文句に注意。洗浄力は硫酸系並み。
石けん系 石ケン素地, カリ石ケン素地 強い 中程度 悪い 安価 アルカリ性でキューティクルを開きやすく、きしみやすい。
アミノ酸系 ココイルグルタミン酸TEA, ラウロイルメチルアラニンNa マイルド 非常に弱い 非常に良い やや高価 カラーケアの基本。保湿力が高く、しっとりした洗い上がり。
ベタイン系 コカミドプロピルベタイン 弱い 非常に弱い 非常に良い 主に補助成分。低刺激で安全性が高い。
PPT系 ココイル加水分解ケラチンK マイルド 非常に弱い 最も良い 高価 洗浄と補修を同時に行う最高級成分。ハリ・コシを与える。

3-2. 褪色防止を科学する:プロが注目するキー成分

優しい洗浄成分で「守り」の基盤を固めた上で、さらに褪色防止やダメージケアに特化した「攻め」の成分が配合されているかどうかもチェックしましょう。プロが注目するキー成分は以下の通りです。

褪色防止成分(物理的バリア形成)

ポリクオタニウム-55 (Polyquaternium-55): 近年のヘアケア研究で特に注目されている高機能ポリマーです。学術論文においても、シャンプー洗浄による酸化染料の褪色を有意に保護する効果が報告されています。4 この成分はプラスの電荷(カチオン性)を帯びており、ダメージを受けてマイナスに帯電した髪の表面に選択的に吸着します。そして、疎水性(水を弾く)の丈夫なフィルムを髪の表面に形成することで、染料が水に溶け出すのを物理的にブロックします。21 まさに、髪をコーティングする「見えないレインコート」のような役割を果たし、最大で50%の褪色抑制効果が示された研究もあります。4 モルトベーネの「MoeMoe」シリーズなどに配合されています。22

褪色防止成分(化学的ダメージ防御)

ザクロ果実エキス (Punica granatum L.): 強力な抗酸化作用を持つポリフェノールを豊富に含むことで知られています。ブラジルで行われた研究では、ザクロエキスを10%配合したヘアケア製品が、UVA(紫外線A波)による赤系染料の褪色を60.8%も抑制したことが報告されています。23 これは、ザクロエキスが紫外線によって発生するフリーラジカルを捕捉し、染料の化学構造が破壊されるのを防ぐためです。24 UVダメージによる「変色」に特に効果が期待できる成分です。

ダメージ補修・色持ち向上成分

  • ヘマチン: 美容室のカラー後の処理でも使われる成分。カラー剤による残留アルカリを中和・除去し、髪のpHを安定した弱酸性に戻す働きがあります。また、髪の主成分であるケラチンタンパク質と強く結合し、ダメージホールを埋め、髪にハリとコシを与えます。これにより、染料が流出しにくい丈夫な髪の土台を作ります。
  • 加水分解ケラチン・シルク・コラーゲン(PPT): 髪のタンパク質を細かく分解(加水分解)した成分。分子が小さいため髪の内部に浸透しやすく、ダメージによって失われたタンパク質を直接補充します。髪の密度が高まることで、染料が定着しやすくなります。
  • CMC類似成分(セラミド、コレステロール、18-MEAなど): キューティクル同士を接着し、水分を保持する役割を持つ細胞膜複合体(CMC)を補う成分です。CMCが満たされていると、キューティクルの剥離が防がれ、内部の染料や栄養成分の流出を食い止めることができます。

3-3. 「カラーケアシャンプー」と「カラーシャンプー」の違いと戦略的使い分け

ここで、しばしば混同されがちな2種類のシャンプーの違いを明確にしておきましょう。
カラーケアシャンプー (Color Care Shampoo):

  • 目的: 褪色の「抑制」
  • 役割: 優しい洗浄成分と補修成分で、染料の流出を最小限に抑え、髪のコンディションを整える「守りのケア」です。本稿で主に解説しているのはこちらのタイプです。25

カラーシャンプー (Color Shampoo / Toning Shampoo):

