尿路結石の6症状とは?早期発見で早期治療を目指そう!
腎臓と尿路の病気

尿路結石の6症状とは?早期発見で早期治療を目指そう!

はじめに

「6つの症状から見る尿管結石の危険性と、その早期発見の重要性」をテーマとして、尿管結石に関する具体的な情報を詳しくご紹介いたします。尿管結石は腎臓にできた結石が尿管内に降りてきたり、あるいは尿管内で自発的に形成されることで生じます。結石が小さいうちは気づきにくいこともありますが、ある程度の大きさになると鋭い痛みや排尿障害を引き起こす場合があるため、早期の自覚と治療が重要です。本記事では、尿管結石がどのようにして生じるのか、その代表的な症状、引き起こしやすい合併症、そして治療法や予防策について詳しく解説いたします。

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本記事の医学的な内容に関しては、内科・内科総合診療を専門とする Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh 氏(医療機関名省略)からの監修を受けた情報、および公的な医学文献・信頼できる医療機関の情報源をもとにまとめています。ただし、本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としたもので、個々の症状やご体調によって対処法は異なる可能性があります。治療や検査の詳細は必ず医師にご相談ください。

尿管結石とは何か

尿管結石は、腎臓から膀胱へとつながる尿管(およそ25〜30cmの長さ、直径2〜4mm程度)に結石が存在する状態です。腎臓で発生した結石がそのまま尿管へ落ちてくるケースが大半とされますが、尿管内の狭窄部位や瘢痕などを起点に、尿管内で結石が形成される場合も少数存在します。
尿管の狭窄部は3か所知られており、そこを中心として結石が詰まりやすい特徴があります。

  • 1/3上部(腎盂と尿管がつながる部分)
  • 1/3中部(尿管が血管を交差する部分)
  • 1/3下部(尿管と膀胱が接合する部分)

特に尿管下部は狭窄しやすいため、統計的に結石が引っかかる割合が最も高いと報告されています。結石の多くは直径1cm前後、表面がザラザラしていることが多く、ときには複数の結石が連なって見つかることもあります。

日本における尿管結石の発生状況

わが国でも、食生活や生活習慣の変化などから尿路結石症(尿管結石、腎臓結石、膀胱結石など)が増加傾向にあると報告されています。腎臓にとどまっている段階の結石は無症状のまま経過することが多いものの、尿管に落ち込むと結石が小さくとも激しい痛みを生じることが少なくありません。

なお、2023年に国際学術誌「International Journal of Urology」で発表された研究(Barghouthyら, 2023, 30巻2号, doi:10.1111/iju.14851)では、世界規模での尿管結石の発症率が国や地域によってばらつくものの、日本を含む先進国では特に増加傾向にあると示されています。同研究は各国の生活習慣や食事などの要因が複合的に絡み合う点を指摘しており、日本国内でも患者数増加への警戒が必要と考えられます。

尿管結石の主な症状

尿管結石が生じると、以下のような症状が比較的多く見られます。症状の現れ方は結石の大きさや位置、個人の体質などにより異なりますが、一つでも思い当たる場合には早期の受診が推奨されます。

1. 腰部やわき腹、背中にかけての強い痛み

尿管結石では、「疝痛発作」 と呼ばれる激しい痛みが典型的に見られます。これは結石によって尿管が部分的または完全に詰まり、圧力が高まるために起こるものです。
痛みの特徴としては、

  • 腰や脇腹の奥の方が「締めつけられる」ように感じる。
  • ときに下腹部や鼠径部、男性では精巣のあたりまで痛みが放散する。
  • 発作性に数分から数十分、長いと数時間続く痛みがある。

日常生活では、体を動かしたり、重い物を持ち上げたりした後などにこの痛みが誘発されることがあります。痛みが続く間は呼吸が困難になったり、冷や汗をかいたり、嘔気(吐き気)をもよおすこともあります。

関連する最近の研究

2021年に「The Journal of Urology」で公表されたAUAガイドライン(Pearleら, 2021, 206巻4号:772-799, doi:10.1097/JU.0000000000001949)によれば、尿管結石による疝痛発作は尿路結石症全体の初発症状のうち最も多いパターンであるとされています。特に1/3上部尿管に結石が存在する場合、腎臓から出てくる尿の通過が妨げられやすく、腎盂内圧の急上昇によって激しい痛みが生じる頻度が高いと報告されています。

