免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
口内の粘膜に生じる痛みやしみる感覚をともなう潰瘍は、日常生活の中で多くの人が一度は経験するものです。いわゆる「口内炎」や「アフタ性潰瘍」が代表的で、日本語では「口内炎」「口腔潰瘍」と呼ばれますが、本記事では便宜上「口内の潰瘍・ただれ」「口内炎」とまとめて言及します。食事をしたり話したりするときに痛みを感じるなど、不快感が大きく、生活の質を下げる原因になりがちです。とくに長引く場合は、栄養不足や体調面など他の原因が隠れていることもあります。本稿では、口内炎の主な症状や原因、考えられる治療方法、さらに日頃のセルフケアや予防のポイントについて詳しく解説します。日常的なトラブルとして見過ごされがちですが、正しく理解し、適切な対応を行うことが大切です。
専門家への相談
本記事の内容を執筆するにあたっては、口内や歯科領域に関する医学的知見を参照しました。特に口腔粘膜疾患の診療経験が豊富とされる歯科医療の最新資料や、公的機関がまとめたガイドラインなどをもとに情報を整理しています。また、医療従事者の実地経験が示すところによれば、原因不明に見える口内炎も、全身状態や栄養状態と密接に関わりがあるとされています。なお、本記事の執筆にあたっては、医師としての知見をもつBác sĩ Lâm Trần Thảo Vy(Nha khoa · Nha khoa Cẩm Tú)による医学的監修内容を参照しつつ、歯科・内科など複数領域の研究データを考慮しています。
口内炎(口腔内の潰瘍)とは何か
口の中に生じる潰瘍やただれ(以下「口内炎」)は、口内粘膜の表面が傷ついた状態を指します。多くの場合、下記のような特徴があります。
- 白っぽい膜や黄色みを帯びた膜をともなう小さな潰瘍が単発もしくは複数できる
- 口の中の粘膜や舌、歯茎、唇の内側などがしみたり痛んだりする
- 熱い飲み物や辛いものを口にすると痛みが増す
- 場合によっては会話もしづらくなる
見た目は小さいものの、食事や会話のたびにしみたり痛んだりするため、生活に不便をもたらすことが少なくありません。また、長期化すると栄養摂取が不十分になり、体全体の不調を引き起こすリスクが高まるともいわれています。
口内炎が起こるメカニズムは多岐にわたりますが、大きく分けると以下のように捉えられます。
- 粘膜の物理的刺激や外傷:不適合の歯科補綴物(かぶせ物など)や歯のかけら、硬い食品、誤って口の中を噛んでしまうなど
- 免疫の低下や栄養不足:ビタミンB群や鉄、葉酸などが不足している場合
- ウイルス・細菌などの感染:二次感染で悪化する可能性
- ストレスや睡眠不足:生活習慣の乱れが誘因となることもある
本記事では特に、「口内炎の一種である再発性アフタ性口内炎」(Recurrent Aphthous Stomatitis, RAS)についての研究を基に、症状の経過や重症化しやすい要因、治療・予防策などを詳しく解説します。
主な症状と関連するサイン
口内炎がある場合、以下のような症状がみられます。
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中心部が白や黄を帯び、周辺が赤い境界をもつ潰瘍
小さいものは直径1cm未満のものが多く、痛みをともなう。治りかけはやや灰色がかった表面を形成することもある。 -
複数の潰瘍が同時に発生
おもに頬の内側、唇の内側、歯茎、舌先や舌縁などに現れ、飲食や会話に支障が出る。 -
他の全身症状を伴う場合もある
中には発熱、倦怠感(疲れやすさ)、顎下のリンパ節腫脹などがみられるケースもある。 -
胃腸障害や下痢、腹痛を伴うケース
栄養の吸収障害(マルアブソープション)や、食事が十分に摂れないことによる栄養不良が原因で腹部症状が出ることがある。下痢や腹部の膨満感、体重減少が見られる場合は、ほかの消化器疾患が潜んでいないか検討が必要となる。
これらの症状のうち複数が当てはまる、あるいは明らかに痛みが強く治りにくいという場合は、早めに専門医に相談することが大切です。
口内炎の原因
現在も明確に「これが原因」と特定できるケースは少ないとされています。ただし、以下の要因が複合的に絡むことで、口内炎を繰り返すリスクが高まるといわれます。
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栄養素不足
とくに葉酸(folic acid)、ビタミンB12、鉄分などの不足が広く指摘されています。実際、口内炎と栄養欠乏状態の相関関係を調べた国内外の研究では、葉酸やビタミンB群の摂取量が十分でない人ほど口内炎が生じやすいと報告されています。 -
ストレスや睡眠不足
ストレスホルモン分泌が増大すると免疫バランスが崩れ、粘膜バリアが弱まる可能性があります。さらに睡眠不足が続くことで、粘膜のターンオーバー(再生)も遅延すると考えられます。 -
口腔内の機械的刺激
歯並びによる噛み合わせの問題、歯の欠けや詰め物の不具合などで口内が繰り返し擦れたり傷ついたりすることで、そこに炎症が起こりやすくなります。 -
感染症や自己免疫的要因
ウイルスや細菌による刺激で二次感染が起こる場合や、自己免疫系の異常が原因で再発を繰り返す場合もあります。 -
消化器系の問題
