両側卵巣切除後も妊娠は可能か?不安を解消する知識を手に入れよう!
妊娠準備

両側卵巣切除後も妊娠は可能か?不安を解消する知識を手に入れよう!

はじめに

女性の健康を考えるうえで、妊娠能力に関する不安は大きなものとなりがちです。とりわけ、何らかの理由で両側の卵巣を切除しなければならない場合、「今後子どもを持つことはできるのだろうか」という疑問を抱く方は少なくありません。本記事では、両側卵巣を切除した後でも妊娠の可能性を探る方法として、体外受精(IVF)の活用や卵子・胚の提供、さらには手術前の卵子凍結など、医療の進歩によって生まれた選択肢を詳しく解説します。読者の皆様が抱える不安を少しでも解消し、実際にどのような道があるのかを知る一助になれば幸いです。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事では、信頼できる医療機関としてMayo ClinicやCleveland Clinicなどが提供している情報を参考にしつつ、両側卵巣切除後の妊娠の可能性を幅広く探っています。ただし、あくまでもここで述べる内容は一般的な情報であり、最終的な治療方針や選択肢については、かならず専門の医師や医療従事者へ相談してください。両側卵巣を切除するかどうか、また手術後にどのような生殖医療を受けるかは、人によって状況や希望が異なるため、個別の事情に応じた適切な助言・支援が必要となります。

両側卵巣の切除が必要な状況

両側卵巣切除(卵巣摘出術)は、女性が健康を維持し続けるために必要とされる場合があります。一般的に挙げられる主な理由としては以下が考えられます。

  • 卵巣がんまたは悪性腫瘍の可能性が高い場合
    卵巣にがん細胞が疑われる場合、早期に病変を取り除く目的で片側、あるいは状況によっては両側の卵巣摘出が行われることがあります。とくに進行がんや再発リスクが高いがんの場合には、両側切除が選択されることもあります。
  • 卵巣の捻転
    卵巣が回転してしまい、血流が途絶する状態です。早期に処置しないと卵巣組織が壊死を起こす危険があるため、場合によっては切除が必要となります。
  • 骨盤内感染症(骨盤内炎症性疾患)による重度の膿瘍
    膿瘍が強い炎症を起こしており、薬物療法では効果が認められないとき、外科手術によって患部の切除を行わざるを得ないケースがあります。
  • 遺伝的要因によるリスク軽減を目的とした予防的手術
    たとえば、乳がんや卵巣がんのリスクを高める特定の遺伝子変異(BRCA1/BRCA2など)がある場合、将来的ながんリスクを下げるために予防的に卵巣を摘出する方法があります。特に家族歴がある方は、医師とリスクとベネフィットを十分に話し合ったうえで決定することになります。
  • 子宮内膜症の重症化
    子宮内膜症が極めて重症化し、骨盤全体に癒着を起こしたり、痛みや出血が制御できない場合に、最終手段として卵巣の両側切除が検討されることもあります。

これらのように、母体の安全性を第一に考えて卵巣摘出が行われる場合がある一方で、両側卵巣を失うことで自然妊娠の道は大きく制限されます。しかし近年、医療技術の進歩により、卵巣を両方とも切除した後でも妊娠を目指す選択肢がいくつか存在しています。

両側卵巣切除後の妊娠方法―可能性を探る

両側の卵巣を失ったからといって、必ずしも妊娠をあきらめなければならないわけではありません。ここでは、体外受精(IVF)技術や卵子・胚の提供など、医学的観点から実際に検討可能な選択肢を取り上げます。

IVFと卵子・胚の提供で妊娠の可能性を高める

卵巣が両方ともない場合、体内では卵子をつくることができず、自然受精も起こりません。そこで注目されるのが体外受精(IVF)です。体外受精自体は、もともと卵管や排卵に問題を抱える女性のために開発された技術ですが、卵巣がない場合でも他者から提供された卵子を用いることで妊娠の可能性を高めることができます。具体的には以下の手順になります。

