要点まとめ
- 肌老化は紫外線による「光老化」、体内で発生する活性酸素による「酸化ストレス」、そしてコラーゲンやエラスチンの減少・変性が主な原因です。これらは複雑に絡み合い、シミ、しわ、たるみを引き起こします15。
- 高価な化粧品だけでなく、体の内側からケアする「食べるアンチエイジング」が不可欠です。食事から摂取する抗酸化物質、ビタミン、ミネラルは、肌細胞の健康を維持し、再生能力を高めるための基盤となります110。
- 専門家が科学的根拠に基づき選んだ抗老化食品(トマト、アボカド、青魚、大豆、緑茶など)は、抗酸化、抗炎症、コラーゲンサポートなどの作用を持ち、肌の健康維持に貢献します。これらの食品をバランスの取れた食事に取り入れることが重要です。
はじめに:忍び寄る肌老化、食事があなたの未来の肌を救う鍵
私たちの肌は、年齢とともにさまざまな変化を経験します。シミ、しわ、たるみといった見た目の変化は、多くの方が気にかける「肌老化」のサインです。これらの現象は単に時間経過だけでなく、日々の生活習慣、特に紫外線や食生活と深く関わっています。
肌老化の主なメカニズムと見た目への影響
肌老化の進行には、いくつかの主要なメカニズムが関与しています。最も大きな影響を与える外的要因の一つが紫外線 (UV) **です。紫外線は「光老化」を引き起こし、肌の真皮層に存在するコラーゲン線維やエラスチン線維を変性させ、その結果、しわやたるみ、さらにはシミの形成を促進します1。また、私たちの体内では常に**活性酸素種 (ROS) **が生成されています。これらは呼吸や代謝の過程で自然に発生するほか、紫外線、ストレス、大気汚染などによっても増加します。過剰な活性酸素は細胞を酸化させ、損傷を与える「酸化ストレス」状態を引き起こし、肌老化を加速させる要因となります1。肌のハリや弾力を支える主要な構造タンパク質であるコラーゲンとエラスチンは、加齢とともに自然に減少し、また紫外線などの外的要因によって分解が促進されます。これにより、肌は徐々にその構造的な支持を失い、たるみや深いしわが現れやすくなります5。さらに、近年注目されているのが**慢性的な微弱炎症(Inflammaging)**です。体内で持続する軽微な炎症状態が、全身の老化プロセスを早め、肌にも影響を及ぼすと考えられています7。これらの要因は独立して作用するのではなく、相互に関連し合って肌老化を進行させます。例えば、紫外線は活性酸素種の産生を促し(酸化ストレス)、その活性酸素種がコラーゲンを分解する酵素(例:マトリックスメタロプロテイナーゼ、MMP)の活性を高めたり、炎症反応を引き起こしたりします1。このように、肌老化は一つの原因ではなく、複数の要因が絡み合った結果として現れるのです。この複雑な連鎖反応を理解することは、効果的なアンチエイジング戦略を立てる上で非常に重要です。
「食べるアンチエイジング」の重要性:なぜ内側からのケアが不可欠なのか
肌は体で最大の臓器であり、私たちの栄養状態を映し出す鏡のような存在です10。高価な化粧品やエステティックも肌の外側からのアプローチとして有効ですが、肌細胞そのものの健康を維持し、再生能力を高めるためには、内側からのケア、すなわちバランスの取れた食事が不可欠です。食事から摂取される抗酸化物質、ビタミン、ミネラル、良質な脂質などは、肌が本来持つ防御機能を高め、ダメージを受けた細胞の修復を助け、新しい健康な細胞への生まれ変わりをサポートします1。つまり、「食べるアンチエイジング」は、肌老化の根本的な原因に働きかけ、健やかで若々しい肌を育むための基盤となるのです。
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皮膚科医・栄養学の専門家が選ぶ!驚きの美肌効果を持つ抗老化食品トップ10
このセクションでは、肌の老化に対抗する力を持つとされる食品の中から、特に科学的根拠が豊富で、日本の皆様が日常的に取り入れやすいものを10種類厳選してご紹介します。
食品名 | 主な有効成分 | 期待できる主な肌への効果 |
---|---|---|
トマト | リコピン、ビタミンC、β-カロテン | 光老化からの保護、コラーゲン分解抑制、抗酸化 |
アボカド | 一価不飽和脂肪酸、ルテイン、ゼアキサンチン、ビタミンE・C | 肌の弾力性・ハリ向上、抗酸化、保湿 |
柑橘類 | ビタミンC、フラボノイド | コラーゲン合成促進、抗酸化、色素沈着抑制 |
青魚 | オメガ3系脂肪酸 (EPA, DHA)、アスタキサンチン | 抗炎症、光保護、皮膚バリア機能サポート |
大豆・大豆製品 | 大豆イソフラボン、植物性タンパク質、ビタミンE | コラーゲン維持、皮膚弾力性向上(特に女性)、抗酸化 |
ブドウ・ベリー類 | レスベラトロール、アントシアニン、ビタミンC、エラグ酸 | 強力な抗酸化、光老化抑制、細胞保護 |
オーツ麦 | β-グルカン、アベナンスラミド、サポニン | 皮膚バリア機能サポート、保湿、抗炎症、腸内環境改善 |
ナッツ類 | ビタミンE、オメガ3系脂肪酸 (ALA)、ポリフェノール、ミネラル | 抗酸化、抗炎症、細胞保護 |
緑茶 | カテキン類 (EGCG)、ビタミンC・E | 強力な抗酸化、抗炎症、光保護 |
アブラナ科野菜 | スルフォラファン、ビタミンC・K、葉酸 | 内因性抗酸化システム強化、抗炎症、解毒 |
選定基準:なぜこれらの食品が選ばれたのか
これらの食品は、肌のアンチエイジング効果に関する科学的エビデンスの強さ、日本国内での入手しやすさ、そして日常の食事への取り入れやすさを総合的に考慮して選定されました。単に流行のスーパーフードを追うのではなく、確かな根拠に基づき、皆様が継続的に実践できるような選択を心がけています。
1. トマト
