HPVワクチンと妊娠の全て:計画、安全性、専門家の見解を徹底解説
妊娠準備

HPVワクチンと妊娠の全て:計画、安全性、専門家の見解を徹底解説

この度は、JapaneseHealth.org(JHO)の記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。HPVワクチンと妊娠に関する様々な情報が溢れる中、「妊娠を計画しているけれど、ワクチンを接種すべきか」「もし妊娠中に接種してしまったら、赤ちゃんに影響はないのか」といった切実な疑問やご不安をお持ちのことと存じます。この記事は、そのような皆様の「ペインポイント」に寄り添い、最新の科学的根拠に基づいた正確で信頼できる情報を提供することで、皆様が安心して最適な選択をするための一助となることを目的としています。JHO編集委員会は、国内外の主要な研究機関や専門家の見解を網羅的に分析し、皆様の疑問に一つひとつ丁寧にお答えします。


この記事の科学的根拠

この記事は、インプットされた研究報告書に明示的に引用されている、最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性を示したものです。

  • 厚生労働省(MHLW): 日本における子宮頸がんの罹患率・死亡率、HPVワクチンの公費助成、キャッチアップ接種、安全性に関する公式見解、および専門家会議の結論に関する記述は、厚生労働省が公表した情報に基づいています。16
  • 日本産科婦人科学会(JSOG): 若年層における子宮頸がんの脅威、妊娠前のワクチン接種の推奨、および授乳中の接種の安全性に関するガイダンスは、日本産科婦人科学会の見解を引用しています。214
  • 世界保健機関(WHO): HPVワクチンの安全性と有効性に関する世界的なコンセンサス、特に妊娠中の偶発的接種に関するデータについては、WHOの公式声明に基づいています。18
  • 米国疾病予防管理センター(CDC)および米国産婦人科学会(ACOG): 妊娠前、妊娠中、授乳中のワクチン接種に関する具体的な推奨事項は、米国の主要な保健機関であるCDCおよびACOGのガイドラインを参考にしています。12
  • The New England Journal of Medicine (NEJM)掲載のデンマークの研究: 妊娠中の偶発的なHPVワクチン接種と、先天異常や自然流産などの有害な妊娠転帰との間に関連がないことを示した大規模コホート研究の結果は、この権威ある学術誌に掲載された論文に基づいています。2021
  • Frontiers in Pharmacology掲載の2023年のメタアナリシス: 複数の臨床試験とコホート研究のデータを統合し、周胎期または妊娠中のHPVワクチン曝露が有害な妊娠転帰のリスクを増加させないという結論に関する記述は、このシステマティックレビューに基づいています。22
  • 名古屋スタディ: 日本の国民が最も懸念していた「多様な症状」とHPVワクチンとの間に関連性がないことを結論付けた日本の大規模研究の結果は、この研究に基づいています。26

要点まとめ

  • 理想は妊娠前: HPVワクチンの接種は、将来の妊娠と自身の健康を守るために、妊娠を計画する前に完了させることが最も推奨されます。これにより、子宮頸がんの前がん病変のリスクを減らし、それに関連する不妊や早産のリスクを避けることができます。31
  • 妊娠中の接種は避ける: 妊娠が判明している間の接種は、予防的措置として推奨されていません。これは、ワクチンの危険性が証明されたからではなく、新しい医薬品の臨床試験に妊婦を含めないという倫理基準によるものです。1213
  • 万が一接種しても心配は不要: 妊娠に気づかずにワクチンを接種してしまった場合でも、世界中の大規模な追跡調査データから、母体や胎児へのリスクが増加するという証拠は認められていません。妊娠を中断する必要は全くありません。2022
  • 授乳中は安全: 出産後、授乳期間中のワクチン接種は安全であると確認されており、接種を再開または開始する絶好の機会です。1412
  • 日本の「失われた世代」にも機会: 積極的勧奨が差し控えられていた時期に生まれた女性(1997年度~2008年度生まれ)を対象とした公費でのキャッチアップ接種が2026年3月末まで実施されています。9

