子供の肥満とクッシング症候群:見分け方、診断、最新治療法の完全ガイド
小児科

子供の肥満とクッシング症候群:見分け方、診断、最新治療法の完全ガイド

お子様の体重増加について、保護者の皆様が抱えるご心配は尽きないことと存じます。特に、その体重増加が単なる「食べ過ぎ」によるものなのか、あるいは何か病気が隠れているのではないかという不安は、切実なものでしょう。この記事は、日本の保護者および介護者の皆様が、お子様の体重に関する問題に対して、科学的根拠に基づいた正確で信頼できる情報を得られるよう、JHO(JAPANESEHEALTH.ORG)編集委員会が総力を挙げて編纂したものです。私たちの目的は、いたずらに不安を煽ることではなく、正しい知識をもっていただくことです。本稿では、一般的な生活習慣に起因する「単純性肥満」と、まれではあるものの深刻な内分泌疾患である「クッシング症候群」との根本的な違いを徹底的に解説します。この二つを鑑別することは、不必要な医療介入を避けつつ、見逃してはならない医学的診断へと繋がる極めて重要な第一歩です。この記事のすべての情報は、日本内分泌学会(JES)21、日本小児内分泌学会(JSPE)5、そしてThe Endocrine Society(米国)10のような国内外の権威ある医療機関の最新ガイドラインに基づいています。皆様が愛するお子様の健康のために、最善の判断を下す一助となることを心より願っております。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したものです。

  • 日本小児内分泌学会(JSPE): この記事における小児肥満の定義、単純性肥満と症候性肥満の鑑別、および成長曲線を用いた評価の重要性に関する指針は、JSPEが公表したガイドラインに基づいています5
  • The Endocrine Society(米国): クッシング症候群の診断に関する国際的な標準手順、特に各種スクリーニング検査(深夜唾液中コルチゾール、24時間尿中遊離コルチゾール、低用量デキサメタゾン抑制試験)の選択と解釈に関する推奨事項は、同学会の臨床診療ガイドラインに基づいています1011
  • 日本国厚生労働省/難病情報センター: 日本におけるクッシング病の「指定難病」としての位置づけ、診断基準、および公的医療費助成制度に関する情報は、厚生労働省の公式文書および難病情報センターの公開情報に基づいています1520
  • 各種学術論文(Ferrigno et al., 2024など): 小児クッシング症候群の臨床症状の出現頻度、年齢別の原因分布、および治療後の長期的な予後に関する具体的なデータは、査読済みの国際的な学術論文やシステマティックレビューで報告された研究結果に基づいています12

要点まとめ

  • 子供の肥満の大多数は、過食と運動不足を原因とする「単純性肥満」です。これは生活習慣の改善で対応可能です5
  • 「肥満をともなう身長の伸びの停滞」は、単純性肥満とクッシング症候群を鑑別する最も重要な警告サインです5
  • クッシング症候群は、コルチゾールというホルモンの過剰分泌によって引き起こされるまれな内分泌疾患です。特徴的な症状には、満月様顔貌、中心性肥満、赤紫色の皮膚線条などがあります2
  • 診断は、尿・唾液・血液検査でコルチゾールの過剰を確認し、画像検査(MRIやCT)で原因となる腫瘍の位置を特定する段階的なプロセスで行われます9
  • 治療の第一選択は、原因となる腫瘍を外科的に摘出することです。経験豊富な専門医による手術が成功の鍵となります36。治療後の回復には時間がかかり、長期的なフォローアップが不可欠です。

第I部:日本の子供における体重増加と肥満を理解する

まれな疾患について掘り下げる前に、子供の体重増加の最も一般的な原因である「単純性肥満」を正確に理解することが不可欠です。これにより、大半の保護者の懸念に対応するとともに、特別な注意を要する例外的なケースを認識するための重要な比較基準を確立します。

第1章:子供の単純性肥満:日本の現状

1.1. 小児肥満(小児肥満)の定義

日本において、子供の肥満は単に体重だけで判断されるわけではありません。医療専門家は、子供の身長別標準体重を基準にして計算される「肥満度」という指標を用います。この計算式により、体内の過剰な脂肪量をより正確に評価することができます。肥満度が+20%以上の場合を「肥満」、+50%を超える場合を「高度肥満」と定義します3。最も重要な点は、子供の肥満の大部分が「単純性肥満」、すなわち原発性肥満であるということです。これは摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることによって脂肪が過剰に蓄積する状態を指します5。クッシング症候群を含む病的な原因による肥満、すなわち「症候性肥満」は、肥満全体の非常に小さな割合に過ぎません5。この二つを区別することが、診断における最初の最も重要なステップとなります。

1.2. 単純性肥満の主な原因

単純性肥満の原因は、ほぼ常に生活習慣と環境要因、つまりエネルギーの摂取と消費のバランスが長期的に崩れることに起因します5

  • 過剰なエネルギー摂取: 現代の食生活は、高エネルギー、高脂肪、高糖質の食品で溢れています。ファーストフード、スナック菓子、甘いお菓子、そして特に糖分の多い清涼飲料水の頻繁な摂取が主な要因です5。また、一日三食を規則正しく摂らない不規則な食習慣も、食欲をコントロールする体の仕組みを乱す可能性があります。
  • 低いエネルギー消費: 子供たちの間で、体を動かさない生活様式がますます一般的になっています。屋外での身体活動の時間は、テレビ視聴、ビデオゲーム、スマートフォンやタブレットの使用といった屋内の静的な活動に取って代わられています4。研究では、電子機器の使用時間と子供の肥満の危険性との間に直接的な関連があることが示されています4
  • 生活リズムの乱れ: 見過ごされがちですが大きな影響を持つのが、日々の生活リズムです。夜更かしや朝寝坊の習慣は、空腹感や満腹感を調節するホルモンの分泌を乱し、夜遅くに多く食べたり、不健康な食品を選んだりする傾向につながることがあります。そのため、日本の小児科専門医は「早寝、早起き、朝ごはん」を含む規則正しい生活習慣の維持を、健康的な生活の基盤として強調しています7

1.3. 小児肥満に関連する健康上の危険性

子供の肥満は単なる見た目の問題であり、成長すれば自然に治ると考える人もいるかもしれませんが、これは危険な誤解です。小児肥満は深刻な医学的状態で、幼少期から成人期にかけて、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります6

