要点まとめ
- ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」を主な特徴とする神経発達症であり、親の育て方や愛情不足が原因ではありません1。脳の機能的な違いによるものであり、正しい理解がサポートの第一歩です。
- 日本での診断は、小児科医や児童精神科医などの専門家が、DSM-5などの国際的な診断基準に基づき、家庭や学校など複数の状況からの情報を基に慎重に行います4, 10。
- 治療は、薬物療法と非薬物療法(心理社会的治療)を組み合わせた多角的なアプローチが基本です。特に、親が子供への適切な関わり方を学ぶ「ペアレント・トレーニング」は、日本で非常に重視されています4, 23。
- 家庭では環境調整や肯定的な関わり、学校では通常学級、通級指導教室、特別支援学級といった選択肢を通じて、個々のニーズに合わせた支援が提供されます8, 33。親御さんは一人で抱え込まず、医療機関や地域の発達障害者支援センター、親の会などのサポートを活用することが重要です15, 19。
第1部 子供のADHDの基本:症状・原因・種類
注意欠如・多動症(ADHD)を正しく理解するためには、その中核となる症状、原因、そしてどのような種類があるのかを知ることが不可欠です。これらの知識は、お子様の行動の背景を理解し、適切なサポートを行うための基盤となります。
ADHDの3つの主要な症状
ADHDは、主に「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの症状の組み合わせによって特徴づけられます。これらの行動は、お子様の発達水準から見て不相応に顕著であり、家庭や学校といった複数の環境で長期間にわたって見られる場合に、診断が考慮されます3, 4。症状は通常、12歳になる前から認められます3。
- 不注意 (Fuchūi): 集中力を持続させることが難しく、細かい点に注意を払うのが苦手な状態です2。例えば、「すぐ気が散る、集中力が続かない」1、「学校での勉強で、不注意な間違いをする」2、「忘れ物をしたり、期日を守れないことが多い」1といった行動として現れます。日常生活や学習活動において、物事を順序立てて行うことに困難を感じることもあります。
- 多動性 (Tadōsei): じっとしていることが難しく、常にそわそわと動いているように見える状態です1。例えば、「落ち着きがない」1、「着席していてもじもじしたり、立ち上がってしまったりする」2、公共の場で過度に走り回ったりよじ登ったりすることがあります。まるで「エンジンがかかったまま」のように、常に活動している印象を与えます。
- 衝動性 (Shōdōsei): 結果を深く考えずに行動してしまう傾向です1。例えば、「質問が終わらないうちに出し抜けに答えてしまう」2、順番を待つことが苦手、他の人の会話や活動に割り込む、といった形で現れます。「考える前にとっさに行動に移してしまう」1と表現されることもあります。
重要な点として、これらの症状はADHDのタイプによって現れ方が異なります。不注意が優勢なタイプ、多動性・衝動性が優勢なタイプ、そして両方が混在する混合型が存在します。お子様の特性を正確に把握することが、適切な支援に繋がります。
ADHDの原因:科学的真実と誤解
ADHDの原因について、最も強く強調すべきことは、親の育て方や愛情不足、家庭環境が原因ではないということです1。これは科学的に確立された事実であり、親御さんがご自身を責める必要は一切ありません。「ADHDの原因は、生まれつきの脳の一部の機能障害によるものである」と明確に示されています1。研究では、注意や行動をコントロールする脳の神経伝達物質(ドパミンやノルアドレナリンなど)の機能的なアンバランスが関与していると考えられています。遺伝的な要因も大きいとされていますが、特定の遺伝子一つで決まるものではなく、複数の遺伝的要因と環境要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
日本におけるADHDの用語と有病率
日本では、ADHDの正式な医学用語として「注意欠如・多動症」という名称が用いられています。以前は「注意欠如・多動性障害」と呼ばれていましたが、日本精神神経学会が「障害」という言葉が持つスティグマ(社会的な負の烙印)を軽減する目的で、「症」へと変更しました5。この変更は、ADHDを個人の「欠陥」ではなく、支援を必要とする「状態」として捉えようとする社会的な意識の変化を反映しています5。
