乾燥症状に悩む方必見 | ドライアイの原因と対策
眼の病気

乾燥症状に悩む方必見 | ドライアイの原因と対策

はじめに

近年、スマートフォンやパソコンの画面を長時間見続ける生活習慣や、オフィスなどでの空調使用による乾燥した環境などが要因となり、目の乾燥や不快感を訴える方が増えています。いわゆる「ドライアイ(乾性角結膜炎)」は、日本国内でも幅広い年代で見られる症状ですが、意外と詳しいメカニズムや予防策を把握していない方も少なくありません。本記事では、ドライアイの定義や原因、症状、治療法、さらに日常生活での対策などについて、詳しく解説していきます。さまざまな研究結果や専門家の見解も交えながら、より理解を深めていただくことを目指しています。どうぞ最後までお読みいただき、ご自身や周囲の方の目の健康を守るきっかけにしてみてください。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事では、眼科分野での一般的な知見および公開されている研究論文や医療機関の情報を参考にしています。内容を監修している医療専門家としては、Nguyễn Thường Hanh医師(ベトナムの総合病院・内科所属)からのアドバイスや見解をもとに、一部内容を加筆・修正しています。ただし、個々の病状や体調などは人によって異なるため、最終的な診断・治療は必ず医師などの専門家にご相談ください。


ドライアイ(乾性角結膜炎)とは

ドライアイの概要

ドライアイは、涙液の量や質が何らかの原因によって十分に確保されず、目の表面が正常な状態を保てなくなる疾患です。涙液は、水分だけでなく脂質や粘液など多層構造で成り立っており、このバランスが崩れると目が乾燥しやすくなります。たとえば、

  • 涙の量がそもそも不足している
  • 涙の質が低下している(脂質層や粘液層などの成分が不足・乱れている)
  • 外的環境によって涙がすぐ蒸発してしまう

といった要因によって、ドライアイが引き起こされます。涙液バランスが損なわれると、目の表面に炎症が起きたり、角膜や結膜に傷ができやすくなったりして、視力低下や強い不快感につながることもあります。

ドライアイは一時的な乾燥感だけでなく、慢性的に症状が続く場合もあります。なかには日常生活で読書やパソコン操作がしづらくなり、運転が難しくなるなど、生活の質(QOL)が低下することさえあるため、できるだけ早期に対策や治療を行うことが大切です。


症状

ドライアイに多い症状と特徴

ドライアイの代表的な症状としては以下が挙げられます。

  • 目のチクチク感や焼けるような熱感
    「砂が入っているようなゴロゴロ感」や「ヒリヒリするような刺激感」など、人によって表現は異なりますが、多くの方が「何かが目に入っている」「しみるような感覚」を覚えます。
  • 目の充血・発赤
    涙が減少したり質が落ちたりすることで角膜や結膜に炎症が起きやすく、充血が見られる場合もあります。
  • 粘液の増加
    目やに(粘液)が増えやすくなり、まぶたやまつげ周囲に付着しがちです。
  • まぶしさ(光に対する過敏)
    ドライアイになると角膜表面が不安定になり、外界の光刺激に敏感になるため、日常生活でも光を強く感じやすくなります。
  • 視力の一時的な低下・かすみ
    涙の層が途切れ途切れになり、光が不規則に屈折することで、視野がぼやけたり視力が落ちたように感じることがあります。
  • 車の運転時や夜間照明下での見えづらさ
    特に夜間運転をするとき、対向車のヘッドライトがまぶしく感じたり、視界がかすんだりして運転しにくくなることが指摘されています。
  • 強いドライ感が続いたあとに涙が大量に出ることがある
    ドライアイのパラドックスとして、一時的に目が乾燥しすぎると防御反応で大量の涙が出る場合があります。しかし、これは根本的に潤いをキープしているわけではなく、一瞬だけ過剰な涙が出るだけですぐ蒸発してしまったり、質的に正常ではなかったりします。

