喉の痛みは風邪、扁桃炎、連鎖球菌感染のどれ?原因を見極める方法とは
感染症

喉の痛みは風邪、扁桃炎、連鎖球菌感染のどれ?原因を見極める方法とは

はじめに

のどが痛むと、多くの方は「風邪を引いたかな?」と軽く考えてしまいがちです。しかし実際には、のどの痛みは単なるかぜ症候群(感冒)にとどまらず、扁桃炎や連鎖球菌感染症など、さまざまな原因が隠れている場合があります。とくに連鎖球菌が原因の場合は、きちんと治療しないと合併症を引き起こすことも知られており、早期発見・適切な対処が非常に大切です。本記事では、「かぜによるのどの痛み」「連鎖球菌感染症によるのどの痛み」「扁桃炎によるのどの痛み」を、典型的な症状や違いを中心に詳しく解説しながら、日常生活で役立つケアのポイントをまとめます。

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風邪によるのどの痛み・連鎖球菌感染症・扁桃炎の違い

のどの痛みは日常的によく見られる症状ですが、その原因は多岐にわたります。ここでは代表的な「風邪(かぜ)」「連鎖球菌感染症」「扁桃炎」の3つに着目し、それぞれの特徴を整理します。

1. 風邪(かぜ)によるのどの痛み

風邪は一般的にウイルス感染が最も多い原因とされています。ウイルスが体内に侵入すると、のどや鼻の粘膜に炎症が起こり、のどの痛みや鼻水、くしゃみ、せきなど多彩な症状があらわれます。

  • 主な症状の特徴
    • のどの痛み(比較的軽度で、1~2日ほど続くことが多い)
    • 鼻水、鼻づまり
    • くしゃみ
    • 軽い頭痛
    • 軽度の筋肉痛
    • ときに微熱

風邪によるのどの痛みはウイルス感染が原因であることが大半なので、抗菌薬(抗生物質)は基本的に効果がありません。抗菌薬を誤って服用すると耐性菌のリスクを高める可能性があるため、医療機関で細菌感染が証明されない限り、風邪には抗菌薬を使わないほうが望ましいです。症状の軽減には以下の対処法が推奨されています。

  • 水分補給と休養
    発熱やせきなどで体内の水分が失われやすいため、こまめに水分を摂取し、十分な休養を取ることが大切です。
  • うがい・口腔ケア
    塩水でうがいをして、のどの粘膜を清潔に保つとともに潤し、痛みを和らげます。
  • 鎮痛解熱薬やトローチ
    アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販の鎮痛解熱薬を正しく使用すると、のどの痛みや発熱の症状が軽くなる場合があります。トローチやのど飴などで刺激を和らげる方法もあります。
  • 十分な栄養
    消化に負担の少ない食事を心がけながら、ビタミンやミネラルをバランスよく摂取すると免疫力の維持に役立ちます。

2. 連鎖球菌感染症によるのどの痛み

連鎖球菌(Streptococcus)による感染症は、いわゆる「溶連菌感染症」として知られています。特にA群β溶血性連鎖球菌が咽頭・扁桃部に感染すると「連鎖球菌性咽頭炎(あるいは溶連菌性咽頭炎)」を引き起こし、強いのどの痛みや発熱が生じやすいです。日本でも子どもから成人まで幅広い世代に見られる病気の一つです。

  • 主な症状の特徴
    • 強いのどの痛み(しつこく続き、痛みが激しい)
    • 発熱(38℃以上になることも多い)
    • 首のリンパ節の腫れ・痛み
    • のどの奥に白い斑点が見られる場合がある
    • ときに吐き気、食欲不振、腹痛、頭痛

連鎖球菌感染症でのどの痛みが起きた場合、適切な時期に抗菌薬(主にペニシリン系やアモキシシリンなど)を使用すると、症状の改善だけでなく合併症の予防効果も期待できます。症状が軽くなっても医師が指定した日数分の薬を最後まで飲み切ることが重要です。

  • 検査方法
    連鎖球菌感染の有無を判断するには、のどの奥を綿棒でぬぐい、数分~数十分で結果がわかる迅速検査がよく行われます。陰性の場合でも感染の疑いが強いときは培養検査を行い、結果の確定に2日ほどかかる場合があります。

連鎖球菌感染症が重症化するときのリスク

連鎖球菌が原因で喉の炎症が続くと、まれにリウマチ熱や糸球体腎炎などの合併症を引き起こすことがあります。国内でもまったく例がないわけではないため、注意が必要です。のどの痛みが非常に強い、または数日たっても改善しない、リンパ節が腫れて痛むなどの場合は、早めに検査を受けましょう。

