女性のための骨盤底筋エクササイズ5選:性健康を向上する秘訣
スポーツと運動

女性のための骨盤底筋エクササイズ5選:性健康を向上する秘訣

はじめに

私たちの骨盤内には、膀胱や子宮、直腸などを下から支える骨盤底筋群(以下、「骨盤底筋」と表記)があり、この筋群が弱くなると排尿・排便障害、子宮などの骨盤内臓器の下垂、さらには性交痛や性的満足度の低下など、生活の質に大きな影響が及ぶことがあります。とくに妊娠・出産後は骨盤周辺への負荷が高まるため、多くの女性が「骨盤底筋が緩んだかもしれない」と感じることがあります。そこで、骨盤底筋を鍛えることで、尿失禁の予防や改善、骨盤内臓器の下垂防止、さらには性生活の質の向上など、多くのメリットが期待できます。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、骨盤底筋の役割や、その強化につながる代表的な5つのエクササイズを詳しくご紹介します。なぜ骨盤底筋が大切なのか、どのように鍛えるのかを理解することで、ご自身の健康や快適な生活に役立てていただければ幸いです。

専門家への相談

本記事では、女性の骨盤底筋の強化や健康維持に関する一般的な情報を取り上げています。また、文中で触れる一部の情報は、医師(内科・内科総合診療)として経験を持つNguyễn Thường Hanh」氏による医学的監修をもとに再編集しています。ただし、この情報はあくまで参考であり、個々の症状やリスク、治療法の選択などは必ず専門家に確認してください。

骨盤底筋とは何か?どのように確認できるのか

骨盤底筋は、尾骨(しっぽの骨)から恥骨まで広がり、骨盤内にある膀胱・子宮・直腸などを下から支えるクッションのような役割を果たしています。実は、この筋肉が収縮することで膣口や肛門が締まり、反対に弛緩するとそれらの開口部がゆるむという仕組みになっています。

骨盤底筋の主な役割

  • 膀胱や子宮など、骨盤内臓器を下から支える
  • 尿道や肛門の開閉コントロールに寄与する
  • 性交時の快感や膣周辺の圧迫力に関わる
  • 妊娠時に胎児を支え、出産時には産道をサポートする

骨盤底筋が弱くなる原因としては、妊娠・出産、加齢、肥満、重い物を頻繁に持ち上げる作業、慢性的な咳や便秘などが挙げられます。骨盤底筋が衰えてしまうと、次のような問題が起こりやすくなるため注意が必要です。

  • くしゃみや大笑いをしたときに尿が漏れる(腹圧性尿失禁)
  • おならが我慢できなくなる
  • 膀胱脱や子宮脱といった骨盤臓器脱のリスクが高まる
  • 性交痛やオーガズムの低下

実際に骨盤底筋を意識するには、トイレ時に一時的に尿の流れを止めようとする動きで確認できると言われています。ただし、排尿時に毎回止めるトレーニングを行うと膀胱に負担をかける恐れがあるため、あくまでも「筋肉の位置を把握するための目安」として、頻用は避けてください。

骨盤底筋を鍛えるメリット

  • 尿失禁や便失禁の予防・改善
  • 性交時の快感向上や性交痛の軽減
  • 出産後の骨盤回復や骨盤内臓器の下垂リスク低減
  • スタイル維持や姿勢サポートへの貢献

骨盤底筋トレーニングの有効性は、近年の研究でも繰り返し示されています。たとえば、2022年に「Female Pelvic Medicine & Reconstructive Surgery」誌に掲載された無作為化対照試験では、骨盤底筋を含む物理療法が過活動膀胱や尿失禁の改善に有用であると報告されています(Komesu YM ほか, 2022, DOI:10.1097/SPV.0000000000001210)。さらに、2022年「BJOG」誌に発表されたシステマティックレビューでは、骨盤底筋群の定期的なトレーニングが骨盤臓器脱(いわゆる子宮下垂など)の症状を軽減する可能性が示唆されました(Jha S ほか, 2022, DOI:10.1111/1471-0528.17002)。また、2023年に「BMC Pregnancy Childbirth」で報告された出産後女性を対象としたメタ分析では、骨盤底筋トレーニングが性機能の改善に寄与する可能性があると示されています(Ramezani F ほか, 2023, DOI:10.1186/s12884-023-05549-5)。これらの研究は日本国内においても十分応用できると考えられており、出産経験の有無や年齢を問わず、骨盤底筋を意識的に鍛えることは日常生活の質を高める上でも非常に有益といえます。

