双極性障害とは何か?診断に役立つ2つの代表的テスト
精神・心理疾患

双極性障害とは何か?診断に役立つ2つの代表的テスト

はじめに

双極性障害は、感情や気分が極端に変化し、日常生活や人間関係に大きな影響を及ぼしうる心の状態として知られています。気分が高揚し活発になる躁状態軽躁状態と、落ち込みや意欲低下が顕著なうつ状態とが、ある期間ごとに繰り返されることで特徴づけられ、本人や周囲の人々にとって大きな負担となることがあります。特に、気分の振れ幅が激しいことで日常生活に深刻な支障が出たり、自殺リスクを高めたりする可能性もあり、社会的にも注目されています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

とはいえ、「双極性障害の症状が具体的にどのようなものか」「診断を検討すべきタイミングはいつか」といった情報は、まだ十分に広まっていないと感じられます。「もしかして自分は双極性障害なのではないか」と疑いつつも、どのように専門家の助けを求めればよいか分からないために、不安を抱えたまま日々を過ごしている方も少なくありません。

本記事では、双極性障害の基礎知識から始め、診断の補助的な役割を果たす可能性のあるテストについて詳しく解説します。特に、自己評価ツールとしてしばしば用いられるGoldbergテストおよびTABSテストという2つの代表的な手法に注目し、評価方法や結果の見方、テスト後に実際にどのような行動を取るべきかを丁寧に説明します。この記事を通じて、読者の方が双極性障害に対する理解を深め、より冷静かつ正確な判断材料を得られるようになることを目指しています。

専門家への相談

本記事では双極性障害や関連テスト手法の概要を紹介していますが、もしご自身や身近な人に双極性障害の可能性を感じる場合は、早い段階で専門家の意見を求めることが重要です。長年にわたり精神疾患について研究・支援を行っている組織や、臨床経験豊富な専門家が提供する情報や指針は、診断や治療の方向性を考える上で大きな助けとなります。

具体的には、Bipolar LifePsychiatry Associates, P.C.など、双極性障害を含む精神疾患の評価や治療に取り組む専門家や医療機関の情報を参照することが有用です。本記事で示した「参考文献」のリンク先にも、権威ある医療専門機関や専門家の監修による検査スケールや研究資料がまとめられています。こうした信頼できる情報源を活用することで、より確かな理解に基づく判断が可能となるでしょう。

専門家への相談は、単に「自分は双極性障害なのか」を確かめるだけでなく、適切な治療方針や生活改善策を検討する第一歩でもあります。信頼性の高い情報を提供している医療機関や臨床心理士、精神科医などと連携することで、当事者のみならず家族や周囲の人々も安心してサポートを提供できる環境を整えることができます。

双極性障害とは?

双極性障害は、感情が振り子のように大きく揺れ動く状態が長期的に続く精神状態で、医療分野ではうつ病とは異なる独自の診断基準を持っています。特に、周期的に現れる躁(そう)状態軽躁状態と、深い落ち込みが続くうつ状態が交互に出現することで、日常生活に大きな支障を来すことがあります。

  • 躁状態・軽躁状態
    活動性や思考スピードが極端に高まり、睡眠時間が減っても疲労を感じにくくなることがあります。例えば、過度の買い物や対人トラブルの誘発、暴走的な行動など、社会生活を乱す行動に発展しやすいのが特徴です。これらの症状は数日から数週間続くことがあり、本人が「何でもできる」といった過剰な自信や高揚感を抱きやすい点が挙げられます。
  • うつ状態
    活動意欲の低下、気分の落ち込み、自己評価の著しい低下、集中力の欠如、食欲不振もしくは過食、不眠または過眠などが代表的な症状です。これらが長期的に続くと、日常の活動能力が著しく下がり、さらに希死念慮が生じることもあります。周囲の理解と適切な支援がなければ、就学・就労・対人関係などあらゆる場面において深刻な影響が出る可能性があります。

これらの状態は一時的な気分の浮き沈みとは異なり、周期的でありながら長期にわたって繰り返される点が特徴的です。双極性障害の診断には、医師や臨床心理士による包括的な評価が必要とされます。その際、各種テストはあくまで補助的な位置づけですが、初期スクリーニングとして症状を客観的に把握する上で有効な一手となります。

