免疫力を高める - 子どもの病気を減らす「黄金の」方法
小児科

免疫力を高める – 子どもの病気を減らす「黄金の」方法

はじめに

子どもの健康は家族にとって非常に大切なテーマであり、とくに乳幼児期は免疫機能がまだ発達段階にあるため、さまざまな病気にかかりやすい時期といえます。いわゆる“風邪をひきやすい”子どもは少なくなく、これを「よくあること」として見過ごす場合もありますが、実際には成長や発達に影響を及ぼす可能性があるため、早期から免疫機能を高めるケアを行うことが大切です。乳児期から幼児期にかけて子どもの抵抗力をサポートすることは、体の健康だけでなく脳の発達にも大きく関わり、将来的な知的・身体的な成長を左右すると考えられています。本稿では、子どもがかかりやすい病気の背景や免疫機能の仕組み、そして免疫力を高めるための生活習慣・栄養管理・ワクチン接種などのポイントについて、より詳しく解説します。

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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、実際の医療機関で提供される正式な診断や治療方針を置き換えるものではありません。気になる症状や疑問があれば、早めに小児科医など医療の専門家に相談することをおすすめします。また、記事内で触れられている免疫や栄養などの情報は、世界保健機関(WHO)や各種研究機関、専門家による最新の知見や過去の研究成果を参考にしており、信頼できる公的機関の資料や複数の研究文献をもとにまとめています。

子どもがよく風邪をひく理由と免疫機能の基本

乳幼児は成人に比べ、ウイルスや細菌への抵抗力が弱いため、鼻水や咳などいわゆる風邪症状を繰り返すことが多く見られます。とくに生後まもない赤ちゃんの場合、母体から受け継いだ免疫(胎盤を通じて受け取った抗体)が数週間から数か月ほどで弱まっていくこともあり、生後しばらくは外部からのさまざまな病原体に対して十分な抵抗力をもたない期間が生じます。そこに保育園や幼稚園など、ほかの子どもたちと接触する環境が加わると、接触機会が増えるぶん、病気にかかりやすくなるのです。

たとえば、ある統計によると、乳児期にかぜをひく回数は年間6~8回ほどともいわれます。これはあくまで平均的な数字ですが、日常的に家の外へ出る機会が増えると、そのぶんウイルスや細菌に触れるチャンスが多くなり、かぜをひく回数も増える可能性があります。さらに1歳前後から歩行が上達してくると、子ども自身が活発に行動しはじめ、さまざまな物を手で触れるようになります。こうした行動発達は喜ばしいことですが、そのいっぽうでウイルスや細菌との接触回数が格段に増え、感染症にかかりやすい背景ともなっているのです。

加えて子どもの鼻や気道など上気道の構造は大人ほど十分に発達していないため、ウイルスや細菌が侵入しやすいともいわれています。こうした理由で、子どもは大人よりも病気にかかる回数が多くなる傾向にあります。ただし、繰り返し病気にかかること自体がすべて悪いわけではなく、実際に病原体と接触する中で免疫が学習し、体が強くなるプロセスも存在するため、一概に「多くの病気にかかる=悪い」と決めつけない視点も重要です。しかしながら、あまりに高熱や長引く症状が頻回に見られる場合や子どもの食欲が極端に落ちて栄養摂取が難しくなっている場合などは、医療機関への相談が不可欠です。脳や体の発達が活発な時期だけに、慢性的な栄養不良や頻繁な病気で生活リズムが乱れることは、将来的な成長に影響しうる要素となり得ます。

発達期の脳と免疫

生後数年間は、子どもの脳が急速に発達する期間です。この時期に適切な栄養や十分な睡眠、外部刺激などが得られないと、脳の神経回路形成や学習能力などにも影響を及ぼす可能性があるといわれています。体の免疫力が低いまま頻繁に病気にかかってしまうと、しっかり栄養を摂取できなかったり、睡眠時間が削られたりすることもあり、結果として脳の発達ペースが阻害されるリスクも否めません。こうした背景から、免疫力を高めるケアは、身体の健康維持だけでなく神経系の発達にもつながる重要な要素とみなされています。

近年の研究でも、生後早期の健康状態がその後の脳機能や認知能力に影響する可能性があると示唆されており(参考文献4など)、学童期以降の学習成績や社会性の発達とも関連するのではないかと注目されています。したがって、子どもの健やかな成長のために免疫力を高めるという視点はますます重要視されているのです。