消化機能に関わる病気(クローン病や潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群など)では栄養素の吸収に問題が生じやすく、口腔内潰瘍も合併しやすいと報告されています。
診断方法と注意すべき疾患
口内炎のように見える症状でも、ほかの疾患が背景にあることがあります。歯科口腔外科や内科などで行われる一般的な診断では、視診のほか、採血や必要に応じた画像検査などを組み合わせて全身状態を評価することがあります。以下のような疾患が鑑別対象となることがあるため、自己判断は危険です。
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クローン病、潰瘍性大腸炎
消化管に慢性的な潰瘍や炎症を引き起こす疾患で、口腔内にも潰瘍ができる可能性があります。 -
寄生虫症(ジアルジア症など)
栄養吸収障害や免疫低下を伴い、口内炎を悪化させることがあります。 -
セリアック病や消化管感染症
グルテンへの免疫反応などにより、口内炎と関連する症状を誘発するケースがあります。 -
その他の自己免疫疾患
全身的な自己免疫の異常が粘膜にも影響を与えている可能性。
治療の基本
医師や歯科医師が口内炎に対して行うアプローチは、原因に応じて異なります。
薬物療法
- 抗生物質・抗菌薬の使用
細菌感染が強く疑われる場合や合併症を防ぐために、テトラサイクリン系やペニシリン系などの抗生物質を処方することがあります。処方期間は症状の程度によって数週間から数カ月と幅があります。 - 局所ステロイド・消炎薬
痛みを軽減し、炎症を抑える目的でステロイド入りの軟膏や口腔用ゲル、うがい薬などを使うことがあります。 - ビタミンやミネラルの補給
葉酸やビタミンB群、鉄分、ビタミンB12などの欠乏が指摘される場合、それらを補給することで症状が驚くほど改善する例が報告されています。葉酸を中心としたサプリメントを3カ月以上継続して服用し、口内炎が軽快するケースも多いです。また、長期間の栄養補充が必要なときは、主治医の指示に従います。
生活習慣の修正
- 十分な休息・睡眠
口内炎の発症・再発にはストレスや睡眠不足が大きく関与しているとみられます。生活のリズムを整え、疲れをためないことが重要です。 - 適度な運動
水泳などの有酸素運動は体温を上げすぎずに筋力や体力を高め、身体機能を維持するうえでも有用です。 - 栄養バランスを意識した食事
脂質や糖質に偏った食事を避け、野菜や果物、魚などをバランスよく摂ることが望ましいとされています。特にオメガ3系脂肪酸(魚油やオリーブオイルに豊富)の摂取は、炎症抑制に役立つ可能性があると指摘されています。
実際、口腔内潰瘍の反復発症と栄養バランスについて検証した国内外の調査では、オメガ3系脂肪酸を含む食事パターンを続けた群で再発のリスクが低下したという報告があり、今後さらなる研究が期待されています。 - ストレスマネジメント
ストレッチやヨガ、深呼吸法、瞑想などのリラクゼーション法が、口内炎の回復や再発予防に好影響を与える可能性があります。
新しい研究・知見の紹介
再発性アフタ性口内炎のケアにおいて、近年は保湿や抗酸化作用がある天然素材にも注目が集まっています。たとえば2022年に発表された研究では、蜂蜜を塗布するケアが潰瘍の治癒を早め、痛みを抑える効果がある可能性が示唆されています。実際に、Tang J, Wang P, Li X, Tang W, Li Z, et al.(2022)“Efficacy of topical honey in the management of recurrent aphthous stomatitis: A systematic review and meta-analysis.” Journal of Oral Rehabilitation, 49(12), 1245–1253. doi:10.1111/joor.13384 では、蜂蜜を使ったグループがプラセボ群と比較して潰瘍の痛みや治癒速度で有意な改善を示したとの報告があり、栄養療法や薬物療法に加えた補助的手段として、蜂蜜の有用性を検討する価値があると考えられています。ただし個人差があるため、医師や歯科医師の指導を受けながら適切に対処する必要があります。
症状が長引く場合の対策
抗生物質や抗炎症薬などを用いた治療を行っても長期化する場合は、以下の点を総合的に見直すことが推奨されます。
- 自己判断でサプリメントを過剰摂取しない
ビタミンやミネラルも過剰に摂れば副作用や他の臓器に負担をかける場合があります。血液検査などの結果に基づいて、医師や歯科医師の指導のもとで適量を継続することが大切です。 - 他の基礎疾患の確認
胃腸障害や自己免疫疾患、寄生虫症の可能性が否定できない場合は、その分野に詳しい専門医への相談が必要です。症状全体を見渡して原因を丁寧に探すことで、口内炎の改善につながる場合があります。 - より詳細な口腔内検査や補綴物の調整
歯科医師による検査で、かみ合わせや詰め物、差し歯に問題があれば修正を行い、口内に不要な刺激が加わらないようにします。
日常生活でのセルフケア・予防のポイント
口内炎は繰り返しやすい症状ですが、いくつかのセルフケアや予防策を意識することで、そのリスクを減らすことができます。
- 刺激の強い食べ物や飲み物に注意
辛いものや酸味の強いもの、アルコール、熱すぎる飲食は潰瘍部を刺激し、回復を遅らせる恐れがあります。極端に刺激が強いものはできるだけ控えましょう。 - 適度な温度での飲食