有病率に関しては、日本国内の調査で「学齢期のお子様の3~7%程度がADHDに該当する」と報告されています1。また、文部科学省が2022年に実施した調査では、公立の小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、発達障害の可能性があるとされた割合は8.8%にのぼり、この中にはADHDの可能性のある子供たちも含まれています8。これは医師の診断によるものではありませんが、学校現場で支援を必要とする子供たちが数多くいることを示唆しています8。近年、発達障害全体の診断数が増加傾向にあり、厚生労働省の調査では、医師から発達障害と診断された人の推計値が2016年の48万1千人から2022年には87万2千人へと増加しています6, 7。これは、ADHDを含む発達障害への社会的な認知が広まり、診断を受ける人が増えていることを示していると考えられます。
第2部 日本におけるADHDの診断プロセス
お子様にADHDの可能性があると感じたとき、親御さんが次に直面するのは「どこに相談し、どのような診断が行われるのか」という疑問です。日本におけるADHDの診断は、一回の診察で単純に下されるものではなく、多角的な情報を基に行われる専門的で慎重なプロセスです。
誰に相談すればよいか:最初のステップ
最初の相談先としては、かかりつけの小児科医や、より専門的な児童精神科、発達外来などを設けている医療機関が挙げられます1, 9。どの診療科を受診すればよいか分からない場合は、まずかかりつけの小児科医に相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのが良いでしょう。また、地域の保健センターや発達障害者支援センターなども、相談窓口として医療機関の情報提供を行っています。
診断の流れ:何を期待すべきか
ADHDの診断は、専門的な知識を持つ医師のみが行うことができます10。診断プロセスは一般的に以下の要素を含みます。
- 詳細な情報収集:医師は、親御さんからお子様の現在の困りごと、生育歴(生まれた時から現在までの発達の様子)、家庭での行動について詳しく話を聞きます4。ADHDの症状は、家庭、学校、友人関係など、複数の状況で現れることが診断基準の一つであるため4, 11、学校の先生からの情報(連絡帳やアンケート、報告書など)も非常に重要になります。本人が困難を自覚していない場合もあるため、家族や周囲の人々からの客観的な情報は不可欠です10。
- 診断基準に基づく評価:日本の医療機関では、主に米国精神医学会が作成した「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」の診断基準が用いられます10, 12。これは、ADHD治療薬の処方においても遵守が求められる標準的な基準です12。DSM-5では、不注意や多動性・衝動性の症状が নির্দিষ্ট数以上、12歳以前から存在し、複数の状況で見られ、学業や社会機能に明らかな支障をきたしていることなどが基準とされています。
- 心理検査や評価尺度の使用:診断の補助として、様々な心理検査や評価尺度(レーティングスケール)が用いられることがあります9。これらは診断を確定するためだけのものではありませんが、お子様の特性(得意なことや苦手なこと)を客観的に理解するのに役立ちます14。日本でよく使われる評価尺度には、「ADHD-RS」や「Conners 3 日本語版」などがあります10。知能検査(例:WISC)を同時に行い、全体的な発達の様子を把握することもあります。
- 他の疾患との鑑別:ADHDの症状は、他の発達障害(自閉スペクトラム症(ASD)や学習障害(LD)など)や、不安障害、うつ病、あるいは甲状腺機能の問題、てんかん、睡眠障害、不適切な養育環境(児童虐待の影響など)によっても引き起こされることがあります1, 4。そのため、医師はこれらの他の可能性を慎重に除外(鑑別診断)します。
この一連のプロセスは、お子様一人ひとりの状況を正確に把握し、最適な支援計画を立てるために極めて重要です。診断は「レッテル貼り」ではなく、お子様の困難の背景にある特性を理解し、その子に合ったサポートを開始するための「出発点」と捉えることが大切です。
文化的な側面とスティグマへの配慮
日本社会では、ADHDを含む発達障害への理解が進んできている一方で、依然として「普通」や「集団行動」を重んじる文化的背景から、特性を持つ子供やその家族が困難を感じる場面も少なくありません。親御さんの中には、「自分の育て方が悪かったのではないか」と自責の念にかられたり、「診断されることで子供の将来に不利益があるのではないか」と心配したりする方もいらっしゃいます1, 16。