トマトは、鮮やかな赤色が特徴的な、世界中で愛されている野菜です。その栄養価の高さ、特に肌のアンチエイジングに対する効果が注目されています。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
トマトの最も代表的な有効成分はリコピンです。リコピンはカロテノイドの一種で、非常に強力な抗酸化作用を持ち、肌細胞を傷つける活性酸素種 (ROS) を効率的に消去する能力が高いことで知られています9。この活性酸素は、紫外線やストレスなどによって体内で過剰に発生し、シミやしわ、たるみといった肌老化の大きな原因となります。また、トマトにはリコピンだけでなく、ビタミンCやβ-カロテンといった他の抗酸化物質も含まれており12、これらの成分が相乗的に働くことで、より高い抗酸化効果が期待できます。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
トマトおよびリコピンの肌への効果については、数多くの科学的研究が行われています。特に注目すべきは、光老化からの保護効果と、肌内部の構造を守る働きです。
- 光老化からの保護: 複数の介入試験をまとめたシステマティックレビューおよびメタアナリシスによると、トマトやリコピンを摂取することで、紫外線照射によって引き起こされる皮膚の紅斑形成(赤み、専門的にはΔa*値で評価)が有意に減少することが示されています9。また、紫外線に対して皮膚が赤くなるまでに必要な最小の紫外線量(MED: Minimal Erythema Dose)が増加することも報告されており9、これはトマトやリコピンが「内側から効く日焼け止め」のような役割を果たす可能性を示唆しています。このMEDの増加は、肌が紫外線に対してより強くなることを意味し、日焼けによるダメージを受けにくくなることにつながります。さらに、皮膚の色素沈着を軽減し、肌の厚みや密度を増加させる効果も確認されています9。
- コラーゲン分解酵素の抑制: 肌のハリや弾力を保つ主要なタンパク質であるコラーゲンは、マトリックスメタロプロテイナーゼ-1 (MMP-1) という酵素によって分解されます。このMMP-1の活性が高まると、コラーゲンが失われ、しわやたるみが進行します。研究では、トマトやリコピンの摂取が、このMMP-1の発現を有意に抑制することが示されています9。つまり、トマトを食べることで、コラーゲンの分解を防ぎ、肌の構造的な老化を遅らせる効果が期待できるのです。
- 炎症マーカーの低減: 紫外線やその他の刺激によって皮膚に炎症が起こると、細胞間接着分子-1 (ICAM-1) といった炎症マーカーの発現が増加します。ICAM-1は炎症反応を悪化させ、肌老化を促進する一因となります。トマトやリコピンの摂取は、このICAM-1の発現を抑制することも報告されており9、抗炎症作用を通じて肌を守る可能性が示されています。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
リコピンは脂溶性であり、油と一緒に調理することで吸収率が高まります。トマトソースやトマトスープのように加熱調理するのも、リコピンが細胞壁から溶け出しやすくなるため効果的です14。手軽な方法としては、トマトジュースも良い選択ですが、食塩無添加のものを選ぶようにしましょう14。ミニトマトはそのまま手軽に食べられ、サラダやお弁当の彩りにもなります。
2. アボカド
「森のバター」とも呼ばれるアボカドは、栄養価が高く、クリーミーな食感が特徴の果物です。特に、良質な脂質と抗酸化物質を豊富に含み、肌の健康とアンチエイジングに貢献します。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
アボカドの主要な有効成分は、一価不飽和脂肪酸 (MUFAs)、特にオレイン酸です。これらの良質な脂質は、肌の細胞膜を健康に保ち、潤いと柔軟性を維持するのに役立ちます15。また、アボカドにはルテインやゼアキサンチンといったカロテノイドも豊富に含まれています。これらは強力な抗酸化物質であり、体内に摂取されると皮膚にも蓄積され、紫外線などの外的ストレスから肌を保護する効果や、肌の弾力性を高める効果が期待されています15。さらに、ビタミンEやビタミンC、その他のファイトケミカルも含まれており、これらが複合的に作用して抗酸化力を高め、肌の健康をサポートします15。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
アボカドの摂取が肌の特性に与える影響について、いくつかの研究が行われています。
- 肌の弾力性とハリの向上: 健康な中年女性を対象としたあるパイロット研究では、1日に1個のアボカドを8週間摂取したグループは、アボカドを摂取しなかった対照グループと比較して、額の皮膚の弾力性 (elasticity) とハリ (firmness) が有意に向上したと報告されています15。この研究は小規模なものではありますが、アボカドの日常的な摂取が、特に顔の皮膚の物理的な特性を改善する可能性を示唆しています。顔の皮膚は常に外部環境にさらされており、老化の兆候が現れやすいため、このような局所的な効果は注目に値します。
- カロテノイドの皮膚への送達と利用効率の向上: アボカドに含まれる脂質は、アボカド自体に含まれるルテインやゼアキサンチンのような脂溶性のカロテノイドだけでなく、同時に摂取した他の食品由来のカロテノイドの吸収を高め、皮膚への蓄積を助ける可能性があります15。実際に、ルテインとゼアキサンチンを経口摂取することで、皮膚の弾力性と水分量が増加したという研究結果も存在します15。アボカドの脂質が、これらの重要な抗酸化物質を効率よく肌に届ける「運び屋」としての役割を果たすことで、より高い美肌効果が期待できるのです。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