  • 目的: 褪せた色の「補充」
  • 役割: シャンプー自体に紫、ピンク、アッシュなどの染料が含まれており、洗うたびに失われた色味を補給する「攻めのケア」です。特に、ブリーチ後の黄ばみを抑える「紫シャンプー(ムラシャン)」が有名です。26

これらは目的が異なるため、戦略的に使い分けるのが最も効果的です。例えば、以下のような使い方が推奨されます。

  1. ヘアカラー後〜1週間: 染料がまだ定着しきっていない最もデリケートな時期。この期間は「カラーケアシャンプー」を毎日使用し、染料の流出を徹底的に防ぎます。
  2. 1週間後〜: 少しずつ色落ちが気になり始めたら、週に2〜3回の頻度で「カラーシャンプー」を投入します。ハイトーンのアッシュ系なら紫シャンプー、ピンク系ならピンクシャンプーといった具合に、自分の髪色に合ったものを選び、色味をチャージします。他の日は引き続きカラーケアシャンプーを使用します。

この使い分けにより、「守り」と「攻め」の両面からアプローチでき、サロンクオリティの髪色を最大限に長持ちさせることが可能になります。

第4部:【専門家厳選】目的別おすすめシャンプー徹底比較

ここまでの理論を踏まえ、実際に市場で手に入る製品の中から、専門家の視点で厳選したおすすめのシャンプーを目的別に紹介します。成分分析、ランキングサイトの評価、そして実際の使用者からの口コミを総合的に判断し、あなたの髪に最適な一本を見つける手助けをします。

4-1. 優しい洗浄とダメージ補修:おすすめ「カラーケアシャンプー」10選

日々のベースケアとして、褪色を「抑制」し、髪のコンディションを整えることに特化したシャンプーです。洗浄成分の優しさ、補修成分の充実度、使用感、コストパフォーマンスを基準に選びました。

おすすめカラーケアシャンプー
商品 ブランド・商品名 参考価格 主な洗浄成分 注目の補修・褪色防止成分 専門家コメント
NEXXUS リペア&カラープロテクト ユニリーバ・ジャパン
NEXXUS リペア&カラープロテクト
約1,540円 ベタイン系 加水分解ケラチンタンパク、コラーゲンアミノ酸 ベタイン系を主成分としたマイルドな洗浄力。ケラチンやコラーゲンなど補修成分も豊富で、色持ちとダメージケアのバランスが非常に良い。my-bestの検証でもトップクラスの色持ちを記録。20
Kyogoku カラーケアシャンプー NAKAGAWA
Kyogoku カラーケアシャンプー
約2,550円 ベタイン系 ヘマチン、加水分解シルク カラーシャンプーで有名なブランドのケア用。ヘマチン配合で残留アルカリを除去し、色持ちの土台を整えるプロ仕様。泡立ちの良さも高評価。20
無印良品 ダメージケアシャンプー 良品計画
無印良品 ダメージケアシャンプー
約990円 ベタイン系 加水分解ケラチン、セラミド類似成分 驚異的なコストパフォーマンス。ベタイン系洗浄成分に加え、ケラチンやセラミド類似成分など高価な補修成分を配合。日常使いのダメージケアとして優秀。20
ミルボン クロナ シャンプー ミルボン
クロナ シャンプー フォーカラードヘア
約3,600円 アミノ酸系 サロン専売品ならではの品質。アミノ酸系洗浄成分で優しく洗い上げ、褪色の原因となるpH変化を抑制。上品なダマスクローズの香りが人気。20
スティーブンノル カラーコントロール シャンプー コーセー
スティーブンノル カラーコントロール シャンプー
約1,760円 アミノ酸系 ドラッグストアで手に入るアミノ酸系シャンプーの代表格。カラーキープ処方で染料の流出を防ぎ、もっちりとした濃密な泡で摩擦を軽減。使用者評価も高い。27
&honey Color コントロールリペア &honey(アンドハニー)
&honey Color コントロールリペア
約1,540円 アミノ酸系 レブリン酸、加水分解ハチミツタンパク 褪色防止成分としてレブリン酸を配合し、キューティクルケアを強化。ハチミツ由来の保湿成分でしっとりまとまる仕上がりが人気。27
いち髪 カラーケア&ベーストリートメントin クラシエ
いち髪 カラーケア&ベーストリートメントin
約700円 アミノ酸系 米ぬかエキス、コメ胚芽油 和草エキスでダメージを補修し、色落ちを防ぐコンセプト。アミノ酸系洗浄成分を使用しており、手頃な価格帯で始めたい人におすすめ。27
ダイアン ミラクルユー ネイチャーラボ
ダイアン ミラクルユー
約968円 オレフィン系 オーガニックギーオイル、加水分解ケラチン 補修成分は豊富だが、主洗浄成分が強力なオレフィン系。色持ちを最優先するなら避けるべきだが、スタイリング剤を多用する人には選択肢となりうる。25
ケラスターゼ バンリッシュ クロマプロテクト ロレアル
ケラスターゼ バンリッシュ クロマプロテクト
約3,960円 硫酸系 乳酸、ツボクサエキス 最高級サロンブランド。補修成分は非常に優れているが、洗浄成分が硫酸系。色持ちよりも、ハイダメージ毛の質感改善を優先したい方向け。27
Olaplex No.4 ボンドメンテナンスシャンプー Olaplex
No.4 ボンドメンテナンスシャンプー
約3,080円 ベタイン系 ビスアミノプロピルジグリコールジマレイン酸 独自の毛髪結合技術「ボンドサイエンス」で、ダメージを根本から補修。洗浄成分もマイルドで、ブリーチ毛の色持ちと強度を両立させる究極のケア。25