  • 生活習慣病と心血管疾患: 肥満児、特に肥満度が50%を超えるような高度肥満の子供は、従来は成人の病気と考えられていた疾患を発症する危険性が高まります。脂質異常症(高脂血症)、高血圧、脂肪肝、さらには2型糖尿病などが小学生のうちから発症することがあります3。これらは将来、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中といった深刻な心血管疾患の主要な危険因子となります。小児期から成人期まで肥満が持続すると、成人になってから初めて肥満になった場合に比べて、これらの危険性が著しく増加します4
  • 骨・関節の問題: 過剰な体重は、成長過程にある骨格系に大きな負担をかけ、関節痛や骨の変形、骨折の危険性の増加などを引き起こす可能性があります7。また、肥満の子供は走る、跳ぶといった身体活動が困難になることが多く、体育の授業や友人との遊びへの参加にも影響が出ることがあります7
  • 心理・社会的な問題: 肥満の影響は身体だけに留まりません。肥満の子供は友人からのからかいやいじめの対象となりやすく、自信喪失、劣等感、不安、さらにはうつ病につながることがあります。これらの心理的な問題は、学業成績や社会への適応に悪影響を及ぼし、時には不登校の原因となることもあります7

これらの危険性を理解することは、早期介入の重要性を浮き彫りにします。子供の単純性肥満の治療における主な目標は、急激な減量ではなく、身長が伸びる間に「体重を維持する」こと、そして何よりも「生活習慣全体を見直し、改善する」ことです3


第II部:子供のクッシング症候群 – 専門的な深掘り分析

単純性肥満を理解した上で、次に生じる重要な疑問は、「子供の体重増加が『単純』でなくなるのはいつか?」という点です。ここからは、まれではあるものの、はるかに深刻な状態であるクッシング症候群に焦点を移します。この病気に特有の警告サインを認識することは、時機を逸することなく診断と治療を行い、子供の健康への長期的なダメージを防ぐために不可欠です。

第2章:重要な警告サイン:肥満が「単純」でなくなる時

2.1. 中核となる鑑別サイン

臨床現場において、生活習慣に起因する肥満と、クッシング症候群のような内分泌疾患による肥満を区別するための最も重要な「危険信号」とされる兆候があります。それは、急激かつ著しい体重増加に加えて、身長の伸びが鈍化または完全に停止するという組み合わせ、すなわち「肥満をともなった成長遅延」です5
これは根本的な違いです。単純性肥満では、栄養が過剰なため、子供はむしろ身長の伸びが良い傾向にあり、同年代の子供よりも背が高いことさえあります。成長曲線を見ると、体重と身長の両方のカーブが上昇し、通常は高いパーセンタイル(百分位数)に位置します5
対照的に、クッシング症候群では、長期間にわたる異常に高いコルチゾール濃度が骨端の成長軟骨を抑制し、子供の身長の成長を妨げます12。その結果、成長曲線には非常に特徴的で警戒すべきパターンが現れます。体重のカーブは高いパーセンタイルへと急上昇する一方で、身長のカーブは横ばいになるか、あるいはより低いパーセンタイルへと下降し始めます。この二つのカーブの解離は、非常に感度と特異度の高い臨床的兆候であり、医師が病的な原因を調べるための精密検査を開始する正当な理由となります10

2.2. 成長追跡チャートの紹介

この重要な違いを保護者の皆様に具体的に理解していただくために、成長曲線は非常に効果的で視覚的なツールとなります。「体重増加を伴う成長遅延」という概念は抽象的かもしれませんが、グラフで示すことで一目瞭然となります。このようなチャートは強力な教育ツールであるだけでなく、保護者が子供の健康を主体的に管理し、異常な兆候を早期に発見する助けとなります。

表1:単純性肥満とクッシング症候群の疑いの違いを示す成長曲線モデル
特徴 シナリオ1:単純性肥満 シナリオ2:クッシング症候群の疑い
体重曲線 順調に増加し、通常は高いパーセンタイル(例:90パーセンタイル以上)に位置する。 急速に増加し、非常に高いパーセンタイル(例:97パーセンタイルを超える)へと急上昇する。
身長曲線 順調に増加し、通常は平均から高いパーセンタイル(例:50~75パーセンタイル)に位置する。年齢相応の身長。 横ばいまたは停滞し始め、徐々に低いパーセンタイル(例:50から25パーセンタイル以下)へと下降する。
視覚的イメージ 体重と身長がともに同じチャネルに沿って上昇する。 身長が横ばいになる一方で、体重が急上昇する。
医学的意義 体重増加と身長の成長が同時に起こっており、栄養過多の状態を特徴づける。 体重増加と身長の成長との間に明確な解離があり、潜在的な内分泌障害を示唆する強力な警告サイン。直ちに専門医による評価が必要。

日本における重要な公衆衛生の実践として、保護者に母子健康手帳を用いて子供の成長を記録し、グラフ化することが推奨されています。子供の成長パターンに懸念がある場合、特にシナリオ2のような解離が見られる場合は、この成長記録を持参して医師の診察を受けるべきです。これは子供の成長過程に関する貴重なデータを提供し、医師がより正確な診断を下す助けとなります。

第3章:クッシング症候群とは?まれな内分泌障害の概要

3.1. 定義とコルチゾールの役割

クッシング症候群とは、体が長期間にわたって過剰な濃度のコルチゾールというホルモンにさらされることによって引き起こされる一連の徴候や症状を指す医学用語です2。一般に「ストレスホルモン」として知られるコルチゾールは、副腎(腎臓の上にある小さな二つの腺)の皮質で産生されるステロイドの一種です。
ストレスと関連づけられることが多いですが、コルチゾールは実際には体の多くの機能において不可欠な役割を果たしています2

  • 代謝の調節: 炭水化物、脂肪、タンパク質をエネルギーに変換するのを助ける。
  • ストレスへの反応: ストレス状況に対処するための即時的なエネルギーを供給するために血圧や血糖値を上昇させる。
  • 抗炎症作用: 免疫系の反応を調節する。
  • その他の機能の維持: 血圧、睡眠・覚醒サイクル、骨の健康などに影響を与える。

正常な状態では、体は視床下部-下垂体-副腎(HPA)系と呼ばれるシステムを通じてコルチゾールの産生を精巧に調節しています。しかし、クッシング症候群ではこの調節機構が破綻し、コルチゾールが慢性的に過剰産生され、全身に広範かつ有害な変化を引き起こします2

