夜間の咳がひどいが熱はない子供たちへ:原因と対策
小児科

夜間の咳がひどいが熱はない子供たちへ:原因と対策

はじめに

子どもの夜間の咳は、たとえ熱がなくても保護者にとって大きな心配事です。寝ている間に突然咳き込む姿を見て不安になる方も多いでしょう。実際、夜間に咳が出る原因はさまざまで、必ずしも重篤な病気が隠れているわけではありません。ただし、場合によっては気管支系の疾患やアレルギーなど、早めの対処が必要な症状を示している可能性もあります。本記事では、子どもが夜間に咳き込む原因として考えられる主な要因や対処法、病院受診の目安などを詳しく解説します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事で紹介する情報は、主に小児の呼吸器症状に関する国内外の信頼できる医療情報、および公的機関や小児科医の見解をもとにまとめたものです。具体的には、Nemours KidsHealth、healthdirect、英国国民保健サービス(NHS)、raisingchildren.net.au、PubMed(ID:24507905 ほか)、Medical News Today、Insider、MyPharmacyなどの公的・学術的な情報源を参照しています。また、国内の医療従事者の経験や一般的な小児科診療の知見も踏まえています。さらに、本記事では2021年以降に発表された最新の研究も適宜取り入れ、より正確かつ最新の情報に基づいた解説を心がけました。ただし、あくまでも参考情報であり、個々の症状や病状には個人差があります。お子さまの状態が心配なときは、必ず医師や専門家にご相談ください。

子どもが夜に咳き込む主な原因

1. かぜ(感冒)

夜間の咳の原因として最も多いのが、いわゆる「かぜ(感冒)」です。かぜに伴う軽い~中程度の咳が就寝時に悪化することはよく見られます。寝ている体勢だと鼻や副鼻腔から分泌された粘液が喉に流れ込みやすいため、気道が刺激されて咳が出やすくなるのです。かぜによる咳は、以下のような症状と一緒に見られることがあります。

  • くしゃみ
  • 鼻づまり
  • のどの痛み

かぜの際、微熱が出ることもありますが、必ずしも発熱を伴うとは限りません。鼻水や痰(たん)が夜間に喉へ流れ落ちることで咳が出るため、寝る前に鼻水をしっかりかんだり、頭を少し高くしてあげたりすると、ある程度症状を和らげる効果が期待できます。

かぜの咳を改善するために

  • 鼻水をこまめにかむ・吸い出す
  • 就寝時に枕やクッションで上半身をやや高く保つ
  • 加湿器で室内を適度に保湿

2. 喘息(ぜんそく)

夜間に咳が出るときに考慮すべきもう一つの代表的な要因が、喘息(ぜんそく)です。とくに診断されていない潜在的な喘息や、コントロールが不十分な喘息の場合、夜間や早朝に咳が強く出ることがあります。喘息では気道が過敏になっているため、ほこりや花粉などの刺激物質で咳やぜいぜい・ヒューヒューという呼吸音が誘発されやすいのが特徴です。

喘息の子どもに見られる代表的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 喘鳴(ぜいぜい、ヒューヒューという呼吸音)
  • 息苦しさ(呼吸困難)
  • 胸の圧迫感や痛み
  • 呼吸が浅く、速くなる

夜間や季節の変わり目、ハウスダストなどに触れたときに症状が悪化することが多いとされています。咳が長引き、上記の症状が繰り返し起こる場合は、早めに小児科を受診しましょう。適切な治療により症状のコントロールが期待できます。

3. アレルギー

夜間の咳がアレルギーによるものであれば、体温が正常でも咳だけが出ることがあります。子どもがアレルゲン(花粉、ダニ、動物の毛など)にさらされると、鼻や喉が刺激されて咳が出る場合があります。とくに寝具に付着したダニやハウスダスト、ペットの毛などが原因になりやすいため、夜間に咳が出やすくなることがあるのです。

アレルギーによる咳の場合、しばしば次のような症状も伴います。

  • 鼻づまり、鼻水
  • 目のかゆみ
  • くしゃみ
  • 倦怠感(けんたいかん)

アレルゲンを特定し、取り除いたり回避したりすることで症状が軽減する可能性が高まります。寝具を定期的に洗濯・乾燥する、部屋の掃除をこまめにする、ペットの毛が付着しにくい環境にするなど、生活環境の整備が大切です。

4. 逆流性食道炎(胃食道逆流症:GERD)

胃の内容物や胃酸が何度も食道に逆流する逆流性食道炎(GERD)は、大人だけでなく子どもにも起こり得ます。横になるときに胃酸が食道へ逆流しやすくなるため、夜間に咳が誘発されやすくなるのが特徴です。しつこい咳に加えて、以下のような症状がみられることがあります。

