妊娠中期を健康に過ごすために知っておきたい5つのつわり終了サイン
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妊娠中期を健康に過ごすために知っておきたい5つのつわり終了サイン

はじめに

妊娠初期に多くの方が経験する「つわり」は、日常生活や精神面に大きな影響を与えるものです。特に初めての妊娠では、「一体いつ頃この不快な症状が落ち着くのだろう?」と不安や疑問を抱くことが少なくありません。そこで本稿では、つわりがどのような仕組みで起こり、一般的にはいつ頃落ち着くことが多いのか、そして「つわりが軽減または終わりに向かうサイン」として考えられる5つの兆候について詳しく解説いたします。あわせて、つわりが続いている時期に少しでも負担を和らげる対策や、栄養管理の工夫などもご紹介します。日々の生活での参考情報として、ぜひ最後までお読みください。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本稿の内容は、信頼できる文献や医療機関(Cleveland ClinicやMayo Clinicなど)の情報、および産婦人科領域で広く参照されている海外の医療情報を踏まえてまとめています。ただし、実際には個々の体質や背景によって症状の出方や対処法は異なりますので、気になることがあれば必ず医師や助産師などの専門家にご相談ください。

つわりとは何か

まず、つわり(妊娠悪阻を含む広義の症状)は、妊娠初期に生じる吐き気や嘔吐感、食欲の変化、疲労感などの総称です。医学的には「nausea and vomiting of pregnancy(NVP)」と呼ばれることもあります。一般的には以下のような特徴をもつと考えられています。

  • 吐き気:朝起きた直後などに強く感じやすいものの、必ずしも朝だけ起こるとは限らない。
  • 嘔吐:食事を取れないほど重い場合もあれば、実際には胃液だけ吐くなど人によって程度が異なる。
  • 食欲不振や嗜好変化:好きだったはずの食品が突然苦手になる一方で、それまであまり好んでいなかったものを欲するケースもある。
  • 疲労感・倦怠感:ホルモン変化による体調不良や食欲不振などが重なって、強い疲れやだるさを訴えることも多い。

妊娠初期に「これは大丈夫なの?」と不安になりがちですが、つわりは多くの妊婦さんが経験する、生理学的にもよく知られた生体反応です。一方で、妊娠継続に重大な影響を与えるほど重症化するケース(極度の嘔吐や体重減少など)は「妊娠悪阻」と診断される場合があるため、あまりに日常生活がままならないほど酷い時は必ず産婦人科の医師へ相談しましょう。

つわりはいつまで続くのか

一般的に、つわりの症状は妊娠6週目頃から始まることが多いといわれています。ただし個人差が大きく、4週目あたりで早々に症状を感じ始める方もいれば、8週目頃になってから初めて「吐き気が出てきた」と感じる方もいます。さらに、症状のピークを迎えるタイミングも人それぞれで、一般的には妊娠8〜10週あたりが一番しんどいという報告が多いですが、これも例外は少なくありません。

多くの統計や医療文献では「妊娠12〜13週(第1三半期末)を過ぎると、つわりの症状が落ち着く」とされています。実際、13週前後を目安に吐き気や嘔吐感が軽減し始め、14週に入るころにはほぼ消失している例も多いのが実情です。一方、20週前後になっても症状が残るケースもあり、稀ではありますが出産直前まで断続的に続く方も存在します。

つわりが落ち着く時期の個人差

  • 体質やホルモンバランス:妊娠中のホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:hCGなど)の分泌量や代謝速度は個人差が大きく、つわりの程度もそれに左右されると考えられています。
  • 精神的ストレス:仕事や家庭の事情などでストレスが多い時期は、吐き気や疲れを強く感じやすいといわれます。
  • 食生活・栄養状態:胃腸の状態や食べるタイミングなどがうまくコントロールできないと、つわりの症状が長引くことがあります。

5つの「つわりが終わりかけている」サイン

前述のとおり、つわりの終わりは個人差がありますが、一般的に次の5つの兆候が出てきたら「そろそろ軽くなってきたかもしれない」と考えられることが多いです。

1. 吐き気や嘔吐の頻度が明らかに減ってくる

もっとも分かりやすい変化が「吐き気の頻度や嘔吐回数が減少する」ことです。朝起きた直後に強い吐き気を感じなくなったり、吐いてしまうほど気持ち悪くなる回数が激減したりした場合、体調が回復傾向にあるとみられます。

また、以下のように「身体が楽になってきた」と自覚できる場合は、つわりの峠を越えた可能性が高いです。

  • 一日を通して胃のムカムカ感が和らいだ
  • 食後の嘔吐がほとんどなくなった
  • こまめに水分補給しても気持ち悪くならない

この段階で、もし栄養摂取量が増えればエネルギー不足や脱水傾向の改善にも役立ちます。ただし完全に吐き気が消えなくても、緩やかに回数や程度が減っていくなら安心材料になるでしょう。