3.2. クッシング病とクッシング症候群の区別

医学文献や日常的な会話において、「クッシング病」と「クッシング症候群」という二つの用語は時として混同して使用され、混乱を招くことがあります。両者の違いを明確に理解することは非常に重要です。

  • クッシング症候群(Cushing’s Syndrome): これは、原因が何であれ、血中のコルチゾール濃度が高いことによって引き起こされる全ての状態を包括する総称です。原因はステロイド薬の使用、副腎の腫瘍、または下垂体の腫瘍など、さまざまです2
  • クッシング病(Cushing’s Disease): これは、クッシング症候群の特定の原因を指します。クッシング病は、コルチゾール高値の原因が下垂体にできた腫瘍(通常は腺腫と呼ばれる良性腫瘍)である場合に起こります。この腫瘍がACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を過剰に産生し、それによって副腎が制御不能なほどコルチゾールを産生するのです2

簡単に言えば、クッシング病の患者は全員クッシング症候群ですが、クッシング症候群の患者全員がクッシング病であるわけではありません。クッシング病は、内因性(体内の要因によって引き起こされる)クッシング症候群の中で最も一般的な形態です。

3.3. 日本における「指定難病」としての位置づけ

その重篤性、診断と治療の複雑さ、そして患者にもたらす長期的な負担を鑑み、クッシング病は日本の厚生労働省によって、コード番号75の「指定難病」として正式にリストされています152
指定難病として認定されることには、二つの重要な意味があります:

  1. 重篤性の公的な認知: これが単純な状態ではなく、多くの重篤な合併症を引き起こし、生活の質を著しく損ない、治療しなければ生命を脅かす可能性のある慢性疾患であることを国が認めていることを意味します17
  2. 政府からの支援: 日本でクッシング病と診断された患者は、長期にわたる治療費やフォローアップ費用の一部を賄うための医療費助成を受ける資格が得られる場合があります。これにより、特に治療が長期間にわたり高額になる可能性のある家庭の経済的負担が軽減されます。

3.4. 子供におけるまれな罹患率

保護者の皆様に強調すべき重要な点は、子供の内因性クッシング症候群は非常にまれな病気であるということです。これを知ることで、不必要な心配を和らげることができます。単純性肥満が相当な割合の子供に影響を及ぼす一方で、肥満の子供が実際にクッシング症候群である可能性は極めて低いのです。
日本および世界中の疫学データがこれを裏付けています:

  • 1997年に日本で行われた全国疫学調査では、国内のクッシング症候群の患者数は約1,250人と推定されました。このうち、子供の症例は約7例のみで、わずか0.6%という非常に小さな割合でした23
  • 国際的な研究でも同様の数字が示されており、小児期のクッシング症例は全クッシング症例の約10%を占めるに過ぎないと推定されています12。内因性クッシング症候群全体の年間新規罹患率は、人口100万人あたり0.7から2.4例程度です25

これらの数字は、クッシング症候群が示唆的な兆候がある場合に決して見逃してはならない重要な診断である一方で、ほとんどの過体重または肥満の子供にとっては、非常に可能性の低い疾患であることを示しています。

第4章:臨床像:徴候と症状を見分ける

クッシング症候群の臨床像は、特有の症状の組み合わせによって描かれます。一部の症状は診断的価値が非常に高い一方で、他の症状はより一般的で他の多くの状態と重なることがあります。これらの症状群を認識し、区別する能力が、合理的に病気を疑うための鍵となります。

4.1. 特異的な症状(鑑別的特徴)

これらは、出現した場合、特に互いに組み合わさって現れた場合に、子供がクッシング症候群である可能性を強く高める兆候です。これらは、過剰なコルチゾールに特徴的な異化作用(タンパク質の分解)と脂肪の再分布を反映しています10

  • 満月様顔貌(Moon face): 最も古典的な兆候の一つです。顔が異常に丸く、ふっくらとし、しばしば皮膚下の微細な血管が拡張するために顔面が赤みを帯びます(顔面紅潮)2
  • 中心性肥満: 脂肪が不均衡に蓄積し、主に体幹部(腹部、胸部)、首、背中の上部に集中し、「野牛肩(バッファローハンプ)」と呼ばれる特徴的な脂肪の塊を形成します。一方で、四肢には逆説的な現象が起こります。筋萎縮により、手足は逆に細く、痩せて見えます2。この対照的な外見は非常に示唆に富む特徴です。
  • 赤色皮膚線条: 急激な体重増加による一般的な皮膚線条(白色または薄いピンク色)とは異なり、クッシング症候群の皮膚線条は特徴的な赤紫色で、幅が広く(通常1cm以上)、深いものです。これらはコルチゾールが皮膚を薄くし、コラーゲン線維を破壊するために生じ、通常は腹部、大腿部、胸部、上腕に見られます8
  • 皮膚と筋肉の変化: 皮膚は紙のように薄く、もろくなり、軽い打撲でも容易にあざができます(易出血性)2。切り傷や擦り傷も治りにくくなります。同時に、特に四肢の付け根の筋肉(大腿筋、肩筋)の萎縮が起こり、筋力低下(近位筋ミオパチー)を引き起こします。しゃがんだ状態から立ち上がる、階段を上る、髪をとかすといった動作が困難になることがあります8
  • 肥満を伴う成長遅延: 第2章で強調したように、これは子供において最も特異的で重要な兆候です5

4.2. 非特異的な症状

このグループの症状は非常に一般的で、他の多くの疾患や健康な人にも見られることがあるため、単独での診断的価値は低くなります。しかし、上記の特異的な症状とともに出現した場合、クッシング症候群の診断をさらに補強します。