2. 排尿時の痛み(排尿痛)、頻尿

結石の表面がギザギザしている場合、尿管粘膜を刺激し、傷つけることで強い痛みを感じることがあります。排尿のたびに尿管や膀胱、尿道に刺激が及ぶと、「チクチク」「焼けるような」 排尿痛が起こることも珍しくありません。
さらに、尿管下部に結石が移動すると膀胱付近を刺激し、頻尿や残尿感のような症状を伴うことがあります。少量しか尿が出ないにもかかわらず何度もトイレに行きたくなるため、日常生活に支障をきたしやすい点に注意が必要です。

3. 尿に血が混じる(血尿)

結石が尿管内を移動する際、粘膜を傷つけて出血を伴うことがあります。ごく少量の出血であれば肉眼では赤みが分からない場合(顕微鏡的血尿)もありますが、進行すると肉眼的に「尿が赤色やピンク色に染まる」 血尿となることがあります。
また、感染を併発した場合には、尿が濁ったり悪臭が生じることも報告されています。血尿が続く状況は腎・尿管・膀胱などの病変を示すシグナルとなり得るため、放置せず受診することが重要です。

4. 悪心・嘔吐、腹部膨満感

尿路と消化管は神経的につながりがあるため、尿管結石による強い痛みや圧迫刺激が反射的に悪心・嘔吐を誘発するケースがあります。食事を摂るのがつらくなり、栄養面の低下を来す可能性もあるため注意が必要です。
特に結石が大きい場合や長期間放置して炎症が広範囲に及んでいる場合、腹部膨満感や便秘に似た症状も引き起こしやすくなります。こうした症状が長引くと感染が腎臓側に逆行し、腎盂腎炎 や腎臓の化膿 など、より重篤な合併症を招く可能性があります。

5. 発熱・悪寒

結石がある状態で尿の流れが滞留し、細菌が増殖すると尿路感染症や腎盂腎炎などを起こすことがあります。「高熱」「悪寒」「全身の倦怠感」 などが見られた場合には、結石による閉塞に加えて感染の可能性が高いと考えられます。
発熱や悪寒がある場合は、結石の除去だけでなく、抗菌薬治療などの感染管理が急務です。感染が全身に広がる敗血症リスクが高まる恐れもあるため、できるだけ早めに医療機関を受診しなければなりません。

6. 下腹部痛や陰部への放散痛

尿管結石が尿管下部に位置する場合、結石が膀胱近くを刺激し、下腹部や会陰部に痛みを放散させることがあります。男性では睾丸や陰嚢、女性では陰部周辺に痛みや不快感を訴えるケースもあります。人によっては激痛が連続的に押し寄せることもあり、身体的・精神的負担が大きくなることが特徴です。

尿管結石が引き起こす合併症とそのリスク

上記の症状を放置してしまうと、以下のような重篤な合併症を引き起こすリスクが高まります。

  • 水腎症(腎盂・腎杯の拡張)
    尿管が結石で詰まり、尿が腎臓側に逆流してしまう状態です。軽度であれば腎機能に大きな影響が出ない場合もありますが、長期間続くと腎臓の構造的ダメージにつながり、最終的に腎不全を招く恐れがあります。
  • 尿路感染症・腎盂腎炎
    尿のうっ滞は細菌の繁殖を促し、尿管や腎盂・膀胱での感染(尿路感染症)を引き起こします。とくに腎盂腎炎に進展すると発熱や全身倦怠感が強くなり、抗菌薬治療が必要となる場合が多いです。
  • 膿腎症
    感染が高度に進行し、膿が腎臓内に貯留する状態です。放置すれば敗血症に至ることもあり、緊急のドレナージ(排膿)や結石除去が命にかかわるほど重要となります。
  • 腎機能低下・腎不全
    長期的に腎臓が圧迫や炎症によってダメージを受けると、腎機能が著しく低下して慢性腎不全 や終末期腎不全 に至る恐れがあります。その場合、透析や腎移植などの高度医療が必要になることもあります。

日本における生活習慣と尿管結石の関係

近年の日本では食事の欧米化や不規則な生活習慣などにより、塩分・動物性たんぱく質・脂質の摂取量が増えている傾向が指摘されています。こうした食生活の変化が、尿管結石を含む尿路結石の発症に寄与する可能性が高いと考えられています。
2022年に「Urology」誌で報告された多施設共同研究(Sorokinら, 2022, 40巻11号:3043-3059, doi:10.1007/s00345-022-04204-1)によると、アジア圏の食生活が徐々に高脂肪・高塩分・高たんぱく質化するにつれ、結石症の発生率も上昇していることが示唆されています。日本国内でも同様の傾向が見られており、特に20代〜40代の働き盛り世代での発症増加が報告されている点が注目されています。