  • 胸やけ
  • 嘔気、嘔吐
  • 口臭
  • 歯のエナメル質が溶ける
  • 胸部や上腹部の痛み
  • 飲み込みづらさ

食後すぐに横になる習慣や、脂っこいものや刺激の強い食品を摂りすぎることが原因で悪化することがあります。特に就寝前の食事はなるべく控えるようにし、どうしても食事の時間が遅くなる場合は、食後3時間ほど空けてから就寝させるようにするなど、生活リズムを見直すことが症状緩和のカギです。

5. 後鼻漏(こうびろう)による咳

鼻や副鼻腔から喉へ粘液が流れ込み(いわゆる後鼻漏)、気道を刺激して咳が出るケースもよくあります。かぜ、アレルギー、軽度の感染症などで粘液量が増加し、それが寝ている最中に喉へ落ちやすくなると、夜間の咳となって現れやすいのです。熱が出ないまま咳だけが続く場合、後鼻漏の可能性も考えられます。

後鼻漏が原因の咳は概して重症にはなりにくいものの、次のような症状を伴う場合があります。

  • のどの痛み
  • 口臭
  • 吐き気

鼻水対策、鼻腔の保湿、こまめな水分補給などで軽減することがあります。症状が長引く場合は、耳鼻咽喉科など専門医への受診を検討してください。

6. 呼吸器感染症の回復後(後遺症的な咳)

気管支炎、百日咳、クループ症候群(急性喉頭蓋気管支炎)などの感染症が治癒した後でも、気道の敏感さが残っているため、しばらく咳だけが続くことがあります。治癒後の咳は、以下のような疾患の経過で見られる場合があります。

  • 気管支炎: 熱や痰を伴う咳が特徴ですが、解熱後も数週間咳が続くことがある。
  • 百日咳: 激しい咳が長期間続き、子どもが呼吸困難で息を吸い込むときに「ヒュー」と音が出ることが多い。微熱が下がってからも10週間以上咳が残るケースがある。
  • クループ(急性喉頭気管支炎): 初期には発熱があることもありますが、発熱が治まった後で犬のほえるような咳が続くことがある。

これらの場合、咳が長く続くのは気道の炎症や過敏性が残っているからです。ただし、咳があまりに長引く場合や悪化傾向にある場合は医師の診察を受けてください。

7. 異物混入(気道内の異物)

とくに幼児は、口や鼻に小さな物を入れてしまうことがよくあります。おもちゃや小石、食べ物のかけらなどが気道に引っかかると、自然と咳が出て異物を排出しようとします。熱は出ないものの、急な咳き込みや片側の鼻だけが詰まるなどの症状が見られたら、気道への異物混入を疑いましょう。何か詰まっている可能性があるときは、すぐに医療機関を受診し、取り除いてもらうことが大切です。

8. 心因性の咳・緊張や不安による咳

子どもは緊張やストレス、不安を感じると、咳払いや咳を習慣的に繰り返すことがあります。夜間に特に咳が目立つ場合、暗闇や就寝が不安材料となっている可能性があります。その場合は、お子さんの気持ちを落ち着かせる声かけやリラックスできる環境づくりを心がけてください。子どもが話せる年齢であれば、不安の原因を具体的に聞き出し、安心感を与えることで咳が軽減することもあります。

夜間に咳き込むけれど発熱がない場合の重症度

夜間の咳があっても熱が出ない場合、多くは軽度のかぜやアレルギーなど、命にかかわる深刻な疾患ではないことがほとんどです。ただし、喘息や百日咳などの場合は、咳が長引いたり、呼吸困難を引き起こしたりする可能性があります。次のような症状が見られたら、早めに小児科医や専門医の診察を受けることをおすすめします。

  • 咳が4週間以上続く
  • 咳が徐々に悪化している
  • 痰の量や色が変化し、血が混じる、ピンク色になる
  • ぜいぜい、ヒューヒューという呼吸音がする
  • 呼吸が浅く、苦しそうにしている
  • 胸の痛みを伴う
  • 咳で眠れないほどつらそう
  • 唇や指先が青紫色に変化する
  • 発熱があとから出てきて、高熱になる

子どもの夜間の咳を和らげる方法

1. 市販のせき止めシロップやドロップの活用

症状が軽度の場合、市販の子ども用の咳止めシロップやのど飴(ドロップ)などを適切に使用することで、ある程度の緩和が期待できます。ただし、子どもの年齢や体重によって使用できる薬は異なるため、薬局などで薬剤師に相談してから購入してください。安易に使用量を増やすと副作用リスクが高まるので、用法・用量を必ず守りましょう。

