小児免疫性血小板減少症(ITP)の完全ガイド:最新の診断、治療、日本の公的支援制度まで徹底解説
血液疾患

小児免疫性血小板減少症(ITP)の完全ガイド:最新の診断、治療、日本の公的支援制度まで徹底解説

お子様が突然「免疫性血小板減少症(ITP)」と診断されたとき、多くの保護者様が大きな不安と数え切れないほどの疑問に直面されることでしょう。「これはどんな病気なの?」「危険な状態なの?」「治療はどう進めるの?」こうした切実な問いに対し、信頼できる最新の情報を包括的にお届けすることが、私たちJapaneseHealth.org編集委員会の使命です。本記事は、日本小児血液・がん学会(JSPHO)が発行した2022年の最新診療ガイドライン3や米国血液学会(ASH)の指針13など、国内外の最も権威ある科学的根拠にのみ基づいて作成されています。ITPの基礎知識から、最新の治療選択肢、学校生活での注意点、そして日本の公的医療費助成制度の活用法まで、ご家族が前向きに病気と向き合うために必要な情報を、一つひとつ丁寧に解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、提供された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源の一部と、本記事で提示されている医学的指導との直接的な関連性を示したものです。

  • 日本小児血液・がん学会(JSPHO)2022年診療ガイドライン: 本記事における診断基準、治療方針、そして日本国内での実践に関する推奨事項の大部分は、この公式ガイドラインに基づいています3
  • 米国血液学会(ASH)2019年ガイドライン: 治療選択肢の比較や、患者と家族の価値観を重視した共同意思決定の重要性に関する記述は、国際的な標準治療を示すこの権威ある指針を参考にしています1521
  • 難病情報センターおよび小児慢性特定疾病情報センター: ITPの定義、公的な分類、そして日本の医療費助成制度に関する正確な情報は、これらの政府系情報機関の公開データに基づいています12

要点まとめ

  • 小児ITPは、多くの場合(70-90%)、6ヶ月から1年以内に自然に回復する予後良好な疾患です5
  • 現代の治療目標は、血小板数を正常化することではなく、重篤な出血を防ぎ、お子様の生活の質(QoL)を維持することです3
  • 出血症状がないか軽度の場合、薬を使わずに経過を観察する「無治療経過観察」が第一に推奨されます3
  • 日本では「小児慢性特定疾病」として公的な医療費助成制度の対象となり、家計の負担を軽減できます37

小児ITPを理解する:基礎知識と診断

まず、ITPという病気そのものを正しく理解することが、不安を和らげる第一歩です。

免疫性血小板減少症(ITP)とは?

免疫性血小板減少症(Immune Thrombocytopenia – ITP)とは、体の免疫システムが誤って自分自身の「血小板」を攻撃し、破壊してしまう自己免疫疾患の一つです1。血小板は血液を固めて出血を止める重要な役割を担っているため、その数が減ると、あざができやすくなったり、血が止まりにくくなったりします。ここで最も強調したい点は、ITPは白血病などの血液がんではなく、また他人にうつる病気ではないということです。

医学の進歩に伴い、この病気の呼び方も変化しています。日本小児血液・がん学会の2022年版最新ガイドラインでは、正式名称として「免疫性血小板減少症」の使用が推奨されています3。以前は「特発性血小板減少性紫斑病」(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura)と呼ばれていましたが、紫斑(あざ)が出ない患者さんもいること、そして原因が免疫異常にあることが解明されてきたことから、「特発性(原因不明)」や「紫斑病」という言葉を含まない現在の名称がより正確であるとされています5。また、血小板減少の定義も、国際基準に合わせて血小板数が10万/μL未満と更新されています1

原因と日本での発症率

小児のITPは、多くの場合、かぜや水ぼうそう、おたふくかぜなどのウイルス感染、あるいはワクチン接種が引き金となって発症します1。これは、ウイルスなどと戦った後の免疫システムが一時的に混乱し、血小板を異物と間違えて攻撃してしまうために起こると考えられています。

日本における発症率は、決して稀な病気ではありません。日本小児血液・がん学会(JSPHO)の2017年の登録データに基づく推定では、15歳未満の小児10万人あたり年間約4.3人が発症するとされています1。これは欧米諸国の報告(10万人あたり1.9人〜6.4人)と同程度であり1、特に0歳から7歳の子どもに多く見られます1