公衆衛生上の緊急課題:日本女性を襲う子宮頸がんの脅威

HPVワクチンについて語る前に、まず、このワクチンが防ごうとしている病気、すなわち子宮頸がんが日本の女性にとってどれほど深刻な脅威であるかを理解することが不可欠です。厚生労働省の公式データによると、日本では毎年約10,000人の女性が新たに子宮頸がんと診断され、約3,000人もの命がこの病によって奪われています。1 これは単なる統計ではなく、一つひとつの数字が、誰かの母親、娘、パートナー、そして友人の人生を物語っています。

特に憂慮すべきは、この病が若い世代を直撃しているという事実です。罹患率は20代から急増し始め40代でピークに達し、死亡率も30代前半から増加の一途をたどります。1 事実、子宮頸がんは25歳から40歳の日本人女性におけるがんによる死亡原因の第2位を占めています。1 これは、女性がキャリアを築き、家庭を持ち、子どもを育むという人生の最も輝かしい時期に、その未来が脅かされるという過酷な現実を突きつけています。

妊孕性への直接的な影響

日本産科婦人科学会(JSOG)は、20代、30代の女性における罹患数の増加に警鐘を鳴らし、彼女たちが「妊娠する能力や、時には命そのものを失うリスク」に晒されていることを「深刻な問題」と位置づけています。2 脅威は浸潤がんだけではありません。毎年13,000件以上の円錐切除術が、がんになる前の段階である前がん病変の治療のために実施されています。この手術は、将来の妊娠において早産や流産のリスクを高めることが知られています。1 さらに、前がん病変の状態そのものが、自然な受胎を困難にする可能性も指摘されています。3

ここで断言すべき重要な事実は、子宮頸がんの90~95%以上が、高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続的な感染が原因であるということです。1 これはつまり、子宮頸がんがワクチンで予防できる数少ないがんの一つであることを意味します。これらのデータを踏まえると、子宮頸がんの脅威を最も受ける年齢層と、妊娠・出産に最も関心を持つ年齢層が不気味に一致していることがわかります。したがって、HPVワクチン接種を単なる「がん予防」としてではなく、「将来の家族計画と妊孕性を守るための基礎的な一歩」と位置づけることが、極めて重要です。

日本の特殊な接種状況:「失われた世代」と信頼回復への道

HPVワクチンというテーマ、特に日本において信頼を醸成するためには、その複雑な歴史を率直に認め、説明することが不可欠です。日本のHPVワクチン接種の歴史は、大きな転換点を経験しました。2013年4月に定期接種プログラムに導入され、接種率は瞬く間に約70%に達しました。5 しかし、そのわずか2カ月後の2013年6月、厚生労働省は積極的な接種勧奨を一時的に差し控える決定を下しました。この決定により、接種率は1%未満にまで激減し5、結果としてワクチンによる予防の機会を逸した「失われた世代(lost cohort)」が生まれてしまいました。

重要なのは、厚生労働省の公式な言葉を用いてこの出来事を正確に解説することです。勧奨の差し控えは、報告された症状とワクチンとの因果関係を示す証拠があったためではなく、「多様な症状」に関する「情報提供が不十分」であったためです。1 その後、専門家会議による再評価が行われ、「安全性について特段の懸念が認められない」こと、そして「接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回る」ことが確認されたため、2021年11月に積極的勧奨は再開されました。6

現在の接種率とキャッチアップ接種

勧奨が再開されたものの、日本の接種率は依然として低い水準にあります。データによれば、定期接種対象者の初回接種率は全体で22.1%に留まり、対象年齢最終学年である高校1年生相当の女子ですら41.9%です。7 この状況は、接種率が80%を超えるカナダ、イギリス、オーストラリアといった他の先進国と比較すると、日本の公衆衛生における著しい遅れを示しています。10

この「失われた世代」の問題に対処するため、政府は1997年度から2008年度の間に生まれた女性を対象に、公費で接種を完了できる「キャッチアップ接種」プログラムを2026年3月末まで実施しています。9 日本における課題の核心は、科学的証拠の欠如ではなく、2013年の決定に端を発する国民の信頼の欠如にあります。本稿のような情報発信が、過去の混乱を認め、最新の科学的知見を透明性高く提供することで、信頼を再構築し、一人でも多くの女性が自身の健康を守るための行動を起こせるよう支援する上で、極めて重要な役割を担っているのです。

