ビタミン欠乏による貧血 | 原因と対策を詳しく解説
血液疾患

ビタミン欠乏による貧血 | 原因と対策を詳しく解説

はじめに

日常生活の中で慢性的な疲労感や食欲不振、息切れなどに悩まされている方は少なくありません。こうした症状のひとつの原因としてビタミンB12や葉酸(ビタミンB9)の不足による貧血が考えられます。これらの栄養素が不足すると、体内で正常な赤血球がうまくつくられず、サイズが大きいのに機能は十分でない赤血球(巨赤芽球)が増加し、貧血症状を引き起こすことがあります。本記事では、ビタミンB12や葉酸の不足で起こる貧血の概要や症状、考えられる合併症、そして貧血が疑われる場合の受診の重要性などを詳しく解説いたします。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事では、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏によって起こる貧血の概要を紹介しますが、万が一「自分が当てはまるかもしれない」と感じた方は、早めに医師に相談し、必要な検査や治療方針を確認することが大切です。特に、症状が長引いている、あるいは急に悪化している場合は、専門の医師(血液内科など)にかかることで適切なケアを受けやすくなります。本記事でも言及しますが、参考として医師 Lê Thị Mỹ Duyên(ベトナム語表記:Lê Thị Mỹ Duyên)のアドバイスが含まれており、貧血症状の正確な診断や合併症リスクについて具体的な検査方法を示唆しています。ただし、実際の治療方針は読者それぞれの健康状態や生活背景によって異なりますので、一度は病院で検査を行うことをおすすめします。

ビタミンB12・葉酸不足による貧血とは

ビタミンB12や葉酸(ビタミンB9)の不足による貧血は、造血のメカニズムに大きく関わるこれらの栄養素が体内で不足し、成熟した赤血球を作り出す過程に支障が出ることで引き起こされます。結果として、赤血球が正常より大きいサイズ(巨赤芽球)になりながらも十分に機能しないため、体内への酸素供給が滞り、さまざまな症状が現れます。

体内でビタミンB12や葉酸が不足する主な原因には、以下が挙げられます。

  • 食事からの摂取不足:とくに動物性食品をあまり食べない方や偏食のある方、野菜不足のある方などはビタミンB12や葉酸の不足に陥りやすいといわれています。
  • 胃腸の吸収機能低下:胃や腸の病気、あるいは加齢による吸収障害などがある場合、たとえ食事から栄養を摂っていてもビタミンB12や葉酸が十分に吸収されないケースがあります。
  • 妊娠や授乳などで必要量が増える:妊娠中や授乳期は通常よりビタミンB12や葉酸の必要量が大きくなるため、不足を起こしやすくなります。

こうした原因を放置してしまうと、いずれ貧血症状が明確に表面化し、さらには深刻な合併症に至るリスクも高まります。

ポイント

  • ビタミンB12は主に肉や魚介、卵、乳製品など動物性食品に多く含まれています。
  • 葉酸は緑黄色野菜や豆類、果物などに多く含まれています。

全身的な貧血症状:なぜ起こるのか

貧血全般の症状として代表的なものには、以下のような特徴があります。赤血球やヘモグロビンが不足すると、身体の組織へ酸素が行き渡りにくくなるため、疲労感や息切れ、頭痛などの症状が出るのが典型的です。特にビタミンB12や葉酸の不足による巨赤芽球性貧血の場合、大きいのに十分に働けない赤血球が増えることから、酸素供給がより阻害される可能性があります。

  • 極度の疲労感
  • 倦怠感(眠気・だるさ)
  • 息切れや呼吸が苦しい感じ
  • めまい・立ちくらみ
  • 頭痛
  • 皮膚の蒼白(血色が悪い)
  • 動悸(心臓がドキドキしているのを強く感じる)
  • 耳鳴り
  • 食欲不振・体重減少

これらは貧血ならではの典型的な訴えですが、ビタミンB12欠乏や葉酸欠乏ではさらに固有の症状が加わる場合があります。以下で詳しく説明します。

ビタミンB12欠乏が引き起こす特有の症状

ビタミンB12が不足した状態(貧血が出現しているかどうかを問わず)で特に問題視されるのは、中枢神経系や末梢神経系への影響です。これはビタミンB12が神経の髄鞘維持に深く関与しているためとされます。主に次のような症状がみられる場合があります。

  • 黄疸のような顔色:皮膚や眼球がやや黄色みを帯びる。
  • 舌の痛み・発赤(舌炎):舌が異常に赤く、痛みを感じることがある。
  • 口内炎や口角炎:口の中や唇の端がただれたり、小さな潰瘍ができやすくなる。
  • 手足のしびれや感覚異常:ピリピリとした「虫が這うような」感覚が続くケース。
  • 歩行や動きのぎこちなさ:脚の力が入りにくくなる、バランス感覚が悪くなる。
  • 視力の低下:視界がかすんだり、ぼやけたりすることがある。
  • 感情変化や抑うつ症状:イライラしたり落ち込んだりしやすくなる。
  • 思考力や記憶力の低下:しっかり考えられない、集中できない、物忘れが増えるなど。

