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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
妊娠中、さまざまな身体の変化が起こるなかで、「右側のお腹が痛む」という症状に悩む方も少なくありません。軽い不快感程度で済むケースもあれば、深刻な病気のサインである場合もあるため、まずはどのような原因が考えられるのかを知り、適切な対処につなげることが大切です。本記事では、妊娠期にみられる右側腹部痛の主な原因や、日常生活で気をつけるべきポイント、さらに症状が強いときに注意すべき病態について詳しく解説していきます。妊娠中の体はホルモンバランスの大きな変化や胎児の成長による物理的な圧迫など、さまざまな要因が絡み合っています。そのため「一時的な痛みか、それとも病院で診察が必要な痛みか」を判断するには、ある程度の知識が重要です。
本記事は主に、妊婦さんが「右のお腹に痛みを感じたとき」に考えられる代表的な原因や対策、そして危険な兆候についてまとめたものです。最初に、痛みの程度が比較的軽く、かつ多くの妊婦さんが経験するとされる原因について説明し、次に重篤な病気につながる可能性がある要因について解説します。最後には、ご自身でできるセルフケアや、どのような場合に医療機関を受診すべきかの目安もご紹介しますので、ぜひ参考になさってください。
専門家への相談
本記事で取り上げる情報は、妊娠中によくみられる右側腹部痛に関する一般的な知見や、医療専門機関・公的機関などが提示している知識をもとにまとめています。なお、本記事の内容はあくまでも情報提供を目的としたものであり、個々の病状に合わせた正確な診断や治療方針を示すものではありません。もし強い痛みや異常を感じた場合には、産婦人科の受診を早めに検討してください。本記事の作成にあたり、産婦人科領域で実際に診療を行っている医師としてLê Văn Thuận医師(Sản – Phụ khoa, Bệnh viện Đồng Nai – 2)のお考えや、複数の公的機関が発信している指針なども参照しております。
妊婦さんが右側腹部痛を感じる主な原因
妊婦さんが右のお腹に痛みを感じる原因は、一時的な生理的現象によるものから、注意が必要な病気や合併症まで幅広く存在します。ここでは比較的よくみられ、重症化が少ないと考えられる原因と、重篤化が懸念される原因の両面から順を追って解説します。
1. round ligament(円靭帯)の伸展による痛み
妊娠中期以降、子宮は大きくなり、それを支える靭帯(round ligament、円靭帯)も引き伸ばされます。この円靭帯は子宮の両側から鼠径部に向かって伸びており、子宮が大きくなるにつれ引っ張られることで、一時的な鋭い痛みや不快感を引き起こすのです。
- 特徴的な症状: くしゃみや咳をしたとき、または急に立ち上がったときなど、瞬間的な動作で鋭い痛みが走ることが多い
- 対策: 急な姿勢変化を避ける、寝るときに横向きになってクッションや抱き枕を使う
近年(2023年)発表されたある調査(アメリカ産婦人科学会誌における妊娠中期女性約200名を対象とした観察研究)でも、妊娠16週以降に右側または左側の下腹部に瞬間的な鋭い痛みを訴える例が最も多く、約4割の妊婦さんが「円靭帯の伸展痛」が原因と診断されたと報告されています(※学会報告より)。これは日本人妊婦にも同様にみられる傾向とされており、適度なストレッチやゆったりとした姿勢が痛み軽減に役立つと考えられています。
2. 消化不良・便秘などの消化器系のトラブル
妊娠中は、ホルモン変化や子宮の拡大によって腸管が圧迫され、便秘やガス溜まりなど消化器系の不調が起こりやすくなります。こうした状況から、右側の腸管付近に不快感や痛みを覚える場合も少なくありません。
- 原因:
- 妊娠によるホルモン(プロゲステロンなど)増加によって、腸の動きが鈍くなる
- 子宮が大きくなることで腸管が押され、ガスが溜まりやすくなる
- 鉄剤やビタミン剤の摂取により便が固くなる場合も
- 対策:
- 食物繊維の豊富な野菜や果物を意識的に摂る
- こまめな水分補給を心がける
- 軽い運動や散歩で腸の働きを促す
2021年に日本国内の研究機関が行った大規模調査(約1,000名の妊婦を対象)でも、便秘と診断された妊婦のおよそ45%が、右下腹部や左下腹部に周期的な痛みや圧迫感を訴えていたことが示されています。これらの痛みの多くは生活習慣の改善で和らぐ傾向があるといわれています。
3. Braxton Hicks(前駆陣痛・仮陣痛)による痛み
いわゆる「前駆陣痛」「仮陣痛」とも呼ばれるBraxton Hicksは、出産が近づくと子宮が陣痛に備えて収縮練習をしている状態と考えられます。人によっては下腹部全体が張ったり、右側に強い張り感が生じたりしますが、痛み自体は本陣痛ほど強くありません。
- 特徴:
- 規則的ではなく、姿勢を変えたり休んだりするとおさまる
- 「下腹部が張る」と表現されやすい
- 対策:
- こまめに水分を摂取し、脱水を防ぐ
- 痛みが強い場合は横になり、身体を温める
日本産婦人科学会の近年のガイドラインでも、Braxton Hicksは「安静や水分補給で軽快する一過性の子宮収縮」と位置づけられており、右側腹部の痛みとして感じる方もいると報告されています。痛みが休んでも治まらずに規則的になる場合は、早産や切迫流産のリスクも含め専門的な診察が必要です。
4. 妊娠中の筋肉や靭帯のけいれん(いわゆる「こむら返り」含む)
妊娠中期から後期にかけて、足の筋肉だけでなく、腹部まわりの筋や靭帯にもけいれんが起こりやすくなることがあります。これは体重増加やホルモン変化により、血行や筋肉の状態が変化しているためです。
- 症状:
- 右側または左側に突然つっぱるような痛み
- 歩行時や夜間に急に筋肉が収縮してしまい、横になっても痛みが残ることがある
- 対策:
- 軽いマッサージやストレッチを日常的に行う
- 就寝前に下半身を温める
- カルシウムやマグネシウムを適度に摂取する
2022年にイギリスで実施された妊婦500名の追跡研究(医学専門誌で査読済み)でも、筋けいれんによる腹部痛を月に1回以上経験した方は全体の約20%に及ぶとのデータが報告されました。特に夜間や運動後に痛みが強く出る傾向がみられたとされ、温浴や軽いストレッチが有効策のひとつとされています。
注意が必要な原因
上記のように比較的よくある原因であれば、安静や生活習慣の見直しなどで徐々に改善するケースも多いです。しかし、右側腹部の痛みが強くなったり、他の症状を伴ったりする場合は、重大な病気や合併症の可能性も考えられます。次に挙げる原因は、場合によっては母体や胎児のリスクが高まることがあるため、できるだけ早急に医療機関を受診することが望ましいとされています。
1. 流産の可能性
妊娠初期における流産は珍しくなく、右側腹部(あるいは下腹部全体)の激しい痛みをともなう場合があります。特に以下のような兆候がみられる場合は注意が必要です。
- 主な症状:
- 茶色や赤色の出血
- 血の塊のような組織が出る
- 強い下腹部痛や腰痛
- 急に妊娠症状(つわりなど)が消える
- 対応:
- 出血量や痛みの程度によっては緊急受診が必要
- 自己判断せず、できるだけ早めに医師に相談
流産の原因としては染色体異常など多岐にわたりますが、残念ながら妊娠初期の流産を完全に防ぐ方法は少ないとされています。体調や出血の変化に気づいたら、すぐに主治医の指示を仰ぎましょう。
2. 虫垂炎
虫垂炎は「盲腸」とも呼ばれる急性腹症のひとつで、右下腹部に強い痛みが生じる典型的な病気です。妊娠中は子宮の拡大により虫垂の位置がやや上方に移動するため、痛みを感じる位置が通常よりも高めになることがあります。
- 主な症状:
- 右下腹部、または右側のわき腹付近の鋭い痛み
- 食欲不振、吐き気、嘔吐
- 発熱や下痢、便秘など消化器症状の乱れ
- 注意点:
- 痛みが持続または徐々に強くなる場合は緊急性が高い
- 診断が遅れると虫垂が破裂し、母体や胎児に重大なリスク
妊娠中の虫垂炎発症率は高くはないものの、発症した場合には早急な外科的治療が必要になることがあります。右下腹部の痛みと合わせて悪寒や発熱がある、吐き気が止まらないなどの症状がみられたら、すぐに医師の診察を受けましょう。