妊娠期におけるHPVワクチン:計画から出産後までの完全ガイド

このセクションでは、妊娠に関連するHPVワクチンの最も切実な疑問に対し、科学的根拠に基づいた明確な答えを提供します。利用者の時間軸に沿って、妊娠前、妊娠中、出産後という論理的な順序で、それぞれの懸念を解消していきます。

妊娠を計画している場合:なぜ妊娠前の接種が理想的なのか

ここでの最も重要なメッセージは、理想的なシナリオは、妊娠を計画する前にHPVワクチンの接種スケジュールを完了させることである、という点です。これは、ご自身の健康と将来の妊孕性を守るための、最も効果的な予防策です。3

ワクチンはHPVの持続感染を防ぎ1、それによって子宮頸部の前がん病変の発生を抑制します。4 これにより、結果として、将来の妊娠に悪影響を及ぼす可能性のある円錐切除術のような治療を回避することに繋がります。1 このように、HPVワクチン接種は、葉酸の摂取や風疹の抗体検査と同様に、現代の「プレコンセプションケア(妊娠前ケア)」の重要な一環として位置づけられるべきです。未来の妊娠に対するリスクを最小限に抑えるという点で、これらのケアは共通の目的を持っています。プレコンセプションケアという広く受け入れられている文脈の中にワクチン接種を置くことで、それを特別なものではなく、責任ある標準的な医療措置として正常化することができるのです。

妊娠判明後の対応:予防原則に基づく指針

妊娠していることが判明している間のHPVワクチン接種は、国内外の権威ある機関によって一貫して推奨されていません。1412 ここで極めて重要なのは、その理由を正しく理解することです。これは「予防原則」に基づく標準的な安全策であり、ワクチンが有害であるという証拠に基づいたものではありません。13

医学研究における倫理基準として、新しいワクチンや医薬品の初期臨床試験に妊婦を含めることは通常ありません。そのため、前向き臨床試験における「妊娠中の安全性データが確立されていない」というのが、推奨しない主な理由です。13 これは、例えばインフルエンザワクチンが妊娠中に積極的に推奨されるのとは対照的です。インフルエンザの場合、妊娠中の罹患リスクが母体にとって非常に深刻であり、かつ、ワクチン接種に関する広範な安全性データが存在するため、利益がリスクを上回ると判断されています。28

「データ不足による非推奨」と「既知の有害性による禁忌」との間には、決定的な違いがあります。このニュアンスを理解することは、不必要な恐怖を避け、科学的な意思決定プロセスへの信頼を築く上で不可欠です。

最大の懸念:妊娠に気づかず接種した場合の安全性

もし1回目または2回目の接種後に妊娠が判明した場合でも、パニックになる必要は全くありません。ここでのメッセージはシンプルかつ強力です:膨大な世界的データが、偶発的な接種によるリスクの増加はないことを示しています。

専門家の見解と対応

このような場合の標準的な対応は、残りの接種を đơn giản に出産後まで延期することです。1215 妊娠の継続をためらうような医学的理由は一切ありません。日本の専門家17も国際機関12も、現存する安全性データは「非常に心強い」ものであると明言しています。

安全性の科学的根拠

この安全性の背景には、ワクチンの仕組みがあります。HPVワクチンは、ウイルスの遺伝情報(DNA)を含まない、合成された「ウイルス様粒子(VLP)」から作られています。そのため、ウイルスそのものではなく、感染を引き起こす能力はありません。17 母体や胎児に病気を引き起こすことは原理的に不可能です。

世界中のデータが示す安全性

理論だけでなく、実際の人間における大規模なデータがこの安全性を裏付けています。

  • 日本の厚生労働省のデータ: ワクチンを接種した519人の妊婦を2年間追跡した調査では、自然流産の発生率は11%であり、一般人口の背景発生率(約10%)と一致していました。19
  • デンマークの大規模コホート研究(NEJM掲載): 58万人以上の妊娠を対象とした全国規模の研究では、妊娠中の偶発的なワクチン接種に関連した、重度の先天異常、自然流産、死産、早産、低出生体重児のリスクの有意な増加は認められませんでした。2021
  • 2023年のメタアナリシス(Frontiers in Pharmacology掲載): 複数の質の高い研究データを統合したこのシステマティックレビューも、周胎期または妊娠中のHPVワクチン曝露が、自然流産、先天異常、死産のリスクを増加させない、と結論付けています。22

