はじめに
「射精時の精液量が少ないのではないか」「射精量が少ないと妊娠に影響するのか」といった疑問は、多くの男性が一度は抱えたことのある悩みではないでしょうか。実際に、射精量が普段より明らかに少なかったり、性行為のたびに「うまく精液を放出できていないのでは」と感じたりすると、不安が大きくなることもあります。特に、妊娠を望むカップルにとっては深刻な問題に思えるかもしれません。本記事では、射精量が少ないと感じる状態(以下「少量射精」と呼びます)の基礎知識や原因、治療法、日常生活で気をつけたいポイントなどを幅広く解説していきます。日常的にストレスや生活習慣が乱れているときに生じやすいケースから、明らかな病気やホルモンバランスの異常などが原因となる場合もあるため、症状や背景を正しく理解し、必要に応じて専門家に相談することが大切です。この記事では、その判断材料となる情報を余すところなく詳しくお伝えします。
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専門家への相談
本記事は、参考情報を幅広くまとめたものであり、筆者は医療従事者ではありません。ただし、内容の信頼性を高めるため、文献や専門機関(たとえばMayo ClinicやHarvard Health Publishingなど)の情報を基に構成しています。また、文末に参考文献リストを示していますので、必要に応じてそちらもご覧ください。なお、本記事の監修者として名前が挙がっている医師が特定されている場合を除き、ここでは直接の担当専門家の個人名は挙げていません。治療や詳細な検査を受ける際は、必ず泌尿器科や男性不妊症治療を扱う医師にご相談ください。もし本記事に登場する「Tham vấn y khoa: Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh」のような専門家名が明記されている場合は、これは元の文章に記載があったためそのまま保持していますが、いずれにせよ日本国内で医療機関に受診する際は必ずご自身の主治医や専門クリニックの指示を仰いでください。
射精量が少ないとは?
まず、射精量が少ない状態と「精子数(精子濃度)が少ない状態」は別の概念であることを押さえておきましょう。射精時に放出される精液量が明らかに少ない(目安として5ml未満など)のが「少量射精」であり、精液自体の量は通常でも、中に含まれる精子が少なかったり(乏精子症)質が低下していたりする場合が「精子数・質の問題」です。
ただし、少量射精の場合は、同時に精子そのものも少なくなりやすく、妊娠を望むカップルにとっては不利な状況になりがちです。精液量が少ないかどうかは厳密には泌尿器科や不妊治療の専門医による評価が必要ですが、「射精した際、1回の精液量がティースプーン1杯にも満たない」「粘度や色・においに異常を感じる」などの自覚症状があれば、一度検査を受けることを検討しましょう。
- 射精量が少ない場合に見られやすい症状
- いつもより明らかに精液量が少ない(5ml未満の場合が多い)
- 精液が極端にさらさらしている、またはかたまりやすい
- においが強い、あるいは変色している
- 射精時に痛みを伴う
- 尿道周辺の筋肉による射出の勢いが弱い
- 排尿痛、頻尿などの泌尿器症状がある
こうした状態が一時的に起こっているだけなら、生理的な疲労やストレスなどでも起こりうるため、必ずしも重症というわけではありません。しかし、慢性的に続いたり、別の体調不良が併発したりしている場合は、早めの受診が望まれます。
少量射精の7つの原因
1. ホルモンバランスの異常(テストステロン低下など)
男性ホルモンであるテストステロンが加齢やストレス等によって低下すると、射精時の精液量や精子の質に影響を及ぼすことがあります。特に年齢を重ねると、ホルモンバランスが変化し、腎臓や前立腺の働きに変調が起こりやすくなります。その結果、精液量が少なくなったりオーガズムの感じ方が変化したりする場合があります。
この点については、2020年以降に発表されたいくつかの研究においても、中高年男性のテストステロンレベル低下が性機能(射精量や射精の満足度含む)に影響するとの報告があります。たとえば、Ege Can Serefoglu (2020年, Sexual Medicine Reviews, 8(4), 660–672, DOI:10.1016/j.sxmr.2020.05.008) では、中高年男性の一部においてテストステロン補充療法が射精機能やリビドーを改善する可能性があると示唆されています。ただし、これはあくまでも個別の症例や研究からの報告であり、日本国内での標準治療として確立されているわけではありません。専門医の指示のもとで実施される必要があります。
