【2024年最新ガイドライン準拠】子供の糖尿病、親が知るべき全て:診断・治療・学校生活の完全ガイド
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【2024年最新ガイドライン準拠】子供の糖尿病、親が知るべき全て:診断・治療・学校生活の完全ガイド

この記事は、最新の科学的知見と専門家の合意に基づき、お子様が糖尿病と診断された、あるいはその疑いがある保護者の皆様が抱える深いご不安や疑問に、包括的かつ正確な情報を提供することを目的としています。お子様の診断は、ご家族にとって計り知れない衝撃であり、「これからどうなってしまうのか」「何から手をつければいいのか」という切実な問いに直面されていることと存じます。本稿では、日本糖尿病学会(JDS)および日本小児内分泌学会(JSPE)が発行した「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」12をはじめとする国内外の最も権威ある情報源に基づき、診断のプロセス、1型と2型の本質的な違い、最新の治療法、そして学校生活を含む日常生活の管理まで、親として知るべき全ての情報を、専門的かつ分かりやすく解説します。この記事が、暗闇の中の一筋の光となり、お子様の健やかな未来を守るための確かな一歩を踏み出す一助となることを心から願っています。


この記事の科学的根拠

この記事は、提供された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したものです。

  • 日本糖尿病学会 (JDS) / 日本小児内分泌学会 (JSPE): 本稿における診断基準、治療目標(例:HbA1c目標値)、薬物療法の選択、生活管理に関する指導の大部分は、これらの学会が共同で発行した「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」12に基づいています。
  • 国際小児・思春期糖尿病学会 (ISPAD): 日本国内の推奨事項が国際的な標準と一致していることを確認するため、ISPADの臨床実践コンセンサスガイドライン3を対照比較の情報源として使用しています。これにより、グローバルな視点からの信頼性を担保しています。
  • 国立国際医療研究センター (NCGM): 日本における最先端の治療技術や専門医療機関に関する記述は、国内トップレベルの研究・治療機関であるNCGMの公開情報4を参考にしています。
  • 難病情報センター: 日本国内における小児2型糖尿病の疫学データ(例:有病率、肥満との関連)は、同センターが提供する公式統計5に基づいています。

要点まとめ

  • 子供の糖尿病には、自己免疫が原因の「1型」と、主に生活習慣や遺伝が関わる「2型」があり、原因も治療法も全く異なります。
  • 最新の診断基準は、空腹時血糖値、ブドウ糖負荷試験、またはHbA1c(6.5%以上)によって行われます。特に学校検尿は2型糖尿病の早期発見に重要です。
  • 治療の主目標は、合併症を防ぐためにHbA1cを7.0%未満に保つことですが、低血糖を避けながら個別に設定することが不可欠です。
  • 1型糖尿病の治療は生涯にわたるインスリン補充が必須であり、インスリンポンプや持続血糖測定器(CGM)などの先進技術が活用されています。
  • 2型糖尿病の治療は食事・運動療法が基本ですが、必要に応じてメトホルミンなどの薬物療法が併用されます。
  • 学校生活では、教職員との密な連携が不可欠です。インスリン投与、低血糖時の対応、食事、運動について具体的な計画を共有することが子供の安全を守ります。
  • 病気は子供と家族に大きな心理的負担をかけます。専門的な心理的サポートや、同じ境遇の仲間と繋がるサマーキャンプなどが有効な支えとなります。

お子さんにこれらの兆候はありませんか?糖尿病の症状を早期に発見する

子供の糖尿病のサインは、時に風邪や成長期の一時的な変化と見過ごされがちです。しかし、早期に気づき対応することが、その後の健康を大きく左右します。保護者の皆様が知っておくべき重要な兆候を詳しく解説します。

警戒すべき「典型的」な症状

糖尿病の最も古典的で重要な症状は、以下の三つです。「多飲(異常に喉が渇き、大量に水分を摂る)」「多尿(おねしょが増えたり、夜中に何度もトイレに起きたりする)」「体重減少(よく食べるのに痩せていく)」。これらの背景には、インスリンというホルモンの不足や機能不全があります。日本小児内分泌学会(JSPE)によると、インスリンが不足すると、体の細胞はエネルギー源であるブドウ糖を取り込めなくなります6。その結果、体はエネルギーを補うために筋肉や脂肪を分解し始めるため、体重が減少します。同時に、血液中に溢れたブドウ糖を腎臓が尿として排出しようとするため、大量の水分が失われ、強い喉の渇きと頻尿を引き起こすのです7。これらのサインに加えて、原因不明の倦怠感や疲れやすさが見られることもあります。