2. 夜の睡眠がぐっすり取れるようになる

つわりが重い場合、夜間に不快感で眠れなかったり、寝付きが悪くなるケースもあります。妊娠初期はただでさえホルモン変化で情緒不安定になりやすい時期ですが、吐き気がひどいと物理的にも睡眠が妨げられます。

一方、つわりの終わりが見えてくると「夜間に熟睡でき、翌朝の疲労感が軽減する」という変化が現れやすいです。精神的な落ち着きだけでなく、身体も休息をしっかり取れるようになると、日中の活動意欲が戻ってきます。深く眠れるようになるときはホルモンバランスの変化が落ち着き、胃腸の不快感も和らいでいるサインと言えます。

3. 食欲が戻り、少しずつ食事を楽しめるようになる

つわり期には「口にすると必ず吐いてしまう」「匂いを嗅ぐだけで気持ち悪い」といった症状に悩まされる人が多く、結果として栄養不足や体重減少に陥りがちです。ところが、つわりが軽減し始めると「好き嫌いが多少戻る」「少し量を食べても大丈夫」「匂いに敏感に反応しなくなった」など、食欲と食事量の回復がみられます。

特に、妊娠初期に嗜好が大きく変わっていた方が「あれ、意外と食べられるかも?」と感じたときは、つわりの峠を越えた目安になることが多いです。この段階で上手にバランスの良い食事を摂ることで、母体の栄養状態を改善し胎児の成長をサポートしやすくなります。

4. 気分が明るくなり、イライラや落ち込みが減る

つわりの影響は身体だけでなく、メンタルにも及びやすいものです。吐き気や嘔吐に悩まされている時期は、思うように家事や仕事が進まず、それがストレスとなってさらにイライラが増す悪循環に陥りやすいと指摘されています。

つわりが終わりに近づくと、これまで重くのしかかっていた不快症状が緩和され「自然と気持ちが前向きになる」「ちょっとしたことへの苛立ちが減る」「一人で塞ぎ込む頻度が減る」といった心理的変化が起こりやすくなります。夫や家族に対して柔軟に気持ちを伝えられるようになれば、コミュニケーションも円滑になり、さらに精神的に安定してくるでしょう。

5. 体重がゆるやかに増え始める

つわりが収束しつつある最大の証拠の一つは「体重の増加」です。初期の段階では食事がままならず体重が減りがちですが、吐き気が落ち着いてくると徐々に普通の食事量に戻り、栄養がしっかり吸収されるようになります。妊娠中期以降は特に胎児の成長スピードが増すため、ある程度の体重増加はむしろ望ましいものです。

ただし、急激に体重が増えすぎると妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクも上がるため、医師の指導に従い適正体重の範囲を意識しながら食生活を整えていくことが重要です。

つわり軽減のための対策

つわりは生理的反応とされるため、完全に「防ぐ」ことは難しいといわれますが、症状を軽くする工夫はいくつか存在します。以下に代表的な対策をご紹介しますので、「まだつわりが残っていて辛い」「少しでも楽になりたい」と感じている方は試してみてください。

  • ビタミン剤やサプリメントの活用
    妊娠前から葉酸やビタミンB群などを意識して摂取しておくと、妊娠初期の悪心や嘔吐がやや緩和する可能性が指摘されています。ただし、サプリメントの中には鉄分が多量に含まれるものもあり、人によっては鉄分で胃がむかむかしやすくなることがあります。自己判断せず医師に相談のうえ、自分に合った成分や摂取量を見極めましょう。
  • 複数回の小分け食(1日5〜6食)
    一度にたくさん食べると胃に負担がかかり、吐き気が増すことが少なくありません。朝・昼・夕の3食にこだわらず、朝・午前中・昼・午後・夜・就寝前など、こまめに少量ずつ摂取する方法がおすすめです。血糖値を安定させることで吐き気を予防しやすくなります。
  • 匂いや味の刺激を軽減する
    香辛料の多い料理や油っぽい揚げ物など、強い香りのする食品はつわり期に不快感を増幅させる傾向があります。換気をこまめに行い、調理の際は可能な限り臭い対策をすると良いでしょう。調理法を蒸し料理や煮物中心に切り替えるのも一案です。
  • ショウガの取り入れ方を工夫する
    ショウガには胃腸を温めたり、吐き気を和らげたりする効果が期待できるとされ、世界各国でも広く利用されています。たとえばショウガ湯、ショウガ紅茶、ショウガ入りスープなどにして摂り入れると続けやすいでしょう。
    2022年にBMC Pregnancy Childbirth誌で発表されたシステマティックレビュー(Qin Y.ら 2022年「Efficacy of ginger for nausea and vomiting in pregnancy: A systematic review and meta-analysis」BMC Pregnancy Childbirth, 22(1), 826. doi:10.1186/s12884-022-05359-0)でも、ショウガ摂取が妊婦の吐き気・嘔吐に一定の改善をもたらす可能性が示唆されています。ただし、過剰摂取は胃の刺激になるリスクもあるため、適量の範囲内で利用しましょう。
  • 自分に合ったストレスマネジメント
    つわりと精神的ストレスは密接に関係し、心理的負担を軽減すると身体症状も軽くなるという研究報告があります(Wexler MSら 2021年「Nausea and vomiting in pregnancy」BMJ, 374:n1896. doi:10.1136/bmj.n1896など)。ヨガの呼吸法や軽いストレッチ、散歩、読書、音楽鑑賞など、自分に合ったリラックス法を日々の習慣に取り入れるだけでも気分転換につながるでしょう。