2. 男性器の炎症や感染症
前立腺炎や精巣上体炎、性感染症(淋病や梅毒など)によって、射精時に精液量や精子の運動性に悪影響が生じる場合があります。炎症や感染があると痛みを感じたり、精液がにごったり、においや色が変わったりしやすいのが特徴です。これらの疾患は放置すると症状が悪化し、不妊や他の合併症を招く恐れもあります。
3. 逆行性射精
精液が射精時に前立腺や尿道へ向かわず、膀胱側へ逆流してしまう状態です。本来、射精の瞬間には膀胱頸部(膀胱の出口部分)が閉まり、精液が一方向に排出されるはずですが、この機能がうまく働かなくなると起こります。逆行性射精を発症すると、射精時にほとんど精液が出ず、代わりに排尿時に白く濁った液体が混ざる場合があります。糖尿病や神経障害のほか、特定の薬剤(抗うつ薬、降圧薬など)の副作用としても知られています。
4. 過度の性交渉や短いインターバル
「回数を重ねるほど男性の身体が慣れて、むしろ射精量が増えるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、実際にはあまりに短い間隔で頻繁に射精を行うと、身体が精液を十分に産生しきれず、回復が追いつかない状況になります。その結果、射精量が減ってしまうことは珍しくありません。単純に疲労の蓄積も相まって、性欲や勃起力にもマイナスに作用しやすいため、無理のないペースに調整しましょう。
5. 環境要因(有害物質への曝露)
大気汚染の激しい場所や、化学薬品を多用する工場などで長年働いていると、精液の産生・質に影響が出ることがあります。これは有害物質がホルモン分泌や精巣機能を阻害するおそれがあるためです。実際、Zhao L.ら(2021年, Andrologia, 53(9), e14168, DOI:10.1111/and.14168) の研究では、中国の一部地域に住む健康男性の生活習慣や環境因子と精液パラメータ(量や精子数)の関連を調査し、大気汚染や有害化学物質への長期間曝露が精液の質低下につながる可能性を示唆しています。日本国内でも、同様に注意が必要でしょう。
6. 栄養状態・生活習慣の乱れ
偏った食事や栄養不足、睡眠不足、運動不足などは体全体の代謝機能を低下させるため、精液量や精子の質にも影響が及ぶことがあります。特に、たんぱく質・亜鉛・セレン・ビタミン類などの不足は男性ホルモンや精子形成に関わるプロセスを阻害することが知られています。生活習慣を整えるだけで大幅に改善するケースもあるため、まずは食事バランスの見直しや適度な運動、規則正しい睡眠を意識してみてください。
7. 薬剤や手術による副作用
前立腺疾患の治療薬、降圧薬、抗うつ薬などを服用していると、副交感神経や筋肉の働きが変化し、射精量が減ることがあります。また、過去に前立腺手術や精巣・精管周りの手術を行った場合も、物理的に精液が出にくくなったり、逆行性射精を引き起こしたりする可能性があります。特に、男性避妊の一環として行われるパイプカット(精管切除術)では、手術後に精液中の精子が激減します。
「射精量が少ないと妊娠できない?」への疑問
射精量が少なくなると、中に含まれる精子も相対的に少なくなる可能性が高いため、自然妊娠の確率が下がるリスクは否定できません。ただし、「少量射精=絶対に不妊」というわけではなく、原因や重症度によって妊娠の可能性は大きく変わります。
- 量が少なくても精子の運動性が良好であれば自然妊娠も可能
- 明らかに精子数や運動率が低い場合は不妊治療が必要
症状が長引いたり、パートナーとの妊娠を強く希望しているにもかかわらずなかなか妊娠に至らない場合には、迷わず医療機関を受診して検査を受けることをおすすめします。医師の指示のもと、精液検査(精液量・精子数・運動率などを調べる)を行うことで、現状を正確に把握することができます。
主な治療・対処法
少量射精の治療法は、原因や背景によって異なります。以下に代表的な対処法を示しますが、具体的な治療方針は必ず専門医と相談してください。
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感染症・炎症がある場合
前立腺炎や性感染症が原因なら、抗生物質などを用いて炎症を抑えます。決められた服薬期間と用量をきちんと守ることが重要です。 -
ホルモン補充療法
テストステロンの低下が顕著な場合には、ホルモン補充療法が選択肢となることがあります。ただし、副作用や適応条件があるため、医師の管理下で行う必要があります。 -
逆行性射精に対する内服治療
膀胱頸部の機能を改善する目的で、塩酸イミプラミンやエフェドリン系薬剤などが処方される場合があります。しかし、全員に効果があるわけではないので、症状や合併症に応じた判断が求められます。 -