1型と2型での症状の現れ方の違い

子供の糖尿病には主に1型と2型があり、その症状の現れ方には顕著な違いがあります。
1型糖尿病は、症状が数日から数週間という短期間で、突然かつ劇的に現れることがほとんどです7。先述の多飲・多尿・体重減少が急激に進行し、治療が遅れると「糖尿病ケトアシドーシス(DKA)」という、意識障害や昏睡に至る可能性のある危険な状態に陥ることがあります8
一方、2型糖尿病は、症状が非常にゆっくりと、数ヶ月から数年かけて進行するため、初期にはほとんど自覚症状がないことが多いです5。そのため、学校の集団検尿で尿糖を指摘されて初めて発見されるケースが少なくありません。この静かな進行が、2型糖尿病の発見を遅らせる一因となっています。


疑わしい時はどうすれば?日本における正確な診断プロセス

お子様に糖尿病の疑いがある場合、迅速かつ正確な診断を受けることが何よりも重要です。2024年の最新ガイドラインに基づいた日本の診断プロセスを解説します。

ガイドライン2024に基づく診断検査

日本糖尿病学会(JDS)と日本小児内分泌学会(JSPE)が策定した「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」では、以下のいずれかの基準を満たす場合に糖尿病と診断されます19

  • 空腹時血糖値: 126 mg/dL以上
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値: 200 mg/dL以上
  • 随時血糖値: 200 mg/dL以上(多飲・多尿などの典型的な症状がある場合)
  • HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー): 6.5%以上

特筆すべきは、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映するHbA1cが6.5%以上である場合、それ単独でも診断基準となり得ることです。これにより、より迅速な診断が可能になりました。診断を確定するため、これらの検査は通常、別の日に再検査されます。

学校検尿の重要な役割

日本では、学校保健安全法に基づき、小学校から高校まで定期的な尿検査(学校検尿)が実施されています。これは、症状が乏しい2型糖尿病を早期に発見するための非常に効果的な公衆衛生ツールです5。学校から尿糖陽性の通知を受け取った場合、保護者はパニックになる必要はありません。尿糖陽性が必ずしも糖尿病を意味するわけではありませんが、速やかに小児科や内分泌科などの専門医療機関を受診し、上記の血液検査を受けることが極めて重要です。「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」においても、学校検尿を契機とした早期発見と適切な医療への連携が強調されています2


我が子の病気を正しく知る:1型と2型の本質的な違い

「子供の糖尿病」と一括りにされがちですが、1型と2型は原因、病態、治療法が全く異なる別の病気です。この違いを正しく理解することは、適切なケアと精神的なサポートの第一歩です。

1型糖尿病:体が自身を攻撃してしまう病気

1型糖尿病は、自己免疫疾患の一つです。何らかのきっかけで、体を守るはずの免疫システムが誤って、膵臓でインスリンを産生するβ細胞を攻撃し、破壊してしまいます68。その結果、インスリンが絶対的に欠乏し、体は血糖をコントロールできなくなります。重要なのは、これが本人の生活習慣や食事のせいでは全くないということです。遺伝的な素因が関係する場合もありますが、発症の引き金はまだ完全には解明されていません。β細胞が破壊されてしまうため、治療には体外からインスリンを補充することが生涯にわたって不可欠となります。

2型糖尿病:インスリンが効きにくくなる病気

2型糖尿病の主な原因は、「インスリン抵抗性」、つまりインスリンは分泌されているものの、その働きが悪くなり、細胞がブドウ糖をうまく利用できなくなる状態です5。このインスリン抵抗性は、肥満、運動不足といった生活習慣と密接に関連しています。難病情報センターのデータによると、日本で2型糖尿病と診断された小児の70〜80%に肥満が見られます5。また、家族に糖尿病の人がいるといった遺伝的要因も強く関与します。初期には、体はインスリンの効きの悪さを補うために過剰にインスリンを分泌しますが、やがて膵臓が疲弊し、分泌量も低下していきます。