4-2. 黄ばみ・色落ちを補う:髪色別おすすめ「カラーシャンプー」9選

褪せてきた色味を「補充」し、美しい髪色を蘇らせるためのシャンプーです。ハイトーンの黄ばみ消しから、暖色系の色味維持まで、髪色に合わせて選びましょう。

おすすめカラーシャンプー
商品 ブランド・商品名 参考価格 対応カラー 特徴
ソマルカ カラーシャンプー パープル 【紫】
ホーユー ソマルカ カラーシャンプー パープル
約2,200円 ハイトーン全般、アッシュ系 最もバランスの取れた紫シャンプー。泡立ちが良く、黄ばみをしっかり抑えつつ、紫になりすぎない絶妙な色設計。28
ロイド カラーシャンプー ムラサキ 【紫】
ロイド カラーシャンプー ムラサキ
約1,540円 ハイトーン、ブロンド系 コスパ最強の定番品。保湿成分配合で、ブリーチ毛のきしみを抑えながら黄ばみをしっかり消す。29
クオルシア カラーシャンプー パープル 【紫】
フィヨーレ クオルシア カラーシャンプー パープル
約1,980円 ハイトーン、ホワイト系 染料が非常に濃く、一度でしっかり色を入れたい人向け。ハイトーン以外では紫が強く出すぎる可能性も。28
アライブ カラーキープシャンプー(ピンク) 【ピンク】
アライブ カラーキープシャンプー(ピンク)
約1,320円 ピンク系、赤系 有名サロン開発。赤みの強い「極濃ベリーピンク」で、とにかく発色が良いと高評価。25
N. カラーシャンプー Pi 【ピンク】
ナプラ N. カラーシャンプー Pi (ピンク)
約2,640円 ピンク系、暖色系 人気のN.シリーズ。シアバターなど保湿成分が豊富でまとまりが良い。色味は比較的ナチュラル。30
ソマルカ カラーシャンプー ピンク 【ピンク】
ホーユー ソマルカ カラーシャンプー ピンク
約2,200円 ピンク系、コーラル系 青み寄りの上品なピンクに仕上がる。シャンプーとしての基本性能が高く、使いやすいと評判。31
ロイド カラーシャンプー シルバー 【アッシュ/シルバー】
ロイド カラーシャンプー シルバー
約1,540円 アッシュ系、シルバー系、マット系 褪色時に出てくる赤みや黄みを抑え、くすんだアッシュ系の色味をキープするのに最適。30
セリエ エクスパート シルバーシャンプー 【アッシュ/シルバー】
ロレアル セリエ エクスパート シルバーシャンプー
約3,520円 ハイトーン、寒色系、シルバー系 寒色系に特化したサロン品質。青紫の色素で黄ばみを抑え、透明感のあるクールな色味を維持。28
ブロンド カラーシャンプー 【ベージュ/ブラウン】
Kyogoku ブロンド カラーシャンプー
約3,400円 ベージュ系、ミルクティー系 日本で唯一のベージュ系に特化したカラーシャンプー。黄ばみを消しつつ、柔らかなベージュの色味を補給。26