これらの症状が2週間以上続き、赤みや痛みが強い場合は早めの受診が望ましいです。ひどくなると角膜の傷や感染症を引き起こす可能性もあるため、放置せず医療機関に相談しましょう。


原因

ドライアイを引き起こす主な原因

  1. 涙液の量的不足

    • 加齢
      年齢を重ねると、涙腺やマイボーム腺(脂質を分泌する腺)の働きが弱まり、総合的に涙の量が減ります。
    • 病気
      例えば、シェーグレン症候群やリウマチなど、自己免疫疾患の一部では唾液腺や涙腺に影響が出やすく、ドライアイの原因となります。甲状腺機能異常、ビタミンA不足なども涙液の産生低下に関連することがあります。
    • 薬の副作用
      抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、降圧薬、ホルモン補充療法など、涙液分泌を抑制する副作用をもつ薬があります。こうした薬を服用している場合は担当医に相談が必要です。
    • 手術歴
      レーシックなど角膜に対する手術によって、一時的に涙液分泌が減ることがあります。通常は時間とともに改善することが多いですが、長期的に経過観察が必要な場合もあります。
  2. 涙液の質的異常
    涙は水分、脂質、粘液が層をなしており、どれか1つでも欠けると涙の安定性が低下します。なかでもマイボーム腺から分泌される脂質層が不足すると、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイを引き起こしやすいとされています。

    • マイボーム腺機能不全
      マイボーム腺が詰まったり、炎症を起こしたり(眼瞼炎など)すると、脂質層がうまく分泌されず、涙の蒸発が加速します。
    • ホルモンバランスの変化
      閉経期や妊娠期、または経口避妊薬の使用などによるホルモン変動が、涙液バランスに影響を及ぼす可能性があります。
    • アレルギー性結膜炎
      アレルギー反応による炎症が目の表面に起こると、涙の質が乱れたり、角膜・結膜が傷ついてドライアイを併発することもあります。
  3. 外的要因による蒸発量の増加

    • 強い風や乾燥した環境(エアコンや暖房の風、室内の湿度低下など)
    • コンタクトレンズの長時間装用
    • パソコンやスマートフォン画面の見すぎ(瞬きの回数が減少)
    • 喫煙や副流煙への暴露
      これらの要因によって目の表面が乾きやすくなり、ドライアイが起こりやすくなります。

リスクファクター

  • 50歳以上の方
    加齢による涙液生成の低下やマイボーム腺機能の低下により、ドライアイの発症率が高まる傾向があります。
  • 女性
    妊娠、経口避妊薬の使用、閉経などホルモンバランスの変化が大きく、男性に比べてドライアイリスクが高いとされます。
  • 栄養バランスの乱れ
    オメガ3脂肪酸、ビタミンA、ビタミンC、亜鉛などが不足していると、目の潤いを保つための機能が低下しやすくなります。
  • コンタクトレンズ装用者・屈折矯正手術歴のある方
    レンズや手術による角膜や涙液層への影響で、蒸発や刺激が増し、ドライアイを起こしやすくなります。

合併症・リスク

ドライアイが引き起こす可能性のある問題

  1. 眼感染症リスクの上昇
    涙には抗菌作用や異物排除作用があります。ドライアイによって涙液が減少したり質が低下したりすると、感染防御機能が落ち、結膜炎や角膜炎などが起こりやすくなります。
  2. 角膜・結膜の損傷や潰瘍
    乾燥が慢性化すると角膜表面の小さな傷(角膜上皮障害)が増え、さらに悪化すると角膜潰瘍や視力低下を引き起こす恐れがあります。
  3. 生活の質(QOL)の低下
    目の不快感や疲労感が強くなると、読書やパソコン、車の運転など日常的な動作が困難になります。十分な睡眠がとれず、頭痛やストレスの原因になることもあります。

