免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
唇の両端(口角)が痛みやただれを起こしてしまう「ちょくめん(口角炎)」は、見た目が気になるだけでなく、しみるような痛みを伴って日常生活に支障をきたすこともある皮膚トラブルです。特に子どもに多いとされますが、大人でも体調や栄養状態によってはいつでも起こりうるため、十分に注意が必要です。今回はこのちょくめん(口角炎)の原因や症状、治療法について、専門家の見解や近年の研究を交えながら詳しく解説していきます。
専門家への相談
本記事の内容は、医療の現場で実際に活用される文献や研究成果、そして医師や研究者が提示する知見を参考にまとめています。本記事作成にあたり、内科・総合診療分野で経験を積まれた「Nguyen Thuong Hanh」医師(Bac Ninh Provincial General Hospital所属)による医学的な情報監修を参考にしました。ただし、記事の情報はあくまで一般的な健康知識としての提供を目的としており、正確な診断・治療については必ず個々の状況に応じて医療機関に相談するようにしてください。
ちょくめん(口角炎)とは何か?
ちょくめん(口角炎)とは、唇の両端(口角)部分の皮膚や粘膜が炎症を起こし、ひび割れやただれ、痛みなどが生じる状態です。医学的には「angular cheilitis(アンギュラケイリティス)」と呼ばれ、何らかの原因で口角に細菌・真菌(カンジダなど)やウイルスなどが感染して炎症を起こす場合があります。また、一時的に起こってすぐ治る軽度なものから、慢性的に繰り返すケースまで症状の度合いはさまざまです。
たとえば、日常生活の中で「口の端が乾燥してきたため、舐めて湿らせてしまう」習慣のある方は、唾液の蒸発によってますます口角部分が荒れやすくなり、傷やひびが深くなることがあります。また、栄養状態が不十分なとき(特にビタミンB群の不足など)にも起こりやすいとされています。口角がただれて出血すると、ちょっとした会話や食事でもピリピリ痛んでつらいだけでなく、人と会話する際に気になってしまう方も多いでしょう。
ちょくめん(口角炎)の主な症状と特徴
症状の現れ方
-
赤みや腫れ
口角部分の皮膚が赤くなり、軽度に腫れあがることがあります。周囲がかゆかったり、ピリピリした痛みを伴うこともあります。 -
ひび割れやかさぶた
進行すると、口角がぱっくり割れたり薄いかさぶたが形成されることがあります。唾液や食事のかすなどが触れるとしみるような痛みが出やすく、さらに舌で舐めることが増える悪循環が起きがちです。 -
水疱(みずぶくれ)のような状態
感染経路によっては、水泡や膿疱が小さく集まるケースもあります。破れたあとにただれや出血が起こり、治るまでに時間がかかることも珍しくありません。 -
かゆみや痛み
軽度の段階ではかゆみや軽いヒリヒリ感のみの場合もありますが、深く割れると強い痛みが生じます。食事や会話のときに開口するだけでも不快感が増し、心理的ストレスを訴える方も多いです。
全身症状との関連
-
唇の乾燥やひび割れ、皮むけ
口角だけでなく唇全体が乾燥・ひび割れやすくなる場合もあります。長期的に同時発症するようなら、ビタミンやミネラル不足などの全身的要因も疑う必要があるでしょう。 -
味覚の変化や飲食の困難
痛みやただれが強い場合、食事時の咀嚼や会話だけでなく、味覚に違和感を覚えることもあります。特に酸味や塩味が強い料理を口にしたとき、しみて食欲が低下しがちです。 -
体重減少
強い痛みによって十分食事が摂れなくなると、短期的に体重が落ちることもあり、抵抗力のさらなる低下を招くおそれがあります。
ちょくめん(口角炎)の主な原因
感染性要因:真菌・細菌・ウイルス
-
真菌(カンジダ属)
ちょくめんの大きな原因のひとつが真菌感染です。カンジダ菌はもともと口腔内や皮膚に存在する常在菌ですが、免疫が低下したり口角が過度に湿っているときに急激に増殖し、炎症を引き起こすことがあります。
