はじめに
下痢(軟便や頻回の排便を伴う状態)は、私たちの日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。水分や電解質が失われるため、脱水や栄養不足が懸念されることも少なくありません。こうした状況で「卵を食べると栄養補給に役立つのではないか」「そもそも下痢をしているときに卵を食べても大丈夫なのか」といった疑問を抱く方は多いでしょう。本記事では、下痢をしているときに卵を食べてもよいのか、注意点や実践的な食事方法などを詳しく解説していきます。栄養バランスを保ちながら腸をいたわるコツを理解することで、回復を早め、体調管理に役立てることが目的です。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
加えて、卵に含まれる豊富な栄養素や、一般的に下痢のときに適した(あるいは避けたほうがよい)食事の選び方についても言及します。特に日本では調理方法が多岐にわたり、卵かけご飯や温泉卵など半生に近い食べ方が好まれる場合もあります。しかし下痢中は、衛生面への注意や調理の仕方が普段より重要になります。こうした点を踏まえながら、卵をはじめとするタンパク質源や、腸に優しい食生活のヒントを整理し、日常生活で取り入れやすい工夫を紹介していきます。
なお、本記事は信頼できる医療情報や専門家の意見に基づき、参考資料を示しながらまとめていますが、筆者自身は医師ではなく、公的な医療資格を有していません。下痢の原因は人によって異なり、重症度や背景疾患の有無などにより適切な対応も変化しますので、最終的な判断や治療方針については医師等の専門家へ相談することをおすすめします。
専門家への相談
本記事では、医療情報を正しく理解するために信頼できる文献や資料を参照しています。とくに米国の医療機関や公的機関によるガイドライン(下記「参考文献」に示す文献など)を参考にしながら、下痢時の栄養補給について考察しています。また、記事中で言及されている医師の名前としては、Bác sĩ Trần Thị Thanh Tuyền(Nội khoa – Nội tổng quát · Bệnh viện Nhân dân Gia Định TP HCM)といった方が登場しますが、これは元の情報源に登場する専門家の表記を尊重したものです。本記事自体は日本国内向けですが、このように海外の専門家・文献も踏まえて内容を整理しています。
下痢の症状が長引いたり、明らかな原因(食事によるものか、ウイルス・細菌感染か、あるいは慢性疾患の悪化かなど)がわからない場合は、必ず医療機関を受診してください。とくに血便を伴う、激しい腹痛や発熱がある、脱水症状(口渇や尿量減少など)が明らかな場合は早めの受診が必要です。
下痢中の卵摂取に関する基礎知識
卵の栄養成分と健康へのメリット
卵は良質なタンパク質源として知られており、必須アミノ酸をバランス良く含む数少ない食品のひとつです。さらに、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB群、鉄分、亜鉛、セレンなど多様な栄養素が凝縮されています。例えば、標準的なサイズの卵2個(1回の食事量と想定)であれば、成人が1日に必要とするビタミンDの約8割、ビタミンB2の約4分の1といった割合を補えるとも言われています。こうした豊富な栄養価は、体内の組織修復や免疫機能の維持に役立ちます。
ただし、この栄養価の高さゆえに「消化に時間がかかる」「加熱が不十分だとサルモネラ菌などの感染リスクが増す」といった面も否定できません。とくに下痢で弱っている腸は、普段より消化・吸収能力が低下している可能性があります。そのため、卵を食べる際には調理法や衛生管理が重要になります。
下痢中に卵を食べてよいのか?