双極性障害テストの目的

双極性障害の評価や診断をサポートするテストには、以下のようにいくつかの明確な目的があります。テストを受けることで症状が数値化され、自分の状態を客観的に理解する手助けにもなるでしょう。

識別と診断の補助

双極性障害に特有の症状(躁状態・うつ状態)が現在どのくらい現れているのかを確認し、それが正式な診断に向かう材料となり得ることが大きな目的です。「長らく続いている落ち込み」は単極性うつではなく、実は双極性障害特有の気分変動に該当する可能性があります。テストを受けることで、そのような「可能性の存在」を洗い出す第一歩となるのです。

病状の評価と管理

テストの結果によって、自分が示している症状の深刻度や、日常生活への影響度をある程度数値化・可視化できます。これにより、

  • 現在の治療効果を測る
  • 必要に応じて治療計画を見直す
    などの客観的な判断材料を得ることができます。患者本人が自分の状態を把握しやすくなるため、病気のコントロールや治療方針への主体的な取り組みが進むことが期待されます。

双極性障害テストはいつ行うべきか?

精神科専門医の診断が最終的な確定手段ですが、自分や身近な人が「もしかすると……」と感じる状況はいくつかあります。その中で、以下のようなタイミングでは双極性障害の可能性を探るためにテストを受ける価値があります。

躁状態または軽躁状態の症状がある場合

日常の範囲を超えて思考が非常に活発になり、短期間で大量のアイデアを出し続けたり、過度な散財をしたり、会話が止まらないほど口数が増えたりする状態が少なくとも4日以上続く場合には注意が必要です。こうした「普段とは明らかに違う高揚感や活力」がコントロールしづらいほど高まっていると感じたら、テストを受けてみることで客観的な評価のきっかけを得られます。

うつ症状がある場合

長期間にわたって気分が沈み、意欲が減退し、趣味や娯楽すら楽しいと感じなくなった時期が数週間単位で続く場合も、うつ状態の存在を疑う重要なサインです。もしそれが双極性障害特有のサイクル(うつと躁の繰り返し)の一部であるなら、単極性のうつ病とは治療アプローチが異なる可能性があるため、テストによって適切な方向性を検討することが重要になります。

両方の症状が交互に現れる場合

躁(または軽躁)の時期と、うつの時期が交互に繰り返され、生活全体が不安定になるケースでは、双極性障害のサイクルが存在する可能性が高まります。活力が極端に高い時期と、深く落ち込む時期が周期的に訪れ、仕事や家事、人間関係などに支障が出るようであれば、テストを活用することで次に取るべき行動が見えやすくなります。

テスト1 – Goldberg双極性障害テスト

Goldberg Bipolar Spectrum Screening Quizは、心理学者であるIvan K. Goldbergによって開発された代表的な自己評価用ツールの一つです。対象は18歳以上の成人で、過去に一度でもうつ状態を経験したことがある人を想定しています。全部で12の質問から構成され、回答者が自分の症状にどの程度当てはまるかをポイントで示す形式になっています。

評価の方法

ポイントは以下のように付与されます。

  • 不定:0ポイント
  • 少し:1ポイント
  • 時々:2ポイント
  • 適度に:3ポイント
  • かなり:4ポイント
  • 非常に多く:5ポイント

回答者自身が感じる症状の頻度や強度を率直に点数化することで、数値として自分の状態を把握できる点が特徴です。回答を曖昧にすると正確性が下がるため、できるだけ「自分がどの程度その症状を感じているか」を真剣に振り返ることが求められます。

クイズの内容

質問例としては「突然、非常に多く話し始めることがあるか?」や「普段より活動的と感じる時期があるか?」など、日常生活で観察しやすい行動や気分の変化を問うものが含まれます。これらの質問は「はい/いいえ」ではなく、上記のような強度の段階を設定することで、自己評価をより細かく行えるようになっています。

テスト結果の評価

回答を点数化し、合計点数に応じて以下のような目安が示されることが多いです。

  • 0〜15点:単極性うつの可能性
    抱えている落ち込みがうつ病に近い症状として現れている可能性が高い範囲。
  • 16〜24点:主なうつ障害または双極性障害の可能性
    うつ状態に加え、双極性障害特有の気分変動が部分的に示唆される段階。
  • 25点以上:双極性障害の可能性が高い
    気分サイクルが明確に表れている可能性が高いため、早急な専門家への相談が望まれる状況。