尿管結石の治療方法

尿管結石の治療は、結石の大きさ、位置、成分、および患者さんの全身状態によって選択肢が異なります。ここでは代表的な治療法を紹介します。

1. 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

結石に向けて体外から衝撃波を照射し、結石を細かく破砕して自然排出を促す方法です。切開を伴わない 非侵襲的治療であるため、患者さんの負担が比較的少ないという長所があります。ただし、結石の位置や硬さによっては破砕が十分でない場合もあり、再施術が必要となるケースもあります。

2. 内視鏡的治療(尿管鏡下結石砕石術)

尿管鏡を尿道から挿入し、結石を直接目視で確認しながら破砕・回収する方法です。最近はデジタル尿管鏡の高解像度化が進み、より確実かつ安全に結石を除去できるとされています。レーザーによる破砕 を組み合わせることで大きな結石でも対応可能です。結石が膀胱に近い下部尿管にある場合や、ESWLで十分な効果が得られなかった場合に選択されやすいです。

3. 経皮的腎結石除去術(PCNL)

腎臓内にある巨大結石や、尿管へ複雑に連なる結石の除去を目的に行われる手術です。背中側に小さな切開口をつくり、腎盂に内視鏡を通して直接結石を除去します。やや侵襲度が高い治療ではありますが、腎臓や尿管に複数の結石がある場合 や結石が非常に大きい場合 に有効とされています。

4. 保存的治療(投薬や経過観察)

結石の大きさが小さい(5mm以下など)場合や症状が軽微な場合、自然排出を期待して痛み止めや排石促進薬を用いながら経過観察することもあります。こまめに水分を摂取して尿量を増やし、体を動かして振動を加えるなどの生活指導が行われることが多いです。
ただし、痛みが強い場合、感染症を合併している場合などは速やかに他の治療へ移行する必要があります。

食事・生活習慣による予防と再発防止

尿管結石の治療後も、再発を予防するためには食事や生活習慣の見直しが欠かせません。具体的には次のようなポイントが推奨されています。

  • 十分な水分摂取
    1日あたり少なくとも2〜2.5リットルを目安に、こまめに水分をとることが望ましいです。夏場や運動時には発汗量が増えるため、さらに意識して補給しましょう。
  • 塩分の摂りすぎに注意
    塩分の過剰摂取はカルシウムの排泄量増加や血圧上昇を招き、結石リスクを高める可能性があります。日本人の食事摂取基準でも、1日6g未満が推奨されています(特に高血圧傾向の方は要注意)。
  • たんぱく質のバランス
    動物性たんぱく質を過度に摂取すると尿中のカルシウムや尿酸が増える恐れがあります。肉類だけでなく、魚や大豆製品などもバランス良く摂取することが大切です。
  • シュウ酸・プリン体に注意
    ホウレンソウやタケノコ、紅茶などシュウ酸を多く含む食品は、カルシウムと結合して結石を形成しやすくすることが知られています。また、プリン体の多い食品(レバー、干物、ビールなど)は尿酸結石のリスクを高める可能性があります。極端に制限する必要はありませんが、食べる頻度や量を意識しましょう。
  • 適度な運動
    運動不足は代謝や血行が悪化し、体に老廃物がたまりやすくなる一因です。ウォーキングなど軽めの有酸素運動を継続するだけでも尿路全般の健康維持に寄与するとされています。
  • アルコールやタバコの量を減らす
    過度のアルコール摂取は脱水を招き、タバコは血管収縮をもたらすことで臓器への血流を阻害し、結石ができやすい環境を後押しする場合があります。少しずつでも本数や飲酒頻度を減らす心掛けが再発予防に有効です。

こうした食事・生活習慣の改善は、一度尿管結石ができた方に限らず、初発予防にも大いに役立ちます。特に尿管結石は再発率が高い疾患として知られており、予防策の徹底こそが長期的な健康維持の鍵となります。

早期発見のメリット

尿管結石を放置してしまうと、前述の通り腎機能低下や感染症リスクの上昇など、重篤な合併症につながるおそれがあります。一方、症状が比較的軽度のうちに発見できれば、治療の選択肢が広がり、侵襲の少ない治療法で対応できる可能性が高くなります。

