はじめに
夕方になると繰り返し頭痛が起こり、日常生活に支障をきたす方は少なくありません。多くの場合、このような頭痛は深刻な疾患ではなく、時間の経過や生活習慣の改善で緩和されるケースも多いです。しかし、まれに潜在的な病気のサインである可能性も否定できません。そこで本稿では、夕方に生じる頭痛の特徴や原因、考えられる病気、診断・治療法などを幅広くご紹介し、さらに日常生活で予防に役立つ対策も詳しく解説いたします。読者の皆様のご参考となれば幸いです。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事の内容は医療専門家の見解を踏まえた参考情報であり、最終的な診断や治療方針の決定は医師の判断が必要となります。特に頭痛が長期化していたり、突然激しい痛みが生じたり、神経学的な症状(視野の変化、しびれ、言語障害など)を伴う場合は、放置せず早めに受診してください。本記事では、医師による助言として内科・総合内科を専門とする医師である「医師:Nguyen Thuong Hanh」の意見をもとに、一部情報を補足しています。なお、記事中で扱う生活習慣の改善や市販薬の使用は、あくまで一般的な方針例であり、個々人の健康状態によっては異なる対応が必要となる場合があります。
夕方の頭痛とは
夕方に起こる頭痛は、頭の一部分または全体に痛みを感じる一般的な頭痛と本質的には同じとされています。ただし、痛みが夕方に集中して生じるという点が特徴的です。多くの場合、痛みは夜になると徐々に治まることが多いと報告されていますが、まれに強い痛みが長く続くケースもあります。
主な症状と注意すべきサイン
以下のような症状が夕方の頭痛と同時に現れたときは、比較的軽度な頭痛である可能性もありますが、なかには重大な問題が隠れていることがあります。特に次に挙げる症状がみられる場合は、早めに病院を受診しましょう。
- 突然の激しい頭痛、従来の痛みとは明らかに異なる鋭さ
- 頭痛の頻度や強度が増していく
- 首のこわばり(後頭部を後ろへ傾けにくい、うなじが硬いなど)
- ぼんやりして意識がはっきりしない
- ふらつきやめまい、転倒しやすくなる
- 視界がかすむ、二重に見える(複視)
- けいれん(ひきつけ)
- 声のかすれ、ろれつが回りにくい、言語障害
- 腕や脚の脱力や麻痺
- 明確な理由がなく突然吐き気や嘔吐が続く
- 意識を失う
- 事故や転倒などの外傷後に頭痛が生じている
さらに慢性的に頭痛が続く方は、以下のようなケースでは医師の診察が勧められています。
- 発熱や首のこわばり、混乱、けいれん、複視、言語障害などを伴う
- 生活習慣の改善や市販薬がまったく効かない
- 頭痛の回数や痛みの強さが時間を追うごとに増している
- 頭痛の部位がこれまでと違う場所に移動したり、痛み方が変化している
夕方に頭痛が起こる主な原因
夕方の頭痛は原因が一つとは限らず、複数の要因が重なって起こることもよくあります。代表的なものとして、以下のような理由が挙げられます。
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水分不足(脱水)
1日を通して十分な水分補給がされていないと、体内の血流量や電解質のバランスが乱れ、頭痛を引き起こすことがあります。加えて、口の渇き、尿の色が濃くなる、疲労感、めまい、苛立ちなどが同時に生じる場合は脱水の疑いが高まるといわれています。 -
緊張型頭痛
男性より女性に多いとされる頭痛のタイプで、夕方に特に多く報告されています。首や肩、顎まわりの筋肉がこわばることで頭部に痛みが広がり、頭を締めつけられるような鈍い痛みが特徴です。仕事や学業のストレスが夕方にピークに達することで痛みが発現しやすいケースもあると考えられています。 -
群発頭痛
これは比較的まれですが、非常に激しい痛みを一側性(片方)に感じやすい頭痛です。目の周囲に刺すような痛みが出て、一定期間(数週間から数か月)のあいだ連日夕方ごろに起こる例もあります。群発期が終わると痛みが消失するのが一般的ですが、いつ再発するかは明確に予測しづらいとされています。 -
自発性低髄液圧症候群(Spontaneous Intracranial Hypotension, SIH)