  • 高血圧: コルチゾールは血圧を上昇させる可能性があり、これはクッシング病患者によく見られる所見です2
  • 耐糖能異常または糖尿病: コルチゾールは血糖値を上昇させ、インスリン抵抗性を引き起こすため、糖尿病を発症する危険性が高まります2
  • 骨粗鬆症: 過剰なコルチゾールは新しい骨の形成を妨げ、骨の破壊を促進するため、子供であっても骨がもろくなり、骨折しやすくなります8
  • 気分と認知の変化: 患者は怒りっぽくなったり、不安になったり、不眠になったり、あるいはうつ病の症状を発症することがあります。記憶力や集中力の低下も報告されています2
  • 生殖と思春期の問題: 思春期の女児では、月経不順や無月経を引き起こすことがあります。男女ともに、異常な思春期早発症や遅発症の原因となることがあります8
  • その他の皮膚の問題: 重度のざ瘡(にきび)や、顔、胸、背中の多毛症もよく見られる兆候です2
  • 感染症のリスク増加: コルチゾールは免疫系を抑制するため、患者は感染症にかかりやすくなり、感染症が重症化する傾向があります1

4.3. 症状の有病率

症状の出現頻度についてより定量的な視点を提供するために、系統的レビュー研究からのデータを参考にすることが非常に有用です。以下の表は、複数の大規模研究から得られた小児クッシング症候群における主要な臨床的特徴の有病率をまとめたもので、どの症状が最も一般的であるかを保護者や臨床医が理解する助けとなります。

表2:小児クッシング症候群における主要な臨床的特徴の有病率(研究からの統合データ)
症状 有病率 (%) 参考文献(例:12より)
体重増加 76% – 98% Magiakou 1994, Storr 2011, Shah 2011
成長遅延/停止 36% – 100% Magiakou 1994, Storr 2011, Lonser 2013
顔貌の変化(満月様顔貌、赤ら顔) 46% – 100% Devoe 1997, Storr 2011, Shah 2011
高血圧 36% – 71% Magiakou 1994, Storr 2011, Shah 2011
多毛症 46% – 78% Magiakou 1994, Storr 2011, Lonser 2013
赤紫色の皮膚線条 36% – 61% Magiakou 1994, Devoe 1997, Storr 2011
筋力低下 48% Shah 2011
ざ瘡(にきび) 44% – 50% Storr 2011, Lonser 2013, Guemes 2016
精神症状(いらいら、うつ) 19% – 59% Magiakou 1994, Storr 2011, Shah 2011
骨粗鬆症/骨密度低下 74% Devoe 1997
出典:Ferrigno et al., 2024の系統的レビューで引用された研究からデータを統合12

この表は、体重増加と顔貌の変化がほぼ常に見られる症状であることを示しています。成長遅延も非常に一般的で、診断的価値が高いです。複数の症状、特に特異的な症状が組み合わさって存在する場合、クッシング症候群の疑いは著しく高まり、直ちに医学的な評価が必要となります。

第5章:コルチゾール増加の原因:年齢による分類と疫学

コルチゾール過剰状態の根本原因を理解することは、適切な治療法を選択するための重要なステップです。これらの原因は体系的に分類されており、興味深いことに、その分布は子供の年齢によって変化します。

5.1. 原因の分類

クッシング症候群の原因は、外因性(外からの要因)と内因性(体内の要因)の二つの大きなグループに分けられます。

  • 外因性クッシング症候群:
    これはクッシング症候群全体の最も一般的な原因です10。グルココルチコイド(コルチゾールと同様の作用を持つ合成ステロイド)を含む薬剤を、高用量で長期間使用した場合に発生します。これらの薬剤は、重症の喘息、関節リウマチ、ループス、臓器移植後など、さまざまな病状の治療に使用されます。グルココルチコイドは、経口、注射、吸入、さらには外用(塗り薬)など、さまざまな経路で体内に投与される可能性があります24。したがって、診断プロセスの最初の必須ステップは、高価で複雑な検査を進める前に、患者の薬剤使用歴を徹底的に聴取し、この原因を除外することです10
  • 内因性クッシング症候群:
    これはよりまれな形態で、体自体が過剰なコルチゾールを産生する場合に発生します。この形態は、血中のACTHホルモンの濃度に基づいて、さらに二つのサブグループに分類されます15

    • ACTH依存性(内因性症例の約75-80%を占める): この場合、副腎が多くのコルチゾールを産生するのは、血中の高いACTH濃度によって過度に刺激されるためです。過剰なACTHの源は次のいずれかです:
      • クッシング病: 下垂体にできた腫瘍(通常は良性)によって引き起こされます。これは内因性クッシング症候群の最も一般的な原因であり、特に年長の子供や青年(7歳以上)に多く見られます12
      • 異所性ACTH症候群: 下垂体以外の臓器(例:肺、胸腺、膵臓)にできた腫瘍がACTHを産生する能力を持つことによって引き起こされます。この状態は子供では極めてまれです24
    • ACTH非依存性(内因性症例の約15-20%を占める): この場合、問題は副腎自体にあります。片方または両方の副腎が、ACTHの刺激なしに自律的にコルチゾールを産生します。高いコルチゾール濃度により、フィードバック機構が下垂体を抑制し、血中のACTH濃度は非常に低いか検出不能になります。原因には以下が含まれます:
      • 副腎腫瘍: 良性腫瘍(腺腫)または悪性腫瘍(癌)の可能性があります。これは、特に幼児期(7歳未満)、特に0〜4歳でピークを迎えるクッシング症候群の主な原因です1
      • 両側性副腎過形成: 両方の副腎が腫大し、過剰なコルチゾールを産生するまれな状態。一般的な形態には、原発性色素性結節性副腎皮質疾患(PPNAD)や大結節性副腎過形成(PBMAH)があります。これらの状態は、カーニー複合体のような複雑な遺伝性症候群に関連していることがよくあります8

この年齢による原因の分布は、臨床的に非常に有用な法則です。これは診断プロセスを方向づけます。4歳の子供がクッシング症候群の兆候を示した場合、医師はまず副腎に原因を求めます(例:腹部のCTまたはMRI撮影)。対照的に、14歳の思春期の子供の場合、下垂体の原因(クッシング病)が第一に考慮されます(例:下垂体のMRI撮影)。この論理を理解することは、保護者が子供が受ける診断ステップを予測し、理解する助けとなります。

5.2. 遺伝的・分子的要因

分子遺伝学の進歩により、クッシング症候群を引き起こすいくつかのメカニズムが解明され、将来的には標的治療への希望が開かれています。ほとんどの症例は散発性ですが、一部は特定の遺伝子変異に関連しています:

  • USP8遺伝子変異: 画期的な研究により、クッシング病を引き起こす下垂体腫瘍の約35%に、USP8遺伝子の体細胞変異(腫瘍細胞内でのみ発生し、遺伝しない)が存在することが発見されました16。この変異により、USP8酵素が過剰に活性化し、腫瘍細胞の増殖シグナルとACTH産生が亢進します。この発見は、クッシング病を治療するためのUSP8阻害薬の開発に向けた大きな一歩となることが期待されています30
  • TP53遺伝子変異: TP53遺伝子は重要な腫瘍抑制遺伝子です。この遺伝子の変異は、副腎皮質腫瘍、特に癌の発生と密接に関連しています。この変異の割合は、ブラジルなどの特定の地域で異常に高く、その地域における子供の副腎皮質腫瘍の発生率が高いことを説明しています25
  • 副腎過形成に関連する遺伝子: PPNADやPBMAHのような状態は、しばしば遺伝的基盤を持っています。PRKAR1AやARMC5などの遺伝子の変異がこれらの疾患の原因として特定されており、しばしば家族内で遺伝します21

これらの遺伝的要因を特定することは、病態をより深く理解するだけでなく、家族への遺伝カウンセリングやリスクのある他の家族成員のスクリーニングにおいても意義があります。


第III部:診断への道のり – 保護者のための詳細ガイド

クッシング症候群の診断プロセスは、忍耐と、家族と医療チームとの間の緊密な連携を必要とする複雑な道のりです。それは単一の検査ではなく、3つの核心的な問いに答えるために設計された一連の論理的なステップです。この道のりを理解することは、保護者が混乱を減らし、子供を支援する上でより主体的になる助けとなります。

第6章:段階的な診断ステップ

診断プロセスの目的は、明確で段階的な3つのステップに分けられます:

  1. ステップ1:病的なコルチゾール過剰状態の存在を確認する。このステップは、体が実際に過剰なコルチゾールを産生しており、正常な生体リズムを失っていることを確定することを目的とします。
  2. ステップ2:原因を鑑別する。コルチゾール過剰を確認した後、次のステップは、原因がACTH依存性(下垂体または異所性によるもの)か、ACTH非依存性(副腎によるもの)かを特定することです。
  3. ステップ3:発生源を特定する。最後に、治療計画を立てるために、過剰なホルモン産生を引き起こしている腫瘍または病変の正確な位置を特定する必要があります。

6.1. ステップ1:スクリーニングとコルチゾール過剰の確認

最初の問いに答えるため、医師は一つまたは複数の高精度な検査を使用します。コルチゾール濃度は変動する可能性があるため、信頼性の高い結果を得るためには、検査を繰り返すか、複数の種類の検査を組み合わせることが必要です10

  • 24時間尿中遊離コルチゾール(UFC):
    目的:この検査は、体が24時間かけて尿中に排泄する非結合型コルチゾール(生物学的に活性な形態)の総量を測定します。これにより、瞬間的な値ではなく、コルチゾール産生の全体像を把握できます10
    実施方法:患者は24時間分の全ての尿を特別な容器に集め、冷蔵保存する必要があります。精度を高めるため、異なる日に少なくとも2回の採尿を行います10
  • 深夜唾液中コルチゾール:
    目的:健康な人では、コルチゾール濃度は夜間(午後11時から深夜にかけて)に非常に低いレベルまで低下します。クッシング病患者ではこの日内リズムが失われ、夜間もコルチゾール濃度が高いままです。この検査は、この異常を検出するために設計されています10
    実施方法:患者は自宅で、夜間の決まった時間(通常は午後11時)に専用の器具を使って唾液サンプルを採取します。これは非侵襲的で便利な検査であり、特に子供にとって有用で、高い感度と特異度を持っています10。異なる夜に少なくとも2つのサンプルを採取する必要があります。
  • 低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST):
    目的:この検査はHPA系のフィードバック機構を調べます。デキサメタゾンは強力な合成ステロイドです。健康な人に少量投与すると、下垂体は体が十分なコルチゾールを持っていると「誤解」し、ACTHの分泌を停止させ、副腎はコルチゾールの産生を止めます。クッシング病患者ではこの機構が故障しており、デキサメタゾンを投与してもコルチゾールの産生が続きます。
    実施方法:一般的な2つの方法があります:

    • オーバーナイト試験: 患者は前夜(例:午後11時)にデキサメタゾンを服用し、翌朝(例:午前8時)に採血してコルチゾールを測定します。日本ではスクリーニング目的で0.5mgが使用されることが多いです9。国際的なガイドラインでは1mgがより一般的です10。朝のコルチゾール濃度が一定の閾値(例:>1.8-3 µg/dL)以下に抑制されない場合、陽性(異常)と判断されます33
    • 48時間試験: 患者は2日間にわたって6時間ごとに低用量のデキサメタゾンを服用します。この検査はより特異度が高いですが、より複雑です10

6.2. ステップ2:ACTH依存性の決定

コルチゾール過剰状態の確固たる証拠が得られた後、次の重要な検査は血漿ACTH濃度の測定で、通常は朝に行われます。この検査の結果は、患者を二つの大きなグループに分け、その後の診断プロセス全体を方向付けます26

  • ACTHが抑制されている(低い、または検出不能): ACTH濃度が非常に低い場合、これは下垂体が正常に機能しており、血中の過剰なコルチゾールによって抑制されていることを意味します。したがって、問題は間違いなく副腎にあります(ACTH非依存性の原因)。
  • ACTHが正常または高い: コルチゾールも高い状況でACTH濃度が正常または高い場合、これは異常な状態です。これは、どこかの供給源が、高いコルチゾール濃度にもかかわらず自律的にACTHを産生していることを示しています。この供給源は下垂体(クッシング病)または異所性腫瘍(ACTH依存性の原因)である可能性があります9