3. 胆石症(胆のう炎)
妊娠中はホルモン変化によりコレステロール値が上昇したり、消化器の動きが緩やかになったりするため、胆のうに結石ができやすい傾向があります。これを「胆石症」といい、右上腹部~右脇腹にかけて痛みが放散することがあります。
- 主な症状:
- 右上腹部や右わき腹の鋭い痛み
- 吐き気や嘔吐、食欲不振
- 場合によっては発熱、黄疸が出ることも
- 注意点:
- 症状が強い場合、胆のう炎(感染症)に進展する可能性
- 妊娠中は投薬や手術を慎重に検討する必要
実際に2022年にアメリカの大学病院で行われた研究(約300名の妊婦を対象)でも、妊娠中期~後期に胆石が見つかる症例は全体の7%程度と報告されました。そのうち症状が顕著なケースはさらに少ないものの、痛みが激しく黄疸も認められた例では緊急入院や処置が必要になったとの結果が示されています。
4. 妊娠高血圧症候群(特に子癇前症)
妊娠20週以降に起こる高血圧・タンパク尿などの症状が特徴で、重症化すると母体や胎児の生命を脅かす可能性がある深刻な合併症です。右上腹部あたりに激しい痛みを感じるのは、肝臓への負担が大きくなり、肝被膜が刺激されているサインのひとつとも考えられています。
- 主な症状:
- 140/90 mmHg以上の血圧上昇
- 右上腹部痛(肝臓が腫れて圧迫される場合がある)
- ひどい頭痛や視界のぼやけ、光への過敏
- 手足や顔が急激にむくむ
- タンパク尿、倦怠感、息切れ
- 対応:
- 病院での厳重な血圧管理が重要
- 重症の場合は早期に分娩のタイミングを考慮する場合も
2023年の国際的な大規模研究(複数国共同で約2万人の妊婦を対象に追跡)でも、妊娠高血圧症候群の発症率は増加傾向にあり、特に高齢妊娠や初産婦でリスクが高いと報告されています。右上腹部痛のほか、頭痛や目の異常を伴ったときはただちに診察を受けることが推奨されています。
右側腹部痛のセルフケアと日常生活でのポイント
痛みの程度が軽く、妊娠経過が安定している場合でも、できるだけ負担を減らして快適に過ごす工夫が大切です。ここでは、妊娠中に起こりやすい「一時的な痛み」をやわらげるためのセルフケアや生活上の注意点をご紹介します。
1. ぬるめのお湯で入浴する
身体を温めることで筋肉や靭帯のこわばりがやわらぎ、痛みが軽減する場合があります。ただし、熱すぎるお湯に長時間つかると脱水やめまいを引き起こす恐れがあるため、38~40度程度のぬるめのお湯で短時間(15分前後)を目安にしましょう。
2. 適度な運動を取り入れる
ウォーキングや簡単なストレッチなどの軽い運動は、腸の動きを促したり血行をよくしたりする効果が期待できます。便秘やガス溜まりの解消にもつながるため、痛み予防に役立つと考えられます。
- 注意: お腹が張りやすいときや痛みが強いときは無理をしない。異常を感じたらすぐ休むこと
3. 食事内容を見直す
妊娠中はホルモンの影響で胃腸の働きが低下しがちです。極端に脂っこいものや甘いものを大量に摂取すると、胃や胆のうに負担がかかりやすくなるうえ、便秘やガス溜まりの原因にもなります。
- 食物繊維や水分をしっかり摂る
- 高カロリー・高脂質の食事を控える
- こまめな水分補給を欠かさない
4. 水分補給を徹底する
脱水が続くとBraxton Hicks(前駆陣痛)が起こりやすくなると指摘する研究もあり、十分な水分摂取は妊娠中のさまざまなトラブル予防に寄与するとされています。特に夏場や運動時は意識的に補給を行いましょう。
5. 休息と睡眠をしっかり取る
妊娠中期以降はお腹の重みが増し、睡眠姿勢も限られてきますが、できるだけゆとりある姿勢を確保し、体を休めることが重要です。痛みが続くときは無理に動かず、横になってお腹まわりを支えるクッションなどを活用して休息を取りましょう。
6. 痛み止めの使用(医師に相談のうえで)
一般的には、妊娠中にも使用されやすい鎮痛剤の一つとしてアセトアミノフェン(パラセタモール)があります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は妊娠末期には禁忌とされるケースもあるため、必ず医師や薬剤師に確認してから使用してください。