非常にまれな症状で、脳脊髄液の圧力が低下することで頭痛が生じます。40〜50代の女性に多いとされ、頭痛とともに吐き気や嘔吐、耳鳴り、めまい、聴覚の変化、視界のぼやけ、しびれなどが起こることがあります。一般的には患者数が少ないため、医療機関での専門的な診断が必要です。 -
脳血流の低下
頭部への血液循環がうまくいかないと、頭痛に加え手足のしびれや脱力感を伴うことがあります。脳への酸素や栄養の供給が十分でなくなる夕方の時間帯に、痛みが顕在化する場合もあります。 -
脳内出血や脳腫瘍など重篤な病気の前兆
極めてまれなケースですが、脳内出血、脳動脈瘤、脳腫瘍といった疾患でも夕方に痛みが出現することがあります。激しい痛みや神経症状、吐き気などが併発する場合は迅速な検査が求められます。
さらに近年の研究(Ailani J, Burch RC, Robbins MS, 2021年、Headache誌、doi:10.1111/head.14153)では、新しい治療薬や予防法が増加してきたことによって、緊張型頭痛や片頭痛を含む多くの頭痛が比較的早期に緩和できる可能性が報告されています。一方で、こうした治療を行う前に、頭痛の根本原因を突き止めるための適切な診断が不可欠と強調されています。
診断と治療
診断方法
医療機関では、頭痛の性質(痛む場所、痛みの種類、継続時間、どのようなときに強まるか、付随症状の有無など)や生活習慣、ストレスの度合いを詳しく聞き取ったうえで、触診や神経学的検査を行います。それでも原因が不明な場合は、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像法)などの画像検査によって、脳や頭蓋内に異常がないかを確認します。
治療のアプローチ
夕方の頭痛が一時的・軽度の場合は、市販の鎮痛薬や生活習慣の改善である程度コントロールが可能です。しかし、明らかに痛みが強い場合や症状が長期化している場合には、医療機関での専門的な治療が必要になることもあります。代表的な方法は以下の通りです。
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市販薬の使用
アセチルサリチル酸(アスピリン)やイブプロフェン、ナプロキセンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、あるいはカフェインを含む鎮痛成分を配合した市販薬などを適切に使用することで、ある程度の痛みを緩和できます。用量や使用上の注意を守り、効果が低いと感じる場合は医師に相談しましょう。 -
医師の処方薬
頭痛の背景にうつ症状や不安障害がある場合、抗うつ薬が処方されることがあります。また、高血圧やてんかんの治療薬の中には、慢性的な頭痛を予防する効果を持つ成分もあります。こうした医師の処方薬は、自己判断で中止せず、医師の指示どおりに服用を続けることが大切です。 -
冷却療法(アイシング)
頭や首筋など、痛みのある部位を氷嚢や保冷パックで15分程度冷やす方法です。首や肩の筋肉の緊張をやわらげる効果も期待できます。直接肌に氷を当てると凍傷の危険があるため、タオルなどを敷いて使用するようにしましょう。 -
温熱療法
首や肩の筋肉が凝り固まっている場合には、温めることが効果的なこともあります。温湿布や湯たんぽを活用して血流を促進し、緊張を和らげます。ただし、温めすぎると逆に熱感から不快感を催すことがあるため注意が必要です。 -
マッサージ
頭皮や首筋を軽くマッサージするのは、血行を促進し、ストレスや筋肉の緊張をほぐすのに有効です。自宅で簡単に取り入れることができますが、強い力で行うと筋肉を傷める場合があるため、心地よい程度の力加減を心がけましょう。 -
鍼(はり)治療
慢性的な緊張型頭痛や、夕方になると疲労やコリがたまって頭痛を繰り返す場合には、鍼治療が有効とされることがあります。鍼治療の効果は一般的に数か月から半年程度続くという報告もありますが、必ずしも全員に当てはまるわけではないため、専門の医療機関や信頼できる鍼灸院で相談してください。