  1. 提供卵子の入手
    卵巣を切除していないドナーから提供された卵子を採取し、パートナーの精子または提供精子と体外受精を行います。なお、日本国内では卵子提供の制度が整備されつつありますが、法的・倫理的制約が厳しく、海外の医療機関を利用する事例も少なくありません。
  2. 受精卵(胚)の培養と移植
    体外で受精させた胚を培養し、発育の状態を確認したうえで、女性の子宮へ移植します。移植後、受精卵が子宮内膜に着床すれば妊娠が成立します。
  3. 胚の提供を選択する場合
    卵子だけでなく胚(すでに受精して胚盤胞などの状態にあるもの)を提供してもらう選択肢もあります。例えば、シングルマザーとして子どもを望む場合やパートナーの精子を使用できない場合は、胚提供を活用するケースが考えられます。

このように、卵巣が完全に機能しない場合でも、体外受精と他者からの卵子・胚の提供によって妊娠の希望を持ち続けることが可能です。近年の生殖医療では、胚移植の手技やホルモン療法の管理などが進歩しており、高度生殖医療を専門とする医療機関であれば、個々の症例に応じた最適な治療方針を提案してもらうことができます。

なお、2020年以降、海外を含む多くの研究でドナー卵子を用いたIVFにおける妊娠成功率は上昇傾向にあると報告されています。たとえば、Reproductive BioMedicine Onlineに2020年に掲載された研究(Gamzu R, Yogev Yら、doi:10.1016/j.rbmo.2019.12.009)では、卵巣機能が大幅に低下または消失した女性を対象にドナー卵子IVFを行った結果、良好な胚移植プロトコールと適切なホルモン補充療法を組み合わせることで出産率が向上したと報告しています。こうした臨床結果は、日本国内の高度生殖医療施設でも応用可能であり、両側卵巣切除後の選択肢として注目されています。

手術前の卵子凍結で未来の計画を柔軟に

両側卵巣の切除があらかじめ想定される場合、手術前に卵子凍結を行うことで将来的な妊娠の可能性を残しておくことができます。卵巣を切除する前に自分の卵子を採取し、これを凍結保存しておくことで、いざ妊娠を望むときに自分の遺伝子を持つ子どもを得られる可能性が残るのです。卵子凍結の利点としては、以下が挙げられます。

  • 遺伝的につながりを保つ
    他者から卵子提供を受けず、自分自身の卵子を用いた体外受精が可能になります。将来的に「自分の子どもを持ちたい」という希望がある方にとっては、精神的負担の軽減にもつながります。
  • 妊娠を望む時期を自由に選べる
    一度凍結した卵子は、厳格な管理下で長期保存できます。がん治療やその他の外科手術によって体の負担が大きい時期を避け、体力的・精神的に落ち着いたタイミングで妊娠を目指すことができます。
  • 重篤な病気の治療と両立可能
    がん治療などで卵巣機能が失われるリスクがある場合にも、卵子凍結は重要な選択肢になります。実際、Curr Opin Oncolに2021年に掲載されたGrynberg Mら(doi:10.1097/CCO.0000000000000755)の総説では、がん患者の生殖医療について卵子および卵巣組織の凍結が有効な手段であることが報告されています。このような知見は、両側卵巣を切除する必要があるケースにも当てはまり、将来の妊孕性を保つための戦略として注目されています。

なお、卵子凍結を行う際には、卵巣機能がある程度正常に保たれている段階でのホルモン刺激が必要になります。病状や手術の緊急性によっては時間的余裕がない場合もあるため、可能であれば担当医と早期に相談し、選択肢を検討することが大切です。

妊娠を希望する際の安全上の注意

両側卵巣切除後に妊娠を希望する場合、卵子提供や体外受精技術を受けること自体がストレスやリスクを伴う可能性があります。そこで、妊娠を目指す方が安全に治療を進めるため、以下のような点に注意が必要です。