下痢中でも卵を食べて構わないのかについては、「体質や腸の状態次第で個人差がある」という意見が一般的です。たとえば、普段から卵による腹部膨満感や消化不良を起こしやすい人、あるいは卵アレルギーを持っている人は当然控えたほうが無難です。一方で、下痢が軽度かつ原因が一時的なもの(軽い食あたりやストレスなど)であれば、きちんと加熱し、適度な量を摂取することでむしろ栄養補給に寄与する可能性があります。
実際に下痢の際、脱水や電解質不足を防ぐために経口補水液などで水分を補うだけでなく、エネルギー・タンパク質をバランスよく摂ることは回復にとって大切です。卵は比較的多くの栄養素をまとめて摂取できるため、活用価値は高いと考えられています。一方で、高脂質の調理(例:卵を大量の油で揚げるなど)は消化をさらに負担させることもあるため、調理法の工夫が求められます。
卵とサルモネラ菌に関するリスク
卵に関連する代表的なリスクとして、サルモネラ菌による食中毒が挙げられます。厚生労働省などの発表によれば、日本の市販卵は衛生管理の基準が比較的厳しく、海外に比べるとサルモネラ菌汚染率は低いとされます。しかし、下痢で腸が弱っている時期に未加熱または加熱不十分の卵を摂取すると、万が一のリスクが高まる可能性があります。
近年、Journal of Food Protectionに掲載された研究(Zhang Y, Mustapha A, 2021年, 84巻2号, doi:10.4315/JFP-20-177)でも、卵殻表面や調理器具を介したサルモネラ菌汚染が世界各地で報告されていると示されています。日本の管理基準は高い一方、購入後の保存状態や賞味期限切れ、殻が割れている卵の放置などによりリスクが高まる可能性があるため、特に下痢中の方は注意が必要です。
下痢中の卵の上手な食べ方
調理方法の工夫
- しっかり加熱する
半熟や生卵は胃腸に優しいと思われがちですが、下痢の状態で食べると追加の感染症リスクが増し、消化の負担もかかりやすくなります。卵焼きでも白身と黄身に火が通るようにする、もしくはゆで卵にするなど、しっかり加熱してから食べる方法を選択しましょう。 - 油の使用を控えめに
下痢中は消化機能が弱っているため、脂肪分が多い料理は避けるのがベターです。揚げ卵や大量の油を使ったオムレツなどは、腸への負担が大きくなるおそれがあります。茹でる、蒸す、あるいは少量の油で軽く炒める程度の調理が向いています。 - ほかの食材とバランスを取る
卵だけで栄養を補おうとせず、野菜のポタージュやおかゆとあわせて食べるなど、食事全体として消化に優しく、水分・電解質の補給も意識したメニュー構成にすることがポイントです。
量と頻度
- 一度に多量の卵を摂らない
普段は平気でも、下痢中は腸の許容量が低下している場合があります。1食につき卵1個程度で様子を見るのがおすすめです。特に下痢が数日続いている場合は、体力回復のために小まめに少量ずつ栄養を摂るとよいでしょう。 - 1週間あたりの卵摂取量
健常な成人でも1週間に3~4個ほどを目安として推奨されることが多いです。下痢中は、さらに控えめにして体の状態を見ながら調整しましょう。
下痢時の基本的な食事のポイント
水分と電解質の補給
下痢によって失われるのは水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質です。経口補水液やスポーツドリンク、味噌汁やスープなどを活用して、こまめに水分補給しましょう。脱水になると体力の低下や回復の遅れにつながり、下痢がさらに長引く悪循環が起こりかねません。
胃腸に優しい食事の選び方
- 白身魚やささみ
脂肪分が比較的少なく、良質なタンパク質が補えます。卵が苦手・アレルギーがある方は、白身魚やささみを柔らかく煮たり蒸したりして代替するのもよい方法です。 - おかゆや煮込みうどん
炭水化物源としては、おかゆや煮込みうどんが消化に優れています。米や小麦が比較的やわらかくなるまで煮て、腸への負担を減らします。ここに茹でた野菜を加えてビタミンやミネラルを補給するのも効果的です。 - 発酵食品や腸内細菌を整える食品
ヨーグルトや味噌などの発酵食品は腸内環境の改善に寄与する可能性があります。ただし、下痢が激しいときは乳製品が合わない方もいるため、自分の体調と相談してください。
避けたい食品や飲料
- 脂っこい食事
揚げ物、バターやマヨネーズを大量に使った料理などは、消化に負担をかけやすいです。 - 刺激物・甘味の強いもの
香辛料の強い料理やカフェインを多く含む飲料、炭酸飲料、果糖の多いジュース類もできる限り控えたほうが良いとされています。 - アルコール・喫煙
胃腸を刺激し、脱水を進行させるリスクが高いので極力避けましょう。
下痢と卵に関するよくある疑問
Q1. 卵を食べると下痢がひどくなることはある?