つわり中の栄養管理と食事のコツ

つわりがあるときは「食べられないから仕方ない」と考えがちですが、赤ちゃんの成長に必要な栄養を母体がしっかり摂取することは重要です。無理のない範囲で以下のポイントを押さえてみてください。

  • 水分補給をこまめにする
    嘔吐が続くと脱水状態に陥りやすくなります。1回あたり少量でもいいのでこまめに水や麦茶、イオン飲料などで水分を補いましょう。冷たすぎる飲み物が辛い場合は常温や温かい飲み物を取り入れてください。
  • 口当たりの良い食品を中心に
    例えば、重湯やおかゆ、スープ、ゼリー、ヨーグルトなどは比較的食べやすい傾向にあります。たんぱく質を確保したい場合、火を通した豆腐やささみなども工夫して柔らかめにすると食べやすくなります。
  • 匂いが気になる場合は冷ましてから
    食材が温かいとき特有の強い匂いが苦手な方は、調理後に一度冷ましてから食べる方法もあります。特にお肉や魚などの加熱時の匂いが気になる場合、室温で少し冷ましてから摂取すると吐き気を和らげられるでしょう。
  • 酸味を活かす
    レモンや梅干しなど、酸っぱいものを少し加えると口当たりがさっぱりして食べやすい場合があります。ただし、酸味によって逆に胸やけを起こす人もいるため、自分の体調をみつつ試してみることが大切です。

つわりへの不安や悩みを軽減するメンタルケア

つわりは身体的な不快感だけでなく、精神的にも大きな負担となることがあります。思うように仕事や家事ができず、周りのサポートをどこまで求めてよいか悩む方も少なくありません。

  • 家族やパートナーへの共有
    具体的にいつどんなタイミングで気持ち悪くなるのか、何をすると楽になるのかなどを家族に伝えておくと、サポートを得やすくなります。たとえば、ご飯を炊く匂いが苦手ならパートナーに調理をお願いするといった協力体制を作りやすくなります。
  • 同じ経験を持つ人との交流
    妊婦同士が情報交換をする場や、妊娠・出産に関するコミュニティでアドバイスをもらうのも効果的です。「自分だけがこんなに辛いのではない」と知ることで気が楽になり、気分転換にもつながります。
  • 必要に応じてカウンセリングや心療内科へ
    不安やストレスが強く、夜も眠れず食事も取れないほど追い詰められている場合、心療内科やカウンセリングを利用するのも選択肢です。心のケアを専門とする医師やカウンセラーに早めに相談することで、適切なケアやアドバイスを受けられます。

妊娠中期以降の体重管理と注意点

つわりが落ち着いてくると食欲が増して体重が急激に増加する方もいます。体重が増えすぎると妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などのリスクが高まる可能性があるので、ある程度コントロールが必要です。一方、体重がまったく増えない場合、胎児の成長に影響が出る懸念もあります。以下の点に気をつけながら適度なペースの増加を目指すことが大切です。

  • 主食・主菜・副菜のバランスを意識
    妊娠中はたんぱく質、ビタミン、ミネラル類の需要が高まります。炭水化物(主食)だけに偏らず、肉・魚・大豆製品(主菜)や野菜・海藻・果物(副菜)などをバランスよく摂取するよう心がけましょう。
  • 間食の質を高める
    お腹が空くと吐き気を感じやすいタイプの方は、間食を上手に取り入れると良いでしょう。ここで甘いスナックやジュースに偏るよりも、ヨーグルトや果物、ナッツなど栄養価の高いものを選ぶと血糖値の急上昇を抑えつつエネルギー補給ができます。
  • 定期的な受診で状態をチェック
    妊婦健診では体重測定や血圧測定、尿検査などを通じて母体と胎児の健康状態を確認します。急激な増減がある場合は必ず担当医に相談し、必要な指導や検査を受けましょう。