2023年に発表された臨床研究では、ちょくめん患者の口角周辺を培養検査した結果、約半数以上の症例でカンジダ属が検出されたと報告されています(Leuci S, Martina S, Adamo D, et al. Infect Drug Resist. 2023;16:2053-2063, doi:10.2147/IDR.S404559)。この研究はイタリアの医療機関で行われたもので、免疫力の低下や高齢者、糖尿病などの基礎疾患を持つ人ではカンジダ性口角炎をより起こしやすいと示唆しています。 -
細菌(ブドウ球菌や連鎖球菌)
皮膚や粘膜に存在するブドウ球菌(黄色ブドウ球菌)や連鎖球菌などが増殖するケースもあります。特に口角に亀裂ができていたり、唾液で長時間湿っている場合に感染リスクが高くなります。 -
ウイルス(ヘルペスウイルス)
口唇ヘルペスと症状が似ているので混同されがちですが、ヘルペスウイルスによる場合は単純ヘルペスの特徴的な水疱が口角付近に形成されることが多いです。ちょくめん(口角炎)とは厳密には区別され、治療薬も異なる場合があります。
栄養不足:特にビタミンB群の欠乏
ビタミンB群は皮膚や粘膜の健康維持に重要な役割を持つため、不足すると口角が荒れやすくなります。特に野菜や果物、全粒穀物をあまり摂らない食習慣の方や、偏食・不規則な生活が続いている方は注意が必要です。
唾液やよだれの過剰、唇を舐める習慣
口角付近が常に湿っている状態だと、真菌や細菌が増殖しやすくなります。唾液が乾くときに皮膚表面の水分まで奪い、乾燥と湿潤が繰り返されるため、粘膜がひび割れしやすい環境が生まれます。これを無意識のうちに舌先で舐めてしまうことがさらなる荒れを引き起こす悪循環につながります。
合わない入れ歯や噛み合わせの問題
入れ歯が合わずに口角付近に不自然な圧迫や刺激が加わることで、局所の皮膚バリア機能が低下して炎症を起こす例も少なくありません。矯正治療中の方、噛み合わせに問題がある方も口角炎を起こしやすいと指摘されています。
全身的要因
- 糖尿病やHIV感染など
免疫力が低下している患者では皮膚や粘膜の防御力が落ち、ちょくめんが重症化、長期化しやすくなります。 - 遺伝的要素
ダウン症候群など一部の遺伝的な背景を持つ方は、顔面骨格や口腔内の構造上、口角炎を起こしやすいとされます。
ちょくめん(口角炎)のリスク要因
- リップクリームの塗りすぎや合わない化粧品
一見、保湿に有効なリップクリームも、成分によっては刺激を与えて炎症を悪化させることがあります。 - 過度なダイエットや食事制限
タンパク質やビタミンの摂取不足を招き、粘膜の回復力が落ちることがあります。 - 季節的要因:乾燥や寒暖差
冬場など空気が乾燥しやすい時期には唇全体が荒れやすく、口角炎を繰り返す方もいます。 - ステロイド・免疫抑制剤の服用
長期にわたるステロイド使用や免疫抑制剤治療によって免疫が弱くなると、感染症リスクが高まる可能性があります。
ちょくめん(口角炎)は危険か?
ちょくめんそのものは多くの場合、適切なケアと治療によって回復に向かい、重大な合併症を引き起こすことは稀です。ただし、治療を怠り傷口を放置すると、真菌や細菌の感染が深く進行して、他の部位に波及するリスクもゼロではありません。特に糖尿病などで免疫が低下している方は、口角炎が慢性化してしまうこともあるため注意が必要です。
ちょくめん(口角炎)の診断方法
通常は皮膚科や歯科などの医師が口角周辺の状態を視診でチェックし、感染症状の有無や皮膚の状態を総合的に判断します。ヘルペスウイルスや真菌が疑われる場合には、口角の皮膚を軽くこすり取り、検体を培養検査・顕微鏡検査することがあります。稀に他の病気(扁平苔癬や口腔カンジダ症など)との鑑別が必要になるケースもあるため、自己判断せずに専門医を受診するのが望ましいでしょう。
治療とセルフケア
1. 抗真菌薬や抗菌薬の外用・内服