このように、臨床現場の専門家の見解、ワクチンの科学的原理、そして何十万人もの女性を対象とした大規模な疫学データという3つの層が、すべて同じ方向、すなわち「安心」を指し示しています。

出産後と授乳中の接種:安全な再開のタイミング

出産後の期間は、授乳中であっても、HPVワクチンの接種を開始または再開するための安全かつ推奨されるタイミングです。日本産科婦人科学会(JSOG)14、米国のCDCおよびACOG12を含む専門機関の間で、授乳中の接種が安全であるという強いコンセンサスが存在します。ワクチンの成分が母乳に移行して乳児に害を及ぼすとは考えられていません。

ACOGの2020年のガイダンスはさらに一歩進んで、まだ接種していない26歳以下の授乳中の女性に対してワクチンを接種すべきである、と積極的に推奨しています。12 出産後のこの時期は、特にキャッチアップ接種の対象となる「失われた世代」にとって、予防接種を受けるための重要な「機会の窓」となります。新生児の健診などで医療機関と定期的に接点を持ち、自身の健康への意識も高まっているこの時期は、見逃してしまった予防接種を取り戻す絶好の機会です。

エビデンスの全体像:安全性と有効性に関する包括的評価

このセクションでは、ここまでに触れてきた科学的根拠をさらに深く掘り下げ、JHOの編集方針である「信頼性」と「専門性」の土台を強固にします。透明性の高いデータ提示を通じて、読者の皆様に確固たる信頼を届けます。

世界的コンセンサス:主要な保健機関の公式見解

以下の表は、世界中の主要な保健機関の推奨事項をまとめたものです。妊娠前、妊娠中、出産後という各段階において、その見解が驚くほど一貫していることがお分かりいただけるでしょう。この国際的なコンセンサスは、本稿で提示している情報が、単一の意見ではなく、世界標準の医療ケアに沿ったものであることを示す強力な証拠です。

表1:周産期におけるHPVワクチン接種に関する公式推奨
段階 厚生労働省/JSOG (日本) WHO (国際) CDC/ACOG (米国)
妊娠前 推奨 推奨 推奨
妊娠中(既知) 予防的措置として回避 予防的措置として回避 非推奨
妊娠中(偶発的接種) 安心を促し、接種中断 データは安全性を示唆、接種中断 安心を促し、接種中断
出産後・授乳中 接種可能 接種可能 接種可能、26歳以下に推奨

出典: 厚生労働省1, 日本産科婦人科学会14, WHO18, CDC/ACOG12 の情報を基にJHO編集委員会が作成

妊娠への影響に関する科学的データ:統計が示すこと

「安全です」という言葉だけでは、ご不安を完全に拭い去ることは難しいかもしれません。E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)を重視するJHOの方針に基づき、ここでは具体的な研究データそのものを提示します。以下の表は、妊娠中の偶発的なワクチン接種と、様々な妊娠の結末との関連を調査した最も信頼性の高い研究の結果をまとめたものです。

表2:偶発的HPVワクチン接種と妊娠転帰に関するエビデンスの要約
研究 評価項目 リスク比 (RR) または オッズ比 95%信頼区間 (CI) 出典
Yan et al. (2023)
メタアナリシス
自然流産 0.987 0.854–1.140 22
重度の先天異常 0.960 0.697–1.322 22
死産 1.033 0.651–1.639 22
早産 0.977 0.874–1.092 22
Scheller et al. (2017)
デンマーク コホート研究 (NEJM)
重度の先天異常 1.19 (オッズ比) 0.90–1.58 21