子供における1型と2型のクイック比較表

項目 1型糖尿病 2型糖尿病
主な原因 自己免疫による膵臓β細胞の破壊 インスリン抵抗性(肥満、遺伝、生活習慣)
発症年齢 幼児期・学童期に多いが、どの年齢でも発症しうる 思春期以降に多いが、低年齢化が進んでいる
体型 やせ型〜普通が多い 肥満傾向が多い(約70-80%5
発症様式 急激(数日〜数週間) 緩やか(数ヶ月〜数年)、無症状も多い
血中インスリン 絶対的に欠乏 初期は正常〜高値、進行すると低下
主な治療 生涯にわたるインスリン注射・ポンプ療法 食事療法、運動療法が基本。必要に応じて薬物療法。

治療計画を立てる:ガイドライン2024に基づく最新の目標と方法

糖尿病の治療は、単に血糖値を下げることだけが目的ではありません。長期的な合併症を防ぎ、お子様が健やかに成長し、質の高い生活を送ることを目指す、生涯にわたる旅路です。

血糖コントロールの目標:目指すべき「黄金の数字」とは?

「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」では、長期的な合併症(網膜症、腎症、神経障害など)を予防するための主要な目標として、HbA1c値を7.0%未満に維持することを推奨しています19。これは国際的なISPADガイドラインとも一致する目標です3。ただし、これは画一的な目標ではありません。特に低血糖を自覚しにくい幼児や、頻繁に重症低血糖を起こす場合には、安全を最優先し、より緩やかな目標(例:7.5%未満)が設定されることもあります。主治医と密に連携し、お子様一人ひとりの状況に合わせた、個別化された目標を設定することが極めて重要です。

1型糖尿病の治療:進化するインスリン療法

1型糖尿病の治療の根幹は、不足したインスリンを体外から補充することです。その方法は近年、目覚ましく進化しています。

  • 頻回注射法(MDI): 1日に4〜5回、ペン型の注射器を用いて、食事の際に効果の速いインスリンを、そして1日1回、効果が持続するインスリンを注射する方法です。
  • 持続皮下インスリン注入療法(CSII/インスリンポンプ): 携帯型のポンプから、細いチューブを通して24時間持続的にインスリンを皮下に注入する治療法です。食事の際にはボタン操作で追加注入でき、より生理的なインスリン分泌に近い状態を再現できます。
  • 持続血糖測定(CGM): 皮下に留置した小さなセンサーで、5分ごとに血糖値(間質液グルコース値)を自動測定し、スマートフォンや専用受信機に表示するシステムです。血糖の変動トレンドがリアルタイムでわかるため、高血糖や低血糖への早期対応が可能になります。
  • SAP/AID療法: CGMとインスリンポンプを連動させ、血糖値に応じてインスリン注入量を自動調整する先進的な治療法です。国立国際医療研究センター(NCGM)のような先進施設では、これらのテクノロジーを積極的に導入し、患者の負担軽減と血糖コントロールの向上を図っています410

2型糖尿病の治療:多角的なアプローチ

2型糖尿病の治療戦略は、生活習慣の改善を土台とした多層的なアプローチが基本となります5
第一段階:生活習慣の改善
食事療法と運動療法が治療の根幹です。これらはインスリン抵抗性を改善し、血糖コントロールを良好にする上で最も重要です。
第二段階:薬物療法
生活習慣の改善だけではHbA1cの目標値(7.0%未満)を達成できない場合、薬物療法が開始されます。

  • メトホルミン: 小児の2型糖尿病治療における第一選択薬として確立されています。肝臓での糖の産生を抑え、インスリンの効きを良くする作用があります11
  • GLP-1受容体作動薬: 血糖値が高い時にインスリン分泌を促す注射薬で、食欲抑制や体重減少の効果も期待できるため、肥満を伴う場合に有効な選択肢です。日本でも一部の薬剤が小児に適応承認されています。
  • インスリン療法: 診断時に著しい高血糖やケトアシドーシスが見られる場合や、他の治療法で効果が不十分な場合には、インスリン療法が必要となります。

日常生活を築く:病気と上手に付き合うための鍵

糖尿病の管理は、病院の中だけで完結するものではありません。家庭、学校、そして社会という日常生活のあらゆる場面で、病気と上手に付き合っていく知恵と工夫が求められます。

