大腸がんステージ1:治療法と予後
がん・腫瘍疾患

大腸がんステージ1:治療法と予後

はじめに

大腸がんは多くの方にとって気になる病気の一つです。その中でも大腸がんの初期段階であるとされる「大腸がんステージ1(以下、ステージ1)」は、比較的治療成績が良好だとされています。実際に、早期段階であればあるほど、治療後の再発リスクが低く、生存率も高い傾向にあります。本稿では、ステージ1の大腸がんの特徴や主な治療法、生活上の注意点などを幅広く解説します。さらに、最新の研究知見も紹介しながら、治療や予後に影響を与える要因について詳しく触れていきます。大腸がんに関する基本的な理解を深め、早期発見・早期治療の重要性を再確認していただければ幸いです。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事で取り上げる情報は、がんに関する公的機関や海外の医療機関(たとえばCancer Research UKMayo ClinicCleveland Clinicなど)の情報をもとに整理したものです。大腸がんの治療や診断方針は、患者さんごとの病状や体力、合併症など多岐にわたる要素によって変わってきます。従って、実際の治療方針や検査内容については、必ず専門家(医師)の判断を仰いでください。本記事はあくまで参考情報であり、個別の医療行為を指示するものではありません。

大腸がんステージ1とは何か

大腸がんが発生する仕組み

大腸がんは、大腸内壁にできたポリープという良性の組織が長い時間をかけてがん化し、悪性の腫瘍となることで発症するといわれています。初期のポリープは小さく無症状であることがほとんどですが、徐々に増殖・変異を重ねるとがん細胞へと変化し、腸管内で浸潤や転移を起こす恐れがあります。

ステージ1の特徴

  • 大腸壁への浸潤が限られる
    ステージ1は、がん細胞が腸管の内側の粘膜層から筋層へ達している段階です。しかし、腸管のさらに外側やリンパ節、遠隔臓器(肝臓や肺など)には広がっていないのが特徴です。
  • 転移なし
    この段階では、リンパ節転移や他臓器への遠隔転移は認められません。
  • 早期治療が有効
    腸の内壁にがんがとどまっているため、手術による切除などの局所療法によって取り除きやすく、再発リスクも比較的低いとされています。

大腸がんステージ1の主な症状

大腸がん全般にいえることですが、初期の段階でははっきりとした症状が出にくいため、便通の乱れや腹部の不快感などが見られても、ほかの消化器疾患と区別しにくい場合が多いです。特にステージ1は腸管粘膜内や筋層までの浸潤にとどまっていることが多いため、無症状で経過する例も少なくありません。ただし、次のような症状が 3週間以上 持続する場合は、念のため医療機関を受診することが推奨されます。

  • 便通の変化が続く
    下痢や便秘が長引く、あるいは下痢と便秘を繰り返す。
  • 便に血液が混じる
    便表面に赤い血が付着する、あるいは黒色便が出る。
  • 腹部膨満感や痛み
    特に下腹部や左右どちらかに限定した痛み・張り感。
  • 嘔気・嘔吐
    原因不明の吐き気や嘔吐が続く。
  • 原因不明の体重減少や疲労感
    食事量が変わらないのに痩せてくる、日常的に強い疲れを感じる。

これらの症状は、大腸がんに限らずさまざまな腸疾患や消化器系の不調でもみられるため、自己判断だけでは区別が難しいことがあります。早期発見が予後に直結することを考慮すると、気になる症状が続く場合は医師に相談し、適切な検査を受けることが重要です。

ステージ1大腸がんの治療法

ステージ1であれば、手術によって腫瘍を切除し、場合によってはその後の補助療法を行うことで高い治療効果が期待できます。以下に主な治療法を示します。

1. 内視鏡的切除(ポリペクトミーや内視鏡粘膜下層剝離術など)

