ニキビと食事の科学:皮膚科医が解説する最新エビデンスと実践ガイド【日本皮膚科学会推奨基準も詳説】
皮膚科疾患

ニキビと食事の科学:皮膚科医が解説する最新エビデンスと実践ガイド【日本皮膚科学会推奨基準も詳説】

繰り返しできるニキビに悩み、「食事を変えれば治るかもしれない」と考えたことはありませんか?インターネットには「これを食べればニキビが治る」「あれは絶対に食べるな」といった情報が溢れ、一体何を信じれば良いのか混乱している方も少なくないでしょう。多くの情報が断片的であったり、科学的根拠が曖昧であったりするため、正しい知識に基づいた判断は非常に困難です。この記事は、そのようなあなたの悩みに終止符を打つために、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が総力を挙げて制作した、ニキビと食事に関する最も信頼でき、包括的で、実践的な「決定版」ガイドです。皮膚科学の専門家の視点から、最新の科学的エビデンスを徹底的に分析し、日本の食生活に即した具体的な実践方法までを網羅的に解説します。この記事を読み終える頃には、あなたは情報に振り回されることなく、自分自身の肌と食生活について、科学的根拠に基づいた賢明な選択ができるようになっているはずです。ただし、この記事はあくまで情報提供を目的としており、個々の症状に対する医学的アドバイスに代わるものではありません。食事内容の大幅な変更やサプリメントの摂取を検討する際には、必ず事前に医師または管理栄養士に相談することが重要です。

要点まとめ

  • 日本皮膚科学会の公式ガイドラインでは、特定の食品を一律に制限することは推奨されていませんが、個々の判断の重要性を示唆しています1
  • 高GI食品(血糖値を急上昇させる食品)や一部の乳製品は、世界の多くの研究でニキビを悪化させる可能性が指摘されています2, 3
  • オメガ3脂肪酸、亜鉛、ビタミン、プロバイオティクスなどの栄養素は、炎症を抑え、肌の健康をサポートすることでニキビ改善に貢献する可能性があります4, 5, 6
  • 完璧を目指す必要はなく、「白米を玄米に」「菓子パンをゆで卵に」といった簡単な「置き換え」から始めることが、継続可能な食生活改善の鍵です。
  • 食事はニキビに影響を与える一因に過ぎず、適切なスキンケア、十分な睡眠、ストレス管理を組み合わせた総合的なアプローチが最も重要です7

【最重要】日本皮膚科学会の公式見解:食事制限は一律には推奨されない

ニキビと食事の関係を語る上で、まず理解すべき最も重要な点は、日本の皮膚科領域における最高権威である公益社団法人日本皮膚科学会(JDA)の公式な見解です。同学会が発行する「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」では、食事指導に関する2つのクリニカルクエスチョン(CQ)が設定されています1

  • CQ46: 尋常性痤瘡患者に特定の食品(高グリセミックインデックス食,乳製品,脂肪,チョコレートなど)を制限する食事指導は有用か?
  • CQ47: 尋常性痤瘡患者に特定の栄養素・食品(ビタミン,プロバイオティクス,脂肪酸など)を積極的に摂取させる食事指導は有用か?

これら両方の問いに対するガイドラインの答えは、「推奨度 C2:行ってもよいが,十分な根拠がない」というものです1。これは、多くの患者さんにとっては意外な結論かもしれません。では、なぜ学会は「一律に食事を制限・推奨しない」のでしょうか。その背景には、科学的な厳密さを重んじる学会の姿勢があります。
第一に、これまでに行われた研究の質や規模が十分ではないこと、そして結果に一貫性が見られないことが挙げられます。ある研究では特定の食品とニキビの関連性が示されても、別の研究では否定されるといったケースがあり、すべての人に当てはまる明確な結論を導き出すには至っていません。第二に、食事の影響には非常に大きな個人差があるためです。ある人にとってはニキビの原因となる食品が、別の人には全く影響しないことも珍しくありません。このような背景から、日本皮膚科学会は、科学的根拠が不十分な段階で特定の食品を一律に禁止または推奨することは、かえって患者の食生活の質を低下させ、不必要なストレスを与える可能性があると考え、慎重な立場をとっているのです8
しかし、これは「食事はニキビに全く関係ない」という意味ではありません。ガイドラインはむしろ、「画一的な指導はしない」というメッセージを通じて、患者一人ひとりの状態を観察し、個別に対応することの重要性を示唆しています。JAPANESEHEALTH.ORGでは、この日本皮膚科学会の権威ある見解を最大限に尊重することを大前提とします。その上で、世界中の最新の研究がどのような傾向を示しているのかを理解し、あなた自身とあなたの担当医が、あなたにとって最善の食事法を見つけるための「知識」を提供することこそが、我々の使命であると考えます。