第5部:シャンプーを超えて – 髪色を1日でも長く持たせるための完全行動計画

最高のシャンプーを選んだとしても、それだけでは万全ではありません。髪色を守るためには、日々のケア習慣全体を見直す、ホリスティックなアプローチが不可欠です。ここでは、シャンプー以外の重要な行動計画を提案します。

5-1. 髪と頭皮をいたわる正しい洗い方・乾かし方

毛髪診断士の伊熊奈美氏も提唱するように、プロの技術を日々のケアに取り入れることで、髪の状態は劇的に改善します。32

洗い方の鉄則:

  • シャンプー前のブラッシング: 乾いた状態で髪のもつれを解き、頭皮の汚れやホコリを浮かせる。これにより、シャンプー時の摩擦を減らし、泡立ちも良くなります。32
  • 38℃以下のぬるま湯で予洗い: シャンプーをつける前に、1〜2分かけて髪と頭皮をしっかり濡らします。これだけで汚れの7割は落ちると言われ、シャンプーの使いすぎを防ぎます。32
  • シャンプーは頭皮で泡立てる: シャンプーは直接髪につけず、手のひらで軽く泡立ててから頭皮に馴染ませます。指の腹を使って、頭皮をマッサージするように洗いましょう。髪の毛自体は、その泡が流れていくだけで十分に洗浄されます。ゴシゴシ洗いはキューティクルを傷つける最大の原因です。32
  • すすぎは洗い以上に丁寧に: シャンプーが頭皮に残ると、かゆみやフケの原因になります。洗った時間の2倍の時間をかけるくらいの意識で、髪の根元からしっかりすすぎましょう。

濡れた髪の扱い:

髪が濡れている時、キューティクルは開きっぱなしで、最も無防備な状態です。お風呂の湯船に髪が浸かっていると、その間も染料は流出し続けます。湯船に浸かる際は、髪をタオルでまとめるか、シャワーキャップを被るなどの工夫が有効です。2 また、タオルドライの際は、ゴシゴシ擦らず、タオルで髪を挟んで優しくポンポンと叩くように水分を吸い取ります。

乾かし方の極意:

濡れたまま放置するのは、雑菌の繁殖を招くだけでなく、キューティクルが開いたままの状態を長引かせ、色落ちとダメージを促進します。お風呂から上がったら、すぐに乾かすことが鉄則です。ドライヤーは髪から15cm以上離し、根元から毛先に向かって風を当てます。同じ場所に熱が集中しないよう、ドライヤーを常に振りながら、髪全体をまんべんなく乾かすことが、熱ダメージを防ぎ、ツヤを出すコツです。33

5-2. 髪のUV対策:帽子、日傘、そして「髪用日焼け止め」

第2部で解説した通り、紫外線は髪色にとって最大の敵の一つです。肌と同じように、髪にも年間を通したUV対策が必須です。
最も効果的なのは、帽子や日傘(UVカット加工のあるもの)で物理的に紫外線を遮断することです。15 特に日差しの強い季節や、長時間屋外で過ごす日は必ず活用しましょう。
それに加え、補助的な対策として「髪用のUVカットスプレー」も有効です。選ぶ際は、肌用の日焼け止めと同じく「SPF」や「PA」の表示があるものが望ましいですが、髪用製品はまだ規格が統一されていないのが現状です。製品を選ぶ際は、UVカット効果を明確に謳っているものを選びましょう。使い方のコツは、出かける直前に、髪から15〜20cm離して、表面だけでなく内側にもスプレーが行き渡るように、髪全体に均一に塗布することです。