診断と治療

本記事で紹介する情報は参考としてご覧いただき、最終的には医療専門家の診断に従ってください。

診断方法

  • 眼科の包括的な検査
    視力測定やスリットランプ検査、眼圧検査、角膜や結膜の状態を観察して、他の眼疾患がないかを確認します。
  • シルマー試験
    涙液分泌量を定量的に測る検査で、まぶたにろ紙を挟み込み、一定時間でどの程度湿るかを評価します。
  • 涙液の質的評価
    マイボーム腺機能の評価や染色液による角膜・結膜ダメージの観察、涙液浸透圧測定などを行い、涙液の安定性を判定します。
  • 金属プロテイナーゼやラクトフェリン測定
    炎症や涙液中のタンパク濃度を見ることで、ドライアイの重症度や原因を特定する場合があります。

治療の基本方針

ドライアイの治療は、原因や症状の重症度によって異なります。比較的軽度のケースでは市販の人工涙液(点眼薬)を使うことで十分に潤いを保てる場合もありますが、慢性化していたり重度の場合は医師の診断のもと、以下のアプローチがとられます。

  1. 原因疾患の治療
    自己免疫疾患やアレルギーなどが背景にある場合、それらをコントロールすることでドライアイが改善することがあります。
  2. 薬物療法

    • 抗生物質の点眼薬
      まぶたの縁やマイボーム腺に慢性的な炎症(眼瞼炎など)があるときに使われることがあります。
    • 免疫抑制剤の点眼薬
      炎症が強いドライアイでは、炎症抑制作用のある点眼薬(シクロスポリンなど)が処方されることもあります。
    • 人工涙液・ジェル
      不足しがちな涙を補うために用いられ、通常は1日数回こまめに点眼します。
    • 血清点眼薬
      患者本人の血液から作成した血清を成分とした点眼薬で、重度のドライアイ改善が期待できます。ただし手間や費用がかかります。
  3. 処置・手術的介入

    • 涙点プラグ挿入
      涙が排出される穴(涙点)を小さなプラグで塞ぎ、涙の排出量を抑えて目の表面を潤します。
    • マイボーム腺の開通・熱圧迫治療
      専用の機器や手技でまぶたを温めたり圧迫したりし、詰まっているマイボーム腺を開通させて脂質分泌を改善する方法があります。
    • 特殊なコンタクトレンズ
      スクレラレンズなど目の表面を覆う特殊レンズを装用することで、角膜を外気から保護し、涙の蒸発を抑えます。

日常生活での予防・対策

ドライアイを予防・軽減する具体的な方法

  1. 空調や風から目を守る
    エアコンの風や車のエアコン、ドライヤー、煙などが直接目に当たらないようにしましょう。外出時にはサングラスや帽子を使って目を守るのも効果的です。
  2. こまめにまばたきを意識する
    パソコンやスマートフォンを見続けると瞬きの回数が減少します。意識的に定期的な休憩を取り、「目を閉じる」「連続でまばたきをする」などで涙液を補充しましょう。
  3. 画面の高さや距離を適切に調整
    ディスプレイが高すぎると目を大きく開くため蒸発が進みやすく、低すぎると姿勢が悪くなります。視線よりやや下に画面がくるよう調整し、椅子や机の高さも合わせて最適化してください。
  4. コンタクトレンズの使い方を見直す
    長時間レンズを装用しない、定期的に目薬を使う、レンズケアや定期検診を怠らないことで、ドライアイの悪化を防止できます。必要に応じてメガネに切り替えることも検討しましょう。
  5. 禁煙・受動喫煙の回避
    タバコの煙は目の表面を刺激し、涙の層を乱します。自身が喫煙者であれば禁煙を、周囲の喫煙環境からも離れるよう心がけてください。
  6. 人工涙液の積極的使用
    たとえ症状が軽くても、定期的に人工涙液を差して目の表面を潤すことで、ドライアイの進行を抑えられる可能性があります。