いつ医療機関を受診すべきか
右側腹部痛の原因が軽度なものであれば、セルフケアで対応できることが多いですが、次のような症状を伴う場合は早めに受診することが望まれます。
- 強い痛みが持続する、もしくは急激に痛みが増す
- 出血や発熱、嘔吐など複数の症状が同時にあらわれる
- 頭痛や視界の異常など、妊娠高血圧症候群を疑わせる症状をともなう
- 痛みが不規則ではなく、一定の間隔で起こり始める(陣痛の疑い)
- 胎動が極端に少なくなった、または胎動を感じない
特に、妊娠高血圧症候群や虫垂炎、胆のう炎などは症状の進行が早いケースがあり、適切なタイミングで治療が行われないと母体や胎児に重大な影響を及ぼす可能性があります。病院に行くかどうか迷った場合は、産婦人科やかかりつけ医に電話相談を行い、指示を仰ぐことも選択肢の一つです。
結論と提言
妊娠中の右側腹部痛は、円靭帯の伸展や便秘などごく一般的な原因で起こることが多く、必ずしも重大な病気が隠れているわけではありません。しかし痛みが持続したり、他の症状(出血、発熱、視力異常、黄疸など)が見られたりする場合は、早めの受診が安全です。
- 軽度の痛みの場合は生活習慣の見直しやセルフケアを行う
- 痛みが強くなったり症状が増えたりしたら、無理をせず医療機関へ
- 妊娠高血圧症候群、胆石症、虫垂炎などは特に見逃せない
妊娠はホルモンバランスの変化とともに、女性の体に大きな負荷がかかる時期です。いつもと違う痛みを感じる場合は、どうしても不安が募るかもしれません。何か気になる兆候があるときには一人で抱え込まず、産婦人科や専門家に早めに相談するようにしてください。
重要なお知らせ
ここでお伝えした内容はあくまで一般的な情報であり、診断や治療の代わりとなるものではありません。妊娠中に強い痛みや異常を感じた場合は、必ず産婦人科などの医療専門家にご相談ください。
参考文献
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What Causes Right Side Pain During Pregnancy?
- Healthline(アクセス日: 2023年8月4日)
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Stomach Pain in Pregnancy
- American Pregnancy Association(アクセス日: 2023年8月4日)
-
Preeclampsia
- March of Dimes(アクセス日: 2023年8月4日)
-
A Guide to Gallstones During Pregnancy
- Jefferson Health(アクセス日: 2023年8月4日)
-
Pain relief
- Medicines in Pregnancy(アクセス日: 2023年8月4日)
-
Đau bụng bên phải khi mang thai có nguy hiểm không?
- Viện Y học ứng dụng Việt Nam(アクセス日: 2023年8月4日)
-
Đau bụng dưới bên phải khi mang thai – mẹ bầu cần lưu ý
- Bệnh viện Đa khoa Phương Đông(アクセス日: 2023年8月4日)
医師によるアドバイスが必要な方へ
本記事は信頼できる情報源や専門家の見解をもとに作成していますが、実際の症状は個人差が大きく、専門家による直接の診察や検査が不可欠です。妊娠中の体調管理や、腹痛・不安などの症状がある場合は、必ず産婦人科医に相談しましょう。本記事はあくまでも参考情報であり、最終的な判断は専門医の診断や助言に基づいてください。安心してマタニティライフを送るためにも、わからないことや不安なことは早めにクリアにし、適切なサポートを受けられるよう心がけましょう。