予後:ほとんどのケースは自然に回復します

保護者の方が最も心配される点ですが、小児ITPの予後は非常に良好です。診断されたお子様のうち、約70%から90%は、特別な治療をしなくても6ヶ月から12ヶ月以内に自然に回復(自然寛解)します5。血小板減少が12ヶ月以上続く「慢性ITP」に移行するのは約10%から20%に過ぎず11、その中には数年かけて自然に回復するお子様もいます11。この事実を知ることは、ご家族の精神的な負担を大きく軽減する助けとなります。

診断までの流れ:病院で行われること

お子様に気になる症状が見られた場合、病院ではどのような検査が行われるのかを事前に知っておくことで、落ち着いて対応できます。

  • 症状のチェックリスト: 保護者の方が気づきやすい主な症状には、「皮膚の出血(点状の赤い斑点や、ぶつけていないのにできる青あざ)」5、「粘膜の出血(止まりにくい鼻血や歯ぐきからの出血)」6、「その他の出血(血尿や血便、女児の過多月経など)」10があります。ITPの特徴として、これらの出血症状以外は、お子様は元気に遊ぶなど普段と変わらないことが多いです13
  • 問診と診察: 医師は症状が出始めた時期、最近の感染症や予防接種の有無、服用中の薬などを詳しく尋ねます9。また、肝臓や脾臓の腫れがないかなどを確認します3
  • 血液検査: 診断の鍵となる検査です。ITPの場合、血小板の数だけが著しく減少(10万/μL未満)し、赤血球や白血球は正常であることが特徴です1

骨髄検査は必ず必要ですか?

「骨髄検査(骨髄穿刺)」という言葉は、白血病の診断と結びつけて考えられがちなため、ご家族に大きな恐怖を与えます。しかし、最新の診療ガイドラインでは、典型的な小児ITPの診断に骨髄検査は必須ではないと明確に述べられています3。症状や血液検査の結果が典型的であれば、骨髄検査なしで診断が可能です。この検査が検討されるのは、発熱や体重減少などの全身症状がある、血液検査で血小板以外の異常が見られる、初期治療に反応しない、といった非典型的なケースに限られます3。その目的は、白血病や再生不良性貧血など、他の重篤な病気を確実に除外するためです10

病気の期間による分類

ITPは、発症からの期間によって以下のように分類されます。これは治療方針を考える上での目安となります3

  • 新規診断ITP: 発症から3ヶ月未満
  • 持続性ITP: 3ヶ月以上12ヶ月未満
  • 慢性ITP: 12ヶ月以上続く場合

ITP治療の全貌:最新ガイドラインに基づく選択肢

近年のITP治療は大きく変化し、よりお子様とご家族の生活に寄り添った考え方へとシフトしています。

治療の基本方針:数字ではなく、症状と生活の質を重視

現代の小児ITP治療における最も重要な原則は、以下の通りです。

  1. 目標は血小板数の正常化ではない: 治療の最大の目的は、脳内出血などの重篤な出血を予防することであり、血小板の数値を無理に正常に戻すことではありません3
  2. 症状に基づいた治療: 治療を開始するかどうかの判断は、血小板の数値だけでなく、鼻血や口内出血といった出血症状の程度をより重視します3
  3. 薬の副作用を最小限に: ほとんどが自然に治るため、不要な薬物治療による副作用を避けることが優先されます3
  4. 生活の質(HRQoL)を大切に: 病気や治療がお子様やご家族の日常生活に与える影響を最小限にし、学校活動や遊びを続けられるように配慮します3

第一選択(ファーストライン)治療

初めてITPと診断されたお子様には、主に3つのアプローチがあります。

選択肢1:無治療経過観察 (Watchful Waiting)

これは、現在の小児ITP治療において最も優先されるアプローチです。出血症状がない、あるいは皮膚の点状出血や小さなあざ程度の軽い症状しかない場合は、血小板数が非常に低くても、薬を使わずに慎重に経過を見守ることが、日本および米国のガイドラインで強く推奨されています3。早期に治療を始めても、慢性化する確率が変わらないことが研究で示されているためです12