2. 家庭で実践できるケア

軽度のかぜやアレルギーなどが原因で夜間の咳が続く場合は、次のような家庭ケアを試してみてください。

  • 加湿器などで室内の湿度を適切に保つ
    乾燥した空気は気道を刺激し、咳を悪化させやすいため、湿度を50~60%程度に保つとよいとされています。
  • こまめに鼻水を除去
    小さい子どもは自分で上手に鼻をかめないことが多いので、スポイトや市販の鼻吸い器を使って鼻水を吸い出し、後鼻漏を防ぎます。
  • 温かい蒸気を吸わせる
    お風呂の蒸気を吸ったり、洗面器にお湯をはって湯気を吸い込ませたりすると、鼻や喉が潤い、咳や鼻づまりの軽減が期待できます。
  • 体を冷やさないように注意
    季節の変わり目や冷え込む夜間には、掛け布団やパジャマなどで保温に気をつけます。ただし、過度な厚着による汗で逆に体が冷えたり、寝苦しくならないよう工夫しましょう。
  • 扇風機やエアコンの風を直接当てない
    風が直接当たると気道が乾燥しやすくなるだけでなく、温度変化による刺激で咳が出やすくなる可能性があります。
  • 水分補給をしっかり行う
    のどや気道を潤すために、白湯やハーブティーなど、のどにやさしい温度の飲み物を少しずつ飲ませましょう。ハチミツ入りのお茶(1歳以上の場合)やしょうが湯なども、のどをうるおすのに有用です。
  • 就寝前の食事を控える(逆流性食道炎が疑われる場合)
    就寝直前に食べると、胃の内容物が逆流しやすくなります。就寝までに2~3時間空けるのが理想です。
  • アレルゲンや刺激物の除去
    ハウスダスト対策としてこまめに掃除し、寝具を清潔に保ちましょう。ペットを飼っている場合は、寝室に入れない工夫も検討してください。

こうした対処によって咳が軽減されることも多いですが、症状が改善しない場合や悪化する場合は医師の診断を受けてください。

病院を受診すべきタイミング

夜間の咳が長期化したり、呼吸の乱れや他の異常症状が見られるときは、早めに医療機関を受診しましょう。特に次のようなケースでは、専門的な検査や治療が必要になる可能性があります。

  • 4週間以上にわたって咳が続く
    かぜなどの一過性の症状ではない可能性が高まります。
  • 咳の頻度や強さが増している
    悪化傾向にある場合は、気管支炎や喘息などの進行、あるいは別の疾患の併発などを疑う必要があります。
  • 呼吸困難、ぜいぜい音、胸の痛み、チアノーゼ(唇や爪の色が青紫)などが伴う
    気道や肺に深刻な問題がある可能性があります。
  • 咳に血が混じっている、またはピンク色の痰が出る
    重大な肺や気道の疾患のサインである場合があります。

最新研究から見る子どもの咳の対処

夜間の咳については、小児の慢性咳や持続的な咳をテーマにした国内外の研究が増えてきています。たとえば、2021年に発表された“Managing Cough in Children: The Next Steps”(Pediatric Pulmonology, 56巻2号, 298–304, doi:10.1002/ppul.25137)では、咳が4週間以上続く慢性咳のマネジメントについて新たなエビデンスを紹介しています。この研究はオーストラリアの研究グループが主体となり、多くの臨床データを解析した結果、気管支拡張薬や吸入ステロイドの適切な使用、環境要因の排除(タバコの煙、ハウスダストなど)、そして感染症の早期治療が長引く咳の改善に有効であると指摘しました。
この知見は日本国内でも大いに参考になりますが、子どもの咳の背後にはさまざまな要因が潜んでいるため、原因究明と医師の指導のもとで対策を講じることが大切です。

まとめと注意点

子どもが夜間に咳き込むのは珍しいことではありません。熱がない咳の多くは、かぜやアレルギーなど比較的軽度な原因により引き起こされ、家庭でのケアや生活習慣の見直しで軽快するケースも少なくありません。しかし、喘息や百日咳、気道に異物が入った場合など、適切な治療や医療介入が必要となる場合もあります。次のような点を常に意識しましょう。

  • 原因を特定する努力
    どのタイミングで咳が増えるのか、どのような症状が併発しているかを観察し、メモを取っておくと、医師の診断に役立ちます。
  • 自己判断で薬を多用しない
    子ども用の市販薬の使用には年齢制限や注意事項があります。安全性を最優先し、わからない場合は必ず薬剤師や医師に相談してください。
  • 長引く場合や悪化する場合は早めに受診
    4週間以上続く咳や、呼吸が苦しそうな症状を伴う場合は医師の診察を受けましょう。
  • 生活習慣の見直しと環境整備
    部屋の空気を清潔に保つ、適度に加湿する、アレルゲンの除去に努めるなど、日常環境を整えることが咳の予防と軽減に大いに役立ちます。

重要なポイント: 子どもの咳が長引いたり、深刻な呼吸症状が見られたりするときは、自己判断ではなく必ず医師に相談し、適切な検査や治療を受けましょう。本記事の情報はあくまでも参考であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。

参考文献

免責事項: 本記事の内容は情報提供のみを目的としており、医療専門家による診断・治療の代替ではありません。お子さまの症状に不安がある場合や、特に症状が長引いたり悪化している場合は、必ず医師や専門家にご相談ください。

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