しかし、前述の通り、ADHDは育て方の問題ではなく、生まれ持った脳の特性です1。診断を受け、正しい理解と支援に繋がることは、お子様が自己肯定感を損なうことなく、自分の能力を最大限に発揮して生きていくために非常に有益です。近年、医学用語が「障害」から「症」へと変更されたように5、社会の認識も変化しています。この記事では、ADHDを「欠点」ではなく「個性」として捉え、その特性を強みに変えていくための前向きな視点を提供することも目指しています。困難を一人で抱え込まず、専門家や支援機関に相談することは、お子様とご家族にとって力強い一歩となります15。
第3部 ADHDの治療と対応:日本でのアプローチ
ADHDの治療と支援の目的は、症状を完全になくすことではなく、症状をコントロールし、お子様が日常生活や学校生活での困難を減らし、自信を持って自分の能力を発揮できるように手助けすることです。日本では、薬物療法と、薬を使わない心理社会的治療を組み合わせた「マルチモーダル治療」が基本となります。
3.1 薬物療法
薬物療法は、様々な工夫や支援を行ってもなお、日常生活に大きな支障がある場合に検討されます3。例えば、症状が強いために親子関係や教師との関係が悪化したり、本人が自信を失ってしまったりする場合に、心理社会的治療と並行して導入されることが多いです4。薬はADHDを「治す」ものではなく、症状を緩和し、本人が他の治療法や学習に集中しやすくするための手助けをするものです。
日本で小児のADHD治療に承認されている主な薬剤には、以下のものがあります14。
薬剤名(一般名/製品名) | 作用機序 | 対象年齢(PMDA承認) | 典型的な用法・用量(PMDA承認) | 主な利点 | 主な副作用・注意点(PMDA承認) |
---|---|---|---|---|---|
メチルフェニデート塩酸塩 / コンサータ® | 中枢神経刺激薬 | 6歳以上12 | 18歳未満: 開始18mg、維持18-45mg、最大54mg/日。18歳以上: 開始18mg、最大72mg/日12。 | 作用が約12時間持続し、中核症状への効果が高い12。 | 食欲不振、不眠、体重増加・身長増加の抑制、依存・乱用のリスク、心血管系への影響。特別な管理システムへの登録が必要12, 24。 |
アトモキセチン / ストラテラ® | 非刺激薬(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 – SNRI) | 6歳以上26 | 体重に基づき調整し、低用量から徐々に増量。内用液もある20。 | 24時間効果が持続し、乱用のリスクが低い。不安を伴う場合に適することがある。 | 食欲不振、腹痛、悪心、傾眠。初期の体重増加・成長の遅れ。心血管系のモニタリングが必要20, 27。 |
グアンファシン / インチュニブ® | 非刺激薬(α2Aアドレナリン受容体作動薬) | 6歳以上13 | 1mg/日で開始し、週単位で増量。最大量は体重により異なる(例: 2mg-6mg/日)13。 | 異なる作用機序を持ち、単剤または併用が可能。成長抑制の問題が少ない可能性がある28。 | 傾眠、鎮静、血圧低下、徐脈。中止時は漸減が必要13。 |
リスデキサンフェタミンメシル酸塩 / ビバンセ® | 中枢神経刺激薬(d-アンフェタミンのプロドラッグ) | 6歳-17歳29 | 30mg/日で開始し、最大70mg/日まで増量可能。増量は週1回以上あけ、1回20mgを超えない29。 | 作用が約10時間持続し、効果的。作用の開始・終了が明確な場合がある20。 | 食欲不振、不眠。心血管系リスク(心筋症、血圧・脈拍上昇)、成長抑制、依存・乱用のリスク。慎重なモニタリングが必要20, 29。 |
健康に関する注意事項
3.2 非薬物療法(心理社会的治療)
非薬物療法は、ADHD支援の根幹をなすものであり、薬物療法の有無にかかわらず、すべてのお子様にとって不可欠です。日本では特に、以下の治療法が重視されています。
1. ペアレント・トレーニング (Parent Training)
ペアレント・トレーニングは、日本においてADHDの子供を持つ親への支援として最も重要視されている介入法の一つです4。これは、親がADHDの特性を理解し、子供の行動に効果的に対応するための具体的なスキルを学ぶプログラムです。これにより、子供の望ましい行動が増え、親子関係が改善し、親自身のストレスも軽減されることが期待されます17。
厚生労働省もこのプログラムの地域への普及を推進しており32、その有効性は広く認められています。
日本で実績のある主なプログラムには以下のようなものがあります23:
- 奈良方式・精研式プログラム:国立精神・神経医療研究センターと奈良医科大学のグループが開発。子供の行動を客観的に観察し、効果的なほめ方、指示の出し方、問題行動への対処法(タイムアウトなど)を学びます。特に「ほめる技術」を重視しているのが特徴です23。
- 肥前方式プログラムHPST:応用行動分析学に基づき、生活スキル向上に焦点を当てたプログラムです23。
これらのプログラムの基本原則は、問題行動を過度に叱責せず、治療的に無視し、子供が自ら良い行動をした瞬間に具体的にほめる、というものです4。
2. 環境調整・行動療法
子供が集中しやすく、混乱しにくい環境を整えることは非常に効果的です。家庭と学校が連携して取り組むことが鍵となります。
- 家庭での工夫:
- 学校での工夫:
3. ソーシャルスキル・トレーニング (SST)
SSTは、友達との関わり方、会話の始め方や続け方、感情のコントロール、相手の気持ちを察する方法など、社会的なスキルを学ぶためのトレーニングです2。多くは小グループで行われ、ロールプレイングなどを通じて具体的な対人スキルを身につけていきます。
4. 認知行動療法 (CBT)
CBTは、自分の考え方や行動のパターンに気づき、より適応的なものに変えていくための治療法です。思春期以降の子供や大人に対して、衝動性のコントロール、時間管理、計画性の向上などを目的に用いられることがあります17, 34。
第4部 家庭での具体的なサポートと接し方
ADHDの特性を持つお子様を育てる上で、日々の関わり方や家庭でのサポートは、お子様の自己肯定感を育み、健やかな成長を促すために非常に重要です。専門的な治療と並行して、親御さんができる具体的な工夫は数多くあります。
肯定的な関わりで自己肯定感を育む
ADHDのお子様は、その特性から叱られる経験が多くなりがちで、自信を失いやすい傾向があります。そのため、意識的に肯定的な関わりを増やすことが不可欠です。
- 具体的に、すぐに褒める:「片付けができて偉いね」ではなく、「おもちゃを箱に戻してくれて、お母さん助かるよ。ありがとう」のように、何が良かったのかを具体的に伝えます。そして、良い行動があったら、時間を置かずにその場で褒めることが効果的です1。できたこと、努力した過程を認め、言葉にして伝えることが大切です。
- お子様の「好き」を大切にする:お子様が夢中になれること、得意なことを見つけ、その分野での成功体験を積ませてあげましょう1, 18。好きなことであれば、驚くほどの集中力を発揮することもあります。その成功体験が、他の苦手なことにも挑戦する意欲に繋がります。
- 失敗させないためのサポート:最初から完璧を求めるのではなく、お子様が達成できるような小さな目標を設定し、成功体験を積み重ねられるように手助けします1。例えば、片付けであれば「まず赤いブロックだけ箱に入れよう」というように、指示を具体的に分割します。
日常生活における工夫
日常生活の混乱を減らし、スムーズに過ごせるように環境を整えることも重要です。
- 持ち物管理と忘れ物対策:忘れ物が多いのは、注意散漫という特性のためであり、本人のやる気の問題ではありません。前日の夜に一緒に時間割を揃える、玄関のドアに「持ち物チェックリスト」を貼るなど、視覚的な手がかりを活用すると効果的です15。
- 一貫したルールの設定:ゲームの時間や就寝時間など、家庭内のルールは一貫性を持たせ、分かりやすく伝えます。ルールは紙に書いて貼っておくのも良い方法です。
- 体を動かす機会を設ける:多動性のエネルギーを発散させるために、安全な場所で思い切り体を動かす時間を毎日の習慣に取り入れましょう15。公園で遊ぶ、散歩するなど、短い時間でも効果があります。
この記事で紹介されているサポート方法は、一般的な情報提供を目的としています。お子様の特性やご家庭の状況は様々ですので、具体的な対応については、医師やカウンセラーなどの専門家にご相談ください。
第5部 学校・教育現場での支援体制
ADHDのお子様が学校生活を円滑に送り、学習能力を最大限に発揮するためには、家庭と学校が緊密に連携し、一貫したサポートを提供することが不可欠です。日本の教育制度には、発達障害のある児童生徒を支援するための様々な仕組みが用意されています。
文部科学省の指導と学校の役割
文部科学省は、ADHDを含む発達障害のある児童生徒への支援の重要性を強調しており、各学校に対して、個々の教育的ニーズに応じた配慮を行うよう指導しています2。学校に求められる基本的な配慮には、以下のようなものがあります。
- 学習環境の調整:教室内での座席を前方の刺激が少ない場所にする、パーテーションで学習スペースを区切るなど、注意が散漫にならないような工夫33。