熱いものや冷たいものに敏感になっている時期は、温度を少し調整してから摂取します。 - こまめな口腔ケア
食後にうがいをしたり、口腔内を清潔に保つために、柔らかい歯ブラシを使って軽くブラッシングしたりすることが有効です。特にうがいには、水や食塩水(生理食塩水)を使用するとしみることが少なく、手軽に実践できます。 - ガムの噛みすぎを避ける
過度な咀嚼で頬や舌を噛んだり、粘膜をこすったりして、物理的に口内を傷つける可能性があります。 - 十分な水分補給
口の中が乾燥すると、粘膜バリアが低下し、外的刺激に弱くなります。こまめに水を飲むほか、部屋の加湿にも注意しましょう。 - 定期的な歯科受診
歯石や虫歯の放置、合わない詰め物などは慢性的な炎症を引き起こす要因です。6カ月に一度程度の歯科健診が推奨されます。
医師・歯科医師による推奨治療と注意点
上述のように、口内炎には複数の要因が関係します。治療を受ける際には、症状緩和だけでなく根本的原因を特定していくことが大切です。
- 必要に応じた追加検査
血液検査で栄養欠乏の度合いを測定したり、慢性的な消化器疾患の有無を調べたりして、総合的に方針を決めます。 - 生活習慣のアドバイス
食事指導や睡眠、ストレス管理について専門家から具体的な助言を受けることがあります。とくに栄養面での改善は効果が出やすいため、適切な指導を受けると良い結果が出る場合が多いとされています。
おすすめのセルフケアを続けてもなかなか良くならない時
口内炎が1~2週間で自然治癒せず長引くときはもちろん、あまりにも痛みが激しく食事が困難になるときは、早期に専門医を受診しましょう。これは、放置すると飲食の支障による栄養失調や、潜在的な病気の悪化につながる危険性があるためです。
結論と提言
口内炎(口腔内の潰瘍)は、ビタミンや葉酸などの栄養不足、ストレス、物理的刺激、免疫の低下など複数の要因が複雑に絡み合うことで起こりやすくなります。多くの場合は数日から1~2週間程度で自然に治癒するものの、重症化したり繰り返し発症したりするケースでは、歯科医師や医師による診断と治療が欠かせません。
以下の点を改めてまとめます。
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栄養補給と生活習慣の見直しが重要
葉酸やビタミンB群、鉄分などを適切に補うと、口内炎の再発リスクが減る可能性があります。睡眠不足やストレスは症状を悪化させる要因にもなるため、日常生活全体を整えることが重要です。 -
刺激物を避け、口腔内を清潔に保つ
辛い食品や極端に熱い飲食、噛む力が強くかかる習慣はできるだけ減らし、やわらかい歯ブラシなどでの優しい口腔ケアを心がけましょう。 -
専門医の診察で全身状態を確認
口内炎が長引いたり、原因不明の不調を伴う場合は、消化器系疾患や自己免疫異常など、背後に隠れている病態が存在するかもしれません。 -
新しい研究成果も活用可能
蜂蜜などの天然由来成分の使用や、オメガ3系脂肪酸の摂取が有効と示唆する研究も発表されています。ただし効果や安全性には個人差があるため、独断で多量に使用せず、医療従事者と相談しながら進めることが推奨されます。
本記事で紹介した情報は、口内炎を早期に改善し、再発を予防するためのヒントをまとめたものです。ただし、これはあくまで一般的な健康情報であり、すべての人に当てはまるわけではありません。背景となる病気や体質によって治療方針は変わる可能性があるため、不安がある場合や症状がつらい場合は医療機関に相談しましょう。
なお、口内炎の自然治癒が期待できるとはいえ、どうしても痛みが強く日常生活に支障をきたす場合や、高熱を伴う場合などは早期の受診が望ましいです。適切なケアやサポートを受けることで、より速やかに症状が改善し、健康的な日常を送れるようになるはずです。
参考文献
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- https://www.reumatologiaclinica.org/en-recurrent-aphthous-stomatitis-in-rheumatology-articulo-S2173574311000153
- https://www.msdmanuals.com/professional/dental-disorders/symptoms-of-dental-and-oral-disorders/recurrent-aphthous-stomatitis
- Tang J, Wang P, Li X, Tang W, Li Z, et al.(2022)“Efficacy of topical honey in the management of recurrent aphthous stomatitis: A systematic review and meta-analysis.” Journal of Oral Rehabilitation, 49(12), 1245–1253. doi:10.1111/joor.13384
本記事の情報は、健康に関する一般的な参考資料として提供されるものであり、いかなる医療上の助言や診断、治療に代わるものではありません。実際の症状や治療法に関しては、必ず医師や歯科医師など専門家にご相談ください。