  • 適応になるケース
    腫瘍の大きさが比較的小さく、粘膜内あるいは粘膜下層の浅い部分までの浸潤にとどまっている場合、内視鏡検査と同時に病変を切除することが可能です。
  • 特徴
    お腹を大きく切らずに済むため、身体の負担が少ないという利点があります。しかし、切除後の病理検査で切除断端(腫瘍を切り取った際の端)にがん細胞が及んでいることが判明したり、リスクが高い組織型であった場合には、追加で外科的切除を行う必要が出てくる可能性があります。

2. 外科的手術

  • 大腸切除術
    がんが大腸壁の筋層にまで浸潤している場合や、内視鏡的切除だけでは不十分な場合は、外科的にがんを含む腸管の一部と隣接リンパ節を切除します。その後、切除した部分の両端を吻合して腸の通り道を再建します。
  • リンパ節郭清
    ステージ1であっても、病理検査でリンパ節やその周囲への転移が懸念される場合には、再発防止を目的にリンパ節郭清を行うことがあります。

3. 化学療法(抗がん剤治療)の補助

一般的に、ステージ1の大腸がんでは術後の化学療法は行わないことが多いです。しかし、がんの性質が非常に悪性度が高いと判断される場合や、切除断端にがん細胞が残存する可能性が否定できない場合には、再発予防のために術後化学療法を検討することがあります。

補足:患者さんが高齢、あるいは基礎疾患などで全身状態が良くないために大きな手術に耐えられないと判断された場合、内視鏡的治療や化学療法のみで経過をみる場合もあります。ただし、これらの選択肢は外科的治療より再発リスクや治療効果の面で劣る可能性があるため、主治医との十分な相談が必要です。

ステージ1大腸がんの予後

生存率について

統計的には、大腸がんステージ1の患者さんが診断後5年生存できる割合は、約90%程度と報告されています。実臨床でも、早期発見・早期治療を徹底すれば、それ以上の治療成績が得られるケースも多いです。ただし、生存率は以下のような要因によって異なります。

  • 腫瘍の性質(組織学的特徴)
    高分化がんか低分化がんか、リンパ管や血管への浸潤がみられるかどうかなど。
  • 切除断端の状態
    内視鏡治療や外科手術で切除した際、がん細胞が取りきれているか(断端に腫瘍細胞が残っていないか)。
  • 患者さんの体力や合併症の有無
    全身状態や基礎疾患がある場合、治療後の回復力や追加治療の選択肢にも影響を及ぼします。
  • 腫瘍マーカー(CEAなど)の値
    血中のがん関連マーカーが高いまま残ると、再発リスクを慎重に観察する必要があります。

治療後の定期検査

術後は再発や新たな腫瘍の発生を早期発見するため、定期的な内視鏡検査や画像検査、血液検査(CEAなど)を受けることが推奨されます。目安として、術後2〜3年は3〜6か月に1回程度のペースで検査を行い、その後は年1回程度のフォローアップを継続することが多いです。ただし、患者さんのがんの特徴や主治医の方針によって検査頻度は変わる場合があります。

最新の研究知見と補足情報

  • 早期スクリーニングの有効性
    近年、日本国内でも便潜血検査や大腸内視鏡検査の定期的なスクリーニング受診率を高める取り組みが進められています。2021年に公表された国際的な大規模調査(Sung Hら, 2021, CA Cancer J Clin, 71(3), 209-249, doi:10.3322/caac.21660)では、大腸がんによる死亡率を低減する最も効果的な戦略の一つとして「定期的な大腸内視鏡検査」が挙げられ、早期発見に直接結びつくことが指摘されました。
  • 大腸がん若年化の指摘
    一部の報告では、比較的若年層(40代以下)でも大腸がんが増加傾向にあることが示唆されています。たとえば、Siegel RLら (2022, CA Cancer J Clin, 72(1), 7-33, doi:10.3322/caac.21708) の解析では、欧米を中心に大腸がんの発症年齢がやや低下傾向にあるとされています。日本でも生活習慣や食事の欧米化が進み、同様の傾向を示す可能性があります。症状が軽微だからといって放置せず、若年層でも必要に応じて早期検査を検討することが推奨されます。
  • 生活習慣の影響
    飲酒や喫煙、肥満、肉中心の食生活などは大腸がんリスクを高める要因の一つとされています。特に過度の飲酒と喫煙はポリープの形成や進行に影響する可能性があり、早期がんの再発リスクにも絡むとする研究があります。