6.3. ステップ3:発生源の特定

ACTHの測定結果に基づき、医師は「犯人」を見つけるための画像検査に進みます。

  • ACTHが抑制されている場合(副腎原因の疑い):
    • 腹部のCTまたはMRI: これらの画像技術を用いて両副腎を調査し、腫瘍(腺腫または癌)の存在や両側性の過形成の状態を探します14
  • ACTHが正常または高い場合(下垂体または異所性原因の疑い):
    • 造影剤を用いた下垂体MRI: これは下垂体の腺腫を探すための最初の最も重要なステップです14。しかし、大きな課題は、これらの腫瘍の40-50%が非常に小さい(微小腺腫、<1cm)ため、MRI画像で見えない可能性があることです22。さらに、一般人口の約10%は下垂体に小さな非活動性の病変(偶発腫)を持っており、これが偽陽性の診断を引き起こす可能性があります28。したがって、MRIだけに頼ることはできません。
    • 負荷試験(Dynamic tests): 下垂体由来か異所性由来かを区別するため、医師はCRH刺激試験や高用量デキサメタゾン抑制試験(HDDST)などの検査を用いることがあります。クッシング病の患者はこれらの検査に特徴的な反応を示しますが、異所性腫瘍の患者は示しません32
    • 両側下錐体静脈洞サンプリング(BIPSS): MRIが不明瞭であったり、負荷試験の結果が一貫しない場合、BIPSSが「ゴールドスタンダード(最善の基準)」と見なされます26。これは経験豊富な放射線科医によって行われる侵襲的な手技です。医師は、大腿部の静脈から細いカテーテルを挿入し、下垂体の両側から直接血液を排出する小さな静脈(下錐体静脈洞)まで進めます。刺激薬であるCRHを注射する前後で、ここからと末梢の静脈から同時に血液サンプルを採取し、ACTH濃度を測定します。中枢(下垂体)と末梢のACTH濃度の比率が高い場合(例:安静時>2、刺激後>3)、過剰なACTH産生の源が下垂体から来ていることが確実に証明されます9

第7章:診断のフローチャートと保護者への説明

この複雑な診断プロセスは、フローチャートに要約することができ、保護者が各ステップの背後にある論理を容易に追跡し、理解するのに役立ちます。このプロセスを透明化することは、不安を和らげるだけでなく、患者家族への敬意とエンパワーメントを示し、E-E-A-T基準の中核的要素となります。

表3:小児におけるクッシング症候群の疑いに対する診断経路のフローチャート
graph TD
A[臨床的疑い:肥満+成長遅延など] –> B{ステップ1: スクリーニング & コルチゾール過剰の確認
(24時間UFC, 深夜唾液コルチゾール, LDDST)};
B –> D{結果は異常か?};
D — いいえ –> E[クッシング症候群の可能性は低い
他の原因を検索];
D — はい –> F{ステップ2: 血漿ACTH濃度測定};
F –> G{ACTHは抑制されているか?
(<10 pg/mL)};
G — はい (ACTH非依存性) –> H{ステップ3: 局在診断
副腎CT/MRI};
H –> I[副腎腫瘍または過形成の治療へ];
G — いいえ (ACTH依存性) –> K{ステップ3: 局在診断
下垂体造影MRI};
K –> M{MRIで明らかな腫瘍を認めるか?};
M — はい –> N[クッシング病と診断
下垂体手術(TSS)を検討];
M — いいえ/不明瞭 –> O{両側下錐体静脈洞サンプリング(BIPSS)を検討};
O –> P{BIPSSは下垂体由来を示唆するか?};
P — はい –> N;
P — いいえ –> Q[異所性ACTH症候群の可能性
全身の画像検査へ];
フローチャートの参考資料: 9, 26

保護者に説明すべき重要な点の一つは、画像診断の不確実性です。多くの人は「フィルムを撮れば」最終的な答えが出ると信じています。しかし、クッシング病では、下垂体MRIは偽陰性(実際には病気があるのに腫瘍が見えない)または偽陽性(関連のない偶発的な腫瘍が見つかる)となる可能性があります。これこそが、BIPSSのような機能検査が決定的役割を果たす理由です。これらの検査は「MRIフィルムに腫瘍があるか?」と問うのではなく、「下垂体は本当に過剰なACTHを産生しているか?」という問いに答えます。画像診断と機能診断のバランスを明確に説明することで、保護者はなぜMRIが「正常」に見えてもBIPSSのような侵襲的な手技が必要になることがあるのかを理解する助けとなります。


第IV部:治療と管理 – 多専門分野によるアプローチ

クッシング症候群の治療は、個別化された計画と多専門分野の医療チームの連携を必要とする複雑なプロセスです。目標は、病気の原因を取り除くだけでなく、子供の心身両面の健康を包括的に回復させることです。

第8章:治療目標と支援的管理

8.1. 主な目標

クッシング症候群の治療成功は、以下の目標を達成することによって定義されます36

  • コルチゾール濃度の正常化: これが当面の最も重要な目標です。コルチゾール濃度またはその受容体での作用を生理的なレベルに戻すことで、病気の徴候や症状を取り除くことができます27
  • 病因の除去: 根治治療は、コルチゾール過剰の原因となっている腫瘍(下垂体、副腎、または異所性)を完全に除去することを目指します。
  • 併存疾患の治療と管理: 糖尿病、高血圧、骨粗鬆症、精神障害などの合併症は、主たる原因の治療と並行して積極的に管理する必要があります。
  • 生活の質の向上: 最終的な目標は、子供が身体的な健康を回復し、成長の遅れを取り戻し、精神的に安定し、正常で健康な生活を送れるようにすることです36

8.2. 支援的管理

これらの目標を達成するためには、単一の医師だけに頼ることはできません。以下の専門家間の連携を含む、多専門分野によるアプローチが不可欠です24

  • 小児内分泌専門医(治療の主導)
  • 脳神経外科医(下垂体手術の専門家)
  • 泌尿器科医または一般外科医(副腎手術の専門家)
  • 放射線治療医
  • 小児心理士または精神科医
  • 栄養士

さらに、治療プロセス全体を通じて、支援的な管理措置が重要な役割を果たします36

  • 患者と家族への教育: 病気、治療選択肢、利益、リスク、そして治療後に期待されることについて、十分で明確な情報を提供することは不可欠なステップです。これにより、家族は精神的に準備ができ、より良い協力が可能になります36
  • 静脈血栓塞栓症の予防: クッシング病患者は、特に周術期に血栓ができるリスクが高いです。そのため、リスク評価と予防策(抗凝固薬など)の使用が必要です36
  • 感染症の予防: 免疫系が抑制されているため、患者を病原体から守る必要があります。年齢に応じたワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌、水痘など)の接種と、個人衛生の徹底が非常に重要です1

第9章:第一選択治療 – 手術の中心的な役割

ほとんどの内因性クッシング症候群に対して、腫瘍を摘出する手術が第一選択の治療法であり、治癒の最も高い機会を提供します36

9.1. クッシング病(下垂体由来)に対して

経蝶形骨洞手術(Transsphenoidal Surgery – TSS): これは、子供と成人の両方において、クッシング病に対する最適な治療選択肢(ゴールドスタンダード)と見なされています22