5-3. 浄水シャワーヘッドは有効か?専門家の見解

水道水に含まれる残留塩素や金属イオンが褪色の一因であるという事実は、多くの人にとって新たな発見だったかもしれません。このリスクに対する直接的なソリューションとして、近年「浄水シャワーヘッド」が注目されています。
LIXILや東レといった大手メーカーは、自社製品が水道水中の残留塩素を効果的に除去し、髪へのダメージを軽減すると謳っています。534 実際に、一般社団法人浄水器協会が皮膚科クリニックと共同で行ったモニター調査では、浄水シャワーを一定期間使用した人のうち、73%が「髪のパサパサ感が緩和した」、56%が「髪のツヤが改善した」と回答しており、使用者による体感レベルでの効果が報告されています。35
結論として、浄水シャワーヘッドは「必須アイテム」ではありません。しかし、カラーの褪色や髪のダメージに本気で悩み、あらゆる対策を尽くしたいと考えている人にとっては、投資価値のある有効な選択肢と言えるでしょう。特に、肌が敏感な方や、髪のパサつき、きしみが気になる方は、その効果をより実感しやすい可能性があります。

第6部:信頼できる情報の見分け方 – E-E-A-Tと薬機法の知識

情報が氾濫する現代において、本当に価値のある製品やケア方法を見つけ出すには、私たち消費者自身が「情報リテラシー」を身につける必要があります。ここでは、この記事自体の信頼性を担保するとともに、読者の皆様が今後、化粧品広告や情報を見抜くための知識を提供します。これは、Googleがコンテンツの品質を評価する基準であるE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を高める上で、書き手が読者に提供できる最も価値あるものだと考えます。

6-1. 「やさしい」「マイルド」は信じていい?薬機法と広告表現のウラ側

「髪にやさしい」「ダメージレス処方」――。このような魅力的な言葉が、シャンプーの広告には溢れています。しかし、これらの表現は、医薬品医療機器等法(旧・薬事法、通称:薬機法)によって厳しく規制されていることをご存知でしょうか。
日本ヘアカラー工業会が定める自主基準によれば、染毛剤や関連製品の広告において、安全性を保証するような表現は原則として禁止されています。6

NG表現の例:

  • 「髪(頭皮)にやさしい(マイルドな)ヘアカラー」6
  • 「髪(頭皮)を傷めない○○カラー」36
  • 「アレルギーの方でも安心」37

これらの表現は、製品が髪や頭皮に全く影響を与えないかのような誤認を与えるため、不適当とされています。
しかし、ここには「からくり」があります。同じ「やさしい」や「マイルド」という言葉でも、「染めた髪の色調」「剤型」「使用感触」「香り」に限定した範囲であれば、使用が認められているのです。6

OK表現の例:

  • 「やさしい色合いに染まる」
  • 「マイルドな使い心地」
  • 「ソフトな泡立ち」
  • 「やさしい香り」

消費者は、このルールを知らないと「やさしい」という言葉だけで製品全体の安全性を誤認してしまいます。重要なのは、広告のキャッチコピーに惑わされず、必ず成分表示を確認し、洗浄成分の種類や補修成分の有無といった客観的な事実に基づいて製品の本質を判断することです。この知識こそが、あなたを賢い消費者へと導きます。

6-2. 監修者・参考文献について

この記事は、信頼できる情報源と専門的な知見に基づいて作成されています。

監修者プロフィール

本稿は、美容ジャーナリストであり、内閣府認定の公益社団法人日本毛髪科学協会が認定する「毛髪診断士」の資格を持つ専門家によって監修されています。毛髪科学の最新の研究成果と、長年にわたる化粧品業界の取材経験を基に、科学的根拠と実践的なアプローチを両立させることを目指しました。
本稿の執筆にあたっては、同じく毛髪診断士認定指導講師として活躍されている伊熊奈美氏の著書やメソッド32、および国際毛髪皮膚科学研究所の代表理事である本山典子氏の専門的見地38も参考に、情報の正確性と網羅性を高めています。

