皮膚科疾患

ラズベリーシードオイルの効果とSPFの真実|日焼け止め神話に皮膚科学の答え

ラズベリーシードオイル(Rubus idaeus)は、その優れた抗酸化作用と抗炎症作用で注目を集める美容成分です。しかし、インターネット上で広く噂される「SPF28~50」という高い日焼け止め効果については、科学的根拠が乏しく、ある研究の誤解に基づいて広まったものです6。本記事では、最新の査読済み研究論文に基づき、ラズベリーシードオイルが持つ真の美容効果、SPF値に関する科学的な真実、そして日本の薬機法を遵守した安全な使い方を、皮膚科学の視点から徹底的に解説します。

この記事の科学的根拠

本記事は、日本の公的機関・学会ガイドラインおよび査読済み論文を含む高品質の情報源に基づき、出典は本文のクリック可能な上付き番号で示しています。

  • 日本の臨床ガイドラインと法規制:日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」5や、厚生労働省の「化粧品基準」8を参考に、日本国内での安全な使用法と法的背景を解説しています。
  • 国際的な科学的検証:2021年に発表され、実際のSPF値を測定した生体内(in-vivo)試験7や、オイルの成分と効果を包括的にレビューした複数の論文12など、国際的な査読済み論文を基にしています。

要点まとめ

  • ラズベリーシードオイルに「SPF28~50」という高い日焼け止め効果があるという噂は、2000年の研究の誤解に基づくもので、単独での日焼け止め使用は推奨されません67
  • 最新の生体内(in-vivo)試験では、実際のSPF値は2.6と非常に低く、シワやたるみの原因となるUVAを防ぐ効果も確認されていません7
  • 一方で、ビタミンEやエラグ酸などの豊富な抗酸化物質を含み、紫外線によるダメージから肌を保護するエイジングケア効果が期待できます23
  • オメガ3脂肪酸による抗炎症作用があり、乾燥による肌荒れや赤みをケアするのに役立ちます25
  • 日本では「化粧品」に分類され、日焼け止め効果を謳うことは薬機法で禁止されています。保湿や抗酸化の補助として使用するのが安全です8

ラズベリーシードオイルとは?

「自然由来のオイルでスキンケアをしたいけれど、本当に効果があるの?」と感じる方は少なくないでしょう。特にラズベリーシードオイルは多くの情報が飛び交い、その実態が分かりにくいかもしれません。その気持ち、とてもよく分かります。科学的には、このオイルの価値は、そのユニークな成分構成にあります。それはまるで、肌のために特別に調合された栄養豊富なスムージーのようなものです。必須脂肪酸やビタミンが、肌が本来持つ力をサポートするように働きます12

成分と特徴:オメガ脂肪酸、ビタミンE、エラグ酸

ラズベリーシードオイルの主な有効成分は、必須脂肪酸であるオメガ3(α-リノレン酸)とオメガ6(リノール酸)です。これらの成分は、肌の最も外側でうるおいを守る「バリア機能」をサポートし、外部刺激から肌を守る重要な役割を担います。また、強力な抗酸化物質であるビタミンE(特にγ-トコフェロール)と、ポリフェノールの一種であるエラグ酸も豊富に含有しており、これらが肌の健やかさを多角的に支えています1

このセクションの要点

  • ラズベリーシードオイルは、肌のバリア機能を支えるオメガ3・6脂肪酸を豊富に含みます。
  • 強力な抗酸化物質であるビタミンEとエラグ酸が、肌を外的ストレスから守ります。

【科学的根拠】肌への主な美容効果

SPFの話題に隠れがちですが、「日焼け止め効果以外に、自分の肌悩みに合う良いことがあるの?」という疑問を持つのは当然です。このオイルには、科学的に裏付けられた素晴らしい美容効果がたくさんあります。その中心となるのが「抗酸化」と「抗炎症」という2つの働きです。抗酸化とは、肌細胞をサビさせてしまう活性酸素から肌を守る働きのこと。これは、リンゴの切り口が茶色くなるのを防ぐレモン汁のような役割と似ています。この働きが、年齢とともに気になる肌の悩みにアプローチする鍵となります134

