はじめに
日本で深刻な健康問題として広く認識されている胃がん(胃癌)。特に第3期(ステージIII)に進行すると、患者の生活の質や健康に大きな影響を及ぼします。この記事では、胃がんが第3期に進行した場合の特徴や症状、そしてどのような治療法が利用可能かについて詳しく解説していきます。また、治療の選択肢にどのような考慮が必要か、そして予後についても詳しく説明します。この記事が読者の皆様に役立ち、健康な生活を送るための知識となることを願っています。
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この記事の情報は、「がん研究UK(Cancer Research UK)」や「アメリカ国立がん研究所(Cancer.gov)」といった信頼性の高い組織の情報を基にしています。一般的な医療情報の提供を目的として、多くの方々の健康に関する疑問に答える内容となっていますが、専門的な医療相談については、必ず日本国内の医療機関や専門家に相談してください。さらに、胃がんに関する国内外の最新ガイドラインや治療方針は随時更新されるため、主治医との連携が不可欠です。
胃がん第3期とは何か?
胃がんは胃の細胞が異常に増殖し、がんとして成長する病気です。胃がんは進行度に応じて5段階(ステージ0からIV)に分類され、それぞれの段階に応じて治療法が異なります。第3期(ステージIII)の胃がんでは、がんが胃壁を貫通し、近くのリンパ節や周囲の他の組織に広がる状態です。完全に胃から出ていない場合もありますが、内臓壁やリンパ節への転移が既に進行していることが特徴となります。
病期の分類とその特性
胃がん第3期はさらに具体的な進行度に応じていくつかのサブステージに分けられ、それによって治療方針も異なります。以下は各サブステージについての詳細です。
- 第IIIa期
がんは胃の筋層や腹膜下層を貫通し、7〜15のリンパ節に転移している状態です。この段階では、がんが胃の内部構造を侵食しており、胃の周囲の組織にも影響が及ぶ可能性が高まります。がんが周囲の組織に及ぼす影響が顕著になるため、患者の食事の摂取や消化に困難が生じることがあります。 - 第IIIb期
16個以上のリンパ節への転移、または他の臓器への特定範囲に広がっている状態です。この段階でのがんは、胃壁を超えて他の臓器やリンパ節に広く拡がっているため、より積極的な治療が必要となります。がんが周囲の臓器に浸潤している場合、手術の適用範囲が限定されることがあるため、患者一人ひとりの状況に合わせた治療戦略の検討が必須です。 - 第IIIc期
がんが16個以上のリンパ節に広がり、さらに周囲の臓器にまで大規模に浸潤している状態です。この進行度では、複数の臓器にわたる転移が確認されることが多く、複雑な治療が必要とされます。この段階では、がんの進行を止めるために複数の治療法を組み合わせることが一般的です。患者の体力や合併症の有無、がんの広がり方などを総合的に評価し、治療計画を立案することが求められます。
症状について
胃がん第3期の症状は進行度によって多岐にわたります。以下に代表的な症状とそれぞれの詳細を挙げます。
- 胃の不快感や鼓腸感
がんが胃壁に浸潤することで、胃の内圧が高まり、不快感や鼓腸感が生じます。この不快感は食事の際に特に強く感じられ、食事が楽しめなくなることがあります。また、食後に長時間残る重たい感覚も患者にとって苦痛の原因となります。 - 嚥下時の困難感
がんの成長により、食道や胃の通過が妨げられることから、食べ物を飲み込む際に痛みや違和感を覚えることがあります。固形物の摂取が難しくなり、液体に頼る食生活を余儀なくされる場合もあります。これにより栄養不足が進み、体重減少や免疫力の低下がさらに深刻化することがあります。 - 持続的な上腹部の痛み
胃壁の浸潤による炎症や圧迫が原因で、上腹部に持続的な痛みが生じます。この痛みは特に夜間に強まる傾向があり、睡眠の質が低下して慢性的な疲労感につながります。痛みへの対処は緩和ケアの一つとしても重要です。 - 少ない食事量にもかかわらず満腹感を感じる
がんの成長により胃の容量が減少し、少量の食事でも満腹感を強く感じるようになります。結果として十分なカロリーや栄養を摂取できないまま体重が減少するケースが多く、患者の体力維持が大きな課題となります。 - 食欲不振
がんの影響で胃腸の正常な働きが阻害されるだけでなく、治療(化学療法や放射線治療)の副作用も相まって、著しい食欲低下を引き起こすことがあります。食欲不振が持続すると栄養状態が悪化し、治療効果にも影響が及ぶため、十分な管理が必要です。 - 慢性的な疲労