  • 治療期間の短縮
    症状が軽度な段階であれば、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)などの日帰り〜短期入院治療で済むケースが増えます。体力的・経済的負担が軽くなるだけでなく、社会復帰も早まります。
  • 腎機能の温存
    結石が大きくなる前に取り除くことで、腎臓や尿管、膀胱に余計なダメージを与えずに済みます。特に腎不全リスクが高い方や、腎機能が既にやや低下している方にとっては、早期発見がよりいっそう重要です。
  • 感染症の予防
    結石によって尿路が閉塞すると尿路感染症を招きやすくなりますが、小さいうちに処置すれば感染症のリスクを最小限に抑えられます。

以上のように、早期発見は合併症リスクを下げるだけでなく、身体的・経済的負担の観点からも大きなメリットがあります。痛みや血尿、排尿障害といったサインを見逃さず、早めに医療機関で適切な検査を受けることが大切です。

受診と検査の流れ

尿管結石が疑われる場合、主に以下のような流れで検査・診断が行われます。

  1. 問診と症状確認
    症状の出現時期、痛みの強さや部位、血尿の有無などが詳細に聞かれます。生活習慣や家族歴も診断の手がかりになるため、医師からの質問にはできるだけ正確に答えましょう。
  2. 身体診察
    腰や下腹部を軽くたたいたときの痛み(打診痛)の有無などをチェックします。
  3. 尿検査
    血尿や細菌の有無を調べるため、まずは簡便な尿定性検査や尿沈渣検査を行います。必要に応じて尿培養検査で感染の有無を確認します。
  4. 画像検査(超音波、X線、CTなど)
    腎臓や尿管における結石の大きさ・位置を把握するため、腹部超音波検査や単純CT検査が行われることが多いです。結石が透過性のある成分である場合、X線では写りにくいことがあるため、CTを使った精密検査が有効です。
  5. 血液検査
    腎機能(クレアチニン、血中尿素窒素など)や電解質異常の有無を評価します。
  6. 結石成分分析(摘出後または排出された石の成分解析)
    摘出または自然排出された結石の成分を分析することで、再発防止策の立案や食生活の指導を行いやすくなります。

これらの検査を組み合わせて総合的に判断し、最適な治療プランが決定されます。症状や検査結果によっては即日入院や緊急処置が必要となるケースもあるため、疑わしい症状がある際は早めの受診が重要です。

参考文献

  • Bladder Stones: Penn Medicine(アクセス日: 2021年5月21日)
  • Bladder Stones: NCBI Bookshelf(アクセス日: 2021年5月21日)
  • Bladder Stones: Cleveland Clinic(アクセス日: 2021年5月21日)
  • Bladder Stones: NHS(アクセス日: 2021年5月21日)
  • Bladder Stones: Mayo Clinic(アクセス日: 2021年5月21日)
  • Barghouthy Y, Corrales M, Doizi S, Somani B, Keller EX, Giusti G, Salvadó JA, Proietti S, Rodriguez-Socarrás M, Ishii H, et al. “Urolithiasis: updated epidemiology, therapy and site-specific guidelines.” International Journal of Urology. 2023;30(2):115-125. doi:10.1111/iju.14851
  • Pearle MS, Goldfarb DS, Assimos DG, et al. “Medical Management of Kidney Stones: AUA Guideline.” The Journal of Urology. 2021;206(4):772-799. doi:10.1097/JU.0000000000001949
  • Sorokin I, Mamoulakis C, Miyazawa K, Rodgers A, Talati J, Lotan Y. “Epidemiology of stone disease across the world.” World Journal of Urology. 2022;40(11):3043-3059. doi:10.1007/s00345-022-04204-1

結論と提言

尿管結石は小さい段階では無症状のこともありますが、結石が尿管内をふさいでしまうと激しい疝痛発作や排尿困難、血尿、感染症など深刻なトラブルを引き起こします。特に腎機能を守るうえでも早期発見・早期治療が欠かせません。適切な治療法を選ぶことで、体への負担を最小限に抑えながら結石を取り除き、再発を防止することが可能です。
予防には、十分な水分摂取、塩分や動物性たんぱく質の過剰摂取を控える、適度な運動を続けるなど、日常生活の改善が非常に有効です。一度結石ができた方は特に再発しやすい傾向にあるため、主治医の指導のもとで定期的な検診・検査を受けましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の症状や状態に応じた医療行為を保証するものではありません。気になる症状がある場合や治療を検討する場合は、必ず専門の医師にご相談ください。

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