要点まとめ
- 精巣炎(睾丸炎)は精巣の炎症で、強い痛みや腫れ、発熱を引き起こします。精巣上体炎を伴うことも多く、原因は細菌、ウイルス(特におたふく風邪)、性感染症(STI)など多岐にわたります1。
- 特に緊急性の高い精巣捻転症との鑑別が極めて重要です。自己判断は危険であり、陰嚢の急な痛みや腫れを感じたら、直ちに泌尿器科を受診する必要があります2。
- 治療は原因に応じて行われます。細菌性には適切な抗菌薬3, 4、ウイルス性には対症療法が中心です。治療が遅れると、精巣萎縮や男性不妊といった深刻な合併症のリスクが高まります5。
- 予防には、おたふく風邪ワクチンの接種6や、コンドームの使用などによる性感染症(STI)対策が非常に有効です。
精巣炎(睾丸炎)とは?
精巣炎(せいそうえん)、または睾丸炎(こうがんえん)とは、男性の精巣(睾丸)に炎症が起こる疾患です1。精巣は陰嚢(いんのう)の中に左右一つずつあり、精子と男性ホルモンを産生する重要な臓器です。この疾患は片側の精巣だけに起こることもあれば、両側に発生することもあります。実際には、精巣に隣接し精子の通り道となっている精巣上体(副睾丸)の炎症(精巣上体炎)を伴うことが非常に多く、その場合は「精巣精巣上体炎」と呼ばれます1。
日本国内の正確な発生頻度に関する大規模な統計は限られていますが、泌尿器科の日常診療では比較的よく見られる疾患です7。特に、性的に活動的な若年層では性感染症(STI)関連のものが、高齢者では尿路感染症に関連したものが多く見られる傾向があります。この疾患の重要性は、単に痛みや不快感をもたらすだけでなく、早期に適切な治療を行わなければ、精巣の機能が損なわれ、将来の妊孕性(にんようせい、子供をつくる能力)に影響を及ぼす可能性がある点にあります。したがって、症状を正しく理解し、迅速に医療機関を受診することが、合併症を防ぎ、生活の質(QOL)を維持するために不可欠です。
精巣炎の主な症状
精巣炎の症状は、その原因や炎症の程度によって様々ですが、一般的に局所症状と全身症状に分けられます。症状の現れ方や重症度は個人差が大きいことを理解しておくことが重要です。
局所症状
炎症が起きている精巣やその周辺に、以下のような症状が現れます。
- 陰嚢の痛みと圧痛:急激に始まる激しい痛みから、持続的な鈍い痛みまで様々です。触ったり、歩いたりする際の振動で痛みが強まることがあります。
- 陰嚢の腫れ(腫脹):患側の陰嚢が明らかに腫れ上がり、精巣が普段より大きく硬く感じられます。
- 熱感と発赤:陰嚢の皮膚が熱っぽくなり、赤みを帯びることがあります。
全身症状
感染が全身に影響を及ぼすことで、以下のような症状が現れることがあります。
- 発熱:38℃以上の高熱が出ることがあり、悪寒や震えを伴うこともあります。
- 全身倦怠感:体がだるく、力が入らない感じがします。
- その他の症状:食欲不振、吐き気、頭痛などを伴うこともあります。
排尿・射精関連症状
特に尿路からの感染が原因の場合や、尿道炎を合併している場合には、以下のような症状が見られることがあります。
- 排尿時痛、頻尿
- 尿道からの分泌物(膿)
- 射精時の痛み、血精液症(精液に血が混じること、まれ)
これらの症状に一つでも気づいたら、自己判断で様子を見るのではなく、できるだけ早く泌尿器科などの専門医療機関を受診することが強く推奨されます。
精巣炎の主な原因
精巣炎は単一の原因で起こるわけではなく、主に「細菌性」と「ウイルス性」に大別されます。特に性感染症(STI)との関連は、若年層において非常に重要です。
1. 細菌性精巣炎
細菌感染による精巣炎は、多くの場合、尿道や膀胱に侵入した細菌が、精管を逆行して精巣上体や精巣に到達することで発症します(上行性感染)7。原因となる細菌は、年齢層によって傾向が異なります。