テスト2 – TABSテスト (三軸双極性スペクトルスクリーニングクイズ)

TABSテストは、尼崎精神保健研究所のGreg Mulhauser医師によって開発されたもので、19の質問から構成されるツールです。対象は18歳以上の成人を想定しており、以下の3つの観点(軸)を総合的に評価する特徴を持ちます。

  • 躁状態の症状
    テンションの高まり、突発的な行動が増える、口数の増加、睡眠欲求の低下など。
  • うつ状態の症状
    気分の落ち込み、気力の低下、楽しみを感じにくくなるなど。
  • 両状態の混合症状
    躁とうつが混在するような形で現れ、感情コントロールが特に困難となる時期を評価する。

評価基準

TABSテストでは各質問に対して以下の点数をつけます。

  • ほとんどない:0点
  • 時折少し:1点
  • 中程度:2点
  • 頻繁:3点

自分の状態を振り返りながら、「症状がどの程度の頻度で表れているか」を客観的に数値化していきます。これによって、うつ状態・躁状態・混合状態のいずれが強く出ているのかを総合的に判断することができます。

テスト結果の評価

TABSテストの場合、17〜19番の質問をスコアから除外して合計点を計算し、総合点が高いほど双極性障害の可能性が高いと示唆されます。頻繁に強い症状が出現している場合は、より強い疑いを抱く必要があるというわけです。

ただし、高得点だからといって必ず双極性障害に該当するわけではありませんし、逆に点数が低いからといって安心できるわけでもありません。双極性障害の診断は、専門家による面談やカウンセリング、さらに必要に応じた血液検査や画像検査など、多角的なアプローチが重要になります。

注意点

TABSテストは自己判断を補助するための道具として大いに役立ちますが、単独で正式な診断を下すものではありません。そのため、もしテスト結果が高得点を示した場合は特に、専門の医療機関への受診やカウンセリングを検討し、追加の検査や診察によって総合的な評価を受けることが欠かせません。

テストの結果後に何をすべきか?

テスト結果はあくまで「目安」であり、結果が「双極性障害の可能性が高い」と出ても、必ずしも双極性障害であると確定するわけではありません。しかし、可能性を否定しきれない場合には、専門家に相談することで早期対応が可能となり、症状の進行を抑えたり生活の質を向上させたりするチャンスが高まります。

病状についての理解を深める

まずは、自分の生活リズムや気分の変動パターンをしっかり把握することが大切です。たとえば、

  • 「いつ頃から落ち込みが強くなったか」
  • 「活力が極端に高まる時期に何をしていたか」
  • 「どのようなストレス要因があったか」
    などを記録してみると、客観的に自己観察しやすくなります。さらに、双極性障害の一般的な治療法や、その病態生理(原因やメカニズム)についても理解を深めることで、専門家とのやり取りがスムーズになり、自分自身のケアに主体的に取り組めるようになります。

支援とサポートを求める

家族や友人など、身近な人との情報共有は重要なステップです。とりわけ双極性障害は、躁状態のときには衝動的な行動が増え、他者とのトラブルにつながりやすい場合があり、うつ状態のときには悲観的になりやすいという特徴があります。こうしたタイミングを周囲に理解してもらうことで、必要なサポートを得やすくなります。

また、公的なサポートを利用することも視野に入れると良いでしょう。自治体の保健所や精神保健福祉センターなどでは、カウンセリングや情報提供、専門医療機関の紹介などが行われている場合があります。相談窓口を利用することで、早期発見や早期治療に結びつきやすくなるはずです。

専門家の相談を受ける

テスト結果をきっかけに、「双極性障害の可能性がある」と感じた場合は、精神科や心療内科などの専門家に相談することが不可欠です。専門家は以下のような観点で総合的な評価を行います。

  • これまでの症状の推移(うつ状態や躁状態の回数、期間、重症度)
  • 過去の治療履歴(薬物療法やカウンセリング経験など)
  • 家族歴(親や兄弟に同様の症状が見られることもある)
  • ライフイベント(転職、引っ越し、結婚、出産など大きなストレス要因の有無)
  • 身体面の検査(必要に応じて血液検査や甲状腺機能検査など)