1日に1/2個から1個程度を目安に摂取すると良いでしょう。アボカドはそのまま食べるだけでなく、サラダに加えたり、スムージーに混ぜたり、ディップ(ワカモレなど)にしたりと、様々な料理に活用できます。パンに塗ってサンドイッチにするのも手軽です。また、アボカドを他の野菜と一緒に摂取することで、それらの野菜に含まれる脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、Kなど)の吸収を助ける効果も期待できます18。
3. 柑橘類 (みかん、レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)
みかん、レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類は、爽やかな香りと酸味が特徴で、豊富なビタミンC源として知られています。このビタミンCが、肌のアンチエイジングにおいて非常に重要な役割を果たします。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
柑橘類の最も代表的な有効成分は、何と言ってもビタミンCです。ビタミンCは強力な抗酸化物質であり、活性酸素によるダメージから肌細胞を守るだけでなく、肌のハリや弾力の源であるコラーゲンの合成に不可欠な栄養素です3。また、柑橘類にはフラボノイド(みかんに含まれるヘスペリジンなど)も含まれており、これらも抗酸化作用や抗炎症作用、さらには血流改善効果を持つとされ、肌の健康を多角的にサポートします19。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
ビタミンCの肌に対する効果は、多岐にわたる研究で明らかにされています。
- コラーゲン合成の促進と安定化: ビタミンCは、コラーゲンを合成する過程で働く2つの重要な酵素、プロリルヒドロキシラーゼとリシルヒドロキシラーゼの補因子として必須の役割を担います。これらの酵素は、コラーゲン分子内の特定のアミノ酸(プロリンとリジン)を水酸化し、コラーゲン分子同士を強固に結びつける「架橋」を形成し、コラーゲンの特徴である三重らせん構造を安定化させます5。このプロセスを経て、成熟した丈夫なコラーゲン線維が作られ、肌のハリと弾力が維持されます。ビタミンCが不足すると、このコラーゲン合成プロセスが滞り、肌の構造が弱くなってしまうのです。さらに、ビタミンCは皮膚の主要なコラーゲンであるI型およびIII型コラーゲンの遺伝子発現を増加させ、そのメッセンジャーRNA (mRNA) レベルを上昇させることで、コラーゲン産生をより効率的にすることも報告されています5。これは、ビタミンCが単に既存のコラーゲンを守るだけでなく、新しい健康なコラーゲンを積極的に作り出す「設計士」のような役割を果たすことを意味します。
- 強力な抗酸化作用: ビタミンCは、皮膚に最も豊富に存在する水溶性の抗酸化物質の一つです。紫外線や環境汚染などによって発生する活性酸素種 (ROS) を効果的に中和し、細胞の酸化ストレスによるダメージから皮膚を保護します3。興味深いことに、紫外線にさらされると皮膚のビタミンCレベルは低下することが知られています3。これは、紫外線ダメージが増加するとビタミンCの必要性が高まる一方で、その供給量が減少するという悪循環を生み出す可能性があります。したがって、日焼けしやすい環境にいる場合は特に、食事からのビタミンC補給が重要になります。
- 色素沈着抑制: ビタミンCには、メラニン色素の生成を抑制する効果があることも知られています。これにより、シミやそばかす、くすみの改善に役立つと期待されています3。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
毎日1~2個の柑橘類を摂取することをおすすめします。みかん、オレンジ、グレープフルーツなど、季節に合わせて様々な種類を楽しみましょう。ビタミンCは熱に弱く水に溶けやすいため、生で食べるのが最も効率的です13。国産の無農薬レモンなどは、皮にも栄養が含まれているため、マーマレードにしたり、料理の風味付けに皮ごと利用したりするのも良いでしょう。
4. 青魚 (サケ、サバ、イワシ、マグロなど)
サケ、サバ、イワシ、マグロといった青魚は、良質なタンパク源であると同時に、健康に良い脂質として知られるオメガ3系多価不飽和脂肪酸を豊富に含んでいます。これらの成分が、肌のアンチエイジングにも貢献します。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
青魚の最大の健康効果は、オメガ3系多価不飽和脂肪酸 (Omega-3 PUFAs)、特にエイコサペンタエン酸 (EPA) とドコサヘキサエン酸 (DHA) に由来します。これらは体内で合成できない必須脂肪酸であり、強力な抗炎症作用を持つほか、皮膚のバリア機能をサポートし、健康な細胞膜の維持に役立ちます7。特にサケには、アスタキサンチンという強力な抗酸化物質も含まれています13。アスタキサンチンはカロテノイドの一種で、その抗酸化力はビタミンEの数百倍とも言われています。もちろん、青魚は良質なタンパク質の供給源でもあり、皮膚や髪、爪など、体の組織を作るための基本的な材料となります12。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
オメガ3系脂肪酸の肌への有益な効果は、主にその抗炎症作用と細胞保護機能に関連しています。