- 若年~中年層(特に性的に活動的な男性):クラミジア・トラコマティスや淋菌といった性感染症(STI)の起因菌が主な原因です3。これらの細菌は、まず尿道炎を引き起こし、そこから感染が波及します。
- 中高年層:大腸菌などの腸内細菌科細菌が主な原因菌となります3。加齢に伴う前立腺肥大症や、神経因性膀胱、尿道カテーテルの長期留置など、尿の流れが悪くなる基礎疾患がリスク因子となります。
- その他:まれに結核菌などが原因となることもあります8。
日本の性感染症学会のガイドラインでも、細菌性精巣炎の原因菌の傾向と、それに基づいた治療選択の重要性が指摘されています3。
2. ウイルス性精巣炎(特にムンプス性精巣炎)
ウイルス感染も精巣炎の重要な原因であり、その中でも最も有名なのがムンプスウイルスによるものです。
- ムンプスウイルス:流行性耳下腺炎、いわゆる「おたふく風邪」の合併症として発症する精巣炎です5。おたふく風邪に罹患した思春期以降の男性の約20~30%に合併すると報告されており、決してまれな病気ではありません5。通常、耳下腺の腫れが始まってから4~7日後に、急激な精巣の痛み、腫れ、高熱で発症します。片側性が多いですが、約3分の1のケースでは両側性となる可能性があります5。
- 日本の状況:国立感染症研究所(NIID)の報告によれば、日本におけるムンプスワクチンの接種は任意であるため、流行が周期的に発生しています9。そのため、ワクチン未接種の男性がおたふく風邪に罹患し、ムンプス性精巣炎を発症するリスクは依然として存在します。
- その他のウイルス:まれに、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなども精巣炎の原因となることがあります。
3. 性感染症(STI)との関連
前述の通り、クラミジア感染症や淋菌感染症は、特に35歳以下の若年男性における急性精巣炎・精巣上体炎の主要な原因です3。これらの感染症は、無症状の尿道炎から静かに進行することもあり、気づかないうちに精巣上体や精巣に炎症が及ぶケースも少なくありません。
厚生労働省や国立感染症研究所の最新の統計データによると、日本国内ではクラミジアや淋菌などのSTIが依然として高い水準で報告されており、特に若年層での感染拡大が懸念されています10。STIが原因の場合、パートナーも感染している可能性が非常に高いため、自身の治療はもちろん、パートナーへの感染拡大を防ぎ、再感染を予防するためにも、パートナーを含めた正確な診断と適切な治療が不可欠です3。
その他の原因とリスク因子
- 外傷:精巣への直接的な打撲など。
- 尿路の閉塞や処置:前立腺肥大症、尿道狭窄、尿道カテーテルの留置、泌尿器科的な手術や検査などが感染のリスクとなることがあります。
- 免疫力の低下:糖尿病、HIV感染、ステロイドや免疫抑制剤の使用など、体の抵抗力が落ちている状態。
精巣炎の診断方法
精巣炎の診断は、症状の聴取、身体診察、そして各種検査を組み合わせて総合的に行われます。特に、緊急手術が必要となる精巣捻転症など、他の疾患との鑑別が極めて重要です。
問診と身体診察
医師はまず、症状(いつから、どのような痛みか、他に症状はあるか)、過去の病歴(おたふく風邪、糖尿病、STIの既往など)、性交渉歴、排尿の状態、最近受けた泌尿器科的な処置の有無などを詳しく尋ねます。その後、陰嚢を直接見て(視診)、触って(触診)診察します。腫れや赤みの程度、精巣や精巣上体の大きさ、硬さ、痛みの場所や強さを評価します。この際、「プレーン徴候」と呼ばれる、陰嚢を持ち上げた際に痛みが和らぐか(精巣上体炎を示唆)、逆に強まるか(精巣捻転症を示唆)を確認することもありますが、これだけで確定診断はできません2。
尿検査・血液検査
- 尿検査:尿の中に白血球や細菌がいないかを確認し、尿路感染症の有無を調べます。細菌感染が疑われる場合は、原因菌を特定し、どの抗菌薬が効くかを調べるための培養検査も行います。また、クラミジアや淋菌などのSTIが疑われる場合は、初尿を用いてPCR法などの核酸増幅検査を行い、感染の有無を正確に診断します3。