- 指導方法の工夫:指示を短く明確に伝える、視覚的な教材(絵カードや図解)を活用する、課題を小さなステップに分けるなど2。
- 肯定的なフィードバック:できたことを具体的に褒め、成功体験を積ませることで学習意欲を高める。
- いじめの防止:ADHDの特性が誤解され、いじめの対象にならないよう、教員が注意深く見守り、クラス全体で多様性を尊重する雰囲気を作ること33。
日本の学校における支援の選択肢
お子様の状態やニーズに応じて、いくつかの教育支援の形を選択できます。これらの選択肢について、担任の先生やスクールカウンセラー、教育委員会の担当者と相談することが重要です。
- 通常学級での配慮:発達障害のある児童生徒の多くは、通常学級に在籍しています8, 37。この場合、担任の先生が中心となり、前述のような合理的配慮を行いながら、他の生徒と一緒に学びます。家庭と学校が連絡を密にし、お子様の情報を共有することが成功の鍵です33。
- 通級による指導(通級指導教室):ほとんどの授業を通常学級で受けながら、週に数時間、別の教室(通級指導教室)で、障害による学習上または生活上の困難を改善するための特別な指導を受ける制度です8, 37。ソーシャルスキルや感情のコントロール、特定の学習スキルなどを、少人数のグループで学びます。
- 特別支援学級:障害の状態が、通級指導では対応が難しい場合に、少人数の学級(標準8人)で、一人ひとりの状態に合わせて作成された個別の教育計画に基づき、きめ細やかな指導を受ける制度です37。在籍する生徒の障害種別によって、情緒障害、知的障害などの学級に分かれています。
近年、特別支援学級の在籍者数や通級による指導の利用者数は顕著に増加しており8、これは支援のニーズが高まっていると同時に、制度の利用が広がっていることを示しています。どの支援の形が最適かは、お子様の特性や学校の状況によって異なります。重要なのは、お子様が最も安心して学習でき、社会性を育める環境を選択することです。
第6部 地域社会と医療機関のサポート
ADHDのお子様とご家族を支えるリソースは、家庭や学校の中だけにとどまりません。日本には、専門的な相談から親同士の交流まで、様々な形でサポートを提供する公的な機関や民間の団体が存在します。これらの社会資源を有効に活用することは、親御さんの負担を軽減し、より良い支援体制を築く上で非常に重要です。
専門的な相談窓口
- 発達障害者支援センター:各都道府県・指定都市に設置されている公的な相談機関です38。ADHDを含む発達障害のあるご本人やそのご家族からの様々な相談に応じ、適切な医療機関や福祉サービス、教育機関への紹介、情報提供などを行います38, 39。どこに相談して良いか分からない場合の、最初の窓口として非常に頼りになります。
- 保健所・保健センター:乳幼児健診などを通じて、お子様の発達に関する相談に応じています。地域の身近な相談先として、医療機関や専門機関への橋渡しの役割を担っています33。
- 専門医療機関:国立精神・神経医療研究センター(NCNP)3のような専門研究機関や大学病院、地域の児童精神科クリニックなどが、診断から治療、継続的なフォローアップまでを提供しています。
親同士の繋がりと情報交換の場
同じ悩みや経験を持つ他の親と繋がることは、大きな精神的支えとなります。孤立感を和らげ、専門家からでは得られない「生きた情報」や実践的な工夫を共有できる貴重な機会です。
- 親の会(Oya no Kai):各地域には、発達障害のある子供を持つ親たちが自主的に運営する「親の会」が存在します。講演会の開催や情報交換、交流会などを通じて、互いに支え合っています19。発達障害者支援センターや医療機関で情報が得られることがあります。日本精神神経学会も、このような親同士のネットワーク作りの重要性を指摘しています17。
- オンラインコミュニティとブログ:インターネット上には、親たちが悩みを打ち明けたり、日々の成功体験を共有したりする掲示板やブログ、SNSグループが数多く存在します16, 41。NHKの「ハートネット」のようなプラットフォームも、当事者や家族の声を社会に届ける役割を担っています16。
健康に関する注意事項
親の会やオンラインコミュニティで得られる情報は非常に有益ですが、医学的なアドバイスではありません。診断や治療方針については、必ず医師や専門家の判断を優先してください。インターネット上の情報を参考にする際は、その発信元が信頼できるかどうかを慎重に見極めることが大切です。
よくある質問 (FAQ)
ADHDの薬は一度飲み始めたら、一生やめられないのでしょうか?
