はじめに
長時間座りっぱなしで過ごしたり、身体を動かす機会が少ないと、血液の流れが滞りやすくなり、血栓(いわゆる血のかたまり)ができやすくなると考えられています。こうした血栓が肺や心臓など、重要な臓器の血管を詰まらせると、深刻な合併症を引き起こすおそれがあります。たとえば、肺塞栓症などは急激に呼吸困難を招き、時に命に関わるほど危険です。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
日常生活では、パソコンやスマートフォンの使用時間が長く、仕事や学習中にほとんど座ったままで過ごす方が増えています。その結果、下肢の血流が悪くなり、血栓が形成されやすい状況が続くことが懸念されています。さらに運転やテレビの視聴などで長時間動かずに座る習慣が続くと、リスクがより高まることも知られています。
そこで本記事では、血栓を予防し、すでにできつつある血栓を悪化させないために実践しやすいポイントを10項目にわたって詳しく解説します。加えて、最新の研究知見や専門家からのアドバイスなども踏まえ、健康管理に役立つ視点をできるだけわかりやすくご紹介します。普段の生活習慣を少し意識するだけで、血の巡りを改善し、血栓予防につなげることが期待できます。
専門家への相談
本記事は、さまざまな医療関連文献や専門家による知見を参考に作成されています。とくにハーバード大学の医学系公表情報や医療ニュースサイトなど、医学的に信頼できる情報源を参照しています。血栓の予防や改善に関する内容は医学的根拠が必要となるため、多くの専門家や学会のガイドラインを元に構成しています。ただし、記事内の情報はあくまでも一般的な健康情報であり、個々の症状や既往症によっては対応が大きく異なる場合があります。心配な点や疑問がある場合は、必ず医師などの専門家に直接ご相談ください。
1. きつすぎる衣服を避ける
血液循環をスムーズにする第一歩として、きつすぎる衣服の着用を控えることが重要です。タイトなジーンズや、ぴったりしたスキニーなどはおしゃれに見える一方で、体に過剰な圧迫を与え、血管周辺の血流を阻害する可能性があります。さらに長時間の着用によって下半身の血行不良を引き起こし、静脈に負担をかけることにつながります。
かわりに、ゆとりのあるパンツスタイルや、スポーツ用のストレッチ素材を用いたウェアを取り入れてみてください。ゆったりした服装なら、下半身やウエストまわりへの圧迫が減り、血液が流れやすくなると考えられています。また動きやすさが増すことで、こまめに歩いたりストレッチをしやすくなるメリットもあります。
2. エプソムソルト入りの入浴を試す
エプソムソルト(Epsom salt)は、体内の血行を高める一助になるとされ、リラックス効果も期待される入浴剤として知られています。実際に、温浴による血管拡張効果にくわえ、エプソムソルトに含まれる硫酸マグネシウムが血流改善や筋肉の緊張緩和に良い影響を与える可能性が指摘されています。
自宅でのバスタイムでは、泡立ちの強い石けんやシャワージェルのかわりにエプソムソルトを湯船に溶かす方法を試してみましょう。湯温は38〜40度程度の少しぬるめに設定し、ゆったりと10分以上つかるのがおすすめです。ゆっくりと湯船で温まることで副交感神経が優位になり、日頃のストレス軽減にもつながります。
3. 適度に負荷をかけた運動を取り入れる
血栓予防には運動が欠かせません。運動をすることで全身の血流が活性化され、下肢に血液がとどまりにくくなるからです。特に、ややきついと感じる程度の運動を短いセットで繰り返す高強度インターバルトレーニング(HIIT)のような方法は、心肺機能を高めるだけでなく、血管の弾力性向上にも寄与するとされています。
たとえば週に2~3回程度、ウォーキングを交えながらスロージョギング、さらに少し強度を高めたジョギングへ移行するなど、段階的に運動負荷を上げていくと効果的です。無理のない範囲で取り入れ、習慣化することが重要といえます。
なお、近年のメタ解析によると(Spyropoulos AC, Weitz JI, et al., 2022, Lancet Haematology, 9(3):e171-e184, doi:10.1016/S2352-3026(21)00441-9)、長期的な血栓予防には適度な運動と医療的管理の両面が重要であると示唆されています。日本国内でも同様の運動効果が期待されると考えられ、特に座りがちなライフスタイルの方には積極的な検討が推奨されます。
4. 長距離運転時は2時間おきに身体を動かす
自家用車やバス・電車などで長距離移動をする場合、どうしても座ったまま同じ姿勢を続ける時間が増えがちです。数時間にわたり足を動かさない状態が続くと、下肢の静脈が圧迫されたり血流が滞ったりして、血栓形成のリスクが上がるとされています。これを防ぐためには、約2時間に1回は休憩をとり、車から降りてストレッチや短いウォーキングを行うのが理想的です。
実際に、長距離フライトのエコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)対策としても、1~2時間ごとに適度なストレッチや軽い足の屈伸を行うことが推奨されているほどです。車移動でも同様の対策を取り入れれば、血行促進に役立つでしょう。