選択肢2:副腎皮質ステロイド

薬物治療が必要と判断された場合に最も一般的に用いられる治療法です。中等度の鼻血や口内出血がある場合や、出血への不安から生活の質(HRQoL)が著しく低下している場合に考慮されます3。ステロイドは免疫の働きを抑え、血小板が破壊されるのを防ぎます23。副作用を最小限にするため、通常5〜7日程度の短期間で使用されます324。食欲増進や気分の変動といった短期的な副作用は、服薬終了後速やかに改善します12

選択肢3:免疫グロブリン静注療法(IVIG)

重篤な出血がある場合や、手術前など、血小板数を迅速に上げる必要がある特定の状況で用いられる強力な治療法です3。大量の免疫グロブリン製剤を点滴することで、脾臓で血小板が破壊されるのをブロックします15。効果は24〜48時間で現れるほど速いですが、一時的です15。入院による点滴が必要で、頭痛や発熱などの副作用が起こることがあります12

表1:第一選択治療の比較

第一選択治療の選択肢比較
治療法 主な適応 効果発現の速さ 主な利点 主な欠点・副作用
無治療経過観察 出血なし、または皮膚症状のみ3 該当なし 薬の副作用が全くない。自然治癒を尊重。 家族の不安感。定期的な通院が必要。
ステロイド 中等度の粘膜出血、QoLの低下3 数日 経口薬で手軽。費用が安い。 気分の変動、不眠(短期)。長期使用は重い副作用12
IVIG 重篤な出血、緊急時3 非常に速い (24-48時間)15 迅速かつ強力な効果。 入院での点滴が必要。高価。頭痛、発熱12

第二選択(セカンドライン)以降の治療:慢性ITPへの対応

約10-20%の慢性化するお子様に対しては、第二選択治療が検討されます。どの治療法を選択するかは、ご家族の価値観やライフスタイルを尊重した「共同意思決定」が極めて重要です20

トロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RAs)

骨髄に直接働きかけて血小板の産生を促す新しいタイプの薬です23。飲み薬の「エルトロンボパグ」と、週1回の皮下注射薬「ロミプロスチム」があります22。手術を避け、長期的に安定した状態を維持できる利点がありますが、継続的な投薬が必要です22。特にエルトロンボパグは、牛乳などのカルシウムが豊富な食品との同時摂取を避ける食事制限が必要です26

リツキシマブ

血小板を攻撃する自己抗体を作り出すBリンパ球を標的とする抗体製剤です23。ITPの原因に直接アプローチする治療法で、一部の患者さんでは治療後に服薬が不要となる長期寛解が期待できます26。日本では、抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®」が2024年11月22日に小児の慢性ITPに対して承認されており、保険適用の治療選択肢となっています28

脾臓摘出術(摘脾)

血小板が破壊される主要な場所である脾臓を外科的に摘出する、最も歴史のある治療法です23。非常に高い効果が期待できますが、一度行うと元に戻せず、生涯にわたって重症感染症のリスクを負うことになります20。そのため、現在では他の薬物療法が効果を示さなかった場合の最終手段と位置づけられています20

表2:第二選択治療の比較分析

第二選択治療の価値観に基づく比較
治療法 作用機序 主な利点 主な欠点・リスク こんなご家族に
TPO-RAs 血小板産生を促進23 手術を回避。高い効果と安全性22 長期・継続的な投薬が必要。高価。 手術を避け、長期的な服薬で安定を維持したい。
リツキシマブ 自己抗体産生細胞を破壊23 服薬不要の長期寛解の可能性26 免疫抑制による感染症リスク。効果がない場合もある。 服薬中止の可能性に期待し、一時的な免疫抑制リスクを許容できる。
脾臓摘出術 血小板破壊の場を除去23 一度の手術で根本的解決の可能性。 不可逆的。手術リスク。生涯の重症感染症リスク20 根治的な解決を望み、手術と生涯にわたる感染予防策を許容できる。

緊急時の対応:知っておくべきこと

小児ITPで最も恐れられる合併症は頭蓋内出血ですが、その頻度は0.3%〜0.5%と非常に稀です11。過度に恐れる必要はありませんが、万が一に備えることは重要です。