うちの子はADHDの特性に加えて、読み書きが極端に苦手です。何か関係はありますか?
「ペアレント・トレーニング」は具体的にどこで受けられますか?
1. 医療機関:ADHDの診療を行っている児童精神科や小児科、発達外来などで、治療の一環として実施されている場合があります。
2. 発達障害者支援センター:各都道府県・指定都市にある公的な支援センターが、プログラムを主催したり、地域の実施機関を紹介したりしています38。
3. 行政機関:地域の保健センターや児童相談所、教育センターなどが実施している場合があります。
4. 民間の支援機関やNPO法人:発達障害児の療育や支援を専門とする民間の機関でも提供されています。
まずは、かかりつけの医師や地域の発達障害者支援センターに問い合わせて、お住まいの地域で利用できるプログラムについて情報を得るのが良いでしょう。
ADHDの子供は、大人になったらどうなるのでしょうか?
ADHDの診断を受けることで、将来、保険の加入や就職で不利になることはありますか?
就職に関しては、障害者手帳を取得して障害者雇用枠で就職する場合を除き、採用選考の過程でADHDの診断名を自ら申告する義務は一般的にはありません。近年、企業側でも多様な人材を活かすダイバーシティの考え方が広まっています。診断を受けることの最大のメリットは、お子様自身が自分の特性を理解し、困難に対処する方法を学び、適切なサポートを受けられるようになることです。目先の不利益を恐れるあまり、お子様が適切な支援を受ける機会を逃してしまうことの方が、長期的に見て大きな損失になる可能性があります。
結論
この記事を通じて、JAPANESEHEALTH.ORG編集部は、お子様の注意欠如・多動症(ADHD)と向き合う日本の親御さんやご家族に向けて、包括的で信頼性の高い情報を提供することを目指しました。ADHDは、育て方の問題ではなく、支援を必要とする神経発達上の特性です。その中核症状である「不注意」「多動性」「衝動性」を正しく理解し、適切な診断を受けることが、効果的なサポートへの第一歩となります。
日本における治療は、薬物療法と、ペアレント・トレーニングを始めとする心理社会的治療を組み合わせた多角的なアプローチが主流です。同時に、家庭での肯定的な関わりや環境調整、そして学校における通常学級での配慮から特別支援学級に至るまでの多層的な教育支援体制が、お子様の成長を支える上で重要な役割を果たします。
何よりも大切なのは、親御さんが一人で抱え込まないことです。医療機関、発達障害者支援センター、親の会など、地域社会には多くのサポートが存在します。これらのリソースを活用し、専門家や同じ経験を持つ仲間と繋がることが、お子様だけでなく、ご家族自身の力にもなります。ADHDと共に生きる旅は、挑戦の連続かもしれませんが、正しい知識と支援、そして何よりもお子様の可能性を信じる心があれば、その道は希望に満ちたものになります。お子様が自分らしさを失うことなく、健やかに成長し、将来に向けて力強く羽ばたいていけるよう、社会全体で支えていくことが求められています。
この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。
参考文献
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- #ADHD ブログ記事 ランキング | Ameba公式ジャンル, truy cập vào tháng 6 12, 2025, https://blogger.ameba.jp/hashtags/ADHD.