生活習慣の改善
食事バランスの見直し、十分な睡眠、適度な運動、ストレス管理などはあらゆる性機能トラブルの基盤となるケアです。短期間で劇的な変化を望むのは難しいですが、長期的には射精量や精子の質の向上が期待できます。 -
頻度の調整
過度な性交渉や短いスパンでのオナニーは、身体が回復しきれず、結果的に射精量低下を招きやすいです。自身の体調やパートナーとの希望に合わせ、適度な性行為の間隔を保ちましょう。 -
不妊治療の選択
どうしても精液量や精子数を改善できず、自然妊娠が難しい場合、人工授精や体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)などの不妊治療を検討することも選択肢です。専門医療機関で相談し、適切な手段を選びましょう。
日常生活で気をつけたいポイント
- 栄養バランスの良い食事
野菜、果物、良質なたんぱく質(肉、魚、豆製品など)、ミネラル(亜鉛、セレン、鉄など)をバランスよく摂取し、ビタミンや抗酸化成分を意識的に補うことが推奨されます。 - 適度な運動習慣
有酸素運動や筋トレを無理のない範囲で行うと、血行促進やホルモンバランスの調整に役立ちます。 - 良質な睡眠
睡眠不足はテストステロンの分泌を低下させる要因の一つです。毎日6~8時間程度の十分な睡眠を心がけましょう。 - ストレス対策
ストレスにより交感神経が優位になると、射精時の筋収縮やホルモン分泌に悪影響を与える可能性があります。趣味やリラクゼーション法を取り入れ、意識的にストレスを軽減しましょう。 - 規則正しい性行為の間隔
極端に性交渉の頻度が高い、あるいは逆に長期間射精しない状態が続くと、精液の状態にも変動が生じる場合があります。自身の体調と相談しながら、無理のないスケジュールを組みましょう。
結論と提言
射精量が少ない状態は、一時的な疲労やストレスなど軽微な要因から、ホルモンバランスの乱れや逆行性射精などの病的要因まで、幅広い原因で引き起こされます。少量射精そのものが即座に深刻な病気とは限らないものの、実際に射精量の低下が続いている場合や、不妊の可能性が心配される場合は、泌尿器科や男性不妊外来など専門的な受診を検討しましょう。
もし妊娠を望む中で少量射精に悩んでいる場合は、パートナーとのコミュニケーションを大切にしながら、必要に応じて不妊専門クリニックでの診断・治療を進めることがおすすめです。日々の生活習慣の見直しも大きな改善につながることがありますが、原因によっては薬物治療や手術が必要になるケースもありますので、素人判断で放置せず、専門家のアドバイスを受けることが重要です。
最後に、少量射精の問題は男性側だけでなく、夫婦やパートナーの協力体制や理解も大切です。焦らず原因を明らかにし、適切な治療を受けながら、お互いの気持ちを確認し合って乗り越えていくことで、より良い性関係と妊娠の可能性を高めることができるでしょう。
本記事は医療従事者による正式な診断や治療方針の提示ではありません。参考情報としてご利用ください。症状に不安がある場合は必ず医療機関を受診し、担当の医師や専門家の助言を仰いでください。
参考文献
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DOI: 10.1016/j.sxmr.2020.05.008 - Zhao L, et al. (2021). Impact of lifestyle factors on semen parameters in healthy men in mid-eastern China. Andrologia, 53(9), e14168.
DOI: 10.1111/and.14168
Tham vấn y khoa: Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh
(※本記事の最後に再度記載しますが、ここに挙げた情報はあくまでも参考であり、医師など専門家の正式な診断・治療方針に代わるものではありません)
医師への相談と免責事項
本記事は、男性の少量射精というトピックを中心に、各種文献や専門機関の情報を参考に作成しました。しかし、筆者自身は医療従事者ではなく、診断・治療の専門家ではありません。必ず医師による診療やアドバイスを優先し、自己判断で治療方針を決定することは避けてください。特に症状が慢性的に続く場合や、不妊が疑われる場合には、なるべく早めに受診し、適切な検査と治療方針を確認することをおすすめいたします。あくまでも本記事は「参考情報」としてご活用いただき、ご自身やパートナーの体調、ライフスタイルに合った選択をしてください。