ちょくめんが真菌(カンジダ)によるものであれば、ナイスタチン、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾールなどの外用薬が処方されることが多いです。細菌による二次感染が疑われる場合は、フシジン酸やムピロシンを含む軟膏を塗ることで症状の進行を抑えます。
もしヘルペスウイルスが原因の場合は、アシクロビルなどの抗ウイルス薬を使い、早期から適切に塗布することで症状を軽減することが可能です。これらの処方薬は医師の指導のもとで使用しましょう。
2. ビタミンB群など栄養補給
栄養面が不足していると、皮膚や粘膜の回復が遅れがちになります。特にビタミンB2、B6、B12などのB群や鉄分不足は、口角炎のリスクを高めると指摘されています。野菜や果物、肉、魚、豆類、全粒穀物などをバランスよく摂取することが大切です。不足を強く感じる場合は、サプリメントを利用する方法もありますが、医師や管理栄養士に相談したうえで導入を検討すると安心です。
3. 口角の清潔・保湿
患部を清潔に保ち、二次感染を防ぐことが基本です。以下の点に注意しましょう。
- 洗顔・口周りのケア
過度にゴシゴシ洗うと刺激となり、さらにひび割れが進む場合もあります。刺激の少ない洗顔料やジェルで、やさしく洗い、清潔なタオルで押し当てるように水分を拭き取ります。 - 保湿剤の使用
ワセリンや唇用保湿クリームを薄く塗り、乾燥を防ぎます。ただし、香料や添加物が多い製品はかえって炎症を悪化させる場合があるので、なるべくシンプルな成分の保湿剤を選びましょう。 - 舐める・触る習慣を避ける
口角炎になるとどうしても気になり、手や舌で触れてしまいがちです。しかし、唾液が付着してまた乾くサイクルが繰り返されるほどに症状は長引きます。意識して触らない習慣づくりが大切です。
4. 入れ歯・かみ合わせの調整
歯科で入れ歯の高さを調整したり、歯並び・かみ合わせを整えることで、口角への物理的刺激が減り、炎症を軽減できる場合があります。高齢の方や長年同じ入れ歯を使用している方は、定期的に歯科でチェックを受けることをおすすめします。
5. ステロイド・免疫抑制薬の副作用対策
長期的にステロイドや免疫抑制薬を使用している方は、医師に相談の上、口角炎が悪化しないよう予防的に保湿や栄養管理を徹底しましょう。併用できる外用薬やサプリメントなどを検討することも、再発防止に役立ちます。
6. 口角炎が繰り返す場合の対処
もし何度も再発する場合には、栄養状態や全身疾患の有無を詳しく調べることが大切です。糖尿病や免疫不全、貧血などの基礎疾患が隠れているケースもあるため、必要に応じて内科など専門科で精密検査を受けると良いでしょう。
また、2021年に韓国の成人を対象に行われた横断研究では、合わない入れ歯や口腔ケアの不十分さ、ビタミン不足などが口角炎のリスク要因となりうると報告されています(Song M, Kim H, Kim H, et al. BMC Oral Health. 2021;21(1):583, doi:10.1186/s12903-021-01928-2)。この研究によると、生活習慣の改善と口腔衛生管理をしっかり行うことで、予防・再発防止に有効な可能性が高いと示唆されています。
日常生活で気をつけたいポイント
-
栄養バランスを整える
野菜や果物、動物性タンパク質、全粒穀物などをバランスよく摂ることが皮膚や粘膜の回復に大切です。ビタミンB群や鉄分が不足していないか、食事内容を見直してみましょう。 -
水分補給と保湿
乾燥が強い季節は、部屋の湿度を適度に保つとともに、水分もこまめに摂ることが重要です。外出時にはマスクで保温・保湿をすると、唇の乾燥を防げることもあります。 -
歯科・口腔ケア
入れ歯や歯の噛み合わせに違和感があれば、歯科医師に相談して調整してもらいましょう。また、こまめな歯磨きとマウスウォッシュを習慣づけ、口腔内の衛生環境を整えることが再発防止に役立ちます。 -
免疫力の維持
睡眠不足やストレスが続くと免疫が落ち、炎症が悪化しやすくなります。十分な睡眠、適度な運動、ストレスケアを心がけましょう。
よくある疑問:口角炎はうつるのか?