これらの症状は初期段階では軽微なことが多く、自覚しにくい傾向があります。しかし、長く放置すると神経系の後遺症が残るリスクがあり、早期発見・早期治療が重要とされています。

新しい研究動向:ビタミンB12と神経機能

2022年に発表されたCurrent Developments in Nutrition (DOI: 10.1093/cdn/nzac050)において、妊娠中のビタミンB12欠乏は母体だけでなく胎児の神経発達に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。この研究は、ビタミンB12不足が続く妊婦約500名を対象に追跡調査を行ったもので、出生児の一部で神経系の発育に遅れが認められたという報告です。国内でも妊娠期の栄養指導が改めて重視されており、ビタミンB12をはじめとした栄養素を普段の食事からしっかり摂取することが再認識されています。

また、2023年にJournal of Neurologyで発表された大規模な系統的レビュー(Chang C, Ke DS, Chen JYほか)では、ビタミンB群全般が認知機能や神経系の保護に重要な役割を果たす可能性が示唆されています。特に日本人を含むアジア地域でのデータも一部取り入れられており、食習慣の違いや遺伝的背景を考慮しながらも、ビタミンB12不足を長期放置しないことが推奨されています。

葉酸(ビタミンB9)欠乏が引き起こす特有の症状

葉酸不足による貧血の場合も、前述した一般的な貧血症状に加えて、以下の特徴が表れることがあります。

  • 手足のしびれ・感覚異常
  • 筋力低下
  • 気分の落ち込みやうつ状態

葉酸は細胞の増殖やDNA合成に不可欠な栄養素とされ、妊娠期に十分な葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害などの胎児奇形リスクを低減できるという報告は広く知られています。一方、妊婦以外でも不足が続くと貧血だけでなく、何らかの神経症状が出るケースがあるため、注意を払う必要があります。

新しい研究動向:葉酸不足とメンタルヘルス

近年、葉酸が中枢神経系の機能維持だけでなくメンタルヘルスにも影響するという報告が増えています。2021年以降、欧米を中心に行われたメタ分析の一部では、うつ症状のある患者に葉酸を補充することで改善傾向がみられたデータも報告されています。ただし、これらの研究は国や人種、生活習慣によって結果が異なり得ること、また症状の重度や他の栄養状態など多くの要因が絡むため、必ずしも葉酸だけで改善すると断定はできません。

放置すると怖い合併症

ビタミンB12や葉酸不足による貧血を放置することがなぜ危険なのか。主な理由として、長期的な神経障害や臓器機能への悪影響が挙げられます。

  • 神経障害:軽度の場合でも末梢神経への障害が長引くと、将来的に痺れや歩行障害が残る可能性があります。
  • 一時的不妊:女性では排卵や子宮内膜の状態、男性では精子形成において、葉酸やビタミンB12が不足していると妊娠しにくい状態になることも。
  • 心血管疾患:ホモシステインの代謝異常を誘発し、高ホモシステイン血症が動脈硬化などのリスクを高める可能性があります。
  • 妊娠合併症や胎児への影響:妊娠中の重度貧血や葉酸・ビタミンB12不足は早産や低体重児、先天性異常のリスクを高める可能性があります。
  • 胎児の発達異常(神経管閉鎖障害など):特に葉酸不足が顕著な場合に指摘されていますが、ビタミンB12不足の影響も併せて検討されており、複合的に影響し合うとみられています。

一部の合併症は適切な治療やサプリメントなどで回復・改善が見込めるものの、神経系の損傷が進行すると回復が難しいケースもあるため、自己判断で放置せず、疑わしい場合は早急に医師の診察を受けることが推奨されます。

受診のすすめ:どのように検査・診断するか

もし「ビタミンB12や葉酸不足かもしれない」「近ごろ疲れやすくて、めまいや頭痛が治まらない」という場合は、なるべく早く医療機関での検査を受けましょう。一般的に血液検査で赤血球数やヘモグロビン濃度、MCV(平均赤血球容積)などを測定し、それらの値から貧血かどうかを判断します。そのうえで、ビタミンB12や葉酸の血中濃度をさらに調べることにより、欠乏状態を特定していきます。

  • 血液検査
    • 赤血球数やヘモグロビン値(Hb)、ヘマトクリット値(Hct)の測定。
    • MCV(平均赤血球容積)が高値を示す場合、巨赤芽球性貧血の可能性がある。
  • 血中ビタミンB12測定
    • ビタミンB12の血中濃度が低いと、欠乏状態の可能性が高い。
  • 血中葉酸測定
    • 葉酸が低い場合、葉酸欠乏による貧血が疑われる。
  • メチルマロン酸やホモシステイン濃度
    • ビタミンB12や葉酸の欠乏をより正確に評価するため、追加で検査されることもある。

ビタミンB12や葉酸欠乏が見つかった際には、食事内容の見直しやサプリメントの利用、必要に応じて注射などによる補給が提案される場合があります。

海外のガイドライン

2021年以降、欧米の複数のガイドラインや学会報告(例:アメリカ血液学会など)では、「明確な欠乏症状が出る前に高リスク群(高齢者、胃切除既往者、妊娠中の女性など)に対して定期的な血液検査を行う」ことが推奨されています。日本国内でも近年、高齢化の進行や食生活の変化に伴い、同様の考え方を取り入れる医療機関が増えています。