頭をぶつけた時、ひどい頭痛や嘔吐がある時、意識がおかしい時は、軽微に見えても緊急事態です。すぐに医療機関に連絡するか、救急外来を受診してください。その際は必ず「この子はITP(血小板が少ない病気)です」と伝えてください15。病院では、IVIGやステロイド大量療法、血小板輸血などを組み合わせて迅速な対応が行われます6


日常生活の管理:安全と安心のための実践ガイド

病気と上手に付き合いながら、お子様が普通の生活を送れるようにサポートするための具体的な方法をご紹介します。

家庭での運動・活動に関する指針

安全確保と、子どもの発達に必要な活動とのバランスが重要です。血小板数が非常に少ない時期(例:2万/μL未満)は、サッカーや柔道、スケートボードなど、接触や転倒のリスクが高いスポーツは避けるべきです5。歩き始めの小さなお子様には、室内でも柔らかいヘルメットを着用させると安心です。血小板数が安定してきたら、水泳やヘルメット着用の自転車など、リスクの低い活動から再開できます。どの活動が安全かについては、必ず主治医と相談してください9

避けるべき薬

アスピリンやイブプロフェン(市販の子ども用解熱剤に含まれることが多い)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、血小板の働きを弱めるため、使用を避けてください9。解熱や鎮痛が必要な場合は、アセトアミノフェンが安全な選択肢です9

学校・保育園での生活と「学校生活管理指導表」

学校での安全を確保するためには、園や学校との連携が不可欠です。ここで非常に役立つのが、日本の教育現場で公式に使われている「学校生活管理指導表」です31

これは、主治医が診断名、現在の状態、体育などの活動制限、緊急時の対応などを具体的に記入し、学校側に子どもの情報を正確に伝えるための公式書類です32。保護者は学校からこの用紙を受け取り、主治医に記入を依頼します(文書作成料がかかる場合があります33)。この書類を基に、担任の先生や養護教諭と面談し、具体的な対応策(アクションプラン)を一緒に作ることで、学校全体でのお子様の安全確保につながります。

心理的・精神的なサポート

ITPは、お子様本人だけでなく、ご家族全員に心理的な影響を与えます。

  • お子様へ: 疲れやすさ(倦怠感)はITPによく見られる症状です34。無理をせず休める環境を整えましょう。また、あざを気にしたり、活動を制限されることで、他の子と違うと感じてしまうこともあります。その気持ちに寄り添い、話を聞いてあげることが大切です。
  • ご家族へ: 兄弟姉妹が寂しさを感じないように配慮することも重要です15。そして、保護者自身の心身の健康も大切です。同じ病気の子どもを持つ親の会(Oya no Kai)などに参加し、経験や悩みを分かち合うことは、大きな支えになります。ITP専門の会は少ないかもしれませんが、「あすなろ会(若年性特発性関節炎)」35や「JSPACC(障害のあるこどもたちの支援)」36のような、慢性疾患児の親の会の活動モデルは参考になるでしょう。

日本の医療制度の活用法:公的支援と専門医

日本の医療制度には、ITP患者さんとそのご家族を支えるための仕組みが整っています。

医療費助成制度(小児慢性特定疾病)の申請ガイド

ITPは、18歳未満では「小児慢性特定疾病」37、18歳以上では「指定難病(番号63)」11として、公的な医療費助成の対象となっています。この制度を利用すると、世帯の所得に応じて医療費の自己負担額に上限が設けられ、それを超えた分は公費で賄われます37

申請手続きのステップ

  1. 主治医に相談: まず、主治医に制度を利用したい旨を伝えます。診断書にあたる「医療意見書」の作成を、「指定医」の資格を持つ医師に依頼します40
  2. 必要書類の準備: 申請書、医療意見書、住民票、課税証明書、健康保険証のコピーなど、自治体の要件に合わせた書類を揃えます39
  3. 窓口への提出: 準備した書類を、お住まいの地域の保健所や市役所の担当窓口に提出します39
  4. 受給者証の交付: 審査には2〜3ヶ月かかることがあります。承認されると「医療受給者証」が交付され、助成が開始されます。審査期間中に支払った医療費は、後で払い戻し請求ができます39