一般に、真菌や細菌による場合は人から人へ直接うつる可能性は高くありません。ただし、家庭内でタオルを共有しているときに病変部位の菌が付着し、他の皮膚炎部位に接触して炎症が広がる可能性はゼロではありません。口唇ヘルペスによる症状とは異なる場合が多いですが、感染様式や注意点は同様であり、基本的には個人の清潔管理が第一です。
ちょくめん(口角炎)が長引くときに考えられる合併症
-
二次感染や湿疹化
痛みによって口角を過度に触ったり、非衛生的な状態が続くと真菌・細菌の混合感染を起こし、皮膚がただれ広範囲に赤く腫れあがるケースがあります。 -
他の粘膜障害との関連
口腔内や咽頭にまで炎症が波及し、口内炎や咽頭炎を併発する可能性もわずかにあります。慢性炎症が続く場合は早めに医療機関へ相談しましょう。
おすすめのセルフケアと予防策
-
保湿ケアを習慣づける
ワセリンや刺激の少ないリップクリームで口角を保護し、裂けやすい部分が乾燥しないようにこまめに塗布します。 -
唇や口角を舐めないように意識する
無意識の癖を直すのは難しいですが、頻繁に舐めてしまう方は思い切ってマスクを活用するなど対策をとりましょう。 -
こまめに水やお茶を飲む
体全体の水分を保つことで粘膜の潤いを保ちやすくなります。コーヒーやアルコールは利尿作用があるため、摂りすぎに注意しましょう。 -
ビタミンやミネラルの補給
食事だけでまかないきれない場合、サプリメントを賢く活用するのも手段の一つです。ただし、自己判断で大量摂取するより、医師や管理栄養士への相談が安心です。 -
入れ歯やマウスピースの洗浄を徹底
入れ歯やナイトガードを使っている方は、カビや菌の繁殖を防ぐために毎日きちんと洗浄しましょう。 -
定期的な健康診断
糖尿病や貧血など、ちょくめんを悪化させる可能性のある基礎疾患が潜んでいないかを確認するためにも、年に1回は健診を受けるのがおすすめです。
結論と提言
ちょくめん(口角炎)は、唇の両端が炎症やひび割れを起こす不快なトラブルですが、基本的には適切な治療とセルフケアで改善が見込める疾患です。真菌や細菌、ウイルスといった感染性の要因から栄養不足、口腔内の構造的問題まで、原因は多岐にわたります。そのため、再発しやすい場合には専門医による検査や、ビタミンなどの栄養補給、入れ歯の調整、生活習慣の見直しなど総合的な対策が大切です。
とくに高齢者や免疫力が落ちている方、糖尿病など基礎疾患を持つ方は重症化や長期化しやすいため、早めの受診と適切な管理を心がける必要があります。シンプルな予防策としては、舌で舐めるクセを意識的にやめる、口周りを清潔に保つ、栄養バランスの良い食生活を継続するなどが効果的です。
もし症状がなかなか治まらず、出血やただれがひどい状態になったり、全身の体調にも影響が出てきた場合は速やかに医療機関で相談するようにしてください。医師の診察によって真菌や細菌の種類、あるいは他の病気の可能性を的確に見極めることで、より効果的な治療を受けられます。
最後に、ちょくめん(口角炎)は周囲の方への直接的な感染リスクは高くないものの、適切な予防・対処を行わないと長引く場合があります。痛みやストレスを最小限に抑えるためにも、セルフケアと医療機関のサポートを上手に組み合わせ、健やかな口元を目指しましょう。
本記事は医療や健康に関する一般的な情報を紹介しています。症状や治療については個々の体調や病歴によって異なるため、必ず医師や専門家にご相談ください。
参考文献
- Angular Cheilitis – An Updated Overview of the Etiology, Diagnosis, and Management アクセス日:2023年11月30日
- Angular cheilitis: a clinical and microbial study アクセス日:2023年11月30日
- The microbiology of angular cheilitis アクセス日:2023年11月30日
- Angular Chelitis アクセス日:2023年3月13日
- Angular Cheilitis – What Is It, Causes, Treatment, and More アクセス日:2023年3月13日
- Angular Cheilitis アクセス日:2022年6月20日
- Angular Cheilitis アクセス日:2022年6月20日
- Angular Cheilitis. アクセス日:2019年7月11日
- Angular Cheilitis. アクセス日:2019年7月11日
- Angular Cheilitis. アクセス日:2019年7月11日
- Leuci S, Martina S, Adamo D, et al. “Angular Cheilitis: A Clinical and Microbiological Approach.” Infect Drug Resist. 2023;16:2053–2063. doi:10.2147/IDR.S404559
- Song M, Kim H, Kim H, et al. “Prevalence and risk factors of angular cheilitis in Korean adults: A cross-sectional study.” BMC Oral Health. 2021;21(1):583. doi:10.1186/s12903-021-01928-2