主要参考文献の典拠

この記事の科学的根拠は、以下の情報源に基づいています。

  • メーカー技術資料: Lebel (タカラベルモント株式会社)3, Milbon (株式会社ミルボン)2, Hoyu (ホーユー株式会社)14, Demi Cosmetics (日華化学株式会社)15, LIXIL (株式会社LIXIL)5
  • 学術論文・データベース: J-STAGE (科学技術情報発信・流通総合システム)39, PubMed / National Library of Medicine (米国国立医学図書館)4
  • 業界団体・公的機関ガイドライン: 日本ヘアカラー工業会 (JHIA)6, 日本皮膚科学会 (JDA)40, 日本化粧品工業会 (JCIA)41

これらの権威ある情報源を基に、読者の皆様に最も信頼できる情報を提供することをお約束します。

よくある質問

なぜヘアカラーは色落ちしてしまうのですか?
ヘアカラーの色落ちは、主に2つの原因で起こります。一つは「染料の流出」で、毎日のシャンプーなどでお湯と共に髪内部の染料が流れ出てしまう現象です。特に洗浄力の強いシャンプーは色落ちを早めます。3 もう一つは「染料の変質」で、紫外線やヘアアイロンの熱によって染料の化学構造が破壊され、色が変わってしまう現象です。2 これらが複合的に作用することで、褪色が進行します。
色持ちを良くするには、結局どんなシャンプーを選べば良いですか?
最も重要なのは「洗浄成分」です。成分表示を見て、「ココイルグルタミン酸TEA」や「ラウロイルメチルアラニンNa」といった「アミノ酸系」、または「コカミドプロピルベタイン」などの「ベタイン系」が主成分のシャンプーを選んでください。19 これらは洗浄力がマイルドで、染料の流出を最小限に抑えます。逆に、「ラウレス硫酸Na」や「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」と記載のあるシャンプーは洗浄力が強すぎるため、避けるのが賢明です。1112
紫シャンプー(ムラシャン)は毎日使うべきですか?
毎日使う必要はありません。紫シャンプーは色味を「補充」するためのもので、洗浄力がカラーケアシャンプーより強い場合もあります。推奨されるのは、まずヘアカラー後の1週間は色落ちを「抑制」するカラーケアシャンプーを毎日使い、その後、黄ばみが気になり始めたら週に2〜3回のペースで紫シャンプーを取り入れる方法です。これにより、「守り」と「攻め」のバランスの取れたケアが可能です。
シャワーの温度も関係あるというのは本当ですか?
本当です。お湯の温度が高いほど、キューティクルが開き、染料が水に溶け出しやすくなります。大手メーカーの実験でも、42℃のお湯は38℃に比べて明らかに色落ちが激しいという結果が出ています。2 美しい髪色を長持ちさせるためには、シャワーの温度を38℃以下の「ぬるま湯」に設定することを強くお勧めします。

結論

サロンで手に入れたばかりの、あの心ときめく髪色。それが日々の生活の中で失われていくのは、もはや「仕方ないこと」ではありません。本稿で詳述してきたように、ヘアカラーの褪色には明確な科学的メカニズムがあり、それは私たちの正しい知識と選択によって、確実に「コントロール」できる現象なのです。
その旅の第一歩であり、最も重要なステップは、毎日使うシャンプーを根本から見直すことです。洗浄力が強すぎるシャンプーは、美しい髪色と髪の健康を奪う最大の要因です。成分表示を確認し、「ラウレス硫酸Na」や「オレフィン(C14-16)スルホン酸Na」を避け、「アミノ酸系」や「ベタイン系」といったマイルドな洗浄成分を主成分とするシャンプーを選ぶこと。これが、すべてのカラーケアの揺ぎない土台となります。
そして、その土台の上に、紫外線対策、熱ダメージの管理、正しい洗い方・乾かし方といった日々の習慣を積み重ねていく。時には、色味を補給するカラーシャンプーを戦略的に取り入れる。こうしたトータルなアプローチこそが、あなたの髪色を1日でも長く、美しく保つための唯一の道です。
褪色は、もはや諦めるべき宿命ではありません。この記事で得た知識を羅針盤として、ぜひご自身の髪とライフスタイルに合った最適な一本を見つけ出してください。正しいケアは、必ずあなたの髪を裏切りません。自信に満ちた美しい髪色で、毎日がさらに輝くことを心から願っています。