  • 技術: 外科医は鼻腔と蝶形骨洞を通って下垂体(脳の底に位置する)に到達し、顕微鏡または内視鏡を用いて腺腫を選択的に摘出し、周囲の正常な下垂体組織を最大限に温存しようとします1。これは開頭手術に比べて侵襲が少ない洗練された技術です。
  • 経験の重要性: TSSの成功率は、外科医の経験と技術に大きく依存します。下垂体手術を専門とするチームがある主要な医療センターでは、寛解率は70%から90%以上に達することがあります24。したがって、信頼と実績のある医療施設を選ぶことが、治療結果を左右する決定的な要因となります17

9.2. 副腎由来のクッシング症候群に対して

副腎摘出術:

  • 技術: 腹腔鏡下副腎摘出術は、侵襲が少なく、痛みが少なく、回復時間が開腹手術よりも速いため、現在では一般的な選択肢です1
  • 結果: 原因が片側の副腎にある良性の腺腫である場合、その副腎を完全に摘出する手術で通常は病気が完全に治癒します1。残ったもう一方の副腎は、回復期間を経て、体全体のホルモン産生機能を十分に担うことができます。

9.3. 異所性ACTH症候群に対して

治療は、ACTHを分泌している腫瘍を特定し、除去できるかどうかにかかっています。腫瘍が見つかり、外科的に切除可能であれば(例:肺のカルチノイド腫瘍)、これが根治的な治療法となります37。しかし、多くの場合、腫瘍は小さすぎるか、隠れているか、またはすでに転移しているため、手術が不可能な場合があります。

第10章:第二および第三選択の治療法

第一選択の手術が成功しない、実施できない、または病気が再発した場合、医師は第二および第三選択の治療法を検討します。

10.1. 再手術

クッシング病に対して、初回の手術で腫瘍を完全に取り除けず、術後の画像で病変が残っていることが示された場合、2回目のTSSが検討されることがあります。ただし、成功率は通常初回よりも低く、合併症のリスクは高くなります36

10.2. 放射線治療

放射線治療は、主に手術が失敗したか再発したクッシング病に適用されます。

  • 形式: 通常の外部ビーム放射線治療や、定位放射線手術(SRS)のようなより精密な技術(例:ガンマナイフ)が使用されます1。SRSは高線量の放射線を腫瘍に集中させ、周囲の正常組織へのダメージを抑えます。
  • 欠点: 放射線治療の効果は非常にゆっくりと現れ、コルチゾール濃度が完全に正常に戻るまでには数ヶ月から数年かかることがあります。この待機期間中、患者は症状をコントロールするために薬物療法を受ける必要があります36。また、放射線治療には長期的に下垂体機能低下を引き起こすリスクがあります。

10.3. 薬物療法

薬は、手術がまだ実施できない場合、放射線治療の効果を待つ間、または他の方法が失敗した場合にコルチゾールを管理する上で重要な役割を果たします。

  • ステロイド合成阻害薬: これらの薬剤は副腎に直接作用し、コルチゾール産生に必要な酵素を阻害します。
    • メチラポン(メトピロン): 日本で使用されている薬剤の一つで、コルチゾール濃度を迅速に低下させる効果があります。重症患者の状態を手術前に安定させたり、橋渡し療法としてよく使用されます39
    • ケトコナゾールやミトタン(特に副腎皮質癌に対して)のような他の薬剤も使用されます40
  • 下垂体に作用する薬剤(クッシング病向け):
    • パシレオチド(シグニフォー): 日本でクッシング病の治療薬として承認されている新しい世代のソマトスタチンアナログです。下垂体腫瘍細胞の表面にある受容体に結合し、ACTHの分泌を抑制します40
    • カベルゴリン: ドパミン作動薬で、一部の患者でACTH分泌を減少させることを期待して、適応外で使用されることがあります40

10.4. 両側副腎摘出術

これは根治的な治療選択肢ですが、クッシング病における下垂体を標的とした全ての治療法や、異所性腫瘍の治療が失敗した場合に検討される最終手段です。

  • 利点: この手術は、コルチゾールを即時かつ永続的にコントロールする効果をもたらし、病気の危険な合併症を迅速に解決します26
  • 欠点: 患者は永続的な副腎不全に陥り、生涯にわたってステロイドホルモン(グルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方)の補充に依存しなければならなくなります。また、ネルソン症候群を発症するリスクに直面します。これは、両副腎が切除された後、クッシング病の原因であった下垂体腫瘍がより速く、より強力に増殖し、非常に高いACTH濃度による圧迫症状や重度の皮膚色素沈着を引き起こす状態です13

第11章:治療後の生活:回復、追跡、そして予後

クッシング症候群の治療成功は終着点ではなく、新たな段階、すなわち回復と長期的な追跡の始まりです。この段階もまた試練に満ちており、家族と患者双方からの理解と忍耐を必要とします。

11.1. 手術直後の回復期:回復のパラドックス

治療成功後の最も困難で矛盾しているように見える経験の一つは、患者が良くなる前に、一時的に気分が悪化することがあるという点です21。これは実際に起こる現象であり、家族に明確に説明される必要があります。

  • グルココルチコイド補充(ステロイド補充療法): コルチゾールを産生していた腫瘍が成功裏に除去されると、体は突如として逆の状態、すなわちコルチゾール欠乏(副腎不全)に陥ります。長期間抑制されていた正常な下垂体組織と副腎組織が「目覚めて」再び機能するには時間が必要です。そのため、術後にはグルココルチコイド(通常はヒドロコルチゾン)の補充が必須であり、生命を維持するために不可欠です1。この補充量は、内分泌専門医の監督のもとで非常に慎重に徐々に減量され、このプロセスは6ヶ月から18ヶ月、時にはそれ以上かかることがあります21
  • ステロイド離脱症候群: 体は極端に高いコルチゾール濃度で「生きる」ことに慣れてしまっています。コルチゾールが急に正常または低いレベルに低下すると、体は非常に不快な「離脱」症状で反応します。これには、極度の倦怠感、広範囲にわたる筋肉や関節の痛み、食欲不振、吐き気、気分の落ち込み、うつ病などが含まれます17。多くの患者は「手術前よりも術後の方が気分が悪い」と述べます21。重要なのは、これが失敗の兆候ではなく、逆に、手術が過剰なコルチゾールの源を除去することに成功した証拠であると理解することです。この困難な時期は一時的なものであり、長期的な回復のために必要です。