賢い栄養摂取:「制限」ではなく「選択」

糖尿病の食事は「あれもこれも食べてはいけない」という厳しい制限食ではありません。「バランスの取れた健康的な食事を、適切な量だけ選択して食べる」という考え方が基本です。特に1型糖尿病では、食事に含まれる炭水化物の量を把握し、それに見合ったインスリン量を注射する「カーボカウント」という手法が広く用いられています12。これにより、食事の自由度が高まり、子供たちの食べる楽しみを維持することができます。管理栄養士と相談し、お子様の成長と活動量に見合った、現実的で継続可能な食事計画を立てることが重要です。

安全で効果的な運動:子供らしさを失わないために

運動はインスリンの働きを良くし、血糖値を下げる効果があるため、糖尿病管理において非常に重要です。日本内分泌学会は、子供たちが友達と同じようにスポーツや遊びに参加することを推奨しています8。ただし、安全確保が最優先です。運動中や運動後に低血糖が起こりやすいため、運動前後の血糖測定、必要に応じた補食(ジュースやお菓子など)の準備が欠かせません。どのような運動を、どのくらいの時間行うかによって血糖の変動は異なるため、主治医や医療チームと具体的な対策を話し合っておきましょう。

学校での管理:サポートの輪を広げる

お子様が一日の大半を過ごす学校でのサポート体制を築くことは、安全管理の要です。「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」でも、学校との連携の重要性が強調されています2。以下の点をまとめた「学校生活管理指導表」などを活用し、担任教師、養護教諭、そして可能であればクラスメイトにも情報を共有することが望ましいです。

  • インスリン注射・ポンプ操作: いつ、どこで、誰がサポートするか。
  • 血糖測定: 測定のタイミングと場所。
  • 低血糖時の症状と対処法: 具体的な症状(ふらつき、冷や汗など)と、その際に摂取すべき補食(ブドウ糖、ジュースなど)の保管場所と手順を明確にする。
  • 高血糖時の対応: どのような症状の時に、どのように連絡してほしいか。
  • 食事・給食: 給食の量の調整や、捕食のタイミングについて。
  • 体育・行事: 運動会や遠足など、特別な活動の際の注意点と対応策。

「シックデイ(病気の日)」への備え

風邪、発熱、嘔吐、下痢などで体調を崩した日(シックデイ)は、血糖値が非常に不安定になります。食事ができなくても、ストレスホルモンの影響で血糖値は上昇しやすく、特に1型糖尿病ではケトアシドーシスに陥る危険性が高まります6。シックデイには以下のルールを徹底することが重要です。

  • 自己判断でインスリンを中止しない: 1型糖尿病の場合、たとえ食事が摂れなくても、基礎分泌を補うインスリン注射は絶対に中断してはいけません。これが最も重要なルールです。
  • こまめな血糖測定とケトン体測定: 普段より頻繁に血糖値を測定し、尿中または血中ケトン体もチェックします。
  • 十分な水分補給: 脱水を防ぐため、水分を少量ずつ頻繁に摂らせます。
  • 医療機関への早期連絡: 高血糖が続く、ケトン体が高い、嘔吐が止まらない、ぐったりしているなどの場合は、ためらわずにすぐに主治医に連絡し、指示を仰いでください。

挑戦を乗り越える:心理的サポートと未来への眼差し

糖尿病という慢性疾患との共存は、お子様自身とご家族に大きな心理的負担を強いることがあります。しかし、適切なサポートと前向きな姿勢があれば、この挑戦を乗り越え、明るい未来を築くことができます。

心の重荷:子供と家族、双方への支援

毎日の自己注射や血糖測定、食事管理は、子供にとって大きなストレスとなり、周りの友達との違いに悩んだり、将来に不安を感じたりすることがあります。同様に、保護者も絶え間ない心配や管理の負担、時には「自分のせいでは」という自責の念に苦しむことがあります2。「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」では、こうした心理社会的な問題への対応の重要性が強調されており、必要に応じて臨床心理士や精神科医などの専門家によるカウンセリングを受けることが推奨されています2。また、同じ病気を持つ仲間と交流できる糖尿病サマーキャンプは、子供たちが病気について学び、自己管理能力を高め、何よりも「一人じゃない」と感じられる貴重な機会となります2