1. 抗酸化作用によるエイジングケア

豊富に含まれるビタミンE(トコフェロール類)とエラグ酸は、紫外線や大気汚染などの外的ストレスによって発生する活性酸素種(いわゆる肌のサビ)から肌細胞を保護します。2019年に発表された研究では、ラズベリー抽出物がUVBによる皮膚の酸化的損傷を軽減することが示されました3。これにより、乾燥による小じわなど、年齢に応じた肌の悩みにアプローチするエイジングケア効果が期待できます。

2. 抗炎症作用で肌荒れ・赤みをケア

オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)は、炎症反応を引き起こす体内の経路を穏やかにする働きがあることが知られています2。これにより、乾燥による肌荒れや赤みなどの炎症性スキントラブルを和らげ、肌を健やかに保つサポートをします。これは、日本皮膚科学会のガイドラインがアトピー性皮膚炎の基本的なケアとして保湿剤の使用を推奨していることとも一致する考え方です5

このセクションの要点

  • ビタミンEとエラグ酸が強力な抗酸化作用を発揮し、年齢に応じた肌の悩みをケアします。
  • オメガ3脂肪酸が炎症を穏やかにし、乾燥による肌荒れや赤みをサポートします。

【重要】ラズベリーシードオイルのSPF効果に関する科学的真実

「本当に日焼け止めとして使えるの?」「情報が多くて何が本当か分からない…」このオイルを取り巻く最も大きな混乱は、SPF効果に関するものです。多くの情報が錯綜しており、ご自身の肌を守るために正確な情報を知りたいと思うのは当然のことです。その混乱の背景には、ある一つの科学論文が時間とともに誤って解釈されていった経緯があります。だからこそ、噂の起源から最新の研究結果までを比較し、なぜこのオイル単体での紫外線対策が危険なのかを科学的に解き明かすことが重要です67

噂の「SPF28-50」説の起源と誤解

広く流布している「SPF28~50」という説は、2000年にカナダの研究者Oomahらが発表した論文が引用元となっています6。しかし、この研究はオイルが紫外線をどの程度透過させないかを測定したものであり、現代の化粧品業界で標準となっている、人の肌に塗って測定する「SPF測定試験」ではありませんでした。そのため、この数値をそのままSPF値として解釈することはできません。

最新研究が示す実際の紫外線防御効果

この混乱に終止符を打つため、2021年にÁcsováらが、実際に人の肌にオイルを塗布して測定する、より信頼性の高い生体内(in-vivo)試験を実施しました。その結果、ラズベリーシードオイルのSPF値はわずか「2.6」であったと報告されています7。これは日常生活での紫外線対策としても全く不十分なレベルです。さらに重要な点として、肌の奥深くまで届き、シワやたるみの主な原因となるUVA(紫外線A波)に対する防御効果はほとんどないことも指摘されています。

なぜ単体での日焼け止めとして推奨されないのか

単独使用が推奨されない理由は、科学的データに基づき明確です。第一に、証明されたSPF値が非常に低いこと。第二に、肌の老化を加速させるUVAを防ぐ効果が不明であること。そして第三に、そもそも日本国内では、化粧品であるこのオイルが具体的なSPF値を謳ったり、「日焼け止め」として販売したりすること自体が薬機法で厳しく規制されているためです78

受診の目安と注意すべきサイン

  • 市販の日焼け止め製品を使わず、このオイルだけで日中の紫外線対策を行うことは非常に危険です。
  • 「SPF50」といったインターネット上の未確認情報を信じて、長時間屋外で過ごすことは避けてください。
  • 日焼け後に水ぶくれや強い痛みが続く場合は、速やかに皮膚科専門医にご相談ください。