個人差があるものの、胃腸が弱い方や消化酵素の働きが低下している方にとって、卵のタンパク質は負担になりえる場合があります。下痢中に卵を食べて症状が悪化する方もいますが、それは卵自体の消化負担や加熱不十分による細菌リスクのほか、もともと卵に対するアレルギーの気質があるかどうかも関係してきます。少なくとも、完全に火を通した状態で少量ずつ摂るようにすれば、リスクを下げることができます。
Q2. 卵を摂取する際、どんな調理法がベスト?
基本は「加熱が十分」「油分を控えめ」にすることがポイントです。ゆで卵や固めの卵焼きなどは、消化・衛生面ともに比較的安全です。胃腸の状態によっては、スープや粥に溶き卵を加え、加熱しながら柔らかい状態で仕上げるのもおすすめです。
Q3. 下痢が続く場合、どのタイミングで卵を再開すればいい?
重度の下痢がある場合には、まず医師の診断を受けて原因を特定することが重要です。症状が治まりつつある段階(便の回数が減ってきた、腹痛が軽くなったなど)で、少量から卵を取り入れて様子を見ましょう。再開のタイミングや量は人によって異なるため、経口補水や消化の良い食品を優先したうえで無理なく試すのが理想です。
下痢と栄養摂取に関する最新の研究事例
下痢時の栄養摂取に関しては、近年も複数の研究が行われています。その多くは「適切なタンパク質と電解質補給が回復を促す」点を強調しています。特に卵はアミノ酸スコアが高く、回復期の体力維持に貢献する可能性があることが示唆されています。
例えば、2023年にThe American Journal of Clinical Nutritionに掲載されたメタアナリシス(Freeman M, Kelly BD, Park YM, et al., 117巻3号, doi:10.1093/ajcn/nqac313)では、健康な成人を対象とした卵の摂取量と代謝マーカーの変化が考察されました。そこでは主に心血管リスク指標との関連が分析されていますが、同時に「卵は良質なタンパク源である一方、調理法や個人の代謝状況により身体への影響が変わりうる」という結論が示唆されました。下痢時は腸内環境が乱れているため、このような研究結果を踏まえても、適度かつ加熱調理された卵の摂取が望ましいと考えられます。
下痢の原因と受診の目安
下痢の原因としては、感染症(ウイルス・細菌・寄生虫など)、食品の傷みやアレルギー、ストレスや生活習慣の乱れ、過敏性腸症候群(IBS)など多岐にわたります。通常の軽度な下痢は数日以内に自然回復することが多いですが、以下のような場合は医師の診察が必要です。
- 3日以上下痢が続き、改善の兆しがない
- 血便や粘液便がみられる
- 激しい腹痛や発熱、嘔吐がある
- 口渇や尿量減少、皮膚の乾燥など脱水症状が顕著
- 高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患を持つ方など、重症化のリスクがある場合
早期受診により、重症化や合併症のリスクを下げることにつながります。卵に限らず、食事全般に関する指導や処方薬の選択など、専門家から具体的なアドバイスを得ることを優先してください。
総合的な推奨事項と注意点
- 卵は完全食品のひとつであるが、下痢時には消化への負担を軽減するよう注意して摂取する。
- 十分に加熱し、油分を控えめに調理することで安全性と消化のしやすさを確保する。
- 摂取量は1食につき1個程度から始め、腹部症状が悪化しないか様子を見る。
- 脱水と電解質不足を防ぐため、水分とともにナトリウムやカリウムを含む経口補水液などをこまめに摂取する。
- 激しい腹痛や血便がある場合、下痢が長引いている場合は、早期に医療機関を受診する。
- 自己判断で極端に食事を制限すると栄養不足に陥る可能性があるため、適度にタンパク質や炭水化物を補給することが大切。
推奨される食事スタイルの例
以下はあくまで一例ですが、下痢時に胃腸への負担を抑えつつ必要な栄養を摂取するための食事プランをイメージしてみましょう。
- 朝食: おかゆ(柔らかめに炊く)+味噌汁(具材はよく煮た野菜)+固ゆで卵1個