- 血液検査:体内の炎症の程度を示す白血球数(WBC)やC反応性タンパク(CRP)の値を測定します。おたふく風邪が疑われる場合には、ムンプスウイルスに対する抗体価を調べることもあります。
画像検査(超音波検査など)
陰嚢の超音波(エコー)検査は、精巣炎の診断において非常に重要で有用な検査です。この検査では、プローブと呼ばれる装置を陰嚢の表面に当てるだけで、痛みなく内部の状態をリアルタイムで観察できます。特にドップラー法を併用することで、精巣内の血流状態を評価することが可能です11。
- 精巣炎・精巣上体炎では、患部の腫大とともに血流の増加が見られます。
- 膿のたまり(膿瘍)や、水が溜まる陰嚢水腫などの合併症の有無も確認できます。
- 後述する精巣腫瘍との鑑別にも役立ちます12。
鑑別診断の重要性(精巣捻転症など)
陰嚢の痛みを引き起こす疾患は精巣炎だけではありません。中でも精巣捻転症(せいそうねんてんしょう)は、最も緊急性の高い鑑別疾患です。これは、精巣につながる血管や精管の束(精索)がねじれてしまい、精巣への血流が途絶えてしまう病気です。思春期前後の若年者に多く、突発する激しい痛みが特徴です。発症後6~8時間以内に手術によるねじれの解除を行わないと、精巣が壊死して機能を失ってしまう危険性が非常に高いです2。超音波ドップラー検査で精巣への血流が途絶していることを確認することが、診断の決め手となります。このため、「おかしいな」と思ったら夜間や休日でもためらわずに救急外来を受診することが重要です。
健康に関する注意事項
- 急激で耐え難い精巣の痛みを感じた場合は、精巣捻転症の可能性があります。時間を争う緊急事態ですので、夜間や休日であっても直ちに救急医療機関を受診してください。
- この記事は情報提供を目的としており、自己診断や自己治療を推奨するものではありません。精巣炎を疑う症状がある場合は、必ず泌尿器科専門医の診察を受けてください。
精巣炎の主な治療法
精巣炎の治療は、原因、症状の重症度、患者の年齢や基礎疾患などを総合的に考慮して決定されます。基本は薬物療法ですが、場合によっては外科的治療が必要になることもあります。
1. 内科的治療(薬物療法)
細菌性精巣炎の場合の抗菌薬治療
細菌感染が原因の場合、その原因菌に有効な抗菌薬(抗生物質)を十分な期間投与することが治療の基本です。治療は、原因菌が特定される前の「エンピリック治療」と、特定された後の「ディフィニティブ治療」に分けられます。
- エンピリック治療(初期治療):検査結果が出る前に、年齢や性交渉歴などから最も可能性の高い原因菌を推定し、それらを幅広くカバーできる抗菌薬を選択します。国際的なガイドラインである欧州泌尿器科学会(EAU)のガイドライン4や米国疾病予防管理センター(CDC)のSTI治療ガイドライン13、そして日本の実情に合わせた日本性感染症学会3や日本感染症学会/日本化学療法学会のガイドライン14などが参照されます。
- ディフィニティブ治療:尿の培養検査などの結果で原因菌が特定されれば、その菌に最も効果的な抗菌薬に変更、または継続します。
軽症から中等症であれば通院での内服治療が可能ですが、高熱や痛みが強い、食事がとれないなど重症の場合は、入院して点滴による抗菌薬治療を行い、症状の改善を見てから内服薬に切り替えます7。
健康に関する注意事項
- 処方された抗菌薬は、症状が良くなったからといって自己判断で中断しないでください。指示された期間を最後まで飲み切ることが、再発や薬剤耐性菌の出現を防ぐために非常に重要です。
ウイルス性精巣炎の場合の対症療法
