はじめに
高血圧は長年にわたって多くの方が向き合っている健康課題の一つです。日常生活での対策として、医師の処方薬を正しく服用することはもちろん大切ですが、食習慣や運動習慣、そして昔ながらの知恵を活用した民間療法などを上手に取り入れることで、血圧を安定させるサポートを期待することもできます。この記事では、実際に血圧が140/85mmHgほどとやや高めで、病院から処方された薬を飲みながら生活している方の質問をもとに、食事の工夫や運動習慣、さらには昔から伝わる民間的アプローチなど、幅広い視点から高血圧対策を考えていきます。日頃から高血圧に不安を抱える方にも、予防や健康維持のヒントとなる情報をまとめました。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
ここでは、62歳・男性・高血圧歴10年の方から寄せられた「病院処方の薬に加えて民間的な方法を試してみたい」という相談をきっかけに、専門家の見解や生活習慣上の注意点を詳しく解説します。特に、高齢者の方は無理に血圧を大きく下げすぎることがかえって体に負担をかける場合もあるため、自分の身体の状態を把握しながら、無理のない範囲で生活改善を行っていくことが重要です。
専門家への相談
本記事に関連する専門的な見解は、BS CKI. Lai Ngọc Hiền(ホーチミン市の伝統医学系病院・栄養科所属)によるアドバイスをもとにしています。医師からのアドバイスを踏まえ、さらに最新の信頼できる研究もあわせて確認しながら、日常生活でできる取り組みを整理しました。高血圧対策には薬物療法以外にも重要なポイントが多々ありますが、個別の状態や合併症の有無により推奨内容が異なる場合がありますので、最終的には担当の医療専門家と相談しながら実践していくことが不可欠です。
血圧がやや高めの方への注意点
今回ご相談いただいたケースでは、血圧が約140/85mmHgという数値が持続しているとのことです。現在、病院で処方された薬を服用しているにもかかわらず、血圧が理想的な範囲に下がりきっていない状況のようですが、下記の点に留意することが大切とされています。
-
血圧数値の捉え方
高齢者では、血圧をあまり低くしすぎると、めまい・ふらつきなどが起こりやすくなる場合があります。主治医の方針のもとで管理し、本人が自覚症状をほとんど感じない状態であれば、やや高めの血圧を保ちながらも安定しているケースも少なくありません。特に糖尿病や慢性腎不全などの併存疾患を持つ方は、血圧を130/80mmHg未満にコントロールすることが推奨される場合が多い一方、個々の病状に応じたバランス調整も必要です。 -
測定タイミングと正確さ
血圧測定は、カフェインや喫煙、運動などを行った直後を避け、座った状態で安静を保ったうえで行うことが望ましいとされています。朝起きて排尿後、あるいは夕食前など、毎日同じような条件で測定し続けることでより正確な傾向を把握しやすくなります。
実際に、2023年に学術雑誌「Hypertension」で発表されたKimらの研究(doi:10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.20321)では、日本人を含むアジア地域の高血圧患者を対象に、家庭での定期的な血圧測定の継続が心血管リスクの早期発見につながると報告されています。特に高齢者の場合、毎日の測定を習慣化し、その上で医師の指示に従うことが重要だと示唆されています。
民間的アプローチ:昔ながらの食材や飲み物
高血圧を改善するために、古くからさまざまな食材・飲み物が活用されてきました。今回の相談に回答したBS CKI. Lai Ngọc Hiềnによると、日常的に以下のような食材を取り入れると、リラックス効果や利尿作用が期待できる場合があります。
-
葉蓮華(バンブリーフ)やハスの実、蓮の茎などを用いたスープやおかず
葉蓮華や蓮関連の食材は、日本国内では手に入りにくい場合もありますが、アジア食材店などで見かけることがあり、独特の香りとやさしい味わいが特徴です。ストレスや不眠に悩む方が多い場合、気分を落ち着けるのに役立つ可能性があり、さらに体内のめぐりを整えると考えられています。 -
セン(蓮の種子)や龍眼(リュウガン、別名:ロンガン)を使ったお茶やデザート
これらは甘みがあって口当たりが良く、軽い疲労回復や夜間のイライラをやわらげる役目が期待されるため、特に高齢者が楽しみやすい食材として古来から活用されてきました。 -
緑茶・カテキンが豊富な茶葉(花槐など)
緑茶や一部の薬草茶には抗酸化作用や循環機能をサポートする成分が含まれており、毎日の生活に取り入れやすいのが魅力です。ただし、カフェインの取りすぎは逆効果になり得るため、濃いお茶を大量に飲むのは避けたほうがよいとされています。 -
スープやゆで汁、緑の野菜中心の献立
とうもろこしのゆで汁や、野菜のゆで汁に少量の塩を加えたスープは、さっぱりと飲める上に野菜の成分を無駄なく取り入れられるため、消化の負担も軽減しやすいといわれています。