がんの進行に伴い、体内でのエネルギー消費が高まる一方、食事量の減少や代謝異常などにより栄養が不足します。その結果、休息をとっても回復しにくい慢性的な疲労が生じ、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。疲労は身体面だけでなく精神面にも影響するため、治療と並行してメンタルサポートを受けることも重要です。 - 原因不明の体重減少
食欲不振や胃の機能低下による栄養不足、またがん細胞と闘うために体が余分にエネルギーを消費することなどが原因で、急激な体重減少が見られる場合があります。体重が短期間で大幅に減少すると身体的な抵抗力が落ち、治療に耐えうるだけの体力を維持することが難しくなることがあります。 - 血を吐く、または便が黒い色をしている
胃壁の損傷や潰瘍化に伴う出血があると、吐血が起こる場合があります。また、出血した血液が消化され便に混じることで黒色便(タール便)となることも少なくありません。こうした症状が見られる場合には、速やかに医療機関で適切な診断と治療を受ける必要があります。
以上の症状がすべて胃がんに結びつくわけではありませんが、気になる症状が持続的に現れる場合や急激に悪化する場合は、医師の診断を受けることが大切です。早期に受診することで、より適切な診断・治療を受ける機会が得られます。
胃がん第3期の治療法
第3期の胃がんに対する治療は、手術、化学療法、放射線治療が主に行われます。治療法の選択は患者の状態やがんの進行度、そして合併症の有無などを総合的に考慮して決められます。以下に各治療法の概要と考慮すべき点を示します。
手術
手術は、がんを直接的に切除し、健康な部分と周囲のリンパ節を取り除くことを目的とします。進行度や病巣の位置、範囲によっては全胃切除を行う場合や、ある程度の胃を温存する部分切除を行う場合があります。手術の適用範囲は患者ごとに異なるため、専門医との十分な話し合いが必要です。
また、手術後は食事の摂取に関する工夫やリハビリが必要になることが多く、生活の質を保ちながら治療を継続するためには、栄養管理や定期的な経過観察が重要です。手術による合併症(感染症や縫合不全など)のリスクも否定できないため、手術前後の健康状態の評価や十分なサポート体制の確立が欠かせません。
化学療法
化学療法(抗がん剤治療)は、がん細胞の増殖や分裂を抑制・破壊する薬剤を用いる治療法です。手術前にがんを縮小させるために行う場合や、手術後の再発予防として行う場合など、さまざまなタイミングで活用されます。化学療法による副作用としては、吐き気や嘔吐、脱毛、免疫力の低下などが挙げられますが、がんの進行を抑える効果が期待できます。
さらに、近年では標的治療薬や免疫療法が胃がん治療に導入されるケースもあり、患者一人ひとりの遺伝子情報や腫瘍特性に合わせた個別化医療が進んでいます。実際、Adjuvant Chemotherapy Improves Survival in Stage III Gastric Cancer after D2 Surgery(PMC5743714)という研究でも、D2郭清(周囲のリンパ節を広範囲に取り除く術式)後の補助化学療法が第3期胃がんの生存率改善に寄与することが示されています。日本国内でもガイドラインに沿った補助化学療法が積極的に行われるようになってきており、治療成績の向上が期待されています。
放射線治療
放射線治療は、高エネルギーの放射線を照射してがん細胞を破壊する治療法です。外科的に切除が困難な場合や、手術や化学療法と組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。治療計画では、照射部位を正確に特定し正常組織への被ばくを最小限に抑えるように調整します。
放射線治療に伴う主な副作用としては、照射部位の皮膚炎や疲労感などが挙げられますが、最近では治療装置や照射技術の進歩により副作用を軽減する試みが進んでいます。化学療法と放射線治療を組み合わせる化学放射線療法を行うことで、局所制御率を向上させる戦略も取られています。
予後について
胃がん第3期の生存率は、診断のタイミングや個人の健康状態、治療への反応などによって大きく左右されます。がん研究UK(Cancer Research UK)によると、第3期の胃がんにおける5年生存率はおよそ25%と報告されています。これは決して高い数字とは言えませんが、早期発見と複数の治療法の適切な組み合わせによって、生存期間の延長や生活の質の向上が期待できます。
たとえば、手術後に化学療法を行う補助療法は、第3期胃がんにおいて再発リスクを抑える効果があると複数の研究で示唆されています。実際に日本国内でも、術後補助化学療法の導入により、従来に比べて予後が改善した患者も増えてきていると報告されています。また、患者自身の生活習慣(禁煙や節度ある飲酒、バランスの取れた食事など)を改善することで、体力や免疫機能を維持し、治療への抵抗力を高められる可能性があります。