免疫力を高めるための主なポイント

1. 栄養バランスの整った食事

母乳の重要性

世界保健機関(WHO)によれば、乳児期には母乳が「最良の食事」であると推奨されています。母乳には、赤ちゃんの免疫発達を助ける成分が多く含まれます。なかでもHMO(Human Milk Oligosaccharides)と呼ばれるオリゴ糖成分は、腸内細菌叢を整える働きや病原体の付着を防ぐ作用、腸管上皮のバリア機能を支える役割があると報告されており、子どもの感染リスクを下げるうえで大切な因子とされています。さらに、HMOの一種である2′-FLは臨床研究により呼吸器感染症の罹患率を66%減少させた可能性が示唆されるなど(参考文献8)、子どもの免疫における重要な働きを担うと言われています。

また、ヌクレオチド(Nucleotides)と呼ばれる物質も母乳中に含まれ、ある研究ではヒブワクチン接種後の抗体価(からだが作り出す抗体の量)が増加したことが示唆されるなど、免疫反応の向上に寄与すると考えられています(参考文献11)。これらの成分に加え、ビフィズス菌などの乳酸菌群が母乳を介して赤ちゃんの腸内に供給される点も大きいです。赤ちゃんの腸内環境をビフィズス菌優位に保つことは、感染症予防の観点からも重要とされています(参考文献12)。

母乳が難しい場合の対処

母乳を与えられない事情がある場合は、医師や助産師などの専門家に相談して最適なミルクを選ぶことが望ましいです。最近では、母乳に近づけるようHMOやビフィズス菌などを配合した育児用ミルクが開発されており、子どもの免疫機能や栄養摂取を手助けする選択肢として注目されています。ただし、個々の赤ちゃんの体質や消化能力、アレルギーの有無などを考慮する必要があるため、自己判断だけで決めずに小児科医の指導を受けると安心です。

離乳食の導入と多様な食材

生後6か月を過ぎると離乳食が始まります。野菜、果物、穀類、タンパク質源など、さまざまな食材をバランスよく摂取させることが理想です。とくにビタミンやミネラル類(ビタミンC、ビタミンA、亜鉛、鉄など)は免疫機能を支える上で重要とされています。また、多様な食材を取り入れることで腸内細菌叢が多様化し、免疫力の向上に寄与する可能性があります。実際に、ビタミンやミネラルが十分に摂取できないと免疫細胞の活動が低下し、感染リスクが高まるとの研究も報告されています(参考文献5,6)。

栄養豊富な食事は、単に免疫力をサポートするだけでなく、脳の発達や身体の成長にも欠かせない要素です。母乳に含まれるガングリオシド(Gangliosides)が神経細胞間のシナプス形成を促す役割を果たしていること、またDHA、ルテイン、ビタミンEなどの栄養素が脳の機能や視覚の発達をサポートする可能性があることなど、さまざまなエビデンスが蓄積されています(参考文献13,14,15,16,17)。

2. 規則正しい生活習慣と十分な睡眠

免疫力を高めるうえで栄養と同等に重要なのが、規則正しい生活リズムと十分な睡眠時間です。子どもの場合、成長ホルモンが主に就寝中に分泌されますが、免疫細胞の活性化も睡眠中に起こりやすいことが報告されています。とくに夜更かしなどで生活リズムが乱れると、免疫反応が低下し、風邪をひきやすくなる可能性が指摘されています。

厚生労働省などのガイドラインでも、1日の睡眠時間の確保や昼夜のメリハリが免疫機能の維持に重要であることが指摘されています。学齢前の子どもは少なくとも1日10~12時間程度の睡眠が推奨されることが多く、保護者が子どものリズムをサポートすることが大切です。また、1歳未満の赤ちゃんの場合はこまめに昼寝をとるなど、合計で十分な睡眠が確保されるよう調整が望まれます。

