大腸がん検診の方法とは?| 健康を守る最新のチェックガイド
がん・腫瘍疾患

大腸がん検診の方法とは?| 健康を守る最新のチェックガイド

はじめに

大腸がんは、日本において依然として重大な健康問題の一つとされています。早期に発見することができれば、治療の選択肢が広がり、生存率の向上につながることが多くの研究から示唆されています。特に、定期的なスクリーニング検査によってがんの前段階であるポリープの段階や、まだ症状が軽微な段階でがんを捉えることができるため、死亡リスクを低減する可能性が高まります。

しかし、どの検査がどのように行われ、どんな準備が必要なのかを把握することは、多くの方にとって決して容易なことではありません。年齢やリスク要因によって推奨される検査が異なる場合もあり、さらに検査の種類も複数存在しているため、混乱しやすい分野でもあります。そこで本記事では、大腸がんスクリーニングにおける主な検査方法と、それぞれがどのような特徴を持つのかを詳しく解説します。また、どの年齢から、どのようなリスクを持つ場合に検査を始めるべきか、検査前に知っておきたい注意点などについても触れます。

なお、本記事の内容は医療専門家の意見を基にした情報を用いてまとめています。あくまでも参考情報であり、実際に検査や治療を行う際には医師などの専門家へ相談することを強くおすすめします。

専門家への相談

この記事の信頼性を高めるために、文中で言及している情報の一部は、以下の組織や機関を通じて確認されています。具体的には、がんに関する包括的な情報を提供している BV Ung Bướu TP. Cần Thơなどが挙げられます。同組織は大腸がんを含む各種がんに対して患者向けに啓発活動を行っている機関です。日本国内の検診ガイドラインや専門学会の指針と合わせて活用し、自身の健康状態に合った検査やケア方法を選択するよう心掛けてください。

大腸がん検査の種類

大腸がんの早期発見には、複数のスクリーニング検査が存在しています。ここでは、一般的によく知られている代表的な検査方法について、その概要と特徴を解説します。いずれの検査にも長所と短所があるため、実施時期や自身のリスク要因に応じて、主治医と相談しながら最適な方法を選ぶことが大切です。

内視鏡検査

内視鏡検査は、大腸がんスクリーニングの中でもとりわけ広く行われている方法です。長く柔軟性のあるチューブ(内視鏡)の先端にカメラが取り付けられ、医師がモニターを通して大腸や直腸の全域を直接観察できます。ポリープやがんが疑われる病変があった場合、その場で組織を採取(生検)できる利点があります。採取された組織は顕微鏡で調べられ、悪性か良性かを確認します。

  • 検査のメリット
    • 視認性が高く、ポリープや初期がんを見逃しにくい。
    • ポリープを同時に切除可能な場合が多く、がん化のリスクを低減する。
  • 検査のデメリット
    • 前処置として腸内を空にするための下剤服用が必要で、やや負担がある。
    • チューブ挿入時に不快感を覚えることがある。
    • まれに穿孔などの合併症が起こる可能性がある。

現在、日本でも内視鏡検査の有用性を支持する研究が増えており、国際的にも「大腸がんの早期発見には内視鏡検査が最も感度が高い」という一致した見解が多くみられます。例えば、2022年に発表されたNordICC試験(Bretthauerらによる大規模臨床試験)では、内視鏡による定期スクリーニングを受けた群では、大腸がん発症率および関連死リスクが明確に低減する傾向が示唆されています(doi: 10.1056/NEJMoa2208375)。

血液検査

血液検査のみで大腸がんの有無を直接確定診断することはできませんが、全体的な健康状態を把握し、追加検査や治療方針を決定する上で重要な指標となります。医師は患者の症状や既往歴を踏まえ、適切な血液検査の種類を選択します。主に以下の項目が検査に含まれます。

  • がん指標検査(CEA)
    一部のがん細胞はCEA(癌胚抗原)を血液中に放出するとされ、CEA値が高い場合は大腸がんを含む悪性腫瘍の可能性が示唆されます。ただし、喫煙習慣や肝疾患など、がん以外の要因でも上昇することがあるため、CEA値のみでがんを断定することはありません。
  • 全血球計算(CBC)
    赤血球、白血球、血小板など血液を構成する細胞の数や種類を調べます。大腸がんの場合、腫瘍からの慢性的な出血によって貧血が起こることがあり、CBCにより早期の段階で変化を捉えられる可能性があります。
  • 肝機能検査
    大腸がんは進行すると肝臓への転移が生じやすいといわれます。肝機能に異常が認められた場合、がんの転移やその他の肝疾患の有無を確認するために、さらに詳しい検査が行われることがあります。