ニキビを悪化させる可能性のある食事:世界の研究は何を語るか?

このセクションの目的は、特定の食品を恐怖の対象としたり、自己判断で極端な食事制限を推奨したりすることでは決してありません。あくまで、世界中の科学的研究で「ニキビとの関連性が指摘されている食品群」についての知識を深め、ご自身の食生活を客観的に見直すきっかけや、医師に相談する際の材料としていただくことです。

1. 高GI(グリセミック・インデックス)食・高糖質食

科学的根拠:
ニキビと食事の関係において、現在最も強い関連性が示唆されているのが、グリセミック・インデックス(GI)の高い食品、すなわち血糖値を急激に上昇させる食品です。2022年に行われた系統的レビュー(複数の研究を統合・評価したもの)では、高GI食とニキビの間に正の関連があることが確認されています2。さらに、2007年に行われた古典的なランダム化比較試験(RCT)では、低GI食を摂取したグループは、対照グループと比較してニキビの病変が有意に減少したことが報告されています9
メカニズム解説:
なぜ高GI食がニキビを悪化させるのでしょうか。そのメカニズムは以下の通りです。

  1. 高GI食品を摂取すると、血糖値が急激に上昇します。
  2. 急上昇した血糖値を下げるために、膵臓からインスリンというホルモンが大量に分泌されます。
  3. このインスリンは、「インスリン様成長因子-1(IGF-1)」という物質の産生を促進します。
  4. インスリンとIGF-1は、両方とも皮脂腺を刺激し、皮脂の分泌を過剰にさせます。
  5. さらに、これらの因子は角化細胞の増殖も促し、毛穴を詰まりやすくさせます。

この「過剰な皮脂」と「毛穴の詰まり」が、ニキビの直接的な原因となるのです10
避けるべき食品(具体例):
日常生活で注意したい高GI食品には、以下のようなものがあります11

  • 精製された炭水化物:白米、白い食パン、うどん、パスタ
  • 菓子類:ケーキ、クッキー、ドーナツ、菓子パン
  • 加糖飲料:清涼飲料水、ジュース、スポーツドリンク
  • その他:じゃがいも、スナック菓子

賢い代替案:
これらの食品を完全に断つ必要はありません。よりGI値の低い食品に置き換えることを意識してみましょう。

  • 主食:玄米、雑穀米、全粒粉パン、蕎麦
  • 間食:ナッツ類、果物(食べ過ぎには注意)、無糖ヨーグルト

2. 乳製品(特に牛乳)