特に近年は、双極性障害の診断や治療においてエビデンスがアップデートされており、新たな治療薬や心理療法の有効性が検証されています。たとえば最近の研究(Kupka RWら, 2022, Bipolar Disorders, 24(4), 295–311, doi:10.1111/bdi.13093)では、双極性障害の治療ガイドラインに基づいて薬物療法や心理療法の効果を総合的に評価し、より柔軟なアプローチが提唱されています。専門家はこうした最新の知見を踏まえ、個々人に合った最適な治療計画を立案します。

治療計画に従う

双極性障害では、気分安定薬(例えばリチウム製剤や一部の抗てんかん薬など)や抗うつ薬、または抗精神病薬を組み合わせた薬物療法が行われることがあります。さらに、認知行動療法対人関係療法などの心理療法が治療効果を補強する場合も少なくありません。医師の指示に従い、定期的に服薬状況や症状の変化を報告することで、状態に合わせて治療を微調整していくプロセスが重要です。

薬物の副作用についても正確に理解しておくことが大切です。眠気や体重増加など、一般的によく見られる副作用だけでなく、まれな重篤な副作用についても専門家としっかり情報共有することで、安心して治療を継続できるようになります。

ライフスタイルの改善

生活習慣の整備もまた、双極性障害の症状コントロールや再発予防に役立ちます。たとえば、

  • 規則正しい睡眠リズムの維持
  • 栄養バランスを考慮した食事
  • 適度な運動(ウォーキングやヨガなど)
  • ストレスを溜め込みにくい環境づくり(仕事量の調整や休息時間の確保)

など、一見地味な取り組みが長期的には大きな効果をもたらすことがあります。日々の小さな心がけを積み重ねることで、気分変動が穏やかになる可能性があり、症状の悪化を未然に防げるかもしれません。

結論と提言

双極性障害は、うつ状態と躁状態が交互に現れるため、日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼす可能性のある病態です。しかし、テストや専門家による早期評価を通じて、適切な治療方針を見いだすことは可能です。GoldbergテストTABSテストといった自己評価ツールは、あくまでスクリーニング的な位置づけですが、発症リスクを早めに捉える上で有用な指標となります。

一方で、テスト結果だけで一喜一憂せず、必ず専門的な医療機関へ相談し、より正確な診断と治療を受けることが望まれます。薬物療法や心理療法、生活習慣の改善など、症状やライフスタイルに合わせた包括的なサポートを受けることで、長期的に症状をコントロールし、生活の質を向上させる道が開けるでしょう。

また、当事者だけでなく、家族や周囲の理解と協力が重要です。双極性障害においては、ときに衝動的な行動やコミュニケーションの断絶が起こりがちですが、情報や知識を共有し、適切に対応することで深刻なトラブルを防ぐことができます。最近の研究やガイドライン(Kupka RWら, 2022)でも、家族を含めた多職種連携やサポート体制の充実が有用であると繰り返し言及されており、日本国内でもこうした包括的な対応が徐々に推奨されています。

最終的には、専門家の指導の下、治療と生活習慣の両面からサポートを受け続けることが双極性障害との向き合い方の鍵となります。本人の自己理解、家族や周囲の支援、そして医師や臨床心理士などの専門家の知見を総合的に取り入れることで、症状が安定しやすくなり、自分らしい生活を取り戻す道が切り開かれていくはずです。

重要な注意:
ここで紹介している情報は、あくまでも一般的な知識と参考用のものであり、最終的な診断や治療方針の決定には必ず医師などの専門家の評価が必要です。本記事は医療行為や治療を推奨するものではなく、症状の疑いがある場合は速やかに専門の医療機関にご相談ください。

参考文献

本記事で取り上げた情報は、上記の資料や最新のガイドラインにもとづいています。ただし、いずれのテストも自己判断の目安として位置づけられているため、専門家の診断を受けることが大切です。ご自身やご家族の健康に関する不安や疑問がある場合には、遠慮なく専門家へご相談ください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療を行うものではありません。医療上の疑問や懸念がある場合は、必ず専門の医療機関にご相談ください。

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