近年の研究として、例えばFlum DR, Strong VE(2021, JAMA, 326(11), 1009–1010, doi:10.1001/jama.2021.14907)では、胃がん手術の進歩や周術期管理の改善が生存率向上に寄与すると報告されています。また、Smyth EC, Nilsson M, Grabsch HI, Van Grieken NC, Lordick F(2020, Lancet, 396(10251), 635–648, doi:10.1016/S0140-6736(20)31288-5)の総説では、胃がん治療における多職種連携の重要性が強調されており、外科、内科、放射線科、栄養管理、メンタルケアなど、多角的なアプローチが生存率と生活の質を向上させるとしています。これらの報告は、日本の医療現場にも示唆を与えており、第3期胃がん患者に対してより包括的なケアが求められています。
結論と提言
胃がん第3期は、進行度が高いため深刻な健康課題であることは間違いありません。しかし、適切な診断と治療を受けることで、がんと効果的に闘うことは可能です。何よりも早期発見が重要であり、定期的な健康診断や内視鏡検査を受け、症状が現れた場合には速やかに医療機関を受診する姿勢が求められます。
- 生活習慣の改善
バランスの取れた食事、適度な運動、ストレスの管理、禁煙、飲酒量のコントロールなどは、がんのリスクを下げる可能性があります。特に食事面では胃を過度に刺激しないよう注意し、必要に応じて管理栄養士の指導を仰ぐことが有効です。 - 精神的サポートの重要性
がん患者は身体だけでなく、精神的・社会的ストレスと闘う必要があります。家族や友人、医療ソーシャルワーカー、心理カウンセラーによるサポートを受けることで、治療意欲を維持しやすくなります。患者が孤立せず、周囲の理解と支援を得られる環境づくりは、治療への大きな原動力となります。 - 多職種連携の推進
胃がん治療は外科医、内科医、放射線科医、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床心理士など、多職種による協力体制が重要です。特に第3期の胃がんでは複数の治療法を組み合わせる場合が多く、栄養状態や免疫機能の維持、術前・術後管理、リハビリなど、幅広い専門分野の連携が必要となります。
以上を踏まえ、患者と医療従事者、家族、地域が一体となって最適な治療・ケア体制を構築することが大切です。治療中は副作用や合併症を乗り越えなければならない厳しい局面もありますが、正確な情報とサポートがあれば乗り越えられるケースが増えています。患者ごとに状況が異なりますので、主治医とのコミュニケーションを密にし、不安や疑問があれば遠慮なく相談することが重要です。
重要な注意点:本記事の情報はあくまでも一般的な内容をまとめたものであり、最終的な治療方針は専門家と十分に相談した上で決定してください。胃がんは人によって進行度や体調、合併症の有無などが異なるため、個別化された治療計画が必要です。
参考文献
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- Adjuvant Chemotherapy Improves Survival in Stage III Gastric Cancer after D2 Surgery. Accessed on: 01/06/2023
- Stomach cancer. Accessed on: 01/06/2023
- Flum DR, Strong VE. “Advances in Gastric Cancer Surgery and Treatment.” JAMA. 2021;326(11):1009–1010. doi:10.1001/jama.2021.14907
- Smyth EC, Nilsson M, Grabsch HI, Van Grieken NC, Lordick F. “Gastric cancer.” Lancet. 2020;396(10251):635–648. doi:10.1016/S0140-6736(20)31288-5
免責事項:本記事は医療上のアドバイスを提供するものではなく、あくまでも情報提供を目的としています。個別の病状や治療内容については、必ず医師や専門家にご相談ください。早期に専門家と連携し、最適な治療やケアを受けることが、胃がんを含むがん治療において最も重要です。