便潜血検査

便潜血検査は、医療機関で最初のスクリーニングとして推奨されることが多い方法です。大腸内に病変(ポリープやがん)が存在すると、わずかながら便とともに血液が排出される可能性が高くなります。便の中に目視では確認できない微量の血液を調べることで、大腸がんの早期発見につなげる狙いがあります。

  • 便の免疫化学検査(FIT)
    血液中のヘモグロビンをヒト特異的に検出する方法です。食事やくち腔内出血の影響を受けにくい特徴があります。
  • グアイアック便潜血検査(gFOBT)
    便中のヘモグロビンが持つ過酸化酵素活性を利用して血液の存在を検出します。ただし、肉や一部の食品でも偽陽性が出る可能性があるため、食事制限が必要な場合があります。
  • 便DNA検査
    便に混在する細胞や血液中に含まれる遺伝子変異を調べる手法です。精度向上が期待される一方、まだ保険適用や実施施設に制約があるケースもあるため、適用には専門家の判断が必要です。

アメリカでは、平均リスクの成人が毎年もしくは2年に1回の便潜血検査を受けることで大腸がん死亡率を低減できるとする複数の研究結果が示されています。一方、より感度の高い内視鏡検査や便DNA検査などを組み合わせることで、潜在的ながんの見逃しを減らす方法も議論されており、今後もさらなるエビデンスの蓄積が期待されます。

画像診断検査

画像診断にはX線検査(バリウム注腸検査)、超音波検査、CT、MRIなどが含まれます。これらは内視鏡検査に比べると直接的な病変の観察は難しいものの、大腸内のポリープや腫瘍の位置・大きさを把握したり、周辺組織やリンパ節への浸潤・転移状況を調べたりするのに有用です。

  • バリウム注腸X線検査
    バリウムという造影剤を注入し、大腸の内部形態をX線画像で確認します。近年は内視鏡検査の普及により実施頻度は減少傾向ですが、一定の評価を得ている検査です。
  • CTコロノグラフィ(仮想内視鏡)
    コンピューター断層撮影(CT)画像を用い、大腸内部を3D画像で再構築して仮想的に観察する方法です。実際に内視鏡を挿入しないため、侵襲性が低い一方で、小さな病変の見落としや、異常が発見された場合の組織生検ができないなどの課題もあります。
  • MRI
    腫瘍の広がり具合やほかの臓器との位置関係を詳細に調べることが可能です。肝臓などへの転移評価にも有用です。

なお、画像診断のみで最終的ながん診断を行うことは困難な場合が多く、疑わしい所見があれば内視鏡検査による確認が不可欠です。

大腸がん検査前の注意事項

大腸がんの早期発見にはスクリーニングが欠かせませんが、実際に検査を受けるにあたっては、いくつかの注意点や検査開始時期の目安があります。アメリカがん協会や欧米諸国の主な医療ガイドラインでは、一般的なリスクを持つ方に対しては45歳からの定期スクリーニングを推奨する傾向が近年強くなっており、これは2021年にAmerican Cancer Society (ACS)が発表したガイドライン改訂(doi: 10.3322/caac.21676)でも言及されています。日本においても医療機関や専門家の間で45歳前後からの受診を勧める声が広がりつつありますが、従来は50歳以上での検査推奨が主流でした。今後のエビデンスや世界的動向をふまえた方針の見直しにより、日本国内でも開始年齢がさらに若年化する可能性があります。

加えて、以下のリスク要因を持つ方は、45歳よりも前にスクリーニングを始めることが勧められます。

  • 家族や自身の大腸がん、または大腸ポリープの既往歴
  • 慢性の大腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎
    これら炎症性腸疾患を長期間患っている方は、大腸粘膜に変性が起こりやすく、がん発生リスクが高いと考えられています。
  • 大腸がんの遺伝性症候群(家族性大腸腺腫症、リンチ症候群など)の家族歴

また、大腸がんに特有な症状として、排便習慣の明らかな変化(便秘や下痢が続く、便秘と下痢を繰り返すなど)、腹痛、消化不良、食欲不振、直腸出血、黒い便、便中の血液などが挙げられます。これらの症状が出現した場合はできるだけ早く医療機関を受診し、その原因を突き止めることが大切です。がん以外の良性疾患でも類似の症状が現れることがありますが、万が一大腸がんであった場合、早期の段階で発見できれば治療成績が大きく異なります。

大腸がん検査実施時のポイント

スクリーニング検査や精密検査を受ける前に、いくつか理解しておきたいポイントがあります。

  • 検査前の食事制限・下剤の使用
    特に内視鏡検査やバリウム注腸X線検査を受ける場合、腸内を空にする必要があるため、検査前日の夜から食事制限や下剤の服用が指示されることが一般的です。
  • 生活習慣の見直し
    喫煙や過度の飲酒は大腸がんだけでなく多くのがんリスクを高めます。検査を機に生活習慣を見直し、バランスの良い食生活や適度な運動を心がけるといった予防策が有効です。
  • 定期的な受診の必要性
    一度検査を受けて「異常なし」と判断されても、長期間何もせずに放置すると新たにポリープができたり、がんが発生するリスクはゼロにはなりません。医師の推奨する間隔で継続的にスクリーニングを受けることが重要です。