以下では、女性に特におすすめされる代表的な5つの骨盤底筋エクササイズを紹介します。すべて自宅で簡単にできるものばかりですが、腰や膝などに既往症や痛みがある場合は無理せず専門家に相談してください。

1. ケーゲル体操(Kegel)

ケーゲル体操は、骨盤底筋を収縮・弛緩させる動きを反復するエクササイズです。腹圧性尿失禁(くしゃみや笑ったときに少し尿が漏れる)や、骨盤内の違和感の改善を目的に広く推奨されています。

  • やり方の目安

    1. 椅子や床に座った姿勢でもかまいませんが、初心者は膝を軽く折り、かかとにお尻を乗せる正座に近い姿勢がおすすめです。
    2. 息を吐きながら、骨盤底筋を「キュッ」と締める意識を持ちます。その際、お尻や太ももなど他の筋肉はできるだけリラックスさせ、骨盤底筋だけに集中してください。
    3. 5秒間キープしたら、ゆっくりと力を抜きます。
    4. 1セット10回を目安に行い、1日3セットほど継続します。
  • ポイント

    • 慣れないうちは、最初に述べたようにトイレの途中で尿を止める動作で筋肉の感覚を確認してから行うとわかりやすいです。
    • 息を止めたり、肩に力が入りすぎないように注意しましょう。

2. スクワット(Squat)

スクワットは脚やお尻など大きい筋肉を動員するトレーニングですが、正しいフォームで行えば骨盤底筋にも刺激を与えられます。下半身強化と同時に骨盤底筋を意識できるため、一石二鳥といえるでしょう。

  • やり方の目安

    1. 足を肩幅よりやや広めに開き、つま先をやや外側へ向ける。
    2. 胸を張り、背筋をまっすぐに保つ。
    3. 息を吸いながら膝を曲げ、お尻を後ろに引くように腰を落とす。太ももが床と平行になるくらいまで下げるのが理想ですが、無理のない範囲で行いましょう。
    4. 息を吐きながら元の立位に戻る。
    5. 15回を1セットとし、2〜3セット繰り返します。
  • ポイント

    • 立ち上がる際に骨盤底筋を軽く締めるイメージを加えると、下半身と連動して刺激されやすくなります。
    • もし余裕があれば、ダンベルやバーベルを使うと負荷アップが狙えます。ただし腰や膝に不安がある場合は、専門家に相談のうえ無理のない範囲で行いましょう。

3. ブリッジ(Bridge)

ブリッジは主にお尻(大殿筋)や太ももの裏(ハムストリングス)を鍛えるエクササイズとして知られていますが、同時に骨盤底筋にも効果的です。骨盤底筋を意識してお尻を持ち上げ、静止することで体幹の安定性も高まります。

  • やり方の目安

    1. 仰向けに寝転び、膝を曲げて足裏を床につける。腕は体の横に置き、手のひらを下に向ける。
    2. 息を吸いながら、お尻を上に持ち上げる。このとき腰が反らないよう、骨盤底筋をキュッと締めてサポートするイメージをもつ。
    3. 肩から膝まで一直線になるようにし、2秒ほど静止。
    4. 息を吐きつつゆっくりとお尻を床に下ろす。
    5. 10〜15回を1セットとし、3セット繰り返す。セット間は30〜60秒ほど休憩をとる。
  • 応用編

    • バランスボールに両足を乗せる形で行うと、より不安定要素が増し、骨盤底筋をはじめ体幹部に強い負荷をかけることができます。
    • 腰痛がある方は痛みを感じない範囲でゆっくり動作しましょう。

4. テーブルトップでのレッグオープン(Split Tabletop)

ピラティスの基礎動作の一つである「テーブルトップ」の姿勢に、脚を左右に開閉するアクションを加えるエクササイズです。下腹部や内転筋(太ももの内側)を使うため、骨盤底筋との連動が期待できます。