ムンプス性精巣炎など、ウイルスが原因の場合は、特異的な抗ウイルス薬が存在しないため、症状を和らげる対症療法が治療の中心となります5。安静、陰嚢の冷却、後述する鎮痛剤の使用などが基本となります。症状は通常1週間から10日ほどで改善に向かいますが、精巣の腫れが完全に引くまでには数週間かかることもあります。
鎮痛剤・抗炎症薬の使用
痛みが強い場合は、その原因に関わらず、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるロキソプロフェンやイブプロフェン、あるいはアセトアミノフェンなどの鎮痛剤が処方されます16。これにより炎症と痛みを和らげ、治療中のQOL(生活の質)を改善します。
2. 外科的治療
精巣炎の治療は内科的治療が原則ですが、以下のような特殊なケースでは手術が必要となることがあります。
- 陰嚢内膿瘍:感染が進行し、精巣や精巣上体に膿がたまってしまった状態(膿瘍)です。抗菌薬だけでは治癒が困難なため、陰嚢の皮膚を切開して膿を排出する手術(ドレナージ)が必要になります7。
- 精巣壊死・難治性精巣炎:炎症が極度に重い、あるいは血流障害によって精巣組織が壊死してしまった場合や、適切な薬物治療に反応しない難治性の場合は、患側の精巣を摘出する手術(精巣摘除術)が検討されることもあります。
3. 支持療法とセルフケア
薬による治療と並行して、回復を早め、症状を和らげるために以下のセルフケアを心がけることが推奨されます。
- 安静と陰嚢のサポート:急性期は激しい運動を避け、できるだけ安静にします。陰嚢を専用のサポーター(ジョックストラップなど)やタオルを丸めたものなどで持ち上げるように固定(挙上)すると、血流が改善し、腫れや痛みの軽減に繋がります。
- 冷却:炎症や腫れが強い急性期には、アイスパックなどをタオルで包み、1回15~20分程度を目安に陰嚢を冷やすと、痛みが和らぐことがあります16。ただし、冷やしすぎには注意してください。
- 水分補給と栄養:十分な水分を摂り、栄養バランスの取れた食事で免疫力を高めましょう。
- 適切な下着:陰部を締め付けない、通気性の良い綿素材などの下着を選びましょう。
4. 自然療法・民間療法について
一部の地域で伝統的に用いられている植物療法などが存在しますが、JAPANESEHEALTH.ORGとしては、その効果や安全性が科学的に証明されていない民間療法を推奨しません。精巣炎の治療において、自己判断で標準的な医学的治療の代わりに民間療法に頼ることは、症状の悪化や治療の遅れを招き、非常に危険です。いかなる代替療法を試す場合でも、必ず事前に主治医に相談してください。
精巣炎の合併症と予後
精巣炎は、早期に適切な治療を開始すれば多くは後遺症なく治癒しますが、治療が遅れたり、炎症が重度であったりすると、以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 精巣萎縮:強い炎症によって精巣組織がダメージを受けると、精巣が小さく硬くなってしまうことがあります5。特にムンプス性精巣炎では、約60%の症例で何らかの程度の精巣萎縮が起こると報告されています5。両側の精巣が萎縮すると、男性ホルモンの産生低下や造精機能障害のリスクが高まります。
- 男性不妊症:精巣は精子を作る臓器であるため、炎症による組織障害が広範囲に及んだ場合、特に両側の精巣が侵された場合には、精子の数や運動能力が低下し、男性不妊症の原因となることがあります5。ムンプス性精巣炎では、思春期以降に両側罹患した場合の不妊リスクが知られています3。細菌性であっても、精巣上体炎を合併し、精子の通り道である精管が詰まってしまうと不妊に繋がる可能性があります。
- 慢性精巣炎・慢性陰嚢痛:急性期の炎症が治った後も、陰嚢部に鈍い痛みや不快感が数ヶ月以上にわたって持続することがあります。
- 陰嚢内膿瘍:前述の通り、感染が制御できずに膿が溜まる状態で、外科的な処置が必要となります。