結論と提言

大腸がんは日本でも患者数が多い一方で、早期に発見し適切な治療を行うことで、長期的な予後改善が十分に期待できるがん種の一つです。内視鏡検査や便潜血検査、画像診断など、それぞれの方法の特徴を理解し、自分や家族のリスク要因に合わせた形でスクリーニングを受けることが望まれます。

  • 検査開始年齢の目安
    一般的には45歳からのスクリーニングが強く推奨される流れになりつつあります。特にリスク要因(家族歴、慢性の炎症性腸疾患、遺伝性症候群など)がある方は、さらに若い年齢からの検査を検討してください。
  • 定期的な再検査
    一度だけの検査ではなく、数年ごとに定期的に検査を受けることが、がんの早期発見において極めて重要です。
  • 内視鏡検査の積極的活用
    感度が高く、その場でポリープ切除ができる内視鏡検査は、大腸がん予防の最前線を担う方法といえます。下剤の服用や検査時の負担はあるものの、長期的な健康管理の観点から大きなメリットが期待できます。
  • 生活習慣の管理
    大腸がんの発生には、肥満、喫煙、過度な飲酒、食物繊維の少ない食事などが関連するとされています。検査の結果が良好でも、日々の生活習慣を整えることで、将来的な発症リスクを下げることにつながります。

万が一、検査結果で異常を指摘された場合でも、確定診断の段階で良性ポリープや初期がんであれば、内視鏡的に治療が可能となるケースが多いです。重篤な状態に進行する前に対処できるかどうかは、結局のところ「いつ検査を受けるか」に大きく左右されます。早期発見と早期治療が、長期的に見て健康を支えるための最も重要なステップといえるでしょう。

重要なポイント

  • 大腸がん検査は早期発見と予後改善の鍵
  • 自身のリスク要因や家族歴を把握し、適切な年齢で検査を開始
  • 検査結果が良好でも安心しきらず、生活習慣の見直しと定期検査を続ける

おすすめの受診・フォローアップ体制

  • 主治医との連携
    個人のリスク要因や健康状態によって、最適な検査プランは異なります。特に慢性の腸疾患を持つ方や、家系的に大腸がんの多い方は、より早期からの内視鏡検査や頻回なフォローアップが必要となる場合があります。
  • 専門医・専門施設の選択
    大腸内視鏡検査に長けた専門医や内視鏡専門施設では、挿入時の不快感を軽減するための工夫や、最新の画像強調技術を導入しているところもあります。快適さと精度の高さを考慮し、信頼できる医療機関を選ぶことが望ましいでしょう。

将来的な展望と研究動向

近年、大腸がんのスクリーニングや早期診断に関する研究はさらに加速しており、新たな技術や検査法の開発が盛んに行われています。たとえば、遺伝子解析の進歩によって、より高感度な便DNA検査や血液中の循環がん細胞(CTC)を検出する技術などが注目されています。今後、これらの技術が実用化されることで、大腸がんを含む多くの消化器系がんのスクリーニング精度が飛躍的に向上する可能性があります。

一方で、こうした新しい検査法は一般的に高額になりやすいことや、普及には時間がかかるといった課題があります。そのため、多くの国や地域の医療ガイドラインでは、まずは内視鏡検査や便潜血検査、画像診断など、すでに確立されている方法を定期的かつ継続的に行うことを推奨しています。

参考文献


本記事の情報は、海外の医学的エビデンスや各国のガイドライン、専門家の意見をもとに作成されていますが、最終的な判断や治療方針の決定は医師や専門医との相談が不可欠です。特に既往歴や家族歴などのリスク要因をお持ちの方は、早めに医療機関で相談し、定期的なフォローアップを受けることをおすすめします。また、本記事の内容はあくまで参考情報であり、特定の検査や治療を一律に推奨するものではありません。

免責事項
本記事は医療従事者による公式の診断・指導に代わるものではありません。具体的な検査や治療については、必ず医療機関で医師に相談してください。

以上の点を踏まえ、一人ひとりの状況に応じた検査を受け、健康を守っていきましょう。日常生活での予防や早期発見への取り組みが、長い目で見て自身の安心につながるはずです。万が一、体調に気になる変化があれば放置せず、適切な検査を受けることで、その後の選択肢を大きく広げることが可能です。大腸がんスクリーニングを正しく理解し、適切なタイミングで実行することで、多くの方が健康な生活を送れるよう願っています。

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