- 抗炎症作用: オメガ3脂肪酸は、体内の炎症反応を調整する働きがあります。炎症は肌老化を促進する要因の一つであり、また乾癬やアトピー性皮膚炎といった炎症性の皮膚疾患にも深く関わっています。オメガ3脂肪酸を摂取することで、これらの炎症反応を抑制し、細胞増殖をコントロールすることで、肌トラブルの緩和や全身的な炎症レベルの低減に寄与する可能性があります8。心血管系の健康効果でよく知られているオメガ3脂肪酸ですが、その抗炎症作用は皮膚の健康と回復力にも重要なのです。
- 光保護効果の可能性: いくつかの研究では、オメガ3脂肪酸の補給が、全身的な紫外線からの光保護に役立つ可能性が示唆されています22。これは、日焼けによるダメージを内側から軽減する助けになるかもしれません。
- 皮膚バリア機能のサポート: 必須脂肪酸は細胞膜の重要な構成成分であり、皮膚の水分保持能力や外部刺激からのバリア機能の維持に不可欠です23。健康な皮膚バリアは、乾燥や肌荒れを防ぎ、滑らかで潤いのある肌を保つために重要です。
植物由来のオメガ3脂肪酸(亜麻仁油やクルミに含まれるα-リノレン酸:ALA)も存在しますが、EPAやDHAに体内で変換される効率は限られています。そのため、EPAとDHAの直接的な恩恵を受けるには、脂肪分の多い魚を摂取することがより効率的な方法と言えます7。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
週に2~3回、手のひらサイズの切り身を目安に摂取することが推奨されています8。調理法としては、焼き魚や煮魚が一般的ですが、EPAやDHAをより効率よく摂取するには、刺身もおすすめです12。加熱によって一部失われる可能性のあるこれらの貴重な脂肪酸を、生の状態で摂ることができます。また、忙しい時には、サバ缶、イワシ缶、ツナ缶といった缶詰も手軽で栄養価の高い選択肢となります12。
5. 大豆・大豆製品 (豆腐、納豆、味噌、豆乳など)
豆腐、納豆、味噌、豆乳などの大豆製品は、日本の食卓に古くから馴染み深い食材であり、植物性の良質なタンパク源としてだけでなく、特有の有効成分による美肌効果も期待されています。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
大豆製品のアンチエイジング効果の中心となるのが、大豆イソフラボン(ゲニステイン、ダイゼインなど)です。大豆イソフラボンはフィトエストロゲン(植物エストロゲン)の一種で、女性ホルモンであるエストロゲンと似た構造を持ち、体内で穏やかなエストロゲン様作用を示します。これにより、特にエストロゲンレベルが低下する閉経後の女性において、肌のハリや潤いの維持、コラーゲン減少の抑制などに貢献すると考えられています。また、大豆イソフラボン自体も抗酸化作用を持っています6。大豆は良質な植物性タンパク質の宝庫でもあり、皮膚細胞の再生に必要なアミノ酸を供給します12。さらに、抗酸化作用のあるビタミンEやサポニンなども含んでおり14、これらの成分が複合的に肌の健康をサポートします。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
大豆イソフラボンの肌への効果は、特に女性のホルモンバランスと関連付けて研究されています。
- コラーゲン維持と皮膚弾力性の向上: 女性ホルモンであるエストロゲンは、皮膚のコラーゲン産生や水分保持に重要な役割を果たしています。閉経期以降、エストロゲンレベルが低下すると、皮膚の乾燥、菲薄化、ハリの低下などが顕著になることがあります。大豆イソフラボンは、このエストロゲンの減少を補うように働き、皮膚組織における脂質の過酸化を防いだり、コラーゲンを産生する線維芽細胞の増殖を刺激したり、コラーゲンの分解を抑制したりする可能性が報告されています24。実際に、閉経後の女性を対象とした研究では、大豆イソフラボンを含む可能性のある特定のハーブ抽出物ブレンドを補給することで、皮膚の弾力性、肌の粗さ、滑らかさが有意に改善したという結果が得られています24。フィトエストロゲンは、皮膚に多く存在するエストロゲン受容体β (ERβ) に対して親和性が高く、コラーゲン産生や水分保持といった皮膚の健康維持機能に直接的に関与すると考えられています6。このことから、大豆製品の摂取は、特にホルモン変動が肌に影響を与えやすい年代の女性にとって、重要な意味を持つと言えるでしょう。
- 抗酸化作用: 大豆イソフラボンはポリフェノールの一種であり、それ自体が抗酸化作用を持ち、活性酸素によるダメージから肌細胞を守る働きがあります24。
大豆はイソフラボンだけでなく、質の高いタンパク質、ビタミンE、サポニンなど、肌に有益な多様な栄養素を含んでいます14。これらの成分が総合的に作用することで、単にフィトエストロゲン源としてだけでなく、肌の構造維持から抗酸化防御まで、多角的に肌の健康を支える食品と言えます。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
大豆製品は毎日積極的に摂取したい食品です。具体的な目安としては、納豆なら1パック、絹ごし豆腐なら1/2丁(約140g)程度を毎日食べるようにすると良いでしょう25。味噌汁、冷奴、湯豆腐、炒め物など、大豆製品は日本の伝統的な料理に簡単に取り入れられます12。豆乳も手軽にイソフラボンを摂取できる良い選択肢です14。
6. ブドウ・ベリー類 (ブルーベリー、イチゴ、ラズベリーなど)
ブドウや、ブルーベリー、イチゴ、ラズベリーといったベリー類は、鮮やかな色合いと甘酸っぱい風味が魅力の果物です。これらに含まれる豊富なポリフェノール類は、強力な抗酸化作用を持ち、肌のアンチエイジングに貢献します。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