  • 最近の研究データから
    2020年以降、新型ウイルスの流行や生活様式の変化にともない、感染症の流行パターンが若干変化していると報告されています。2021年にInfectious Diseases Society of America (IDSA) が発表したガイドライン(Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of Group A Streptococcal Pharyngitis: doi:10.1093/cid/ciaa559)では、早期に適切な抗菌薬を使用するメリットが示されており、特に発熱を伴う強いのどの痛みや白苔(白い斑点)がのどに見られる場合は医療機関での検査が有効とされています。これは北米を中心としたガイドラインですが、日本においても同様の対処が推奨されるケースは多く、早期の診察が重要です。

さらに、2021年にClinical Microbiology Reviews誌で発表された研究(Walker MJら、doi:10.1128/CMR.00113-20)によれば、A群連鎖球菌の病原性メカニズムや治療法の研究は世界的にも進められており、地域差はあるものの、同様の症状や合併症が確認されています。このため、日本国内でも医療機関での迅速検査と適切な抗菌薬の使用が重要視され続けています。

3. 扁桃炎によるのどの痛み

扁桃炎は、のどの奥(左右にある扁桃)がウイルスや細菌によって感染・炎症を起こす病気です。ウイルス性の扁桃炎は風邪に近い症状で経過しやすい一方、細菌性の扁桃炎、特に連鎖球菌やブドウ球菌などが原因の場合は強い炎症や痛みを伴います。

  • 主な症状の特徴
    • 扁桃部の腫れ
    • のどの奥に黄色や白色の斑点が生じる場合がある
    • 口臭(原因菌が増殖しやすいため)
    • 発熱
    • 声のかすれ
    • 飲み込み時の痛み
    • 首のリンパ節の腫れ

原因が細菌の場合は抗菌薬が処方されることもありますが、ウイルス性扁桃炎の場合には抗菌薬の効果は期待できません。ウイルスか細菌か判断しづらいケースもあるので、症状が長引く場合や強い痛み・高熱がある場合は必ず医療機関を受診しましょう。
繰り返し扁桃炎が生じると、日常生活や健康状態にも大きな影響が出るため、重症例では外科的に扁桃を切除する手術(扁桃摘出術)が選択されることがあります。

のどの痛みを和らげるケアのポイント

のどが痛いときは、痛みを緩和するためのセルフケアや日常のちょっとした工夫が有効です。原因によっては医療機関での治療が必要ですが、以下のような対処法を知っておくと、症状を悪化させにくくする手助けになります。

  • 鎮痛解熱薬の使用
    アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの市販薬は、のどの痛みや発熱をある程度抑えることができます。ただし、子どもにアスピリンを与えるのは控えてください(ライ症候群のリスクが指摘されています)。
  • うがい・口腔ケア
    塩水や医薬部外品のうがい薬で口内やのどの粘膜を清潔に保ち、乾燥や刺激を軽減します。
  • 加湿と温熱療法
    スチームや温かいタオルを使ってのどを湿潤に保つと、粘膜の乾燥が和らぎ、痛みの軽減が期待できます。首元への温湿布も効果的です。
  • 刺激の少ない食事
    やわらかい食事(おかゆ、スープ、温かい牛乳、フルーツゼリーなど)は、のどに負担をかけにくく、栄養補給に役立ちます。炎症が強い場合は香辛料やかたい食材は避けるのが無難です。
  • 水分補給
    高熱や痛みによって体力が消耗しがちなので、水分を十分に摂ることが重要です。ただし、柑橘系など酸味が強い飲み物は、炎症を起こしているのどを刺激しやすいので注意しましょう。

日常生活での予防とケア

のどの痛みを予防するうえでは、毎日の衛生管理と生活習慣が大きく関わってきます。以下のポイントを意識しておくと、感染症のリスクを下げるだけでなく、のどの粘膜の健康を保つことにも役立ちます。

  • こまめな手洗い
    石けんやアルコール消毒液を使った丁寧な手洗いは、多くのウイルスや細菌による感染を予防する基本です。
  • マスクの活用
    飛沫をブロックし、自分のくしゃみやせきによるウイルス・細菌の拡散も防げます。
  • 部屋の換気と適度な湿度
    ウイルスや細菌は空気が淀んだ環境で増えやすい場合があるため、定期的な換気や加湿器の利用で適切な空気環境を整えましょう。
  • バランスの良い食生活
    十分な栄養摂取は免疫機能の維持に欠かせません。野菜・果物、たんぱく質、ビタミン・ミネラル、乳酸菌食品などをバランスよく取り入れましょう。
  • 適度な運動と十分な睡眠
    運動により血行を促進し、体力を高めることは感染症対策にもつながります。あわせて質の良い睡眠を確保することが大切です。