研究の新知見とその適用

近年、ドライアイについてさまざまな研究が行われており、新たな治療法や予防法が検討されています。たとえば2023年にInternational Ophthalmology誌に掲載された論文では(Makri OEら, 2023, doi:10.1007/s10792-023-02871-3)、ドライアイの原因やリスク要因、最新の治療薬候補について詳しくまとめられています。この研究では、ドライアイ患者が増加している背景として、高齢社会・デジタルデバイス使用時間の増大・環境汚染などが指摘され、日本を含む先進国だけでなく、新興国でも同様の傾向が見られるとしています。

また、同年にOcul Surf誌にて発表された総説では(Periman LMら, 2023, doi:10.1016/j.jtos.2022.10.011)、世界各国で用いられている人工涙液の特性を比較し、それぞれの成分組成や粘度などがどのように症状改善に寄与するかが詳述されています。これによると、人工涙液は単純に水分を補給するだけでなく、脂質やヒアルロン酸などの配合による蒸発抑制効果や角膜上皮保護効果などを狙って処方が分化してきており、日本国内でも同様の製剤が使用可能です。患者一人ひとりの涙液状態やライフスタイルに合わせて最適な製品を選ぶことで、症状の安定化や改善が期待できるとされています。

これらの研究は大規模あるいは多施設共同研究を基にしたメタ分析や総説であり、信頼度も高いため、日本人にも十分参考になる内容です。高齢化やスマートフォン・パソコンの普及率が高い日本において、こうした研究結果を踏まえた対策を取ることは非常に重要と考えられます。


おすすめのケアと注意点(参考・推奨)

下記はあくまでも一般的な推奨例であり、最終的な医療的判断は専門医にご相談ください。

  • 定期的な眼科検診
    目の乾燥や充血が気になる場合は、眼科で涙液の量や質を調べる検査を受け、早期に状態を把握するのがおすすめです。
  • 温かいタオルやアイマスクでまぶたを温める
    マイボーム腺の働きを促すために、蒸しタオルや市販の温熱アイマスクを使うと、脂質層の分泌がスムーズになることがあります。ただし、目に炎症や感染症がある場合は逆効果の恐れがあるため医師に確認しましょう。
  • 環境調整・加湿器の活用
    室内の湿度を適切に保ち、空気が乾燥しすぎないようにしましょう。また冬季やエアコン使用時は特に意識して加湿器を使用し、目の負担を軽減させることが大切です。
  • 栄養バランスの改善
    食事にオメガ3脂肪酸を含む魚介類やナッツ、緑黄色野菜(ビタミンAやルテインを多く含む)などを取り入れることで、涙液や角膜の健康維持に役立つ可能性があります。

結論と提言

ドライアイは、現代の生活習慣や加齢、ホルモン変化、外的環境などさまざまな要因が複合的に関与して発症・進行します。一時的な乾燥感であっても放置すると、慢性化して角膜障害や感染症リスクの増加、日常生活での視機能低下などにつながりかねません。以下のポイントを再度まとめます。

  • こまめなまばたきや休憩で涙液の蒸発を防ぐ
  • エアコンや風の直撃を避ける/サングラスなどで目を保護する
  • 人工涙液や点眼薬を活用し、必要に応じて専門医の治療を受ける
  • 栄養バランス・水分補給・禁煙など総合的な健康管理を心がける
  • 自覚症状が続く、悪化する場合は早めに眼科受診する

ドライアイは治療・管理を適切に行えば症状を大きく改善できる可能性があります。もし乾燥やゴロゴロ感、まぶしさなどの症状を感じ始めたら、自己判断で放置せず、医師に相談することをおすすめします。

重要な注意点: 本記事の内容はあくまでも一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や治療方針については必ず専門家(眼科医など)の診断を受けてください。


参考文献


注意事項(免責)

本記事は公的機関や研究データ、そして医療従事者の一般的な見解を参考としてまとめた情報提供を目的としています。具体的な診断や治療方針を決定するには、必ず医師などの専門家にご相談ください。自己判断による点眼薬やサプリメントの使用は、思わぬ副作用や症状の悪化を引き起こす可能性があります。あくまでも当記事の情報は参考としてとらえ、気になる症状や疑問がある場合は、速やかに専門医を受診されることをおすすめいたします。

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