- 敗血症:非常にまれですが、重篤な細菌感染が血液に乗って全身に広がり、生命を脅かす状態に至ることもあります。
適切な治療による予後
早期に診断され、原因に応じた適切な治療(特に細菌性の場合の抗菌薬治療)が行われれば、予後は一般的に良好で、多くは数日から数週間で症状が改善し、完全に回復することが期待できます。しかし、予後は原因、重症度、治療開始のタイミング、患者さん本人の全身状態など多くの要因に左右されます。医師からの説明をよく聞き、指示に従うことが何よりも重要です。
精巣炎の予防方法
精巣炎を予防するためには、その原因に応じた対策が重要になります。
- ムンプスワクチンの接種:ムンプス性精巣炎は、ワクチンで予防可能な合併症です。日本では任意接種ですが、日本小児科学会などは、合併症の重篤性を考慮し、小児期(通常1歳と就学前の2回)のワクチン接種を強く推奨しています。過去におたふく風邪にかかったことがなく、ワクチン接種歴が不明な思春期以降の男性も、接種を検討することが勧められます6。
- 性感染症(STI)の予防:クラミジアや淋菌が原因となる精巣炎を予防するためには、性行為の際に最初から最後までコンドームを正しく使用することが極めて有効です。また、不特定多数との性交渉を避け、パートナーと共にSTIの検査・治療を受けることも重要です。
- 基本的な衛生管理と免疫力の維持:陰部を清潔に保つ、十分な水分を摂取する、排尿を我慢しないといった基本的な生活習慣が尿路感染の予防に繋がります。また、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠で免疫力を高く保つことも、あらゆる感染症に対する抵抗力を高めます。
- 基礎疾患の管理:前立腺肥大症や糖尿病などの基礎疾患がある場合は、適切に治療・管理することが、関連する精巣炎のリスクを低減させます。
過去に精巣炎にかかったことがある方は再発のリスクがあるため、陰嚢の違和感など初期症状に気づいたら、ためらわずに医療機関を受診してください。
国内外の最新研究から見る精巣炎のトレンド
精巣炎に関する研究は、診断技術の進歩や、世界的な課題である薬剤耐性菌への対策など、常に進化しています。国際的な診療ガイドラインも定期的に更新されており、日本の診療にも影響を与えています。
- 国際ガイドラインの動向:欧州泌尿器科学会(EAU)の最新のガイドライン(2024年版)では、急性陰嚢症における超音波検査の早期実施や、性感染症(STI)リスク評価の重要性が改めて強調されています4。また、抗菌薬の適正使用(Antimicrobial Stewardship)の観点から、薬剤耐性菌の出現を抑制するための戦略が重視されており、広域スペクトラム抗菌薬の安易な使用を避け、可能な限り原因菌を特定して最適な薬剤を選択するアプローチが推奨されています。
- 診断技術の進歩:超音波ドップラー検査は、血流評価を通じて精巣捻転症との鑑別診断に不可欠なツールとしての地位を確立しています。より複雑な症例では、MRIなどの高度な画像診断技術の有用性も検討されています17。また、原因菌を迅速かつ正確に同定するためのPCR法などの分子生物学的検査の応用も広がっています。
- 男性不妊との関連研究:精巣炎が精子形成に与える影響に関する分子レベルでの研究が進められており、炎症によって引き起こされる酸化ストレスなどが精子の質を低下させるメカニズムが明らかにされつつあります。これにより、将来的に不妊リスクを低減するための新たな治療法の開発が期待されています。
これらの最新動向は、個々の患者さんに対してより安全で効果的な医療を提供するために重要です。患者さん自身も、信頼できる情報源から最新の知識を得て、ご自身の治療について主治医と十分に話し合うことが大切です。
よくある質問 – Bắt buộc phải có phần này (FAQ)
Q1: 精巣炎は自然に治りますか?放置するとどうなりますか?