もしつわりが長引く・悪化する場合

一般的には妊娠13週前後で軽減することが多いつわりですが、人によっては妊娠後期まで断続的に続いたり、症状がいったん落ち着いた後にまたぶり返したりするケースもあります。また、嘔吐が激しく体重が減少し続ける「妊娠悪阻」は、入院治療が必要になる場合もあるため放置は厳禁です。以下のような症状がある場合は速やかに医師へ相談してください。

  • 1日に何度も嘔吐し、水分も満足にとれない
  • 体重が妊娠前から5〜10%以上落ちてしまった
  • 尿量が極端に減り、脱水症状が疑われる
  • 吐き気止めを処方されても症状が改善しない
  • 強いめまい、意識がぼんやりするなどの日常生活に支障をきたす症状がある

医師や助産師に正直な状況を伝えることで、早めに適切な治療や栄養補給方法(点滴など)のアドバイスを受けられます。つわりは「我慢するしかない」と思い込まず、専門的なサポートを活用しましょう。

おなかの赤ちゃんへの影響

軽度から中程度のつわりの場合、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。妊娠初期にある程度の吐き気や食欲不振があっても、母体の栄養バランスを大きく損なわない程度ならば胎児に深刻な影響は出にくいという報告が一般的です。一方で、極端に何も食べられない状態や重度の脱水・栄養不足が続く場合には、胎児発育不全や早産リスクなど懸念が増す可能性があります。普段の食事量が極端に落ち込んでいると感じる場合は、必ず医師や栄養士と相談し、点滴や栄養補助食品など必要な対応を検討しましょう。

出産に向けての心構え

妊娠初期のつわりが落ち着いてくると、少しずつ「安定期」と呼ばれる時期に入ります。おなかも大きくなってきて赤ちゃんの存在をより実感しやすくなる一方、後期にかけては腰痛やむくみなど別の悩みが出現するかもしれません。余裕があるうちに、以下のような準備や心構えをしておくのがおすすめです。

  • 妊娠中期からの運動習慣
    体調が落ち着いてきたら、主治医の許可を得たうえでマタニティヨガや軽いウォーキングなどを始めてみましょう。体力維持やストレス解消にもつながり、出産時の体力面でもプラスになります。
  • 母親学級・両親学級などへの参加
    産院などで開催される母親学級や両親学級を通じて、出産や育児に関する基礎知識を学ぶことができます。呼吸法や授乳方法、夫婦で協力する体制づくりなど、実践的な情報を得られる機会です。
  • 出産後を見据えたサポート体制
    実家や義実家、地域の子育て支援サービスなど、育児が始まってからの助けになるリソースを早めに整理しておくと安心です。産後は体力の回復に時間が必要なので、家事代行やベビーシッターなど外部サービスの利用も視野に入れましょう。

結論と提言

妊娠初期に起こるつわりは多くの女性が経験する症状であり、通常は妊娠12〜13週あたりで落ち着いていくケースが一般的です。吐き気や嘔吐感の頻度が減る、夜間によく眠れるようになる、食欲や気分が向上するなどの5つのサインが見られたら、つわりが和らぎつつあると考えられます。しかし、個人差が非常に大きいため、症状の経過を自己判断だけで捉えず、必要に応じて医療機関に相談しながら進めることが重要です。

また、つわり中は栄養バランスが乱れやすく、水分不足や体重減少に陥る危険もあるため、少量ずつでも食べやすい方法を探し、水分やビタミンの補給に努めるよう心がけましょう。ショウガやビタミンB6など、比較的安全性が高いとされる方法が症状軽減に役立つと示す研究もありますが、いずれも医師と相談のうえ、自己判断せず適切な範囲で試すことが望ましいです。つわりの影響はメンタル面にも及ぶことから、家族やパートナーとよく話し合い、不安感をため込まないような工夫も大切になります。

最終的には、つわりが自然に落ち着くまでの間、無理をせず身体と心をいたわりつつ、安全に過ごすことが第一です。もし重症化が疑われる場合や脱水症状が顕著な場合などは早めに受診し、適切な治療を受けましょう。

重要なお知らせ
本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としたものであり、医療行為の指針や診断を代替するものではありません。個々の状態により対応は異なりますので、具体的な症状や治療については必ず医師や助産師などの専門家へご相談ください。

参考文献

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