ラズベリーシードオイルの安全な使い方

では、このオイルの優れた抗酸化力と抗炎症作用を、どうすれば安全にスキンケアに取り入れられるのでしょうか。答えは、「日焼け止め」としてではなく、「日焼け後の肌をケアし、健やかに保つための美容液」として活用することです。これは、主食の代わりにおかずを食べるのではなく、栄養バランスを考えて両方を上手に組み合わせる食事の考え方に似ています。日中の紫外線対策は信頼できる日焼け止め製品に任せ、このオイルは夜のケアや保湿の補助として使うのが賢明です。

今日から始められること

  • 保湿ブースターとして:お手持ちの乳液やクリームに1〜2滴混ぜて、保湿力を高めます。特に乾燥が気になる季節におすすめです。
  • スペシャルケアとして:夜のスキンケアの最後に、乾燥が気になる部分や日差しを浴びた日の肌に優しくなじませます。
  • 日焼け止めとの併用:市販の日焼け止めを規定量しっかり塗った後、乾燥対策として上から薄く重ねることもできます。(日焼け止めと直接混ぜることは、製品の性能を損なう可能性があるため推奨されません)

日本国内での分類と注意点(薬機法)

日本において、ラズベリーシードオイルは「化粧品」に分類されます。これは、その効果が「肌を健やかに保つ」「皮膚にうるおいを与える」といった、穏やかな作用に限定されることを意味します8。薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)では、化粧品が病気の治療や予防を謳うことや、「SPF50」のように効果を保証するような具体的な数値を表示することは厳しく禁止されています。「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」といった、化粧品として許可された範囲の表現は可能ですが、それはあくまで保湿や抗酸化による効果を指すものです。

このセクションの要点

  • ラズベリーシードオイルは日本の法律上「化粧品」であり、治療効果や具体的なSPF値を謳うことはできません。
  • 「日やけによるシミ・ソバカスを防ぐ」という表現は可能ですが、これは保湿などによる予防的な効果を指します。

他の美容オイルとの比較(ホホバ、ローズヒップ)

美容オイルの世界には多くの選択肢があり、どれが自分の肌に最適か迷うこともありますよね。それぞれのオイルには個性があり、得意なことが異なります。ラズベリーシードオイルを他の人気オイルと比較することで、あなたの肌が今、最も必要としているケアを見つける手助けになります。

自分に合った選択をするために

ラズベリーシードオイル: 紫外線ダメージが気になる肌や、年齢に応じたエイジングケアを始めたい方におすすめです。強力な抗酸化力が特徴です1

ホホバオイル: 皮脂バランスを整える働きに優れているため、脂性肌や混合肌、ニキビができやすい方に特に適しています。

ローズヒップオイル: ビタミンAやCが豊富で、肌のキメを整えたり、ニキビ跡などの色素沈着が気になる肌のケアに向いています。

Lựa chọn Lợi ích chính (Nguồn) Rủi ro chính (Nguồn) Tình trạng tại Nhật (Bảo hiểm/Khả dụng)
Dầu hạt mâm xôi đỏ Chống oxy hóa & Chống viêm mạnh mẽ。1 Nguy cơ sử dụng sai làm kem chống nắng do thông tin sai lệch。2 保険適用外 (Không áp dụng bảo hiểm). Phổ biến trực tuyến。
Dầu Jojoba Cân bằng bã nhờn, cấu trúc tương tự như da người。 Ít tiềm năng chống oxy hóa hơn RRSO。 保険適用外 (Không áp dụng bảo hiểm). Rất phổ biến và giá cả phải chăng。
Dầu Tầm xuân Làm sáng da và giảm sẹo (giàu Vitamin A/C)。 Có thể gây kích ứng cho da rất nhạy cảm。 保険適用外 (Không áp dụng bảo hiểm). Phổ biến, giá tầm trung。
Squalane Dưỡng ẩm tinh khiết, rất ổn định, ít gây dị ứng。 Thiếu phổ rộng các chất chống oxy hóa/chống viêm như RRSO。 保険適用外 (Không áp dụng bảo hiểm). Rất phổ biến, nhiều mức giá。

よくある質問

ラズベリーシードオイルは本当にSPF50の日焼け止め効果がありますか?