ブドウ、特にその皮には、レスベラトロールという強力なポリフェノールが含まれています。レスベラトロールは、抗酸化作用、抗炎症作用、そして長寿遺伝子を活性化する可能性も示唆されるなど、多岐にわたるアンチエイジング効果で注目されています2。ブルーベリーやラズベリーなどのベリー類には、アントシアニンという紫や赤の色素成分が豊富です。アントシアニンも非常に強力な抗酸化物質であり、活性酸素から細胞を守るほか、血管を保護する作用も期待されています4。イチゴには、ビタミンCが豊富に含まれており、抗酸化作用に加えてコラーゲンの合成をサポートします19。また、イチゴなどにはエラグ酸というポリフェノールも含まれ、これも抗酸化作用に寄与します27。これらの果物は単一の成分だけでなく、複数の有効成分が複合的に作用することで、高い美肌効果を発揮すると考えられます。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
これらの果物に含まれるポリフェノール類の肌への効果は、細胞レベルでのメカニズム解明が進んでいます。
- レスベラトロールの光老化抑制メカニズム: レスベラトロールは、特に紫外線A波 (UVA) によって誘発される光老化に対して保護効果を発揮することが研究で示されています。そのメカニズムとして、細胞内の自己修復システムであるオートファジーを活性化し、細胞のエネルギーセンサーであるAMP活性化プロテインキナーゼ (AMPK) 経路を調節することが報告されています26。具体的には、レスベラトロールは活性酸素種 (ROS) の産生を減少させ、細胞死(アポトーシス)を抑制し、ダメージを受けた細胞の周期を正常化することで、UVAによる光老化の進行を緩和します。マウスを用いた動物実験では、レスベラトロールの投与により、紫外線でダメージを受けた皮膚の粗さ、紅斑、しわの増加が改善され、表皮の過角化や色素沈着が軽減し、炎症反応が抑制され、コラーゲン線維の分解が阻害されたという結果も得られています26。これは、レスベラトロールが単なる抗酸化作用だけでなく、細胞の防御・修復機構に積極的に働きかける、より高度なアンチエイジング効果を持つことを示唆しています。
- イチゴの抗酸化・細胞保護効果: イチゴの種子から抽出されたフェノール類が豊富なエキスは、ヒトの皮膚線維芽細胞を用いた実験で、フリーラジカルを消去し、酸化ストレスに対する細胞保護活性を示したことが報告されています27。また、イチゴの摂取が心血管代謝系の健康アウトカムを改善する可能性が多くの臨床試験で示唆されており、これにはイチゴに含まれるポリフェノールやエラグ酸などの成分が関与していると考えられています28。これらの成分は全身的な健康に寄与すると同時に、皮膚の健康にも良い影響を与える可能性があります。さらに、イチゴの加水分解物とビタミンCを組み合わせ、マイクロニードルメソセラピーという方法で皮膚に適用した研究では、肌のハリ、弾力性、水分量、色調の改善が見られたという報告もあります20。これは外用での効果ですが、イチゴに含まれる成分が肌に有益である可能性を裏付けています。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
ブドウは、レスベラトロールが特に皮に多く含まれているため、皮ごと食べるのがおすすめです。ブルーベリー、ラズベリー、イチゴなどのベリー類は、そのままおやつとして食べたり、ヨーグルトやシリアルに混ぜたりするのが手軽です。冷凍ベリーも栄養価を損なわずに保存でき、スムージーなどに活用できます。イチゴはビタミンCも豊富なので、生で食べるのが最も効果的です。
7. オーツ麦 (オートミール)
オーツ麦(オートミール)は、栄養価が高く、食物繊維が豊富な穀物として知られています。近年、その健康効果、特に皮膚に対する効果が注目されています。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
オーツ麦の主要な有効成分の一つがβ-グルカンです。これは水溶性の食物繊維で、優れた保湿効果を持ち、皮膚のバリア機能をサポートし、抗炎症作用も示すとされています29。また、オーツ麦特有の成分としてアベナンスラミドがあります。これは強力な抗酸化物質であり、抗炎症作用や、乾燥によるかゆみを抑える効果が報告されています30。その他にも、サポニンやフェノール類といった抗酸化物質が含まれており、これらが総合的に皮膚を保護する働きをします31。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
オーツ麦の皮膚への効果に関する研究の多くは、コロイド状オートミール(オーツ麦を細かく粉砕したもの)を外用剤として使用したものです。しかし、これらの研究で明らかになった有効成分の働きは、オーツ麦を食事として摂取した場合にも間接的な恩恵をもたらす可能性があります。
- 皮膚バリア機能の強化と保湿(主に外用での知見): コロイド状オートミールを皮膚に塗布すると、表皮の分化、細胞間の結合(タイトジャンクション)、脂質の調節に関連する遺伝子の発現を促し、皮膚のpHを適切な状態に保つ緩衝作用を提供することが示されています31。複数の臨床試験において、コロイドオートミールを含むローションの使用が、皮膚の乾燥、水分量、そして皮膚からの水分蒸発量(経表皮水分損失:TEWL)を有意に改善したと報告されています29。
- 抗炎症とかゆみ軽減(主に外用での知見): コロイドオートミール抽出物は、試験管内での実験で炎症を引き起こすサイトカインの産生を減少させることが確認されており、乾燥や刺激によるかゆみを伴う皮膚症状の治療に有効性を示したという報告があります30。