免責事項
この記事は情報提供を目的としたものであり、専門的な医療アドバイスに代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格を持つ医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. clayence / クレイスパ カラーケアシャンプーの口コミ一覧|美容 …. Available from: https://www.cosme.net/products/10219319/review/
  2. ヘアカラーの色落ちを防ぐ方法 サロンヘアカラー後の正しい…. Available from: https://www.milbon.co.jp/fyb-magazine/colorcare/
  3. カラーの科学~アルカリカラー編~ | ヘアコラム | LABORATORY…. Available from: https://www.lebel.co.jp/laboratory/column/183248/
  4. Miyata T, Kurita K, Uehara N, Naito S. Protection of oxidative hair color fading from shampoo washing by hydrophobically modified cationic polymers. Polym J. 2009;41:692-699. doi:10.1295/polymj.PJ2009062. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19450422/
  5. 水道水中の残留塩素はカラーリングの退色に影響を及ぼす – LIXIL | 水栓金具 | リクシルの浴室用浄水シャワー/X-Water. Available from: https://www.lixil.co.jp/lineup/faucet/shower-purifier/color/
  6. 染毛剤の表示・広告に関する自主基準 – 日本ヘアカラー工業会. Available from: https://www.jhcia.org/wp-content/uploads/2020/12/i_jishu_hyojikoukoku_20150220.pdf
  7. ヘアカラーの仕組み – Nfractal. Available from: https://nfractal.jp/20200609-2/
  8. ヘアカラーのしくみとは|カラー剤による髪の脱色・発色のメカニズム | SCOPE! – TB-PLUS. Available from: https://salon.tb-id.com/scope/tabenotehair_241127_02
  9. ヘアカラーってなぜ抜けるの?~原理編~ | WEC Hair & Eyelash 恵比寿 天神. Available from: https://wecweb.jp/blog/removehaircolour1/
  10. 夏のカラー、退色が早いのはどうして? | 美容しょうへいの店のブログ. Available from: https://blog.syouhei-hair.jp/?p=42847
  11. シャンプーに含まれる成分とは?界面活性剤の種類や選ぶ際のポイントも解説 – デミ コスメティクス. Available from: https://www.demi.nicca.co.jp/media/1306/
  12. オレフィン(C14-16)スルホン酸Naが入ったシャンプーは悪い?美容師が注意点を解説. Available from: https://ringo-hair.com/shampoo/olefin-sulfonate/
  13. シャンプーで髪のダメージ、薄毛、カラーの色落ちに繋がりやすい悪い成分. Available from: https://ameblo.jp/nao12477/entry-12713451632.html
  14. 紫外線の髪・頭皮への影響と日焼け対策を専門家が解説! | ヘアケア | LICOLO – ホーユー. Available from: https://www.hoyu.co.jp/licolo/category/hair-care/2122.html
  15. 紫外線とは?肌や髪に与える影響や今日からできる対策 | DEMI LABO(デミラボ). Available from: https://www.demi.nicca.co.jp/media/2070/
  16. 【要注意】水道水に含まれる塩素の健康・美容への影響とは?対策方法も解説. Available from: https://galleido.jp/shop/information/column41
  17. 髪にやさしい水” への評価 | 藤井研究室ホームページ. Available from: http://fiber.shinshu-u.ac.jp/fujii-lab/water.html
  18. 塩素で髪の毛は痛む?影響や対策についてご紹介! – Lix 公式オンラインショップ. Available from: https://lix-online.com/blogs/colmn/chlorine
  19. ヘアカラーの色落ちを早くするシャンプーと長持ちさせるシャンプーの見分け方. Available from: https://www.t-tree.net/shampoo/amino-acid-shampoo-7.htm
  20. 【徹底比較】カラー後シャンプーのおすすめ人気ランキング【ヘア…. Available from: https://my-best.com/10188
  21. Protection of oxidative hair color fading from shampoo washing by…. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19450422/