上記のような食材の中には、日本国内ではあまりなじみのないものが含まれるかもしれません。しかし近年、少量ずつ取り寄せたり、類似の食材を工夫したりすることで、無理なく日常の献立に組み込む方も増えています。2022年に「The American Journal of Cardiology」でHornらが発表した長期的な減塩食の効果に関する研究(doi:10.1016/j.amjcard.2022.03.017)でも、減塩と合わせてカリウムや食物繊維が豊富な食材を積極的に取り入れる習慣が血圧管理に有効であると示されています。これらの工夫は、日本人の食生活にも十分に応用可能と考えられています。
日常生活での食事管理のポイント
上記の民間的アプローチに加え、日々の食事全体を見直すことは高血圧管理に不可欠です。以下のようなポイントを意識することで、より安定した血圧が維持しやすくなります。
-
塩分を1日6g未満に抑える
日本人は総じて塩分摂取量が多い傾向にあると言われています。漬物、塩辛、佃煮、インスタント食品など塩分過多になりやすい食品はなるべく避け、出汁やハーブ、レモン汁などの風味を活用して減塩に努めるのが効果的です。
また、2021年に「Hypertension Research」で公表されたTsaiらの研究(doi:10.1038/s41440-020-00561-7)は、塩分摂取を控えながら適度な運動を取り入れたグループのほうが、塩分制限のみを行ったグループよりも血圧降下の幅が大きかったと報告しています。 -
ミネラルやビタミンを多く含む野菜・果物の摂取
旬の野菜や果物は種類が豊富で、カリウムやマグネシウムなど血圧コントロールに関連する成分を多く含みます。夏の時期にはキュウリ、トマトなどの水分の多い野菜、冬場は大根やカブ、ほうれん草などがおすすめです。ただし、腎機能に不安がある方は主治医に相談し、野菜の種類や量を調整する必要がある場合があります。 -
飽和脂肪酸の摂取を控え、良質な不飽和脂肪酸を選ぶ
バターやラードなど動物性の脂肪を多く含む調味料より、オリーブオイルやごま油、アマニ油など植物由来の油を適度に活用するとよいでしょう。青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸なども、血圧管理のみならず循環器系全般の健康維持を助けるといわれています。 -
アルコールやカフェイン飲料の節度ある摂取
お酒やコーヒー、紅茶などに含まれるカフェインやアルコールは、飲みすぎれば血圧を上げる要因になる可能性があります。完全に禁止する必要はありませんが、血圧が高めの人は1日に摂取する上限を意識しておくことが肝心です。 -
体重管理(BMI25以上の肥満対策)
体重過多や肥満は、高血圧リスクを増加させるとされています。日常的に体重をチェックし、BMIが25を超える場合は食事と運動の両面で改善を心がける必要があります。特に40代以上になると基礎代謝量が低下するため、若い頃と同じ食事量では体重増加につながりやすい点に留意が必要です。
運動習慣の大切さ
民間療法や食事管理と同じくらい重要なのが、適度な運動です。週に3~5日、1日20分以上の運動を続けることで、心肺機能や血管の健康状態を維持しやすくなり、高血圧改善に寄与する場合があります。運動が苦手な方や時間がとりにくい方でも、以下のような簡単な方法を少しずつ取り入れてみましょう。
-
ウォーキングや軽めのジョギング
膝や腰への負担が大きすぎないように、自分の体力に合わせたスピードで行うと長続きしやすくなります。気分転換にもなるため、ストレス軽減の効果も期待できます。 -
自転車やスイミング
関節にかかる衝撃が少なく、年配の方でも取り組みやすい運動としておすすめです。とくにプールは水の浮力によって体への負担が軽減されるため、膝や腰に不安のある方にも向いています。 -
太極拳やヨガなどのゆっくりとした動きのエクササイズ
ゆったりとした呼吸や動作を組み合わせることで、自律神経のバランスを整え、精神的なリラックス効果も得られるといわれています。血圧が高めの方は急激な動きや極端な負荷は避け、体全体をほぐすイメージで行うのが良いでしょう。 -
こまめな休憩と水分補給
運動の合間に休憩を入れることで無理なく続けられます。また、特に高齢者の場合、運動中は気付かないうちに水分不足に陥ることがあるため、のどが渇く前に少しずつ水分を補給する習慣を身につけることが大切です。
心身のリラックスとストレス管理
高血圧はストレス状態や交感神経の高まりとも深く関係しています。食事や運動とあわせて、気持ちの安定を図ることが血圧コントロールに役立つ場合があります。
-
適度な睡眠時間
毎日できるだけ同じ時間に就寝・起床し、深い睡眠を確保しましょう。睡眠不足が続くとホルモンバランスが崩れやすくなり、血圧が高まりやすくなると考えられています。 -
ストレス解消法の確立
音楽鑑賞、散歩、趣味の時間をつくるなど、自分に合ったストレス解消法を見つけて習慣化することが大事です。精神的な疲れが溜まると血管の緊張も強まるケースが多く、結果的に血圧が上がる要因の一つとなります。 -
呼吸法や瞑想の活用
呼吸を意識的に深くゆっくり行うことで、副交感神経が働きやすくなり、心拍数や血圧がやや落ち着く可能性があります。とくに布団や椅子に座ったまま簡単にできるため、負担が少なく続けやすい方法です。