重要なポイント「軽症高額該当」: たとえ症状が軽く、重症度基準を満たさなくても、ITPに関連する月々の医療費総額(10割分)が一定額(例:33,330円)を超える月が年間に3回以上ある場合、「軽症高額」として助成の対象となる可能性があります37。諦めずに自治体の窓口に相談することが重要です。

専門医と信頼できる情報源

小児ITPの治療は、小児血液専門医のもとで受けることが望ましいです。日本におけるこの分野の最も権威ある組織は日本小児血液・がん学会(JSPHO)です3。同学会に所属する専門医がいる大学病院やこども病院の「小児血液・腫瘍科」を受診することが推奨されます。2022年のガイドライン作成には、国立成育医療研究センターの石黒精医師や伊勢赤十字病院の東川正宗医師などが中心的な役割を果たしており、こうした専門家が日本の治療をリードしています44

より詳しい情報を得るためには、以下の信頼できる情報源をご参照ください。

  • 難病情報センター: ITPに関する国の公式情報が掲載されています2
  • 小児慢性特定疾病情報センター: 小児のITPに関する情報と助成制度について詳しく解説されています1

よくある質問

ITPは癌ですか?うつる病気ですか?

いいえ、全く違います。ITPは血液のがん(白血病など)ではなく、良性の疾患です。また、免疫システムの異常による病気であり、ウイルス感染のように他の人にうつることは一切ありません1

骨髄検査は必ず必要ですか?

いいえ、必須ではありません。症状や血液検査の結果がお子様のITPとして典型的であれば、骨髄検査を行わずに診断することが現在の標準的な診療です。他の病気が疑われる非典型的な場合にのみ、鑑別のために行われます3

治療の目標は何ですか?血小板の数を正常に戻すことですか?

いいえ、目標は数値の正常化ではありません。現代の治療における最大の目標は、脳内出血などの「重篤な出血を予防」し、血小板数を安全なレベルに保つことで、お子様が可能な限り普通の日常生活を送れるようにすることです3

運動は全くしてはいけないのですか?

いいえ、活動を全面的に禁止する必要はありません。重要なのは、血小板数に応じて活動のレベルを調整することです。ケガのリスクが高い激しいスポーツは避ける必要がありますが、水泳など安全な活動は推奨されます。必ず主治医と相談して、お子様に合った活動範囲を決めましょう915

治療費が高額になりそうで心配です。何か支援はありますか?

はい、あります。ITPは日本の公的医療費助成制度である「小児慢性特定疾病医療費助成制度」の対象疾患です。この制度を申請・利用することで、ご家庭の所得に応じて医療費の自己負担額に上限が設けられ、経済的な負担を大幅に軽減することができます37

結論

お子様が免疫性血小板減少症(ITP)と診断されることは、ご家族にとって計り知れない衝撃と不安をもたらします。しかし、本記事で解説したように、小児ITPは多くが自然に回復する予後の良い病気であり、現代の治療は重篤な出血を防ぎながらお子様の生活の質を最大限に尊重することを目的としています。