- 昼食: 柔らかい煮込みうどん(野菜を細かく切って煮込む)+白身魚の蒸し物(油は控えめ)
- 夕食: 五分粥または軟飯+野菜スープ(白菜やにんじんなどをコトコト煮る)+卵焼き(しっかり火を通す)
人によっては卵がまったく合わない場合や、匂いだけでも食欲をそがれることもありますので、そのときは別のタンパク質源(豆腐、鶏ささみ、白身魚など)を利用しても構いません。要は、「胃腸への負担を抑えながら必要な栄養を補う」ことが回復を早めるカギとなります。
結論と提言
下痢中に卵を食べてもよいかどうかは、個々の体質や下痢の原因、症状の重さによって判断が変わります。一般的には、しっかりと加熱し、油分を控え、少量から摂取を試みることで、卵に含まれる良質のタンパク質やビタミンなどの栄養を活用できます。ただし、以前に卵を食べて症状が悪化した経験がある人や、卵アレルギーの可能性がある場合は注意が必要です。
下痢が軽度の場合でも、失われがちな水分と電解質の補給を最優先し、腸に負担をかけすぎない食生活を心がけましょう。もし症状が数日経っても改善しない、血便や強い腹痛を伴うなど重症化が疑われる場合は、早めに医師の診察を受けることが肝心です。
重要: 本記事は医療情報を一般的に解説したものであり、特定の病状や個別の治療方針を示すものではありません。あくまで参考情報としてご活用ください。実際の診断や治療は、医師や管理栄養士など専門家の助言を仰いでください。
参考文献
- Is it healthy to eat eggs every day? (Mayo Clinic Health System) アクセス日: 12/10/2022
- When you have diarrhea: MedlinePlus Medical Encyclopedia アクセス日: 05/10/2022
- Diarrhea Nutrition Therapy —Tips for Children with Diarrhea | OHSU アクセス日: 05/10/2022
- Eating When You Have Diarrhea (Breastcancer.org) アクセス日: 05/10/2022
- 10 Amazing Health Benefits of Eggs: Why Eggs Are Good For You (Australian Eggs) アクセス日: 05/10/2022
- Should we avoid eating eggs during diarrhea? (Times of India) アクセス日: 05/10/2022
- Can You Eat Eggs When You Have Diarrhea? (MedicineNet) アクセス日: 05/10/2022
- Are Eggs Allowed for Diarrhea? (Chef Reader) アクセス日: 05/10/2022
- Zhang Y, Mustapha A. “Epidemiology, detection, and control of Salmonella in shell eggs.” Journal of Food Protection. 2021;84(2):269-279. doi:10.4315/JFP-20-177
- Freeman M, Kelly BD, Park YM, et al. “Egg intake and biomarkers of cardiovascular disease risk: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.” The American Journal of Clinical Nutrition. 2023;117(3):615-627. doi:10.1093/ajcn/nqac313
下痢やその他の症状が続く場合は、必ず医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。本記事の内容はあくまで参考情報として提供しており、個別の診療行為を代替するものではありません。