3. 適度な運動・外遊び

早い段階からの軽い運動は、子どもの体力向上に役立つだけでなく、免疫機能を整える効果があるとされています。生後間もない赤ちゃんは、寝返りや腹ばい練習などの“運動”をサポートし、1歳以降の子どもは公園など屋外で遊ぶ時間を意識的につくるとよいでしょう。最新の子ども向け健康ガイドライン(参考文献20)では、1~5歳の子どもの場合、合計3時間程度の軽い身体活動が推奨されています。日常生活の中で無理のない範囲で体を動かすことによって、心肺機能や筋力だけでなく免疫力の向上も期待できるのです。

日本では、四季の移り変わりとともに屋外の気温や環境が変化するため、服装などの調整が難しくなる時期もあります。しかし、暑さ対策や寒さ対策をきちんと行ったうえで屋外で遊ぶ習慣を持つことは、体を丈夫にし、さらには精神面の発達にもプラスになるとされています。運動を通じて子どもが自ら体を動かす楽しさや環境への興味を育むことは、健全な免疫機能の獲得に間接的に寄与すると考えられています。

4. 衛生管理と感染症予防

幼児期は、どうしても口や手を清潔に保ちにくい時期でもあります。とくに保護者や身近な大人が赤ちゃんを抱っこする際に手指を清潔にしていないと、そこからウイルスや細菌が移ることがあります。また、乳児向けの哺乳瓶やミルクをつくる道具、食器などは定期的に消毒や洗浄を行い、二次感染を防ぐ工夫が必要です。厚生労働省や各地方自治体なども、家庭内での手洗いやうがいの徹底、調理器具の適切な洗浄・消毒などを呼びかけており、単純なようでいて効果の高い感染症対策として実施が推奨されています。

5. 予防接種の重要性

日本では母子手帳や市町村からの通知で推奨されている定期予防接種があり、これらを予定通り受けることは重篤な感染症を未然に防ぐ最良の方法の一つです。インフルエンザや肺炎球菌感染症、Hib感染症など、さまざまな疾病に対してワクチンを受けることで、子どもの体にその病原体への抵抗力を獲得させることができます。もちろんワクチン接種は副反応のリスクがゼロではありませんが、重症化予防という観点でのメリットが非常に大きいと考えられています(参考文献7,19,21)。海外の研究でも、ワクチン接種を受けたグループと受けなかったグループで感染症の発症リスクや重症度に大きな差が認められた例が多数報告されており、国際的にもワクチン接種は重要な公衆衛生上の戦略として位置づけられています。

さらに、2023年に更新されたアメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)のガイドライン(2023年版)でも、子ども向けの定期接種スケジュールを遵守することが推奨されています。とくに感染症によって深刻な合併症を起こしやすい乳幼児期には、適切な時期に必要なワクチンを受けることが非常に大切です。

6. 免疫機能と脳の発達の関係

乳幼児期は、脳のシナプス形成や神経回路の確立が急速に進む重要な時期であるとともに、外界からの刺激に対する免疫学的な応答を学ぶ期間でもあります。近年の神経科学研究では、慢性的な炎症反応が脳の発達過程に影響を及ぼす可能性があることが指摘されており、繰り返す感染症や長引く病気によって炎症が続く状態は、脳の発育にも影響が及ぶ懸念があります(参考文献4)。一方で、軽度の感染などで体が免疫応答を学ぶこと自体は、免疫の成熟や多様性を獲得する上で必要なプロセスともいわれています。大切なのは、栄養不足や慢性的な体力低下を引き起こすような病気の頻発を防ぎつつ、子どもの免疫が正常に学習・発達できる機会を確保することです。

免疫が最適に機能しながら脳や心の発達を妨げないためには、先述した栄養管理・睡眠・運動・感染予防といった基本的なケアを総合的に行い、子どものコンディションをできる限り良好に保つことが必要とされます。

7. よくある疑問:子どもが病気にかかることで免疫は強くなるのか

親御さんのなかには「ある程度病気にかかったほうが抵抗力がつくのでは?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃいます。たしかに、自然感染によって得られる免疫は、特定の病原体に対して強い抵抗力を獲得するケースがあります。一方で、ワクチン接種による免疫獲得は、重症化リスクを大幅に下げながら同様の防御力を得られる手段です。ある研究では、同じ病原体に感染した子ども同士を比較した場合、自然感染で得られる免疫が強固な場合もある一方、合併症や後遺症のリスクを否定できず、ワクチンを通じて免疫を獲得したほうが安全性ははるかに高いという結論が示唆されています(参考文献7)。要するに、病気にかかることで免疫が強くなること自体は否定されませんが、なるべく大きなダメージを負わない方法で免疫を学習させることが理想なのです。