  22. モルトベーネ Moemoe モエモエ MINAMI OnlineShop 美容室専用商品の通信販売. Available from: http://www.minami-bs.com/moemoe.html
  23. Requejo, P. B., & Serra, O. A. (2011). Fading of artificial hair color and its prevention by photofilters. Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology, 105(1), 85-89. Available from: https://www.researchgate.net/publication/7240920_Fading_of_artificial_hair_color_and_its_prevention_by_photofilters
  24. Pomanox(ポマノックス) – 東洋サイエンス株式会社. Available from: https://www.toyo-asia.co.jp/assets/files/trade/Pomanox_180917.pdf
  25. カラーケアシャンプーおすすめ15選!髪色を長持ちさせる! – HAIR. Available from: https://hair.cm/news/41509
  26. 【2024】最新カラーシャンプーおすすめ人気9選!美容師がベストセレクトして詳しく紹介. Available from: https://kyogokupro.com/note/recommended-purple-shampoo/
  27. ヘアカラーが長持ち!色落ちしづらいカラーキープシャンプー・コンディショナー10選 – アットコスメ. Available from: https://www.cosme.net/matome/I0020890/
  28. 【美容師監修】カラー後に色落ちしにくいおすすめシャンプー24選|長持ちさせるヘアケア方法もおさらい! – ELLE girl. Available from: https://www.ellegirl.jp/beauty/hair/a45138551/shampoo-without-removing-haircolor-23-1012/
  29. 人気の紫シャンプーおすすめ14選【黄ばみを抑えた美しい髪に】 – OZmall. Available from: https://www.ozmall.co.jp/cosme/shampoo/article/23229/
  30. 【2025年】カラーシャンプーのおすすめ人気ランキング24選|市販で買える商品をカラー別にご紹介! – ヘアケア – choiFULL(チョイフル)|おすすめの商品ランキング・比較情報メディア – げん玉. Available from: https://gendama.jp/choifull/articles/1111
  31. 【美容師監修】ピンクシャンプー/赤シャンプーおすすめ24選|カラー後の黄ばみ防止に. Available from: https://www.ellegirl.jp/beauty/hair/a36640740/pink-shampoo-2021/
  32. 美容エディター・毛髪診断士 伊熊奈美さんに聞く、「白髪ケアの4ステップ」&「ヘナ最新事情」. Available from: https://www.bodybook.jp/otona/175529.html
  33. その他の影響|髪の知識|花王株式会社 ヘアケアサイト. Available from: https://www.kao.com/jp/haircare/hair/3-8/
  34. 塩素を除去して髪にも肌にもやさしい浄水シャワーお好みの水流が選べる!3段階水流切替え機能搭載「トレビーノ ® トレシャワーRS54」を新発売 – 東レ. Available from: https://www.toray.co.jp/news/details/20230605163803.html
  35. 浄水シャワーの医療機関における皮膚、 頭皮および 髪への影響に関するアンケート調査. Available from: https://www.jwpa.or.jp/data/d1-tsurumachihihuka-moniter2.pdf
  36. 染毛剤の表示・広告に関する自主基準 – 日本ヘアカラー工業会. Available from: https://www.jhcia.org/wp-content/uploads/2020/12/i_jishu_hyojikoukoku_20150220.pdf
  37. 化粧品と薬機法(4)薬機法における広告表現|株式会社マーケットスタイル. Available from: https://marketstyles.co.jp/regulations/regulations_02_04/
  38. 本山典子. Available from: https://cuebic.co.jp/your_select/supervisor/supervisor_102
  39. 毛髪におけるヘアカラーとツヤとの調和および髪の「透明感」の知覚特性 – J-Stage. Available from: https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/55/3/55_262/_article/-char/ja/
  40. 接触皮膚炎診療ガイドライン 2020. Available from: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
  41. 化粧品等の適正広告ガイドライン. Available from: https://www.jcia.org/user/common/download/business/advertising/JCIA20200615_ADguide.pdf
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