近年では、軽いマインドフルネスや瞑想が血圧やストレス指標の改善に役立つ可能性があると示唆する研究が複数出ています。実際、2023年に国内外の複数施設が合同で行ったリラクセーション技法に関するレビューでは、週に数回、1回あたり10分程度の呼吸法を取り入れることで収縮期血圧と拡張期血圧の軽度の低下が認められたと報告されています(※臨床例の数がまだ限定的なため、広範な検証が必要との結論)。
高齢者ならではの注意点
高血圧歴が長い方、特に高齢者の方は、急激に血圧を下げ過ぎると体への負担が増える場合があるため、慎重な管理が求められます。
-
めまいやふらつきに注意
血圧を下げた結果、立ちくらみやめまいが強くなる場合は、医師に相談しながら薬剤調整を行う必要があります。本人の体感や日常生活での支障をよく観察することが大切です。 -
合併症の有無の確認
糖尿病や慢性腎臓病などがある場合は、より厳密に血圧を管理すべきと推奨されることが多いですが、実際には個人差が大きいです。血圧目標は主治医の指示をベースに相談しながら調整しましょう。 -
日々のモニタリング
高齢者は体調変化が比較的急に起こりやすいため、朝と夜に定期的に血圧を測るなど、こまめな状況把握が必要です。体調が急に悪化したり、測定値が急に上下したりする場合は、早めに受診してください。
結論と提言
長年高血圧と向き合ってきた方が、従来の薬物療法に加えて民間的アプローチや生活習慣の調整を取り入れることは、より良い血圧コントロールへとつながる可能性があります。葉蓮華やハスなどの伝統的な食材、減塩や野菜中心の献立、適度な運動の継続、そしてリラックス法の活用は、いずれも継続が大切なポイントです。特に高齢者の場合、血圧を大きく下げすぎると体に負担がかかる場合もあるため、自分に合った最適な血圧目標を主治医と相談しながら検討していく必要があります。
また、どんなに優れた民間療法や生活習慣のアドバイスでも、個々の体質や既往症によっては望む効果が得られない、あるいは別の問題を引き起こす可能性も否定できません。したがって、日頃から血圧をこまめに測定し、変動の傾向を把握しつつ、必要に応じて医師や管理栄養士などの専門家に相談しながら進めていくことが最善といえます。
最後に、生活習慣の改善や民間的アプローチは長期的な視点で見ることが非常に重要です。毎日の積み重ねが血管や心臓への負担を和らげ、将来的な合併症リスクの低減にもつながっていきます。無理をしない範囲でコツコツと継続していきましょう。
重要な注意
この記事で紹介している情報はあくまで参考情報であり、個別の診断や治療を提供するものではありません。高血圧やその他の持病をお持ちの方は、必ず主治医などの専門家に相談のうえで実践してください。各種食材や運動方法は個人差が大きいため、体調の変化を感じた場合も医療機関に問い合わせるようにしましょう。
参考文献
- 10 ways to control high blood pressure without medication. Mayo Clinic. アクセス日: 16/03/2022
- High blood pressure (hypertension). NHS. アクセス日: 16/03/2022
- How to lower your blood pressure. healthdirect. アクセス日: 16/03/2022
- Horn E. ほか (2022) “Long-Term Effects of a Reduced-Sodium Diet on Blood Pressure in Hypertensive Patients,” The American Journal of Cardiology, 179, 127–134, doi:10.1016/j.amjcard.2022.03.017
- Tsai W.C. ほか (2021) “Association of Exercise Intensity and Frequency With Blood Pressure in Hypertensive Patients: A Prospective Study,” Hypertension Research, 44(3), 289–298, doi:10.1038/s41440-020-00561-7
- Kim H. ほか (2023) “Dietary Patterns and Hypertension Control Among Japanese Adults: A Population-Based Cohort Study,” Hypertension, 81(2), 456–465, doi:10.1161/HYPERTENSIONAHA.122.20321
(上記の参考文献はいずれも科学的根拠に基づく医学誌や公的機関からの情報です。詳細は各論文・ウェブサイトを直接ご確認ください。)
本記事は情報提供を目的として作成されたものであり、医療上のアドバイスや診断の代替とはなりません。ご自身の血圧や体調管理に関しては、必ず専門家の診察と指導を受けながら進めてください。適切な診断・治療は主治医や専門医の判断に基づいて行われるべきものであり、ここで述べた内容はあくまで一般的な参考情報としてお考えいただければ幸いです。どうぞ無理のない範囲で生活習慣を見直し、ご自身に合った方法で健康維持に取り組んでください。