子宮筋腫でも妊娠できる?治療法とその選択肢
妊娠準備

子宮筋腫でも妊娠できる?治療法とその選択肢

はじめに

子宮筋腫は、女性の健康において広く知られている良性の腫瘤ですが、特に妊娠を望む人にとっては、その存在が多くの疑問や不安を招くことがあります。日常生活では、健康診断や婦人科受診を通じて子宮筋腫が見つかることも少なくありません。しかし、子宮筋腫が妊娠にどの程度影響するのか、あるいは将来の妊娠計画への障害となるのかは、なかなか理解しにくい点です。本記事では、子宮筋腫と妊娠の関係や背景、そして妊娠を希望する場合に考えられる主な治療法について、臨床現場での経験や専門的な視点を交えながらわかりやすく解説していきます。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

子宮筋腫の知識は単なるデータや理論のみならず、実際に日常生活で役立つ視点を含めて総合的に理解することが重要です。たとえば、普段から健康診断を受けていたからこそ早期に子宮筋腫を発見でき、症状が少ないうちに専門的な対処を始められるケースもあります。あるいは、妊娠を考える段階になって初めて婦人科検査で見つかった場合、それがどの程度妊娠に影響するのかを知ることで、次のステップを落ち着いて検討できるでしょう。本記事では、そのような“気づき”や“安心”を提供できる内容を目指します。

専門家への相談

本記事で取り上げる医療的な視点や治療の選択肢には、実際の臨床現場で活躍する専門家の意見や、信頼性の高い医療機関の知見が反映されています。特に、Dr. Le Van Thuan(Dong Nai Hospital No.2) による、産婦人科領域での豊富な症例経験が寄与しています。この専門家は日常的に子宮筋腫や女性の生殖健康にまつわるケースを数多く扱っており、診断や治療方針において深い知見と実績を有しています。

さらに本記事で紹介する知識やガイドラインは、国際的かつ権威ある研究論文や医療情報を参照しています。たとえば、世界的な産婦人科関係機関や医学データベースが公表する最新情報を取り入れることで、科学的根拠に基づいた正確な理解が可能になります。こうした専門家の知見と信頼できる医学文献へのアクセスが組み合わさることで、読者は本記事の内容を安心して参考にできるでしょう。

子宮筋腫とは何か?

子宮筋腫は、子宮の平滑筋層に発生する良性の腫瘤です。悪性ではないため、“がん”とは異なりますが、大きさや数、発生部位などが多様で、人によって症状の現れ方に差があります。具体的には、子宮壁の中に埋もれているタイプ、子宮腔内に突出して子宮内膜に影響を及ぼすタイプ、逆に子宮の外側へ向かって膨らむタイプなど多岐にわたります。

国際的な産婦人科関連機関であるFIGO(国際婦人科連合)では、子宮筋腫を発生部位や子宮内膜への影響度合いによって詳細に分類しています。日常的には、ほとんど症状が出ずに過ごす例も多く、健診や婦人科受診の際に偶然見つかることもめずらしくありません。しかし、月経痛や過多月経、貧血、下腹部の圧迫感などを引き起こし、生活の質を低下させる場合もあります。このように子宮筋腫は決して珍しい存在ではなく、多くの女性にとって“いざ発見されたらどの程度気にするべきか”が焦点となります。

子宮筋腫を持っていても妊娠できるのか?

統計的には、生殖年齢の女性の約35〜77%に子宮筋腫が存在すると報告されています。この数字だけ見るとかなり多くの女性が筋腫を有していることになりますが、必ずしも子宮筋腫が妊娠を阻害するわけではありません。実際、筋腫を抱えたままでも自然妊娠し、出産に至るケースは少なくありません。

ただし、筋腫の大きさ位置子宮内膜への影響などによっては、受精卵の着床や胚の発育を妨げるリスクがあります。推定として、不妊に悩む女性のうち、子宮筋腫が原因となる可能性があるのは約5〜10%とされており、決して低い数字とはいえません。とはいえ、多くの女性が筋腫を有していても妊娠を成立させている事実もあり、個々の状況の把握がきわめて重要です。そのため、超音波検査やMRI、血液検査などを通じて正確に診断し、専門医が総合的に判断することが不可欠となります。

なお、子宮筋腫と妊娠の関係性について、近年ではさらなる臨床研究が進められています。たとえば2022年にアメリカの学術誌『American Journal of Obstetrics & Gynecology』で発表された系統的レビュー(As-Sanie S, Stewart EA, Lasley B, et al. “Reproductive function in patients with uterine fibroids: an updated systematic review.” Am J Obstet Gynecol. 2022;226(1):48–62.e1. doi:10.1016/j.ajog.2021.07.039)によると、大きめの筋腫や内腔に突出する筋腫は着床障害の一因になる可能性が高い一方、小さく症状のない筋腫の場合には妊娠への直接的影響は比較的少ないと結論づけています。こうした最新の知見は、日本国内でも参考にされており、婦人科や生殖医療の専門家が診療に活用しています。

子宮筋腫はどのようにして妊娠を妨げるのか?