科学的根拠:
乳製品、特に牛乳とニキビの関連性についても、多くの研究が行われています。2018年に発表された、7歳から30歳までの78,529人を対象とした大規模なメタアナリシス(複数の研究を統計的に統合・解析したもの)では、あらゆる種類の乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)の摂取が、ニキビのリスク増加と関連していることが示されました3。特に、低脂肪乳や無脂肪乳(スキムミルク)でより強い関連が見られたという報告もあります。
メカニズム解説:
乳製品がニキビに影響を与えるメカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの仮説が提唱されています。主なものは、牛乳自体に含まれるホルモン(アンドロゲンなど)や、IGF-1の産生を刺激する成分(ホエイプロテインやカゼインなど)が、皮脂腺の活動を活発にするというものです。高GI食と同様に、IGF-1経路の刺激が中心的な役割を果たしていると考えられています10
注意点と個人差:
ただし、乳製品に関しては注意が必要です。前述のメタアナリシスでも、ヨーグルトやチーズは牛乳ほど強い関連性が見られなかったり、研究によっては関連性が見られないものもあったりと、結果は一貫していません3。ヨーグルトに含まれるプロバイオティクス(善玉菌)が、むしろ肌に良い影響を与える可能性も指摘されています。ここでも、日本皮膚科学会が慎重な姿勢をとる理由である「個人差の大きさ」が重要になります。乳製品を摂取するとニキビが悪化すると感じる人もいれば、全く影響がない人もいます。一概に「乳製品は悪」と決めつけるのではなく、ご自身の体調を観察することが大切です。
プロテインに関する注意点:
近年、フィットネスや健康維持のためにプロテインパウダーを摂取する人が増えていますが、注意が必要です。牛乳由来のホエイプロテインは、一部の人でニキビを誘発または悪化させる可能性が報告されています。もしホエイプロテインを摂取し始めてからニキビが増えたと感じる場合は、植物性である大豆由来のソイプロテインや、エンドウ豆由来のピープロテインなどに切り替えてみるのも一つの選択肢です。

3. 質の悪い脂質(飽和脂肪酸・トランス脂肪酸)

科学的根拠:
脂質とニキビの直接的な関連性についての研究は、高GI食や乳製品ほど多くはありません。しかし、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を多く含む食事パターンは、体内の炎症を促進することが知られており、これが間接的にニキビの炎症を悪化させる可能性が指摘されています2
避けるべき食品(具体例):
質の悪い脂質は、主に以下のような食品に多く含まれています。

  • 揚げ物:フライドポテト、唐揚げ、天ぷら
  • ファストフード:ハンバーガー、ピザ
  • 加工食品:マーガリン、ショートニングを使用したクッキーやケーキ、スナック菓子
  • 脂身の多い肉類

これらの食品は、単にニキビだけでなく、生活習慣病のリスクを高める可能性もあるため、摂取量には注意が必要です。

ニキビ改善のために積極的に摂りたい栄養素と食品

ニキビを悪化させる可能性のある食品を避けることと同じくらい重要なのが、肌の健康をサポートし、ニキビを改善する効果が期待できる栄養素を積極的に摂取することです。ここでは、科学的エビデンスに基づいて、特に重要と考えられる栄養素とその供給源となる食品を紹介します。

1. オメガ3脂肪酸:炎症を抑える「良い油」

科学的根拠:
「油」と聞くとニキビに悪いイメージを持つかもしれませんが、すべての油が悪いわけではありません。オメガ3脂肪酸は、強力な抗炎症作用を持つことで知られる「良い油」の代表格です。2014年に行われたランダム化比較試験(RCT)では、オメガ3脂肪酸を補給したグループは、10週後に炎症性・非炎症性の両方のニキビ病変が有意に減少したことが報告されています4。この知見は、福岡美容皮膚科あやべクリニックの綾部誠医師のような日本の専門家にも注目されています12
メカニズム解説:
オメガ3脂肪酸は、体内でプロスタグランジンやロイコトリエンといった炎症を引き起こす物質の生成を抑制する働きがあります。ニキビは毛穴の炎症性疾患であるため、この抗炎症作用が直接的にニキビの赤みや腫れを和らげるのに役立ちます。
豊富な食品:
伝統的な和食は、オメガ3脂肪酸の優れた供給源です13

  • 青魚:サバ、イワシ、サンマ、アジ
  • 植物油:亜麻仁油、えごま油(これらは熱に弱いため、ドレッシングなど生での使用が推奨されます)
  • ナッツ類:くるみ

2. ビタミン・ミネラル:肌のターンオーバーと防御機能をサポート

ビタミンとミネラルは、肌の健康を維持するための基本的な栄養素です。特にニキビとの関連で重要なものを以下に挙げます。

亜鉛 (Zinc)