なお、頭痛の性質や合併症によっては、近年さらに多彩な治療法が開発・導入されています。たとえば、新たな予防薬や生物学的製剤、局所注射などを併用するケースもあり、これらは特に片頭痛や群発頭痛の頻度を下げるために使用されています(Chiang CC, Schwedt TJ, Wang SJ, Dodick DW, 2023年、Cephalalgia誌)。日本人を含むアジア地域の被験者も参加した大規模臨床試験のデータも発表されており、国内でも適応拡大が期待されています。
予防法
夕方の頭痛を防ぐには
夕方の頭痛は、日々の生活習慣やストレスコントロールによってかなり防ぎやすいと考えられています。以下のポイントを意識し、痛みが出始める前に予防策を講じることが大切です。
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頭痛の引き金を知る
自分にとって何が頭痛を誘発しやすいかを把握することは重要です。仕事中の姿勢やパソコン画面を見る角度、騒音や照明の強さ、気温や湿度など、原因となり得る要因を避けたり調整したりしましょう。 -
姿勢を意識する
デスクワークが多い方は、とくに猫背や前かがみの姿勢になりやすいです。適度に椅子の高さやディスプレイの位置を調整し、長時間同じ姿勢を続けないようにすることが筋肉のこわばりを防ぎます。 -
適度な休憩とストレッチ
勉強や仕事の合間に、1時間に数分程度は立ち上がって首や肩を伸ばしたり、軽い体操を行いましょう。長時間の集中が続くと筋緊張や血行不良につながり、夕方に頭痛が増す原因になります。 -
規則正しい食事・水分補給
空腹状態が長く続くと、血糖値の乱降下や脱水が起こりやすくなります。朝・昼の食事をきちんと摂り、水分をこまめに補給することで頭痛のリスクを下げることができます。特にコーヒーやお茶などカフェイン飲料を夕方に飲みすぎると、夜の睡眠に悪影響を及ぼし翌日に頭痛を持ち越す可能性もあるので注意が必要です。 -
アルコールの節制
飲酒は一時的にリラックスをもたらす一方で、血管拡張や睡眠の質の低下などにより頭痛の発症要因となりやすい面もあります。できるだけ飲む量や頻度を抑え、こまめな水分補給を心がけましょう。 -
十分な睡眠とストレスケア
疲労や睡眠不足は、夕方の頭痛だけでなく、さまざまな体調不良を引き起こす引き金となります。就寝前のスマホやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境を整えて早めに就寝するように努めてください。必要に応じて瞑想やヨガなど、心身のバランスを整える方法を試してみるのも有効です。 -
目や視力の問題を放置しない
夕方に頭痛が悪化する背景として、パソコンやスマホを長時間使うことで生じる眼精疲労や視力の低下が潜んでいるケースもあります。視力が落ちている、自分に合ったメガネを使っていない、といった場合は早めに眼科を受診し、環境を見直しましょう。
実践的なポイントと最近の研究動向
上記の予防策や治療法は、あくまで一般的なアドバイスですが、実際に頭痛に悩む方が取り組む場合は以下の点も参考になります。
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頭痛日記をつける
どの時間帯に、どの程度の強さで、どんな状況のときに頭痛が起こったのか記録しておくと、医師の診断や治療方針の決定に役立ちます。 -
漢方やサプリメントの活用
近年、日本国内での研究でも、漢方薬やハーブ系サプリメントが頭痛緩和に寄与する可能性を示唆する報告があります。ただし、成分が体質に合わない場合もあるため、医師や薬剤師に相談のうえ利用することが望ましいです。 -
ギンコウ(イチョウ葉)エキスに関する議論
イチョウ葉エキスが脳血流を改善し、頭痛を軽減する可能性があると指摘されることがあります(たとえば、ヨーロッパPMCに掲載の研究、doi: 22579361など)。ただし効果には個人差が大きく、副作用の報告や薬との相互作用も懸念されるため、医療者との相談が必要です。 -
頭痛治療のガイドライン更新
近年(2021〜2023年)にかけて、片頭痛をはじめとする各種頭痛のガイドラインが世界中で見直されつつあります。日本神経学会などでも診療指針の改訂や新薬の使用基準が更新される動きがあり、患者さん自身が最新情報をキャッチして担当医と相談することで、より良い治療法を選択できる可能性があります。