- プレバイオティクス効果(食事としてのオーツ麦): オーツ麦のふすまやオーツ麦繊維、特にβ-グルカンは、腸内で善玉菌のエサとなるプレバイオティクスとして機能し、腸内環境を整えることがよく知られています29。近年の研究では、腸内環境の健康と皮膚の状態が密接に関連していること(「腸皮膚相関」)が明らかになっており21、健康な腸内マイクロバイオームは、皮膚の炎症を抑え、バリア機能を高めるなど、間接的に肌の健康に良い影響を与えると考えられています。したがって、オーツ麦を食べることは、腸内環境の改善を通じて、肌のアンチエイジングにも貢献する可能性があるのです。オーツ麦特有の抗酸化物質であるアベナンスラミドも、食事として摂取することで体内の総抗酸化力を高める一助となるでしょう30。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
オートミール(ロールドオーツやスティールカットオーツなど)を朝食に取り入れるのが一般的です。牛乳や豆乳、水で煮て、お好みのフルーツやナッツをトッピングして楽しみましょう。グラノーラやミューズリーの主原料としてもよく使われています。また、オーツ粉をパンやクッキーなどの焼き菓子に混ぜ込むのも、手軽に摂取する方法の一つです。
8. ナッツ類 (アーモンド、クルミなど)
アーモンドやクルミをはじめとするナッツ類は、手軽に食べられる栄養豊富な食品です。良質な脂質、ビタミンE、ミネラル、食物繊維などをバランス良く含み、肌のアンチエイジングにも貢献します。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
ナッツ類の代表的な有効成分はビタミンEです。特にアーモンドに豊富に含まれるビタミンEは、強力な脂溶性の抗酸化物質で、細胞膜を酸化ダメージから保護し、肌の老化を防ぐ働きがあります4。クルミには、オメガ3系脂肪酸の一種であるα-リノレン酸 (ALA) が豊富に含まれています。ALAは体内で一部EPAやDHAに変換されるほか、それ自体にも抗炎症作用があるとされ、肌の炎症を抑えるのに役立ちます8。ナッツ類には、その他にもポリフェノール類(抗酸化作用)4、ミネラル(亜鉛、セレンなど:皮膚の健康維持、抗酸化酵素の構成成分)12、良質な脂質、食物繊維などが含まれており25、これらの栄養素が複合的に作用して肌の健康をサポートします。ナッツは単一の栄養素だけでなく、これらの多様な成分が詰まった「栄養の宝庫」と言えるでしょう。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
ナッツ類に含まれる各成分の肌への効果は、主にその抗酸化作用と抗炎症作用に基づいています。
- ビタミンEの抗酸化保護: ビタミンEは、体内の脂質が酸化されるのを防ぎ、細胞の健康維持を助ける重要な役割を担っています13。皮膚においては、紫外線や大気汚染物質などによって発生する活性酸素によるダメージから細胞膜やその他の脂質構造を保護し、シミやしわの形成を抑制する効果が期待されます。
- クルミのオメガ3による抗炎症効果: クルミに含まれる植物由来のオメガ3脂肪酸であるALAは、体内で一部がEPAやDHAといったより生理活性の高い形に変換されるほか、ALA自体にも抗炎症効果があると考えられています8。慢性的な炎症は肌老化を促進するため、ALAの摂取は肌の炎症を鎮め、健康な状態を保つのに役立ちます。
- アーモンドの複合的な肌への効果: アーモンドはビタミンEが豊富なだけでなく、ビタミンB群の一種であるリボフラビン、ミネラルの亜鉛、ナイアシンなども含んでおり、これらの栄養素が総合的に肌のターンオーバーをサポートしたり、皮膚のバリア機能を維持したりするのに貢献します19。
異なる種類のナッツはそれぞれ特徴的な栄養プロファイルを持っています(例:アーモンドはビタミンE、クルミはALA)。そのため、様々な種類のナッツをバランス良く摂取することで、より広範な種類の有益な化合物を肌に取り入れることができます。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
1日にひとつかみ程度(約20~30g)を目安に摂取しましょう。間食としてそのまま食べるのが最も手軽です。また、サラダやヨーグルトのトッピングに加えたり、細かく砕いて料理のアクセントにしたりするのも良いでしょう。選ぶ際には、食塩や油を使用していない、素焼き(ロースト)のものが望ましいです。
9. 緑茶
緑茶は、日本人にとって最も馴染み深い飲み物の一つであり、古くからその健康効果が知られてきました。近年では、緑茶に含まれるカテキン類の高い抗酸化作用が科学的にも注目され、肌のアンチエイジングにも有効であると期待されています。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
緑茶の主要な有効成分は、ポリフェノールの一種であるカテキン類です。特にエピガロカテキンガレート (EGCG) は、非常に強力な抗酸化作用を持ち、活性酸素による細胞ダメージを防ぎます。また、抗炎症作用や、抗がん作用の可能性も研究されています4。緑茶にはカテキンだけでなく、ビタミンCやビタミンEといった他の抗酸化ビタミンも含まれており4、これらの成分が相乗的に働くことで、より高い抗酸化効果が期待できます。日本の伝統的な飲み物である緑茶が、現代科学の視点からも肌の健康に良いとされるのは興味深い点です。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
緑茶カテキンの肌への効果は、主にその強力な抗酸化作用と抗炎症作用によるものです。
- 強力な抗酸化作用による皮膚保護: カテキン類、特にEGCGは、体内で過剰に発生した活性酸素を効率的に除去し、細胞の酸化を防ぎます。皮膚においては、紫外線照射によって誘発されるDNA損傷や炎症反応を抑制することで、光老化(シミ、しわ、たるみ)の進行を遅らせたり、皮膚がんのリスクを低減したりする可能性が示唆されています4。