科学的根拠:
亜鉛は、ニキビ改善において最も注目されているミネラルの一つです。2020年に行われたメタアナリシスでは、ニキビ患者は健康な人と比較して血清中の亜鉛濃度が有意に低いこと、そして亜鉛を補充する治療が炎症性丘疹(赤いニキビ)の数を有意に改善することが示されました5
役割:
亜鉛は肌に対して多面的な働きをします。

  • 皮脂分泌の調整:ホルモンの働きを調整し、過剰な皮脂分泌を抑制します。
  • 抗炎症作用:炎症反応を抑え、ニキビの赤みを軽減します。
  • 肌の修復促進:皮膚のターンオーバー(新陳代謝)を正常化し、ニキビ跡の治癒を助けます。
  • 抗菌作用:ニキビの原因菌であるアクネ菌の増殖を抑える可能性も示唆されています。

豊富な食品:
牡蠣、赤身肉(牛肉、豚肉)、レバー、鶏肉、卵、ナッツ類、大豆製品

ビタミンA, C, E

役割:
これらのビタミンは「ビタミンACE(エース)」とも呼ばれ、強力な抗酸化作用で知られています。

  • ビタミンA:皮膚や粘膜の健康を維持し、ターンオーバーを正常化します。不足すると肌が乾燥し、毛穴が詰まりやすくなります。
  • ビタミンC:コラーゲンの生成を助け、肌のハリを保ちます。また、メラニン色素の生成を抑え、ニキビ跡の色素沈着を防ぐ効果も期待できます。
  • ビタミンE:強い抗酸化作用で肌細胞をダメージから守り、血行を促進してターンオーバーをサポートします。

豊富な食品:
緑黄色野菜(人参、かぼちゃ、ほうれん草、ブロッコリー)、果物(キウイ、柑橘類、イチゴ)、ナッツ類(特にアーモンド)、植物油

ビタミンB群 (B2, B6)

役割:
ビタミンB群は、エネルギー代謝の補酵素として重要な役割を果たします。特にビタミンB2とB6は、脂質の代謝に関与し、皮脂のバランスを整える働きがあります。不足すると皮脂が過剰になったり、皮膚炎を引き起こしたりすることがあります。
豊富な食品:
レバー、うなぎ、卵、納豆、マグロ、カツオ、バナナ

3. 食物繊維とプロバイオティクス:腸内環境から肌を整える「腸活」アプローチ

科学的根拠:
近年、「腸-肌相関(Gut-Skin Axis)」という概念が注目されています。これは、腸内環境の状態が、全身の免疫システムを介して肌の健康に直接影響を与えるという考え方です。2024年に発表された非常に新しいスコーピングレビューでは、経口摂取および外用の両方において、プロバイオティクス(善玉菌)がニキビの病変数と炎症を減少させる可能性があることが示唆されています6
メカニズム解説:
腸内環境が悪化し、悪玉菌が優勢になると、腸のバリア機能が低下します。すると、通常は体内に吸収されないはずの有害物質が血中に漏れ出し(リーキーガット症候群)、これが全身性の微弱な炎症を引き起こします。この炎症が肌にまで及び、ニキビを誘発・悪化させる一因になると考えられています。食物繊維は善玉菌のエサとなり、プロバイオティクスは善玉菌そのものを補給することで、腸内環境を整え、この負の連鎖を断ち切るのに役立ちます。
豊富な食品:

  • 食物繊維:海藻類(わかめ、ひじき)、きのこ類、根菜(ごぼう、れんこん)、豆類、全粒穀物、オートミール
  • プロバイオティクス:無糖ヨーグルト、味噌、納豆、キムチ、漬物などの伝統的な発酵食品。これらは日本の食文化に深く根付いています13

【実践編】今日から始めるニキビ改善食生活プラン

これまでに解説した科学的知識を、日本の日常生活に無理なく取り入れるための具体的なプランを提案します。重要なのは、完璧を目指してストレスを溜めるのではなく、できることから少しずつ始めることです。秋田大学の研究では、日本の大学生がストレスや自己管理の食事によって肌の状態が悪化することが示されており、現実的で継続可能なアプローチがいかに重要であるかがわかります14