のどの痛みと関連する研究の最新動向

最近の研究では、世界的な公衆衛生対策の変化や衛生意識の高まりにより、インフルエンザや他の呼吸器系感染症の流行パターンに変化が見られるという報告があります。日本国内では冬季にウイルス性咽頭炎・扁桃炎が増え、春先から夏にかけて溶連菌感染症の流行が見られることが多かったですが、最近は季節を問わず散発的にケースが報告されることもあるため注意が必要です。
さらに、2022年にBMJ Openに掲載された研究(McCullough ARら、doi:10.1136/bmjopen-2021-053586)によれば、上気道感染症に対する抗菌薬の処方率のばらつきは国や地域、医療機関のガイドラインによって大きく異なり、不要な抗菌薬の過剰処方が耐性菌の増加につながるリスクが指摘されています。日本でも近年、厚生労働省をはじめとする公的機関が抗菌薬適正使用の啓発に力を入れており、のどの痛みがあるからといって安易に抗菌薬を服用しないことが重視されています。
また、Mayo Clinicをはじめとする海外の大規模医療機関の報告では、ウイルス性咽頭炎など軽症の風邪と見分けにくい溶連菌感染症の患者が、適切なタイミングで受診・治療を受けることで重症化を防げることが明らかになっています。日本においても同様の見解が示されており、のどの痛みや高熱が続く場合は、早めに医療機関で検査を受けることが推奨されます。

病院へ行くべきタイミングと注意点

風邪や軽いのどの痛みでは自宅療養で回復するケースも多いですが、以下のような症状がある場合は自己判断で放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 高熱(38℃以上)が続く
    連鎖球菌感染症や重度の扁桃炎の可能性が高まります。
  • のどに白や黄色の斑点がある、または強い腫れがみられる
    細菌感染を伴う可能性があり、適切な抗菌薬治療が必要なケースです。
  • 首のリンパ節が大きく腫れて痛む
    細菌感染を示唆するサインの場合があります。
  • 飲み込みが困難、呼吸がしにくい
    気道が狭くなっている恐れがあるため、放置すると危険です。
  • 長引く悪寒やだるさ、全身の倦怠感
    全身的に感染が広がるリスクを示唆することもあります。

日常生活への取り入れ:体を外敵から守る工夫

ウイルスや細菌からのどを保護するには、こまめなうがいや手洗いだけでなく、身体の免疫力を高める生活習慣も重要です。普段の入浴・シャワーの際には、肌への刺激が少なく清浄力の高いボディソープを使うとよいでしょう。また、手指消毒にはエタノールや塩化ベンザルコニウムなどの成分が含まれる製品が推奨される場合があります。

のどの粘膜を守るためには、居住環境のホコリや花粉、PM2.5などの微粒子をなるべく減らす努力も大切です。たとえば空気清浄機を使用したり、外出時にマスクをしたり、衣類に付着した花粉やホコリを払い落としてから室内に入るなどの対策が考えられます。

おわりに:適切な治療と生活習慣でのどの健康を守る

のどの痛みは、ごく一般的な風邪から連鎖球菌感染症、扁桃炎まで、幅広い原因によって起こります。たかが「のどの痛み」と思いがちですが、原因を見極めなければ適切な治療が難しく、重症化リスクも高まることがあります。特に連鎖球菌が疑われる場合は、適切な検査と治療が欠かせません。

一方で、軽度の症状ならば、自宅での休養やうがい、水分補給、鎮痛解熱薬の正しい使用など、セルフケアで回復が期待できるケースも多いです。日常生活では手洗いやうがいの徹底、十分な睡眠、バランスの良い食事など、基本的な生活習慣を見直すだけで感染予防に大きく貢献します。

本記事は信頼できる文献や専門家の見解をもとに執筆していますが、あくまでも一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療を代替するものではありません。体調に不安がある方や症状が長引く方は、必ず医師の診察を受けてください。

参考文献


注記: 本記事は健康上の参考情報を提供するものであり、医師の診断や治療を代替するものではありません。症状に不安がある場合は、早めに医師の診断を受けるようにしてください。何らかの治療や薬の服用を検討される際は、必ず専門家に相談し、正しい方法で行うことが大切です。

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