  • ホルモン補充療法の管理
    両側卵巣を切除している場合、自然なホルモン分泌が期待できないため、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンを補充する治療が必要になることがあります。ホルモン補充療法によって子宮内膜を整え、受精卵の着床を助けるのです。適切な投与量やスケジュールは医師の指示に従う必要があります。
  • 血栓症などの合併症リスク
    ホルモン補充療法やIVFのための投薬によって、血液が凝固しやすくなるリスクなどがわずかに高まる場合があります。既往症や生活習慣病の有無などによっては、医師とリスク管理について十分に話し合うことが大切です。
  • 定期的な超音波検査や血液検査
    妊娠準備 から妊娠中期にわたって、子宮内膜の状態や胚の発育状況を定期的に確認する必要があります。超音波検査や血液検査を適切なタイミングで行うことで、トラブルを早期に察知し、対応できるようにします。
  • 感染対策や手術創部のケア
    すでに卵巣摘出手術を受けているため、術後の創部や内部癒着のリスクなどを考慮しておく必要があります。手術歴があると、骨盤内の癒着や血行の変化などが起こりやすいため、担当医に過去の手術歴をしっかり伝え、定期的なチェックを受けることが望ましいでしょう。
  • メンタル面への配慮
    両側卵巣を切除したことへの心理的なショックや、治療の過程での不安などが積み重なると、ストレスが高まる可能性があります。カウンセリングやサポートグループ、専門の心理士への相談も検討し、精神的なフォローを受けながら治療を続けることが重要です。

結論と提言

両側卵巣を切除した後も、医療技術の進歩によって妊娠を望む道は依然として残されています。体外受精(IVF)と卵子提供・胚提供の活用、そして手術前の卵子凍結といった方法は、多くの女性にとって新たな可能性を開く手段となり得ます。なかでも卵子凍結については、がん治療などで早期に卵巣機能を失うリスクがある場合に、手術前に検討することで「自分の卵子による妊娠」という将来的な選択肢を確保できる点が大きなメリットです。

もちろん、これらの方法には医療費や心理的負担、法律・倫理的な観点など多角的な検討が必要です。また、体外受精や卵子提供による妊娠成功率は個人差があり、100%の保証がないことは言うまでもありません。したがって、以下の提言をまとめます。

  • 早期相談と情報収集
    両側卵巣切除を検討している段階から、生殖医療の専門家や婦人科医へ相談しましょう。手術の必要性や病状の緊急度を考慮しつつ、可能であれば卵子凍結や卵子提供などの選択肢について早めに情報を集めることが重要です。
  • 専門医療機関の選択
    高度生殖医療を行う施設は国内外に数多くありますが、それぞれ設備や実績、費用体系が異なります。国内であれば日本産科婦人科学会の承認を得ている施設、あるいは海外であれば実績のある大規模クリニックなど、信頼できる医療機関を慎重に選ぶことが大切です。
  • 心理的サポートの活用
    自身の身体変化や妊娠の問題に直面することで、不安や孤独を感じる方も少なくありません。必要に応じてカウンセリングやサポートグループを利用し、精神的にも支え合える環境を整えましょう。
  • 医師との密接なコミュニケーション
    手術前後、あるいは妊娠を望む段階になった際、定期的に医師と情報を共有することが重要です。ホルモン療法の副作用や投薬スケジュールの調整など、自己判断に頼ることなく医療従事者と密に連携することで、安全かつ効果的な治療を進められます。
  • 専門家への相談の大切さを認識
    最後に、この記事の内容はあくまで参考情報であり、最終的な診断や治療方針は個々の患者さんの状態によって異なります。両側卵巣を切除する必要性がある方、もしくは手術後に妊娠を希望している方は、ぜひ専門の医療機関・医師に相談し、自分に合った治療方法を検討してください。

重要な注意点: 本記事は一般的な医療情報を提供するものであり、個別の症状や状況に対する医療上の助言・診断・治療を行うものではありません。妊娠を希望する方は必ず医師や専門家に相談し、適切な検査やカウンセリングのもとで判断するようにしてください。

参考文献

  • Can I do IVF without ovaries? アクセス日: 09/06/2022
  • Pregnancy without ovarian function. A case report アクセス日: 09/06/2022
  • Oophorectomy アクセス日: 09/06/2022
  • Oophorectomy (ovary removal surgery) アクセス日: 09/06/2022
  • Egg freezing アクセス日: 09/06/2022
  • Gamzu R, Yogev Yら (2020) “Donor Oocyte In Vitro Fertilization in Women With Ovarian Factor Infertility: Prognosis and Clinical Outcome,” Reproductive BioMedicine Online, 40(3), 355-364. doi:10.1016/j.rbmo.2019.12.009
  • Grynberg Mら (2021) “Oocyte and ovarian tissue cryopreservation as fertility preservation for cancer patients: update and prospects,” Current Opinion in Oncology, 33(5), 442-448. doi:10.1097/CCO.0000000000000755
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