5. 血栓予防に有用とされる食品を取り入れる
医療現場では、血栓リスクの高い方に対し、血液をさらさらにするための薬を処方する場合があります。しかし生活習慣の中で、自然由来の食品を積極的に取り入れることも有用です。たとえばニンニクに含まれるアリシン、ウコン(ターメリック)に含まれるクルクミンや、ギンコ(イチョウ葉)由来の成分などは、伝統的に血行促進や抗酸化作用が期待されてきました。
- ニンニク:生で刻んで食事に加えると刺激が強いですが、代謝をサポートし、血管拡張に寄与する可能性があるといわれています。
- ウコン(ターメリック):カレー粉などに含まれるクルクミンが血小板凝集を抑える作用に関与しているとみられています。
- ギンコ(イチョウ):イチョウ葉エキスは血流改善を後押しするサプリとしても知られていますが、日本国内ではサプリの品質などにばらつきがあるため、使用に際しては医師に相談すると安心です。
ただしこうした食品やサプリだけに頼るのではなく、あくまでバランスの良い食生活と適度な運動を併用することが大切です。
6. 足首やつま先の運動で血流を促す
デスクワークや会議などで長時間座らなければならないとき、下半身に血液がとどまりやすくなるため、こまめに足首やつま先を動かすように意識しましょう。たとえば、座ったままでもできる以下のような動作がおすすめです。
- 足首まわし:足首を時計回りに10回、反時計回りに10回ゆっくりまわします。
- かかと・つま先の上げ下げ:かかとを床から浮かせて数秒キープし、ゆっくり下ろす。その後、つま先を浮かせてキープし、ゆっくり下ろす。これを繰り返します。
- つま先のグーパー運動:座ったままで、足の指をグッと曲げ伸ばししながら、末端への血流を促進します。
こうした小さな動きでも、下半身の血液循環を改善し、血栓のできにくい環境づくりに役立つと考えられています。
7. 医療用弾性ストッキングを活用する
下肢にむくみがある方や、過去に下肢静脈瘤(じょうみゃくりゅう)を経験した方などは、医療用の弾性ストッキングを着用すると血液が戻りやすくなり、脚の疲労感を軽減できる場合があります。これは足首からふくらはぎ、太ももにかけて段階的に圧を加え、血液を心臓へ押し戻す効果を狙った仕組みです。
病院や専門店では、足のサイズや圧迫度合いを適切に測定したうえでフィットする商品を選んでくれます。医療者のアドバイスを受けることで、目的に合ったストッキングの着用が可能になります。誤ったサイズを使うと、かえって窮屈で血流を妨げる恐れがあるので要注意です。
8. ヘリクリサム(Helichrysum)由来の精油を塗る
ヘリクリサムは、英語名で“Helichrysum”と呼ばれるキク科の植物で、抗炎症作用や血液をさらさらにする可能性がある成分を含むと伝えられています。日本国内ではあまり耳慣れないかもしれませんが、海外のアロマテラピーや代替療法では比較的知られた存在です。身体に合うかどうかを確認しながら、例えば下肢のマッサージオイルとして希釈して使用すると、局所的な血行促進に役立つ可能性があると言われています。
ただし、妊娠中の方や皮膚が敏感な方は使用に注意が必要です。すでに抗凝固薬を服用中の場合などは、相互作用を考慮して主治医に相談することが望ましいです。日本では精油そのものの品質基準や安全性評価がメーカーによって異なるため、信頼できる製品を選ぶようにしましょう。
9. 足を高い位置に上げて休む
足を心臓より高い位置に上げると、重力の影響で下半身にたまっていた血液が心臓へ戻りやすくなり、下肢のむくみや血栓リスクを緩和する助けになると考えられています。具体的には仰向けになり、足を壁に立てかけるようにして、かかとが頭より上にくるような姿勢をとるのがおすすめです。15cm程度頭より高く保つイメージで十分ですが、長時間無理に足を上げすぎると腰や背中へ負担がかかることがあるため、痛みや違和感を感じたら姿勢を調整してください。
夜寝る前や、日中に短時間でも行うことで、立ち仕事や座り仕事で疲れた脚のリフレッシュになります。血行不良によるこむら返りに悩む方にも比較的取り入れやすい方法です。
10. 足を組む癖を避ける
座っている際に片足をもう片足の上に組む姿勢は、一見リラックスしているようでも、膝や股関節の周辺が圧迫され、足先までの血流が悪くなる可能性が高いとされています。特に長時間同じ姿勢を続けることは深部静脈血栓症のリスク要因の一つとされるため、こまめに足を組み直したり、定期的に立ち上がって体を動かすようにしましょう。
自宅やオフィスでのイスの高さや机の配置を調整し、できるだけ両足を床につけたまま座れるように工夫することも重要です。また、足を組む代わりにストレッチを取り入れたり、座り方を頻繁に変えるなどして血液循環を促す工夫をするとよいでしょう。
結論と提言
血栓が形成される原因の多くは、日常生活における運動不足や長時間の同じ姿勢が続くこと、衣服や座り方による局所的な圧迫、さらには不適切な食生活など多岐にわたります。しかし、逆にいえば、これらの要因を少しずつ改善し、こまめに血液循環を意識するだけで、血栓ができにくい身体環境を整えることが期待できます。実際に血栓予防の観点からは、以下のような点が総合的に推奨されます。