表1: 「置き換え」で簡単スタート!ニキビ改善のための食事スワップ

今までの食事 (Before) これからの食事 (After) 期待できる効果
朝食:菓子パンと加糖カフェラテ 朝食:全粒粉パン、ゆで卵、無糖ヨーグルト、ブラックコーヒー 高GIから低GIへ。タンパク質・プロバイオティクス摂取
昼食:大盛りの白米と唐揚げ弁当 昼食:玄米ご飯、焼き魚(サバなど)、ほうれん草のおひたし、味噌汁 高GI・悪質脂質から低GI・Omega-3・ビタミン・食物繊維へ
間食:チョコレート、ポテトチップス 間食:素焼きナッツ(くるみ、アーモンド)、果物、枝豆 飽和脂肪酸・糖質からビタミン・ミネラル・良質な不飽和脂肪酸へ
夕食:インスタントラーメンとジュース 夕食:野菜たっぷり鍋(豆腐、きのこ、鶏肉入り)、締めは蕎麦 精製炭水化物・糖質からタンパク質・ビタミン・食物繊維へ

コンビニ・外食での賢い選択

忙しい現代社会では、毎日自炊をするのは難しいかもしれません。しかし、コンビニエンスストアや外食でも、少しの知識で賢い選択は可能です11, 15
選ぶべきもの:

  • サラダチキン、ゆで卵、焼き魚
  • 納豆巻き、おにぎり(鮭、梅などシンプルな具材)
  • 海藻や野菜のサラダ(ドレッシングはノンオイルを選ぶか、少量にする)
  • 無糖ヨーグルト、枝豆、冷奴
  • 味噌汁、豚汁

避けるべきもの:

  • 菓子パン、甘いデニッシュ
  • カップ麺、パスタ類
  • ホットスナックの揚げ物(フライドチキン、コロッケなど)
  • 甘い清涼飲料水、加糖のカフェラテ

水分補給の重要性

見落とされがちですが、十分な水分補給は肌の健康に不可欠です。水は体内の老廃物を排出し、肌のターンオーバーをスムーズにします。1日に1.5〜2リットルを目安に、こまめに水を飲むことを習慣にしましょう。甘いジュースやスポーツドリンクではなく、水やお茶(カフェインの少ない麦茶など)を選ぶことが大切です。

よくある質問 (FAQ)