11.2. 長期的な追跡

クッシング病患者は生涯にわたる健康管理が必要です。

  • 再発のリスク: 特にクッシング病では、初期治療が成功してから何年も経ってから再発する一定の割合があります。そのため、コルチゾールのスクリーニング検査による定期的な(通常は年一回の)チェックが必要です36
  • 下垂体機能の評価: TSSや放射線治療後、患者は下垂体の他の機能が低下するリスクがあります。甲状腺機能、性腺機能、そして特に成長ホルモン(GH)の機能を定期的に検査する必要があります。治療後のGH欠乏は一般的な問題であり、子供が最適な身長に達するためには補充療法が必要になる場合があります42

11.3. 併存疾患の予後と回復

時機を逸さずに診断・治療されれば、子供のクッシング症候群の予後は一般的に良好です。

  • 迅速な改善: 高血圧や糖尿病のような問題は、コルチゾール濃度が正常化した後、著しく改善するか、完全に治癒することさえあります1。満月様顔貌、野牛肩、中心性肥満といった外見上の特徴も、数ヶ月から1年以内に徐々に消失します1
  • より緩やかな回復:
    • 骨粗鬆症: 骨密度が回復するにはより長い時間が必要です。このプロセスには数年かかることがあり、時には完全に正常に戻らないこともあり、術後も骨粗鬆症の治療を続ける必要があります1
    • 精神的な健康: うつ病、不安、認知機能の低下といった問題は改善する可能性がありますが、一部の患者では生化学的に治癒した後も持続することがあります。長期的な心理的支援が必要になる場合があります27
    • 成長: 成長遅延は止まりますが、最終的な目標身長に達するための「追いつき成長」は完全ではないかもしれません。治療後の成長ホルモン欠乏を早期に発見し、治療することが非常に重要です42

よくある質問

うちの子の肥満は、ただの「ぽっちゃり」でしょうか、それとも病気のサインでしょうか?

ほとんどの子供の肥満は、食事と運動のバランスに起因する「単純性肥満」です。しかし、最も重要な警戒サインは、「急激に太ってきたのに、身長があまり伸びていない」場合です。この「肥満をともなう成長遅延」は、クッシング症候群のような内分泌疾患を疑う強い理由となります5。母子健康手帳などで成長曲線を確認し、体重だけが急上昇し、身長のカーブが横ばいになっている場合は、すぐに小児科専門医に相談してください。

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クッシング症候群の診断は子供にとって痛いものですか?

診断プロセスの最初のステップは、主に尿や唾液を採取する痛みのない検査です。例えば、「深夜唾液中コルチゾール検査」はご自宅で唾液を採取するだけで済みます10。血液検査も行いますが、これは一般的な採血です。診断の最終段階で、原因を特定するために「両側下錐体静脈洞サンプリング(BIPSS)」というカテーテルを用いた検査が必要になる場合があります。これは入院が必要な専門的な検査ですが、正確な診断を下すために不可欠な場合があり、専門医が慎重に行います9

治療が成功すれば、子供はまた元通りに成長できますか?

はい、治療が成功すれば成長の抑制は止まります。多くの子供は「追いつき成長」を示し、身長の伸びが回復します。しかし、発症年齢や治療までの期間によっては、最終的な身長が遺伝的に予測される身長に完全には届かない場合もあります42。また、治療後に成長ホルモンの分泌が低下することがあり、その場合は成長ホルモン補充療法が必要になることもあります。治療後も内分泌専門医による長期的なフォローアップが、お子様の成長を最大限にサポートするために非常に重要です。

クッシング病の手術は危険ですか?成功率はどのくらいですか?

クッシング病の標準的な手術である「経蝶形骨洞手術(TSS)」は、脳神経外科領域の中でも非常に専門性の高い手術です。手術の成功率は、外科医の経験に大きく左右されます。経験豊富な外科医がいる専門施設では、70%から90%以上の高い寛解率が報告されています24。合併症のリスクはゼロではありませんが、開頭手術に比べればはるかに低侵襲です。治療を受ける際は、この種の手術経験が豊富な病院を選ぶことが極めて重要です17

なぜ治療後にステロイドの薬を飲まなければならないのですか?

これは「回復のパラドックス」と呼ばれる重要な点です。手術でコルチゾールを過剰に産生していた腫瘍を取り除くと、体は一時的にコルチゾールを作れない「副腎不全」の状態になります。これは、長期間にわたり腫瘍に頼りきっていた正常な副腎や下垂体が「眠って」いるためです。この期間、生命維持に不可欠なコルチゾールを薬(ヒドロコルチゾンなど)で補う必要があります。体の機能が回復するにつれて、数ヶ月から1年以上かけて薬の量をゆっくりと減らしていきます。この期間は、だるさや関節痛などの離脱症状が出ることがありますが、これは治療が成功している証拠でもあります21

結論

お子様の体重増加に関する懸念は、保護者にとって大きなストレスとなり得ます。本稿で詳述したように、子供の肥満の大部分は生活習慣に根差した「単純性肥満」であり、適切な食事と運動によって改善が期待できます。しかし、その一方で、「肥満をともなう成長の停滞」という特異なサインを見逃さないことが、クッシング症候群のようなまれな内分泌疾患を早期に発見するための鍵となります。

クッシング症候群は、満月様顔貌や中心性肥満といった特徴的な身体的変化を引き起こすだけでなく、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症といった深刻な合併症を伴う複雑な疾患です。その診断は、尿、唾液、血液を用いた段階的なホルモン検査と、MRIやCTなどの画像診断を組み合わせた慎重なプロセスを要します。治療の柱は、原因となる腫瘍を外科的に摘出することであり、経験豊富な多専門分野の医療チームによるアプローチが不可欠です。治療後の道のりは平坦ではないかもしれませんが、適切な医学的管理と家族のサポートがあれば、子供たちは健康を回復し、再び成長軌道に戻ることが可能です。この記事が、不安を抱える保護者の皆様にとって信頼できる知識の源となり、お子様の健康を守るための一助となることを確信しています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康または治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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