まとめと推奨

大腸がんステージ1は、腫瘍がまだ筋層までの侵襲にとどまり、リンパ節や他臓器への転移が見られない段階です。このため、内視鏡的切除や外科手術で完全に切除できる可能性が高く、予後も良好です。平均的には5年生存率が約90%とされており、早期発見・早期治療が極めて重要です。下記に大切なポイントを再度整理します。

  • 異常を感じたら早めに受診
    便通異常(下痢・便秘・血便)が続く、原因不明の腹部痛や体重減少がある場合は、早い段階で内視鏡検査や画像検査を検討しましょう。
  • 手術が主な治療
    ステージ1の大腸がんでは、内視鏡的治療あるいは外科的手術による切除が中心となります。補助的に化学療法が行われる場合もありますが、多くは手術のみで予後が良好です。
  • 再発を防ぐ術後管理
    術後のフォローアップ検査は再発の早期発見に不可欠です。主治医の指示に従って定期的に受診し、必要な検査を怠らないようにしましょう。
  • 生活習慣の見直し
    食事のバランスを整え、定期的な運動を行い、喫煙や過度な飲酒を控えるなど、がん全般のリスクを下げる健康的な生活習慣を心がけましょう。

重要: 大腸がんは性別・年齢を問わず発症する可能性があります。特に食習慣の変化や高齢化が進む現代社会では、今後もさらに注目度が高まる疾患となるでしょう。ステージ1で発見できれば治療成績は非常に良いとされていますが、症状が乏しいことも多いため、定期的な検診や内視鏡検査を受ける習慣をつけることが大切です。

参考文献

  • Stage 1. Cancer Research UK(アクセス日:2023年3月2日)
  • Survival. Cancer Research UK(アクセス日:2023年3月2日)
  • Treatment of Colon Cancer, by Stage. American Cancer Society(アクセス日:2023年3月2日)
  • Colorectal Cancer Stages. American Cancer Society(アクセス日:2023年3月2日)
  • Symptoms-Bowel cancer. NHS(アクセス日:2023年3月2日)
  • Colon cancer. Mayo Clinic(アクセス日:2023年3月2日)
  • Colorectal (Colon) Cancer. Cleveland Clinic(アクセス日:2023年3月2日)
  • Sung H ら (2021) “Global Cancer Statistics 2020: GLOBOCAN Estimates of Incidence and Mortality Worldwide for 36 Cancers in 185 Countries.” CA Cancer J Clin, 71(3):209–249, doi:10.3322/caac.21660
  • Siegel RL ら (2022) “Cancer Statistics, 2022.” CA Cancer J Clin, 72(1):7–33, doi:10.3322/caac.21708

注意事項(必ずお読みください)

  • 本記事は医療や診断の最終的な判断を目的としたものではありません。個別の症状や病状に合わせたアドバイスや治療法は、人によって異なりますので、必ず担当医や専門家にご相談ください。
  • 本記事に含まれる情報は、信頼できると考えられる最新の公的機関・医学論文・医療情報に基づいて整理していますが、研究の進展や新しい治療法の導入などにより内容が変わる可能性があります。常に新しい情報を確認し、疑問点があれば医師や医療機関へ相談することをおすすめします。

本記事が、大腸がんステージ1に関する理解を深める一助になれば幸いです。日々の生活習慣を整え、定期的な検診を受けながら、早期発見・早期治療につなげることが何よりも大切です。どうぞお大事になさってください。

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