子宮筋腫が不妊に直結するわけではありませんが、以下のようなメカニズムによって妊娠を難しくする可能性があります。それぞれのポイントを、日常生活の感覚と照らし合わせつつ詳しく見ていきましょう。

  • 子宮頸部形状の変化
    筋腫の位置が子宮頸管付近にある場合、頸管が圧迫されて狭くなることで、精子が子宮腔へ入りづらくなります。本来であれば精子がスムーズに通過できるルートが一部狭くなるため、受精のチャンスが低減する仕組みです。
  • 子宮内環境の変化
    子宮腔に向かって発育する筋腫は、子宮内膜の形状に変化をもたらします。部屋の中に大きな家具が置かれているように、通常とは異なる空間が生まれるため、受精卵が着床しにくくなる可能性があります。これは特に、子宮内膜に直接圧迫や変形を及ぼすタイプの筋腫に顕著です。
  • 卵管閉塞の可能性
    筋腫が卵管に近い部位にあると、卵管への入り口が圧迫され、受精卵が子宮へ移動しづらくなる場合があります。卵管は卵子と精子が出会い、受精卵を子宮へ運ぶ重要な通り道ですが、その経路が狭まったり閉塞すると、受精自体が起きても子宮までたどり着けなくなるリスクが生じます。
  • 子宮内膜環境や血流の変化
    筋腫によって子宮内膜の厚さや質、さらには血流が変化することがあります。子宮内膜は受精卵が根付く“ベッド”のような役割を果たすため、血流やホルモンの状態が乱れると着床に不利な環境が生じます。特に大きな筋腫が内膜付近にある場合、局所の血流が滞りがちになるため、着床率を下げる可能性が報告されています。

妊娠を可能にするための子宮筋腫の治療法

妊娠を望む際に子宮筋腫が妊娠障害となりうる場合、専門医は筋腫の種類や位置、患者の年齢、妊娠希望の度合い、さらには症状の強さや貧血の有無など多角的な情報を踏まえて治療方針を決定します。ここでは臨床現場で一般的に行われる主な治療法を取り上げ、それぞれのメリットや考慮点について詳しく解説します。

ホルモン治療による症状緩和

ホルモン療法としては、ピルの服用や子宮内避妊器具(IUD)などを使用し、ホルモンバランスを整えることで月経痛や過多月経を軽減する方法が代表的です。筋腫そのものを直接消失させるわけではありませんが、月経出血量を抑えられるため貧血や重い生理痛を改善し、その結果、体力や栄養状態の底上げにつながります。妊娠を考える上で、貧血や慢性的な体調不良があると着床にもマイナス要因となりやすいので、まずは身体の状態を整えるという意味でも有用な選択肢となります。

ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)作動薬の使用

GnRH作動薬は体内のエストロゲンやプロゲステロンの過剰分泌を抑え、一時的に月経を止めることで筋腫を縮小させる効果が期待できます。大きな筋腫が存在し、圧迫症状や貧血が強いケースでは、手術の前処置として利用されることも多い方法です。治療を終えると再び筋腫が成長する可能性があるため、他の外科的アプローチ(子宮筋腫核出術など)と合わせて計画されることが一般的です。たとえば、腹腔鏡手術による切除を予定する患者が、術前にGnRH作動薬を利用して筋腫を縮小させることで、手術のリスクや出血量を低減させるという応用例があります。

筋腫の破壊(Myolysis)技術

近年注目されているのが、高密度集束超音波(HIFU)やMRIガイド下で行われる施術によって、筋腫への血流供給を断ち、最終的に筋腫を縮小させる方法です。これは、子宮を温存しながら筋腫にダメージを与える点が特徴であり、将来の妊娠を希望する女性にとって大きなメリットとなりえます。具体的には、体外から集束させた超音波エネルギーを筋腫のある領域に照射し、周囲の正常組織を極力傷つけずに筋腫細胞のみを破壊するよう設計されています。日本国内でも実施可能な施設が増えつつあり、侵襲度の低い新しい治療選択肢として期待されています。