治療の選択肢は「無治療経過観察」から最新の薬物療法まで多岐にわたりますが、その決定は決してご家族だけで抱え込むものではありません。主治医と密に連携し、お子様にとって最善の方法を「共同で決定」していくことが何よりも大切です。また、学校生活管理指導表の活用や公的な医療費助成制度など、日本にはお子様とご家族を支えるための具体的な仕組みが整っています。これらの情報を武器に、どうか前向きに、そして希望を持って病気と向き合ってください。私たちJapaneseHealth.orgは、これからも科学的根拠に基づいた信頼できる情報を提供することで、皆様の歩みを力強くサポートしてまいります。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 免疫性血小板減少性紫斑病 概要 – 小児慢性特定疾病情報センター [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.shouman.jp/disease/details/09_13_023/
  2. 免疫性血小板減少症(指定難病63) – 難病情報センター [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/entry/303
  3. 日本小児血液・がん学会. 日本小児血液・がん学会 2022 年小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン. 2022 [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.jspho.org/pdf/journal/20221214_guideline/20221214_guideline.pdf
  4. 小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン 2022年版 – 診断と治療社 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.shindan.co.jp/np/isbn/9784787825544/
  5. 特発性血小板減少性紫斑病 – せのお小児科 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: http://senoopc.jp/disease/itp.html
  6. 特発性血小板減少性紫斑症 | 吹田市の小児科 市森クリニック [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://kirin-family.com/%E7%89%B9%E7%99%BA%E6%80%A7%E8%A1%80%E5%B0%8F%E6%9D%BF%E6%B8%9B%E5%B0%91%E6%80%A7%E7%B4%AB%E6%96%91%E7%97%85
  7. 特発性血小板減少性紫斑病 – 日本血栓止血学会 [インターネット]. 2018. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.jsth.org/publications/pdf/201807/%E7%89%B9%E7%99%BA%E6%80%A7%E8%A1%80%E5%B0%8F%E6%9D%BF%E6%B8%9B%E5%B0%91%E6%80%A7%E7%B4%AB%E6%96%91%E7%97%85.pdf
  8. Neunert C, Lim W, Crowther M, Cohen A, Solberg L Jr, Crowther MA; American Society of Hematology. The American Society of Hematology 2011 evidence-based practice guideline for immune thrombocytopenia. Blood. 2011 Apr 21;117(16):4190-207. doi: 10.1182/blood-2010-08-302984.
  9. 小児の特発性血小板減少性紫斑病(ITP) 見過ごしてはならない危険性 | Phyathai Hospital [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.phyathai.com/ja/article/thrombocytopenia_itp_branchpyt2?gad_source=1
  10. 免疫性血小板減少症|よくある症状 – 千里中央駅直結 豊中市の内科・血液内科 せんちゅうクリニック [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://senchu-clinic.com/case/%E5%85%8D%E7%96%AB%E6%80%A7%E8%A1%80%E5%B0%8F%E6%9D%BF%E6%B8%9B%E5%B0%91%E7%97%87/
  11. 免疫性血小板減少性紫斑病(ITP) – 日本小児科学会 [インターネット]. 2024. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240318_GL072.pdf
  12. 免疫性血小板減少症とその治療について | 東京大学医学部附属病院 小児科 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://tokyoped.jp/aboutus/specialty/hemato-oncology/childhood_cancer/itp
  13. Bhatia A, O’Brien S. Guidelines for Pediatric Immune Thrombocytopenia. In: Thrombocytopenia [Internet]. Brisbane (AU): Exon Publications; 2021 Nov 6. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK603670/
  14. ITPの症状 | 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とは – ITP RESILIENT [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://itpresilient.jp/about-itp/itp-symptoms
  15. 小児におけるITP – Platelet Disorder Support Association [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://pdsa.org/images/stories/pdf/ITP-in-Children-Japanese.pdf
  16. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)について | 横浜市立大学附属病院 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.yokohama-cu.ac.jp/fukuhp/section/depts/rheumatism/itp.html
  17. さかざKIDSブログ 特発性血小板減少性紫斑病(ITP) [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.sakazakidsblog.com/index.php?ID=3142
  18. 特発性血小板減少性紫斑病 ITPナビ – 協和キリン [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.kyowakirin.co.jp/itp/about.html
  19. ガイドラインに基づく小児ITPの診療. 小児科診療. 2025;88(13). Available from: https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/pp.0000001596
  20. Management of Immune Thrombocytopenia (ITP) – American Society of Hematology [インターネット]. 2019. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.hematology.org/-/media/Hematology/Files/Education/Clinicians/Guidelines-Quality/Documents/ASH-ITP-Pocket-Guide-FOR-WEB-1204.pdf
  21. Neunert C, Terrell DR, Arnold DM, et al. American Society of Hematology 2019 guidelines for immune thrombocytopenia. Blood Adv. 2019 Dec 10;3(23):3829-3866. doi: 10.1182/bloodadvances.2019000966.