出典: Yan et al.22 および Scheller et al.21 の研究データを基にJHO編集委員会が作成

この表を解釈する上で重要な点は、「リスク比が1.0」であれば、ワクチン接種群と非接種群でリスクが全く同じであることを意味します。提示された数値はいずれも1.0に非常に近く、また、真の値が存在する可能性のある範囲を示す「95%信頼区間」がすべて1.0を含んでいるため、統計学的に「ワクチンと有害事象との間に関連性はない」と結論付けられます。この透明性の高いデータ提示は、JHOの結論が主観的な意見ではなく、世界的な科学的エビデンスに根差していることの証です。

日本の専門家によるエビデンスの現地化

「それは海外のデータでしょう?」という潜在的な疑問に応えるため、日本の研究と専門家の声をここで取り上げます。これは、エビデンスを日本の文脈に即して「現地化」し、文化的な共感を呼ぶための重要な戦略です。

日本の大規模研究である「名古屋スタディ」は、2013年の接種勧奨差し控えの引き金となった「多様な症状」とHPVワクチンとの間に関連性はないと結論付けており、日本の公衆が抱える歴史的な懸念に直接的に応えています。2625 また、坂本氏らによる研究では、日本人女性におけるワクチンのがん予防効果が実証されています。27

さらに、救急医Takaとして知られる木下喬弘医師28や、HPVワクチンの科学的根拠を擁護した功績でジョン・マドックス賞を受賞した村中璃子医師25など、日本国内で信頼されている専門家の声も、国際的なコンセンサスを裏付けています。日本の科学者が日本の問題に取り組み、同じ結論に達しているという事実は、このメッセージを日本の読者にとってより身近で信頼できるものにします。

よくある質問

HPVワクチンは将来の妊孕性(妊娠する能力)に影響しますか?

いいえ、影響しません。むしろ、HPVワクチンは将来の妊孕性を守る助けとなります。ワクチンは、子宮頸がんやその前がん病変を防ぎます。これらの病変の治療(例:円錐切除術)は、早産や不妊のリスクを高めることが知られています。1 ワクチンを接種することで、そのような治療が必要になる事態を未然に防ぐことができ、結果的に妊孕性を保護することに繋がります。

ニュースで聞いた副反応(多様な症状)が心配です。

そのご心配は、かつて日本で大きな議論となった点であり、お気持ちはよく分かります。この問題については、大規模な全国調査(名古屋スタディ)が行われました。その結果、ワクチンを接種した人と接種していない人の間で、報告された「多様な症状」(体の痛み、疲労感、運動障害など)の発生率に差がないことが科学的に証明されました。26 つまり、これらの症状とワクチンとの間に因果関係はない、というのが現在の専門家の結論です。厚生労働省もこの科学的根拠に基づき、2021年に積極的勧奨を再開しました。1

どの種類のワクチンを接種すべきですか?

現在、日本の公費助成(定期接種およびキャッチアップ接種)の対象となっているのは、2価(サーバリックス)、4価(ガーダシル)、そして9価(シルガード9)の3種類です。1 これらはすべて、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型を予防します。9価ワクチンは、これに加えてさらに5つの型のHPVも予防するため、より広範な予防効果が期待できます。2 どのワクチンを接種するかについては、かかりつけの医師とご相談ください。シルガード9の場合、1回目の接種を15歳の誕生日までに行えば2回接種で完了し、15歳以降に開始した場合は3回接種が必要となります。1

結論

HPVワクチンと妊娠に関する様々な疑問や不安に対し、本稿では最新かつ信頼性の高い科学的エビデンスを基に解説してまいりました。重要なメッセージを改めて強調します。第一に、将来の健康な家族計画を見据え、HPVワクチンは妊娠前に接種を完了させることが最も理想的な選択です。第二に、妊娠中の接種は予防原則から推奨されませんが、それは危険性が証明されたからではありません。そして第三に、万が一妊娠に気づかず接種してしまった場合でも、世界中の膨大なデータが母子ともに安全であることを示しており、心配する必要はありません。

特に、かつて接種機会を逃した「失われた世代」の方々にとって、出産後の授乳期間中も含め、今がまさに予防接種を受ける絶好の機会です。ご自身の健康を守ることは、愛するご家族の未来を守ることにも繋がります。この記事が、皆様の不安を和らげ、科学的根拠に基づいた前向きな一歩を踏み出すための一助となれば、JHO編集委員会として望外の喜びです。

        免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康または治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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