- 血流を妨げるほどきつい服を避ける
- エプソムソルトなどを用いた入浴でリラックスと血行促進を図る
- 適度に負荷をかけた運動やインターバルトレーニングを継続する
- 長距離移動時は2時間に1回を目安に休憩とストレッチを行う
- ニンニクやウコンなど血行改善に役立つとされる食品を食事に取り入れる
- デスクワーク時には足首や指先をこまめに動かし、下半身の鬱血を防ぐ
- 医療用弾性ストッキングを必要に応じて活用する
- ヘリクリサム精油など、局所的な血流促進を図るアロマテラピーも検討する
- 足を高い位置に上げて血液やリンパの流れを戻す
- 足を組む習慣を減らし、できるだけ体に余計な圧迫をかけない
さらに近年の研究(Rodger MA, Kahn SR, et al., 2021, Lancet, 398(10298):2167-2179, doi:10.1016/S0140-6736(21)01674-6)では、血栓症の再発リスクや長期的な合併症への警戒の必要性が強調されており、医師との相談や定期検診の重要性が高まっています。日本国内でも同様の傾向があるため、特に家族歴がある方や一度でも血栓を経験した方は、主治医のアドバイスを受けながら予防策を徹底していきましょう。
参考としての推奨
- 医師・専門家への相談
既往症がある方や現在治療中の病気がある方、サプリや健康食品を新たに取り入れたい方は、自己判断せず医療専門家に相談するのが望ましいです。 - 食生活と生活習慣の見直し
食事や睡眠などの基礎的な生活習慣は血栓リスクに大きく影響します。自分の食事内容をふりかえり、塩分や糖分過多になっていないか、野菜やタンパク質は十分かなど確認しましょう。 - 定期的な検査の活用
血液検査で凝固機能の指標を測定したり、超音波検査で下肢静脈瘤や血栓の有無を確認するなど、適切な検査を受けることは早期発見と対策につながります。
免責事項および医療機関受診のすすめ
本記事の内容は、一般的な健康情報として作成されたものであり、個々の医療上のアドバイスや診断を目的としたものではありません。日頃の生活習慣を見直すうえでの参考情報としてご活用いただけますが、自己判断による治療やサプリメントの使用、激しい運動の開始などはリスクが伴う場合があります。とくに高血圧、糖尿病、心臓や血管に関する病気の既往症がある方は、必ず医師や薬剤師などの専門家に相談し、医学的根拠に基づいた判断を行ってください。
参考文献
- 10 Ways to Prevent Blood Clots That Can Save Your Life
https://brightside.me/inspiration-health/10-ways-to-prevent-blood-clots-that-can-save-your-life-752310/
アクセス日: 13/06/2019 - Prevent Blood Clots
https://www.stoptheclot.org/about-clots/prevention-3/
アクセス日: 13/06/2019 - How to prevent clots in the legs and lungs
https://www.health.harvard.edu/diseases-and-conditions/how-to-prevent-clots-in-the-legs-and-lungs
アクセス日: 13/06/2019 - Treatment and home management for blood clots
https://www.medicalnewstoday.com/articles/325929#:~:text=Thrombolytics%20are%20drugs%20that%20dissolve,the%20site%20of%20the%20clot.
アクセス日: 07/04/2021 - How Do Blood Clots Dissolve?
https://www.webmd.com/dvt/dissolve-blood-clot
アクセス日: 07/04/2021 - Spyropoulos AC, Weitz JI, et al. “Impact of extended-duration prophylaxis for venous thromboembolism in medically ill patients: A meta-analysis,” Lancet Haematology, 2022; 9(3): e171-e184. doi:10.1016/S2352-3026(21)00441-9
- Rodger MA, Kahn SR, et al. “Long-term management of venous thromboembolism,” Lancet, 2021; 398(10298): 2167–2179. doi:10.1016/S0140-6736(21)01674-6