注意すべき点と医師への相談
夕方の頭痛は日常のストレスや姿勢、生活習慣の乱れによることが多い一方、まれに重大な病気の初期症状であるケースも存在します。以下のポイントに該当する方は、早めに医療機関で専門家の診察を受けましょう。
- 短期間で強度や頻度が大きく変化し、通常の鎮痛薬では痛みが軽減しない
- 首や肩のコリだけでなく、しびれ、言葉のもつれ、吐き気・嘔吐、視野狭窄など神経学的異常を感じる
- 視力や聴力などの感覚器系に異変がある
- 以前に頭部への外傷があり、その後から頭痛が続く
- 血圧の著しい上下動を自覚している、あるいはほかの持病(糖尿病や心疾患など)がある
実際、米国のクリーブランド・クリニックが提唱する基準(Headaches. Cleveland Clinic, 2021年)でも、突然の激しい頭痛や神経症状を伴う頭痛は、最優先で医師による検査が必要とされています。日本でも同様に、早期発見と早期治療が合併症を防ぐうえで極めて重要です。
医師の推奨事項(参考)
ここで示す推奨事項は、あくまでも多くの専門医が提唱する一般的な目安であり、個別の症状や病歴によっては異なる指導を受けることがあります。
- 1日を通してこまめに水分を摂取し、特に運動や長時間の集中作業時には脱水を避ける
- 睡眠時間を十分にとり、就寝前はスマホやタブレットなどブルーライトを発する機器の使用を極力控える
- 長時間のデスクワークでは1時間に一度は軽く立ち上がり、首や肩を回すなどストレッチを行う
- 適度な運動やストレス解消法を見つけ、精神的な負荷を蓄積させない
- 定期的に健康診断を受け、血圧やコレステロール値などを把握する
- 市販の鎮痛薬を頻用しすぎない。使用頻度が高いと感じる場合は医師と相談する
結論と提言
夕方に起こる頭痛は、単なる疲労や水分不足、姿勢の乱れによって生じることが大半です。しかし、痛みが繰り返し長引いたり、激しい頭痛に発展したり、神経症状を伴うといったサインがあれば、深刻な病気の可能性もゼロではありません。まずは生活習慣を見直し、水分補給・姿勢管理・休養・ストレス軽減などの基本的なセルフケアを実践しましょう。それでも症状が改善しない場合や、痛みが強く不安を感じるときには、専門医の診察を早めに受けることが大切です。
また、新しい頭痛治療の研究が近年急速に進んでおり、特に片頭痛や緊張型頭痛の予防・緩和に関してはさまざまな薬剤が開発・導入されています。医師と相談のうえ、自分の症状に合わせた最適な治療法を見つけることが、日常生活の質を維持する鍵といえるでしょう。
重要な注意点として、本記事はあくまで一般的な情報提供を目的として作成したものであり、医療の専門的見解や診断に置き換わるものではありません。頭痛に限らず、何らかの体調不良が続く場合は、必ず医師や専門家に相談してください。
参考文献
-
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https://books.google.com/books?id=7Lj2CmMpdn4C&pg=PP209&lpg=PP209&dq=ginkgo+Terpene+prevent+clumping&source=bl&ots=YJpDfu19eN&sig=ACfU3U36e6btTFPr3_O63MerVjWquwr73g&hl=vi&sa=X&ved=2ahUKEwjCobOHk6nxAhXCnOAKHXQMBDcQ6AEwE3oECA8QAw
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- Chiang CC, Schwedt TJ, Wang SJ, Dodick DW. “Treatment of medication-overuse headache: a systematic review.” Cephalalgia. 2023.(誌面情報不定)doi:10.1177/03331024221137814
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