いいえ、ありません。その噂は2000年の一つの研究の誤解から広まりましたが、2021年に行われたより厳密な生体内(in-vivo)試験では、SPF値はわずか2.6と報告されています7。単独で日焼け止めとして使用するには全く不十分であり、紫外線防御を謳うことは日本の薬機法にも抵触します8

敏感肌でも使えますか?化学的な日焼け止めの代わりになりますか?

多くの人にとって刺激は少ないとされていますが、全ての人に合うわけではありません。アレルギーが心配な方は使用前にパッチテストを行うことをお勧めします。重要な点として、このオイルはUVAを防ぐ効果が確認されておらず、日焼け止めの完全な代替にはなりません。日焼け止め製品と併用し、保湿や抗酸化の補助として使うのが安全です。

結論

ラズベリーシードオイルは、「万能の日焼け止め」という神話のベールを剥がせば、科学的根拠に裏付けられた優れた「抗酸化・抗炎症美容オイル」としての真価が見えてきます。SPFに関する誤解を解き、その本来の力を正しく理解することで、日々のスキンケアをより豊かで安全なものにすることができます。日中の紫外線対策は信頼できる日焼け止めに任せ、このオイルは肌をいたわる夜のスペシャルケアとして、その恩恵を最大限に活用してください。

免責事項

本コンテンツは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療に関する意思決定の前に、必ず医療専門職にご相談ください。

参考文献

  1. Pieszka M, Migdał W, Gąsior R, et al. Physico-Chemical Properties, Fatty Acids Profile and Economic Ppects of Raspberry (Rubus idaeus L.) Seed Oil, Extracted in Various Ways. Molecules. 2021;26(12):3624. doi:10.3390/molecules26123624. リンク. [引用日: 2025-09-11]
  2. Bernatoniene J, Savickas A, Kalveniene Z, et al. The Review on the Attributes and Methods of Raspberry (Rubus idaeus L.) Seed Oil Extraction for the Use in the Cosmetic and Pharmaceutical Industry. Plants (Basel). 2021;10(5):944. doi:10.3390/plants10050944. リンク. [引用日: 2025-09-11]
  3. Wang PW, Cheng YC, Hung YC, et al. Red Raspberry Extract Protects the Skin against UVB-Induced Damage with Antioxidative and Anti-inflammatory Properties. Oxid Med Cell Longev. 2019;2019:9529676. doi:10.1155/2019/9529676. リンク. [引用日: 2025-09-11]
  4. Juhaimi FY, Özcan MM, Uslu N, et al. The effect of raspberry varieties on chemical properties of their seed and seed oils. J Oleo Sci. 2018;67(9):1159-1165. doi:10.5650/jos.ess18047.
  5. 日本皮膚科学会. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024. [インターネット]. 2024. リンク. [引用日: 2025-09-11]
  6. Oomah BD, Ladet S, Godfrey DV, et al. Characteristics of raspberry (Rubus idaeus L.) seed oil. Food Chemistry. 2000;69(2):187-193. doi:10.1016/S0308-8146(99)00221-1. [有料]
  7. Ácsová A, Hojerová J, D’acunto M. The real UVB photoprotective efficacy of vegetable oils: in vitro and in vivo studies. Photochem Photobiol Sci. 2021;20(1):139-151. doi:10.1007/s43630-020-00001-3. [有料]
  8. 厚生労働省. 化粧品基準. [インターネット]. リンク. [引用日: 2025-09-11]

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