- 炎症抑制: カテキン類は、炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカインなど)の産生を抑える働きがあることが報告されています。これにより、皮膚の赤みや刺激といった炎症反応を鎮め、肌トラブルの予防や改善に役立つ可能性があります。
緑茶に含まれるカテキン、ビタミンC、ビタミンEといった複数の抗酸化物質は、それぞれ異なるメカニズムで活性酸素に対処したり、互いの抗酸化作用を高め合ったりすることで、単一の抗酸化物質よりも包括的な防御効果をもたらすと考えられます。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
1日に数杯、温かい緑茶を飲む習慣を取り入れましょう。食事中や食後に緑茶を飲むことは、血糖値の急激な上昇を穏やかにする効果も期待できると言われています。より多くのカテキンを効率よく摂取したい場合は、茶葉を丸ごと粉末にした抹茶を利用するのも良い方法です。
10. アブラナ科野菜 (ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、ケールなど)
ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、ケールといったアブラナ科の野菜は、独特の風味を持ち、栄養価が高いことで知られています。これらの野菜に含まれる「スルフォラファン」という成分が、近年、強力なアンチエイジング効果を持つとして注目されています。
主な有効成分と肌へのアンチエイジング効果
アブラナ科野菜の最も特徴的な有効成分はスルフォラファンです。これは特にブロッコリースプラウトやブロッコリーに多く含まれるイソチオシアネートの一種です。スルフォラファンは、直接的に活性酸素を消去する「直接的抗酸化物質」とは異なり、体内のNrf2 (ナーフツー) 経路というシステムを活性化することで、細胞自身が持つ抗酸化酵素や解毒酵素の産生を高める「間接的抗酸化物質」として働きます32。その他にも、アブラナ科野菜にはビタミンC、ビタミンK、葉酸などが豊富に含まれており、これらも肌の健康維持や抗酸化に貢献します12。スルフォラファンの前駆体であるグルコシノレートも重要な成分です。
科学的根拠:研究が示す驚くべき作用機序
スルフォラファンのアンチエイジング効果は、そのユニークな作用機序にあります。
- Nrf2経路の活性化による内因性抗酸化システムの強化: スルフォラファンは、細胞内のNrf2という転写因子を活性化します。Nrf2が活性化されると、グルタチオンS-トランスフェラーゼ (GST)、NAD(P)Hキノンオキシドレダクターゼ-1 (NQO1)、ヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) といった、体を酸化ストレスや有害物質から守るための様々な抗酸化酵素や解毒酵素の遺伝子発現が誘導されます32。これにより、細胞は外部からのダメージに対してより強力な防御壁を築き、長期間にわたって保護されることになります。これは、一時的に抗酸化物質を補給するのとは異なり、体自身が持つ防御システムを根本から強化するアプローチであり、「抗酸化のマスターレギュレーター」とも言える働きです。
- 抗炎症作用: スルフォラファンはまた、炎症反応を引き起こす中心的な経路であるNF-κB (エヌエフカッパービー) 経路の活性化を抑制し、炎症を鎮める効果も示しています32。慢性的な炎症は肌老化を促進するため、この抗炎症作用も肌のアンチエイジングに重要です。
スルフォラファンは、アブラナ科野菜に含まれるグルコラファニンという前駆体が、野菜を刻んだりよく噛んだりすることでミロシナーゼという酵素と反応して生成されます。このミロシナーゼは熱に弱いため、調理法がスルフォラファンの摂取効率に影響します。
専門家推奨!効果的な摂り方と日常生活への応用術
ブロッコリー、芽キャベツ、ケール、キャベツなどを日常的に食事に取り入れましょう。スルフォラファンを効率よく摂取するためには、ブロッコリースプラウトのように生で食べるか、ブロッコリーであれば短時間の蒸し調理など、加熱しすぎない調理法が良いとされています。また、よく噛むこともミロシナーゼの働きを助け、スルフォラファンの生成を促すために重要です。スープや炒め物など、様々な料理に活用できますが、加熱時間を短くする工夫をすると良いでしょう。
抗老化食品を最大限に活かす!毎日の食生活に取り入れるための実践的アドバイス
これまでご紹介してきた10種類の抗老化食品は、それぞれ素晴らしい効果を持っていますが、それらを最大限に活かすためには、日々の食生活全体を見渡し、賢く取り入れる工夫が必要です。
「バランスの取れた食事」こそが美肌の基本
特定の食品だけを大量に摂取するのではなく、多様な栄養素をバランス良く摂ることが、健康な肌を育む上での大原則です1。私たちの体は、タンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素に加え、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、様々な栄養素が互いに協力し合って機能しています。これらの栄養素が不足したり、偏ったりすると、肌のターンオーバーが乱れたり、バリア機能が低下したりと、様々なトラブルの原因になりかねません。本記事で紹介した食品も、あくまでバランスの取れた食事の一部として取り入れることが重要です。
日本の食文化に合わせた献立例と組み合わせのヒント
日本の伝統的な食事スタイルである「一汁三菜(主食、汁物、主菜、副菜2品)」は、多様な食材をバランス良く摂取するのに非常に適した形です。この基本形に、抗老化食品を意識的に組み込むことで、無理なく美肌効果を高めることができます。