A1: 細菌が原因の精巣炎の場合、自然に治癒することは極めてまれで、適切な抗菌薬による治療が必須です。放置すると、炎症が悪化して精巣内に膿が溜まる「陰嚢内膿瘍」や、精巣が萎縮して小さくなる「精巣萎縮」、さらには感染が全身に広がる「敗血症」といった重篤な合併症を引き起こす可能性があります。また、男性不妊の原因ともなり得ます5。ウイルス性の場合でも、症状緩和や合併症のリスク評価のために医療機関の受診が推奨されます。どのような原因であれ、自己判断で放置せず、必ず医師の診察を受けてください。
Q2: 精巣炎の治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
Q3: 精巣炎はパートナーにうつりますか?性行為はいつから再開できますか?
A3: 精巣炎の原因がクラミジアや淋菌などの性感染症(STI)である場合、性行為によってパートナーに感染させる可能性があります。その場合は、ご自身とパートナーの両方が検査を受け、必要であれば同時に治療を行うことが不可欠です3。治療が完了し、医師から許可が出るまでは性行為は控えるべきです。原因がSTIでない場合(例:大腸菌、ムンプスウイルスなど)は、基本的に性行為で直接うつることはありませんが、炎症による痛みや不快感がある間は、陰嚢への負担を避けるためにも性行為を控えることが推奨されます。
Q4: 精巣炎になると、将来子供ができにくくなりますか(男性不妊症)?
Q5: 精巣炎と精巣上体炎はどう違うのですか?
A7: 精巣炎は精巣(睾丸)そのものの炎症を指します。一方、精巣上体炎は、精巣に隣接する帽子のような形をした臓器で、精子を成熟させ運ぶ管である「精巣上体(副睾丸)」の炎症です。実際には、精巣上体炎から炎症が精巣に波及することが多く、両方が同時に起こる「精巣精巣上体炎」として発症することが少なくありません1。症状は非常に似ており、治療法も共通する部分が多いですが、正確な診断は超音波検査などを含めて医師が行います。
結論
本記事では、精巣炎(睾丸炎)に関する症状、原因、診断、そして効果的な治療法や予防策について、国内外の最新の研究や専門家の見解を交えながら詳しく解説しました。精巣炎は、時に強い痛みや不快感を伴い、放置すると男性の生殖機能や生活の質に深刻な影響を及ぼす可能性がある疾患です。しかし、早期に適切な診断を受け、原因に応じた治療を開始すれば、多くの場合良好な経過をたどり、回復が期待できます。もし、ご自身やご家族に精巣炎を疑うような症状(陰嚢の痛み、腫れ、発熱など)が見られた場合は、決して自己判断で放置したり、市販薬だけで済ませようとしたりせず、できるだけ早く専門医(泌尿器科)を受診してください。特に、急激な強い痛みがある場合は、緊急性の高い精巣捻転症の可能性も否定できないため、速やかな対応が求められます。JAPANESEHEALTH.ORGは、皆様が健康に関する正しい知識を得て、安心して日々の生活を送れるよう、信頼性の高い情報提供に努めてまいります。この記事が、精巣炎に対する理解を深め、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。どうぞお大事になさってください。
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