  22. Bansal D, Bussel JB. The child with immune thrombocytopenia: to treat or not to treat, is that still the question?. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2018 Nov 30;2018(1):476-484. doi: 10.1182/asheducation-2018.1.476.
  23. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療 – 協和キリン [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.kyowakirin.co.jp/itp/treatment.html
  24. 小児ITPのセカンドライン治療. 日本血栓止血学会誌. 2024;35(4):461-467. Available from: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsth/35/4/35_2024_JJTH_35_4_461-467/_html/-char/ja
  25. Guidelines for Pediatric Immune Thrombocytopenia. Canadian Journal of Health Technologies. 2022. Available from: https://canjhealthtechnol.ca/index.php/cjht/article/download/rc1426/rc1426/2361
  26. Despotovic JM, Grimes A, Grace RF. Advances in management of pediatric chronic immune thrombocytopenia. Pediatr Blood Cancer. 2023 Sep;70 Suppl 4:e30472. doi: 10.1002/pbc.30472.
  27. 当院で経験した小児慢性免疫性血小板減少性 紫斑病(ITP)の治療と予後経過 – 徳島赤十字病院 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.tokushima-med.jrc.or.jp/file/attachment/2538.pdf
  28. 2024年11月22日|抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン®」小児の慢性特発性血小板減少性紫斑病に対する承認取得について – 中外製薬 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20241122160000_1441.html
  29. 慢性特発性血小板減少性紫斑病の治療薬としてウィフガート点滴静注が適応追加承認を取得 – レアズネット [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://raresnet.com/240326-01/
  30. 特発性血小板減少性紫斑病 – 障害者職業総合センター [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.nivr.jeed.go.jp/option/nanbyo/11.html
  31. 学校生活管理指導表(アレルギー疾患用) – 活用のしおり – 岡山県 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/277769.pdf
  32. 「学校生活管理指導表」の提出が基本 – 環境再生保全機構 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/45/feature/feature01.html
  33. 小児外来診療料と学校生活管理指導表の診療情報提供書1算定について – しろぼんねっと [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://shirobon.net/qabbs_detail.php?bbs_id=29366
  34. Myrga M, Anselem O, Godeau B, et al. Treatment Landscape in Pediatric Immune Thrombocytopenia: Addressing Unmet Needs. J Clin Med. 2025;14(1):1. doi: 10.3390/jcm14010001. [PMID: 40325554] [リンク切れの可能性あり]
  35. あすなろ会 若年性特発性関節炎JIA親の会 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://asunarokai.com/
  36. JSPACCについて – 日本障害児・者関連学会協議会 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.jspacc.org/about-jspacc.html
  37. 指定難病・小児慢性特定疾病と医療費助成について | 特発性血小板減少性紫斑病 ITPナビ – 協和キリン [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.kyowakirin.co.jp/itp/expenses.html
  38. 免疫性血小板減少症(特発性血小板減少性紫斑病)(ITP)の医療費助成制度と参考文献 – 血栓止血の臨床と研究 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://shiketsu-guide.com/a-itp-support.htm
  39. 公費負担を受けるには? | ITP-info:特発性血小板減少性紫斑病 – がんと希少な病気の情報サイト [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.gan-kisho.novartis.co.jp/itp-info/subsidy/howto
  40. 手続きの流れ – 小児慢性特定疾病情報センター [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.shouman.jp/assist/process/
  41. 小児慢性特定疾病のための医療費助成制度 [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://kodomo.kouhi.jp/
  42. 医療費の助成制度|難病と診断されたとき – ITP RESILIENT [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://itpresilient.jp/public-support/diagnosis-of-incurable-disease
  43. 小児免疫性血小板減少症診療GL2022年版、一覧に追加 – 臨床ニュース | m3.com [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.m3.com/clinical/news/1184651
  44. 日本小児血液・がん学会2022年小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン. 日本小児血液・がん学会雑誌. 2022;59(1):50. Available from: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspho/59/1/59_50/_article/-char/ja/
  45. 小児免疫性血小板減少症(ITP)の病態生理と臨床課題および今後. 日本小児血液・がん学会雑誌. 2022;59(1):14-19. Available from: https://cir.nii.ac.jp/crid/1390008597681144704
  46. ASH Clinical Practice Guidelines on Immune Thrombocytopenia – Hematology.org [インターネット]. [引用日: 2025年7月23日]. Available from: https://www.hematology.org/education/clinicians/guidelines-and-quality-care/clinical-practice-guidelines/immune-thrombocytopenia-guidelines
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