Q1. チョコレートは本当にニキビに悪いですか?
A. これは非常によくある質問です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、チョコレートとニキビの明確な関連性は認められていません1。しかし、問題となるのはカカオそのものではなく、市販のチョコレートに大量に含まれる砂糖や乳製品である可能性が高いです。特に、ミルクチョコレートやホワイトチョコレートは高GI・高脂肪の代表格です。もしチョコレートを食べたい場合は、カカオ含有率が高い(70%以上)ビターチョコレートを少量楽しむのが良いでしょう。カカオポリフェノールには抗酸化作用も期待できます。
Q2. ナッツは脂質が多いですが、食べても大丈夫ですか?
A. はい、適量であれば非常におすすめです。ナッツに含まれる脂質の多くは、オメガ3脂肪酸やオメガ9脂肪酸などの良質な不飽和脂肪酸です。これらは炎症を抑える働きがあります。さらに、ナッツはビタミンEや亜鉛、食物繊維も豊富に含みます16。ただし、カロリーが高いので食べ過ぎには注意が必要です。塩や油で加工されていない、素焼きのナッツを1日にひとつかみ程度(約25g)を目安にすると良いでしょう。
Q3. 辛いものはニキビに影響しますか?
A. 辛いものが直接的にニキビの原因となるという明確な科学的根拠は現在のところありません。しかし、香辛料の過剰摂取は胃腸に負担をかけ、消化吸収機能を低下させる可能性があります。また、発汗を促すことで皮脂分泌が活発になったり、肌を擦る機会が増えたりすることも考えられます。直接的な原因というよりは、体質や摂取量によって間接的に影響する可能性がある、と考えるのが妥当でしょう。
Q4. プロテインを飲むとニキビができますか?
A. 前述の通り、一部の人では牛乳由来のホエイプロテインがニキビを悪化させる可能性が指摘されています。これは、ホエイプロテインがインスリンやIGF-1の分泌を強力に刺激するためと考えられています。もしプロテインを飲み始めてからニキビが悪化したと感じる場合は、摂取を中断してみるか、大豆由来のソイプロテインやエンドウ豆由来のピープロテインなどの植物性プロテインに切り替えて様子を見ることをお勧めします。
Q5. 食事を変えたら、どのくらいで効果が出ますか?
A. 肌のターンオーバーには最低でも4週間から6週間かかります。そのため、食事改善の効果を実感するには、少なくとも1〜2ヶ月は継続することが重要です。すぐに結果が出ないからといって諦めず、長期的な視点で取り組むことが大切です。また、効果の現れ方には大きな個人差があることも理解しておきましょう。
Q6. サプリメントで栄養を補うのは有効ですか?
A. 基本は食事から栄養を摂ることが大原則です。しかし、食生活が不規則で特定の栄養素が不足しがちな場合は、サプリメントの活用も一つの選択肢となり得ます。特に、エビデンスが比較的豊富な亜鉛オメガ3脂肪酸プロバイオティクスなどは検討の価値があるかもしれません。ただし、サプリメントの過剰摂取は健康を害するリスクもあります。必ず医師や薬剤師、管理栄養士などの専門家に相談の上、適切な種類と量を守って使用してください。
Q7. 和食はニキビに良いと聞きますが、本当ですか?
A. 伝統的な和食の基本である「一汁三菜」は、ニキビケアの観点からも非常に理想的です13。主食であるご飯(できれば玄米)、魚(オメガ3脂肪酸)、大豆製品(タンパク質、イソフラボン)、野菜や海藻(ビタミン、ミネラル、食物繊維)、そして発酵食品である味噌(プロバイオティクス)をバランス良く摂取できます。現代の日本の食生活は西洋化が進んでいますが13、改めて和食の価値を見直し、日々の食事に取り入れることは、ニキビ改善への近道と言えるでしょう。

結論:美肌は内側から。バランスの取れた食生活を目指して

本記事では、ニキビと食事に関する最新の科学的エビデンスを、日本皮膚科学会の公式見解を尊重しつつ、多角的に解説してきました。最も重要なポイントを再確認しましょう。高GI食や一部の乳製品は、体質によってはニキビを悪化させる可能性があるため注意が必要ですが、一方でオメガ3脂肪酸、亜鉛、各種ビタミン、食物繊維、プロバイオティクスなどは、積極的に摂取することで肌の健康を内側からサポートしてくれます。
しかし、忘れてはならないのは、食事はあくまでニキビに影響を与えるパズルの一片に過ぎないということです7。どんなに食事に気をつけていても、不適切なスキンケア、睡眠不足、過度なストレスなどが重なれば、ニキビは改善しにくいでしょう。洗顔方法の見直し、十分な睡眠時間の確保、自分なりのストレス解消法を見つけることなど、生活習慣全体を整える総合的なアプローチが、健やかな肌への最も確実な道です。
完璧な食事を毎日続けることは誰にとっても難しいことです。大切なのは、この記事で得た知識を元に、極端な制限で自分を追い込むのではなく、「昨日は揚げ物を食べたから、今日は魚と野菜中心にしよう」といったように、柔軟にバランスを取りながら、できることから一つずつ実践していくことです。あなたの肌が本来の輝きを取り戻すために、この「決定版ガイド」が、信頼できる羅針盤となることを心から願っています。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。食事内容の大幅な変更やサプリメントの摂取を検討する際には、必ず事前に医師や管理栄養士にご相談ください。

参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン 2023. https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
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