長期合併症:なぜ「今日の良好な管理」が「明日の健康」に繋がるのか

糖尿病の管理が重要である最大の理由は、長期的な合併症を防ぐためです。持続的な高血糖は、目(網膜症)、腎臓(腎症)、神経(神経障害)の細い血管を傷つけ、将来的に深刻な問題を引き起こす可能性があります。しかし、これは避けられない運命ではありません。多くの研究が、小児期から良好な血糖コントロール(HbA1c 7.0%未満)を維持することで、これらの合併症の発症を大幅に予防したり、進行を遅らせたりできることを証明しています13。今日の地道な努力が、お子様の数十年にわたる健康な未来を守るための、最も確実な投資となるのです。

移行期医療:大人へのステップを支える

小児期に発症した患者が思春期を越え、成人期に達する際に、小児科から成人診療科へスムーズに治療を引き継ぐプロセスを「移行期医療」と呼びます。この時期は、心身ともに不安定になりやすく、自己管理がおろそかになり、治療が中断してしまう危険性が高い、非常に重要な時期です。「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」でも、この移行期を成功させるための計画的な準備と支援体制の構築が課題として挙げられています2。これは、患者の生涯にわたる健康を見据えた、非常に重要で思慮深いアプローチです。

よくある質問

子供の糖尿病は治りますか?

現在の医療では、残念ながら1型糖尿病、2型糖尿病ともに「完治」させる方法はありません。しかし、これは「治らない病気」ではなく、「コントロールできる病気」です。最新の治療法と適切な自己管理によって血糖値を良好に保つことで、合併症を防ぎ、健康な人と変わらない学校生活、社会生活、そして寿命を全うすることが十分に可能です。

子供を糖尿病サマーキャンプに参加させるべきですか?そのメリットは何ですか?

サマーキャンプへの参加は、非常におすすめできます。ガイドラインでもその有効性が言及されています2。メリットは多岐にわたります。医療スタッフの監督のもとで、子供たちは病気や自己管理技術(注射や食事療法など)について楽しく学べます。しかし、最大のメリットは、同じ病気を持つ仲間たちと出会い、悩みを共有し、「自分だけじゃないんだ」という連帯感を得られることです。この経験は、病気に対する前向きな姿勢を育み、子供たちの自立を促す大きな力となります。

インスリン注射は痛いですか?子供の恐怖心を和らげる方法はありますか?

近年の技術進歩により、注射針は極めて細く、短くなっており(例えば、髪の毛ほどの細さの針もあります)、痛みは大幅に軽減されています。しかし、子供にとって注射への恐怖心は自然なものです。恐怖心を和らげるためには、まず保護者が落ち着いて、注射が「命を守る大切な行為」であることを優しく説明することが重要です。注射する場所を毎回少しずつ変える、注射の際に気を紛らわせる(歌をうたう、好きな動画を見せるなど)、上手にできた時にたくさん褒めてあげる、といった工夫が有効です。また、医師や看護師に相談し、痛みを和らげるための具体的な指導を受けることもできます。

どのような場合に、すぐに病院へ連れて行くべきですか?

以下の症状が見られる場合は、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)などの危険な状態の可能性があるため、夜間や休日であっても、ためらわずにすぐに医療機関を受診するか、救急車を呼んでください。

  • ぐったりして意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い。
  • 嘔吐が止まらない、水分も摂れない。
  • 呼吸が速く、深く、息から甘酸っぱい匂い(アセトン臭)がする。
  • 強い腹痛がある。
  • 血糖値が異常に高い状態(例:300mg/dL以上)が続き、尿(または血液)ケトン体も陽性(++以上など)を示す。

結論

お子様が糖尿病と診断されたことは、ご家族にとって大きな試練の始まりかもしれません。しかし、それは絶望ではありません。本稿で解説したように、日本の医療は「小児・思春期糖尿病コンセンサス・ガイドライン2024」12という確固たる指針のもと、世界最高水準の治療を提供できる体制を整えています。1型糖尿病と2型糖尿病の本質的な違いを正しく理解し、最新の治療法とテクノロジーを活用し、そして何よりも家庭と学校、医療チームが一体となってサポートの輪を築くことで、お子様は病気と共に健やかに成長し、夢を追いかけ、充実した人生を送ることが可能です。この記事で得た知識を、ぜひ主治医との対話のための「準備の道具」としてご活用ください。専門家と深く、効果的に話し合うことで、お子様一人ひとりに最適化された、希望に満ちた治療計画がきっと見つかるはずです。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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