日常でできる予防と対策

ビタミンB12や葉酸不足による貧血を予防するには、まずは日常の食事や生活習慣を振り返り、バランスよく栄養を摂取することが基本となります。特に野菜不足や動物性食品を極端に避けがちな人は注意が必要です。ここでは、具体的な対策をいくつか挙げます。

  • 食事のバランスを見直す

    • ビタミンB12は主に肉、魚介、卵、乳製品などに多く含まれます。
    • 葉酸はほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜、豆類、果物に豊富です。
    • 「毎食に野菜を一皿」「動物性食品も適度に摂る」ことを意識しましょう。
  • 妊娠前後や授乳期は特に注意

    • 妊娠中や授乳中は葉酸やビタミンB12の要求量が大きく増加します。
    • 妊娠を計画している方も含め、サプリメントの利用を検討するのが望ましいケースも。
    • 妊婦健診で血液検査を行い、状況に応じて医師と相談することが有効です。
  • 胃腸の健康管理

    • 胃や小腸の疾患、あるいは加齢によって胃酸の分泌が低下するとビタミンB12の吸収が阻害される場合があります。
    • 胃腸症状が続く場合は早めに受診し、必要に応じて吸収不良の有無を確認しましょう。
  • アルコールや喫煙の習慣を見直す

    • 過度な飲酒や喫煙は栄養吸収に悪影響を及ぼす可能性があります。
  • 定期的な血液検査

    • 高齢者や慢性疾患を持つ方、胃の切除手術を受けた方などは、定期的に血液検査を受けることで早期の欠乏状態を把握しやすくなります。

治療の進め方

貧血の原因がビタミンB12や葉酸不足であると確定した場合、医師の指示に従いながら治療を進めます。治療の柱は「栄養補給」と「症状コントロール」であり、具体的には以下のアプローチが一般的です。

  1. 食事療法
    • 食事のバランスを見直し、ビタミンB12・葉酸を豊富に含む食材を積極的にとる。
  2. サプリメントの利用
    • 通常の食事だけでは不十分な場合、錠剤やドリンクタイプのサプリメントが推奨されることがあります。
  3. 注射などの医療的補給
    • 胃の手術後や吸収障害がある場合、サプリメントだけでは効果が得られないケースも。
    • このような場合は医療機関でビタミンB12の注射を行うことがあります。
  4. 合併症への対処
    • 神経症状が出ている場合は神経科的な検査を受けるなど、症状に応じた専門的治療を組み合わせる。

治療方針は人によって異なりますが、まずは根本原因の解消を優先しつつ、貧血による症状を速やかに改善するための栄養補給を進めることが多いです。途中で自己判断によりサプリメントや治療を中断すると、再び状態が悪化する可能性があるため、定期的に医師のフォローアップを受けましょう。

結論と提言

ビタミンB12や葉酸の不足によって引き起こされる貧血は、初期症状が軽微なため見逃しがちですが、重症化すると神経障害や不妊、胎児への影響など深刻な合併症が起こるリスクがあります。疲労感やめまい、皮膚の蒼白、口内炎、手足のしびれなどが長引く場合、できるだけ早く血液検査で貧血の有無を調べるのが望ましいです。貧血であってもその原因がビタミンB12や葉酸不足なのか、あるいは鉄不足や他の疾患によるものなのかを正しく判別し、適切な対処を行うことが回復への最短ルートとなります。

さらに、食事での予防策としては動物性食品や緑黄色野菜・豆類をバランスよく摂取し、妊娠や授乳など栄養要求量が増える時期はサプリメントの利用を検討するといった工夫が重要です。胃腸の吸収障害が疑われる場合は、専門医へ相談しながら注射などの補給手段を組み合わせ、神経障害の進行を防ぐことが求められます。

また、ビタミンB12や葉酸と神経機能の関連性を示す新しい研究報告も増えており、うつ症状をはじめメンタルヘルスとのかかわりも注目されています。国内外の研究では、食生活やサプリメントで適度に栄養を補うことで、貧血だけでなく神経系の健康維持にも役立つ可能性があると示唆されています。

貧血を疑う症状がある方、または高齢者・妊娠中の方など、リスクが高い方は適切な検査と対処で健康を維持しましょう。自己判断で放置すると、取り返しのつかない合併症に至る危険も否定できません。


この記事は情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスではなく、診断や治療を代替するものではありません。症状に不安のある方は、必ず医療機関で専門家にご相談ください。

参考文献

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  • Folate-deficiency anemiaMedlinePlus. アクセス日: 5/9/2016
  • Pernicious anemiaMedlinePlus. アクセス日: 18/06/2021
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  • Chang C, Ke DS, Chen JY ほか. Essential roles of B vitamins in neurological function and their potential impact on cognition: a systematic review and meta-analysisJournal of Neurology. 2023. doi:10.1007/s00415-022-11469-6
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