筋腫の外科的切除

多発性の筋腫や非常に大きな筋腫が複数存在する場合、最終的には外科的切除(子宮筋腫核出術)が検討されます。開腹手術か腹腔鏡手術かは症状や筋腫の場所、医療機関の設備などに応じて選択されます。子宮筋腫核出術を行った場合、子宮内の環境が改善し、胚が着床しやすくなる可能性がありますが、子宮の回復には一定期間が必要です。一般的には、手術後少なくとも3カ月程度の待機期間を設け、その間に子宮組織の傷が癒え、再び妊娠に耐えられる状態を確保します。妊娠を希望する場合は、担当医と相談して妊娠開始時期を慎重に決めることが重要です。

外科的切除に関しては、2021年に発表されたアメリカ生殖医学会(ASRM)の見解(Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. “Uterine leiomyomas and their effect on reproduction: a committee opinion.” Fertil Steril. 2021;115(1):e88–e94. doi:10.1016/j.fertnstert.2020.11.020)でも、症状の強さや筋腫の位置に応じて積極的な手術を検討すべきケースがある一方で、筋腫が小さく症状がない場合は慎重に経過観察を行うことが推奨されています。このように、手術の適応は個別に判断する必要があるため、自分の筋腫のタイプや将来の妊娠希望を熟考した上で、担当医と十分に話し合うことが大切です。

結論と提言

結論

子宮筋腫は多くの女性が経験しうる良性の腫瘤であり、その有病率は想像以上に高いものです。多くの場合は妊娠に直接的な障害とならず、実際に筋腫を抱えたままでも自然に妊娠できる例は少なくありません。しかし、筋腫の位置大きさ子宮内膜への影響などによっては、受精卵の着床や胎児の発育を阻害する可能性があるため、注意が必要です。妊娠を希望する場合は、定期健診や精密検査を受け、専門医の診断を仰ぐことが極めて重要と言えます。適切な評価に基づいて治療方針を決定し、必要に応じて手術やホルモン療法などを組み合わせることで、妊娠しやすい身体環境を整えることが可能になります。

提言

  • 専門医への受診
    子宮筋腫に不安がある、または妊娠を計画している段階で筋腫が見つかった場合は、必ず婦人科または生殖医療の専門医を受診しましょう。専門医は超音波検査やMRIなどの精密検査を実施し、筋腫の種類や位置、数、症状を正確に把握した上で、妊娠を視野に入れた治療法を提案してくれます。
  • 治療法の比較検討
    ホルモン療法、GnRH作動薬、Myolysis、外科的切除など、子宮筋腫を対象とする治療には多くの選択肢があります。各治療には特有のメリットやデメリット、そして妊娠を希望する上での考慮点が存在します。たとえば、ホルモン治療は筋腫そのものを取り除くわけではないが体調の維持に役立つ、外科的切除は根本的に筋腫を除去できるが手術後の回復期間が必要になるなど、状況に合わせた選択が求められます。
  • 身体面・精神面のケアを重視
    不妊治療や手術に関するストレス、貧血や月経痛からくる疲労など、子宮筋腫と向き合ううえでは身体面だけでなく精神面での負担も大きくなりがちです。不安がある場合は、医療従事者やカウンセラーに積極的に相談し、必要であればパートナーや家族の支援も得ながら、最適な治療環境を整えていくことが望ましいです。
  • 最新情報の収集と活用
    子宮筋腫に関する研究は国内外で活発に行われており、ガイドラインや治療技術は日々更新されています。2020年以降の研究でも、筋腫の種類や大きさによっては妊娠への影響が明確化されつつある一方、完全には解明されていない部分もあります。信頼できる医療機関の情報や最新の学術論文を参考にし、必要に応じて医師に質問や相談を行うことで、より確度の高い情報を得られます。

以上のように、子宮筋腫を持ちながら妊娠を目指す場合、まずは正確な情報収集と専門医への相談が出発点となります。そして、自分の身体に合った治療やケアを選択し、焦らず段階的に妊娠の準備を進めることで、安心できる環境での妊娠・出産をサポートできます。


本記事の情報は一般的な知識および最新研究をもとにまとめたものであり、個別の医学的アドバイスを提供するものではありません。具体的な症状や治療に関しては、必ず医師や医療専門家と相談してください。

参考文献

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