  • やり方の目安

    1. 仰向けになり、股関節と膝が90度になるように足を持ち上げる。すねを床と平行にし、両手は体の横で床におろし、手のひらを下向きにする。
    2. 息を吸いながら左右の太ももを少しずつ開き、内ももに軽い負荷を感じるところまで脚を開く。骨盤が左右に傾かないよう、骨盤底筋とお腹をしっかり安定させるイメージ。
    3. 息を吐きながら脚をゆっくり閉じる。
    4. 10〜15回を1セットとして、3セットを目安に行う。
  • ポイント

    • 腰が浮きやすいので、常におへそを背骨に近づけるように腹筋と骨盤底筋を意識する。
    • 足を開きすぎると腰や股関節に負担がかかる恐れがあるため、無理のない範囲で調整してください。

5. バードドッグ(Bird Dog)

バードドッグは、四つ這いの姿勢で片脚と反対側の腕を同時に伸ばすエクササイズです。バランスと体幹の安定性が求められるため、背中からお尻、さらには骨盤底筋まで幅広く刺激を与えられます。

  • やり方の目安

    1. 両手と両膝を床につく。手は肩の真下、膝は腰の真下に置き、背中をまっすぐに保つ。
    2. 息を吸いながら、右腕と左脚をまっすぐ伸ばし、水平にキープ。骨盤が傾かないように、お腹と骨盤底筋を意識して支える。
    3. 2秒程度キープしたら、息を吐きながら元の四つ這い姿勢に戻る。
    4. 今度は左腕と右脚を同様に伸ばす。これで1回と数え、合計10回を1セットとする。3セット繰り返す。
  • ポイント

    • 上半身が反りすぎないように注意し、首は長く保つようにする。
    • 動作を急ぐとバランスを崩しやすいので、ゆっくりとコントロールしながら行う。

トレーニングの注意点と効果を高めるコツ

これら5つのエクササイズはそれぞれ違う部位を強化しつつ、骨盤底筋へのアプローチも可能です。以下のポイントを押さえると、より効果的かつ安全に取り組むことができます。

  • 呼吸を止めない
    息を止めると腹圧が過度に上がり、かえって骨盤底や腹部に負担がかかる場合があります。特に動作がきついと感じる場面こそ、息を長く吐きながらゆっくり動かすのがコツです。
  • 骨盤底筋だけを意識しすぎない
    他の筋肉をリラックスさせすぎるとフォームが崩れ、腰痛や膝痛の原因となることがあります。骨盤底筋をメインに感じつつも、お尻や太もも、体幹部をバランスよく使いましょう。
  • 毎日のルーティンに取り入れる
    専門家の多くが、骨盤底筋を鍛えるには少なくとも数週間から数カ月の継続が大切だと強調しています。育児や仕事の合間、家事の隙間時間など、少しずつでも取り組む習慣を身につけることが大事です。
  • 痛みや違和感があれば中断して相談
    動作中に腰や膝に痛みが出たり、体が大きくぐらついたりしたら、無理をせず一旦やめてください。必要に応じて医師や理学療法士に相談し、安全な運動方法を確認しましょう。

まとめと推奨事項

骨盤底筋は女性の身体にとって欠かせない存在であり、出産や加齢、生活習慣などによって衰えやすい部分でもあります。しかし、今回ご紹介したケーゲル、スクワット、ブリッジ、テーブルトップ+レッグオープン、バードドッグといったシンプルなエクササイズを継続することで、骨盤底筋をはじめ体幹部や下半身の筋肉も同時に鍛えられます。

また、骨盤底筋は日常のちょっとした意識づけでも活性化することが知られています。例えば立ち上がるときや、ものを持ち上げるとき、もしくは信号待ちの間などに骨盤底筋を「キュッ」と締める意識をもつだけでも、筋肉を維持する手助けになるでしょう。

一方で、骨盤底筋強化の重要性が認められるにつれ、近年はクリニックや病院で行われる骨盤リハビリやフィジカルセラピーも注目を集めています。自己流で上手くいかない、または症状が強い方は早めに医師や理学療法士など専門家に相談するのがおすすめです。


【重要】本記事は一般的な情報提供を目的とした参考資料であり、個人の症状や疾患に対する診断や治療を目的としたものではありません。実際に症状がある方や不安を感じる方は、必ず医師などの専門家に直接ご相談ください。

参考文献

この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