献立例:
- 主食:玄米または雑穀米
- 汁物:豆腐とわかめ、きのこ類を入れた味噌汁(大豆イソフラボン、ミネラル、食物繊維)
- 主菜:焼き鮭またはサバの塩焼き(オメガ3系脂肪酸、アスタキサンチン、良質タンパク質)
- 副菜1:ブロッコリーとトマトの和え物(スルフォラファン、ビタミンC、リコピン)
- 副菜2:納豆または冷奴(大豆イソフラボン、植物性タンパク質)
- 食後のデザート:みかんやイチゴ、ブルーベリー(ビタミンC、アントシアニン)
このような献立は、多様な抗酸化物質、良質な脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルを一度に摂取でき、それぞれの食材が持つ栄養素の相乗効果も期待できます。例えば、ビタミンCが豊富な柑橘類とビタミンEが豊富なナッツ類を一緒に摂ることで抗酸化力が高まったり、リコピンが豊富なトマトを良質な油(アボカドやオリーブオイルなど)と一緒に摂ることで吸収率が向上したりします。伝統的な日本の食事パターンは、実はこれらの抗老化食品を自然に取り入れやすく、栄養素の相乗効果を生み出しやすい構造になっているのです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」と「健康日本21」の活用
健康な食生活を送る上で、厚生労働省が策定している「日本人の食事摂取基準」や「健康日本21(第二次)」は重要な指針となります。特に野菜摂取量については、成人1日あたり350g以上が目標とされていますが、残念ながら近年の国民健康・栄養調査によると、多くの日本人がこの目標を達成できておらず、特に若年層や男性で不足傾向が見られます34。本記事で紹介したトマトやアブラナ科野菜、その他の野菜・果物を積極的に食事に取り入れることは、この野菜不足を解消し、目標達成に貢献するだけでなく、肌のアンチエイジングにも繋がります。その他、タンパク質の推奨量、食物繊維の目標量、食塩摂取量の目標量など37、関連する指標も参考にしながら、バランスの取れた食事を心がけましょう。
調理法による栄養価の変化と賢い選択
食材に含まれる栄養素は、調理法によって吸収率が変化したり、失われたりすることがあります。
- ビタミンCやビタミンB群などの水溶性ビタミンは、茹でると煮汁に溶け出しやすいため、スープや味噌汁のように煮汁ごと食べられる調理法がおすすめです13。
- ビタミンA、E、Kなどの脂溶性ビタミンや、トマトのリコピンなどは、油と一緒に摂取することで吸収率が格段に高まります13。炒め物や、オリーブオイルを使ったドレッシングをかけたサラダなどが効果的です。
- アブラナ科野菜のスルフォラファン生成に必要なミロシナーゼのように、熱に弱い酵素を活かすためには、生で食べる(ブロッコリースプラウトなど)か、短時間の蒸し料理にするなど、加熱しすぎない工夫が大切です。
健康に関する注意事項
- どんなに体に良いとされる食品でも過剰摂取は避け、多様な食品をバランス良く食べることが基本です。
- 特定の食品(大豆、ナッツ類など)にアレルギーがある方は摂取を避けてください。サプリメントでの過剰摂取も健康影響の可能性があります。
- 肌の疾患(アトピー性皮膚炎、重度のニキビなど)がある場合や、食事療法が必要な持病がある場合は、自己判断せず皮膚科医や管理栄養士に相談してください。
よくある質問
肌のアンチエイジングに最も効果のある食べ物は一つだけ挙げるとしたら何ですか?
これらの食品はどのくらいの期間食べ続ければ効果が出ますか?
サプリメントでこれらの栄養素を摂るのではダメなのでしょうか?
紹介された食品は、ニキビにも効果がありますか?
これらの食品を食べるのに最適な時間帯はありますか?
結論
本記事では、科学的根拠に基づいて、肌の老化を遅らせる効果が期待できる10種類の食品と、それらを効果的に日常生活に取り入れるための方法について解説してきました。トマトのリコピン、アボカドの良質な脂質、柑橘類のビタミンC、青魚のオメガ3脂肪酸、大豆製品のイソフラボン、ブドウやベリー類のポリフェノール、オーツ麦のβ-グルカン、ナッツ類のビタミンE、緑茶のカテキン、そしてアブラナ科野菜のスルフォラファン。これらの食品に含まれる有効成分は、抗酸化作用、コラーゲンサポート、抗炎症作用など、様々なメカニズムを通じて肌の健康を守り、若々しさを保つ手助けをしてくれます。しかし、最も重要なことは、これらの食品が魔法の薬ではないということです。美しい肌は一日にして成らず、日々の食事が未来の肌を創るという意識を持つことが大切です。本記事で紹介した食品は、あくまで健康的な食生活を構成する「サポート役」であり、その効果を最大限に引き出すためには、バランスの取れた食事全体、質の高い睡眠、適度な運動、ストレスマネジメント、そして紫外線対策を含む適切なスキンケアといった、総合的な生活習慣が不可欠です140。肌の老化は多くの要因が複雑に絡み合って起こる現象であり、食事はその重要な柱の一つですが、それだけが全てではありません。今日からできる小さな一歩として、まずは本記事で紹介した食品の中から、一つでも意識して食卓に取り入れてみることから始めてみてはいかがでしょうか。例えば、いつものサラダにトマトやアボカドを加えてみる、間食をナッツに変えてみる、食後の飲み物を緑茶にしてみる、といった簡単なことからで構いません。美しい肌と健康な未来のために、この記事が、皆様にとって楽しみながら食生活を見直し、より豊かな毎日を送るための一助となることを心より願っています。
この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。
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