免疫力を高めることが及ぼす脳発達へのメリット

栄養と脳機能の関連性

脳は脂質やたんぱく質をはじめとする多様な栄養素から成り立っています。たとえばDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳神経の細胞膜を構成する重要な要素とされ、認知機能や視力の発達に寄与すると考えられています。乳児期に十分なDHAが供給されないと、長期的な脳機能に影響が及ぶ可能性があるため、魚介類などDHAを多く含む食材や、母乳・育児用ミルクを介した摂取が推奨されることが多いです。さらにビタミンEやルテインも抗酸化作用や視力保護・認知機能サポートなどに関連するとされており、これらをバランスよく摂取することで子どもの脳発達をバックアップする効果が期待されます。免疫力が低下して頻繁に病気にかかる状態が続くと、食欲不振や嘔吐などでこうした必要栄養素を十分に摂取できなくなる懸念があり、脳機能の発達に影響するリスクも否めません。

病気による生活リズムの乱れ

高熱や鼻づまりなどの症状が長引くと、睡眠が十分にとれず生活リズムが崩れる可能性があります。これにより体内時計やホルモン分泌リズムが乱れると、脳の発達に必要なホルモンや神経伝達物質のバランスにも影響が及ぶことが懸念されます。とくに1~3歳頃は、脳の前頭葉領域などが言語や思考の基礎を形成しはじめる時期でもあり、日々の生活習慣は大きなウエイトを占める要素です。免疫力を高めて病気を予防し、生活リズムをできる限り安定させることは、こうした複雑な脳機能の基盤を支えることにつながると考えられます。

家庭でできる対策のまとめ

ここまで解説した内容を整理すると、子どもの免疫力を高めて病気を予防するためには、以下のようなポイントが総合的に重要です。

  • 栄養豊富な食事の提供
    母乳や必要に応じたミルク、離乳食では多様な食材を取り入れ、ビタミン、ミネラルを十分に供給。腸内環境を整える食事が大切。
  • 十分な睡眠と規則正しい生活
    成長ホルモンや免疫活性化に必要な睡眠をしっかり確保。就寝・起床時間を一定にし、子どもの睡眠リズムを守る工夫を。
  • 適度な運動・外遊び
    年齢に応じた屋外活動などで体を動かす。血行促進や精神的ストレスの軽減に役立ち、免疫機能の向上にも寄与。
  • こまめな衛生管理
    手洗い、器具の消毒、室内の換気や清掃などを徹底。病原体への過剰な接触を避ける。
  • 予防接種の実施
    定期接種スケジュールを守り、重篤な感染症を予防する。ワクチンによる免疫獲得は、安全かつ効果的な方法。
  • 子どもの様子を観察し、早期受診を
    症状が長引く、あるいは急激に悪化した場合などは医療機関へ。慢性化や重症化を防ぎ、栄養状態と生活リズムを維持する。

結論と提言

乳幼児期は、体と脳の発達が並行して進む重要な時期です。この段階で頻繁に病気を繰り返すことは、子どもの発育だけでなく将来的な認知機能や生活習慣にも影響を与える可能性があります。そのため、免疫力を高める方法として栄養バランス、生活リズム、衛生管理、ワクチン接種を適切に組み合わせ、子どもが健やかに成長できる環境を整えることが大切です。

ただし、子どもの状態や体質は個人差が大きく、病気の症状や進行度合いも一人ひとり異なります。もし、しつこい咳や発熱が続く、食欲不振が長引くなどの懸念があれば早めに医療機関を受診し、必要であれば検査や治療を受けるようにしてください。

免責事項:本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、医療専門家の診断や治療に取って代わるものではありません。具体的な健康上の問題や症状に関しては、小児科医などの専門家へ直接ご相談ください。

参考文献

※本記事で紹介した情報は、あくまで参考を目的とした一般的なヘルスケア情報です。気になる症状がある場合や具体的な治療が必要と思われる場合には、必ず専門の医師に相談してください。また、お子さんに適した予防接種や栄養管理などは個々の健康状態によって異なる場合がありますので、医療機関の判断を仰ぐことをおすすめします。

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