心を癒す6つのスーパー食品 | 自宅でできるうつ病対策
精神・心理疾患

心を癒す6つのスーパー食品 | 自宅でできるうつ病対策

はじめに

心身の健康管理を考えるうえで、栄養バランスのとれた食事や適度な運動の重要性が頻繁に取り上げられます。とくに近年、うつ状態(抑うつ)のリスクと栄養状態とのかかわりについて、国内外で多くの研究が実施されてきました。たとえば、脳の働きを支える微量栄養素や脂肪酸などを適切に摂ることが、気分の安定や神経伝達物質の合成を助ける可能性があると考えられています。さらに、生活習慣の変化や仕事上のストレスなど、さまざまな要因が重なってうつ症状のリスクが高まるとされる現代社会において、栄養アプローチの意義はますます注目を浴びています。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

本記事では、日常生活で取り入れやすい6種類の食品を中心に、その特徴や作用メカニズム、さらには国内外の研究動向を踏まえた解説を行います。いずれも、いわゆる「補助的な役割」として捉えていただくのがポイントです。医学的な治療(薬物療法やカウンセリング)を受けている方でも、こうした食品を上手に食生活に取り入れることで、日々の気分を安定させる助けになる可能性があります。ただし、症状が中~重度の場合には、主治医との連携や継続的なフォローアップが不可欠です。

専門家への相談

本記事の内容は、栄養やメンタルヘルスに関する各種研究・論文からの知見や、医療従事者の意見を参考にまとめたものです。なお、医療機関で実際に患者さんの診療にあたる Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh(ベトナム語表記)
(専門:内科・内科全般、勤務先:Bệnh Viện Đa Khoa Tỉnh Bắc Ninh)
のアドバイスも一部参考とし、食事や生活習慣によるメンタルケアの重要性について再確認を行いました。ただし、最終的な治療方針の決定や個別の対応は必ず担当医または専門家とご相談ください。

以下では、6つの食品群が持つ可能性や、実際の研究で示されている効果を順に解説します。いずれも日常の食卓に比較的取り入れやすいものばかりですので、まずはご自身の体調や好みに合わせて試しながら、無理のない範囲で継続してみるとよいでしょう。


1. ダークチョコレート

ダークチョコレートは、フラボノイドをはじめとする多種多様な栄養素を豊富に含み、脳への血流を促進したり、炎症を抑えたりする可能性が示唆されています。さらに、カフェインやテオブロミン、N-アシルエタノールアミンなど、気分を上向かせると考えられる成分も含まれます。このため、心の安定や集中力アップに寄与する可能性があるのです。

  • フラボノイド:ポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用を持ち、脳血流を高める働きがあるとされています。
  • カフェインなどの覚醒作用:チョコレートに含まれるカフェインやテオブロミンは、中枢神経を刺激し、疲労感を和らげたり、心身を軽く覚醒させる効果が期待できます。

研究としては、Effects of chocolate on cognitive function and mood: a systematic review(2013年以前の複数の研究を系統的にレビューしたもの)では、フラボノイド含有量の高いチョコレート摂取が認知機能や気分に好影響を与える可能性が示唆されています(参考文献1)。

一方でチョコレートにはカロリーも多いため、一度に大量に食べるのはおすすめできません。目安として1日あたり数かけら(1~4ピース程度)を楽しむようにし、砂糖添加が比較的少ないカカオ70%以上のダークチョコレートを選ぶのがベターです。


2. 発酵食品

発酵過程を経た食品(キムチ、ヨーグルト、納豆、漬物、味噌、ケフィア、コンブチャなど)は、日本でも古くから健康食として親しまれてきました。これらはプロバイオティクス(善玉菌)を含むため、腸内環境のバランスを良好に保つ働きが期待できます。

腸内細菌の状態はセロトニンなどの神経伝達物質の産生にも影響することがわかっており、脳腸相関の観点からメンタルヘルスへのプラス効果が注目されています。実際に、腸内環境が乱れると炎症性サイトカインが増加したり、脳内の神経伝達物質バランスがくずれたりして、気分の落ち込みや不安感に影響を及ぼす場合があると考えられています。

  • Serotonin, tryptophan metabolism and the brain-gut-microbiome axis(参考文献2)でも示されているように、腸内細菌によるトリプトファン代謝やセロトニン生産の変動は、気分に大きくかかわる可能性があります。
  • また、2021年にBMC Psychiatryで公表されたTrzmiel Tらのレビュー研究では、うつ病患者の一部で腸内微生物叢の多様性が低下しているとの報告があり、発酵食品やプロバイオティクスを用いたアプローチが症状改善につながるかもしれないという見解も示されています(doi:10.1186/s12888-021-03502-x)。

ただし、発酵食品でも塩分や糖分が多いものがあるため、適量を心がけましょう。一般的にヨーグルトなら無糖タイプや砂糖不使用の発酵乳飲料を、味噌や漬物などは塩分過多にならない程度に少量ずつ利用するのが望ましいです。


3. 脂肪分の多い魚

青魚やサケなど脂ののった魚には、オメガ3系脂肪酸として知られるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)が多く含まれます。オメガ3脂肪酸は脳細胞膜の流動性を維持し、神経伝達をスムーズにするのに不可欠と考えられています。

  • たとえば、Omega-3 fatty acids influence mood in healthy and depressed individuals(参考文献3)の報告では、十分なオメガ3脂肪酸を摂取している人ほど、うつ症状が軽減される可能性が示唆されています。
  • また、FAO(国連食糧農業機関)のガイドライン(参考文献4)でも、EPA+DHAとして1日当たり250〜500mg程度を摂取することが推奨されることがあります。

魚介類には良質なたんぱく質やビタミンDなども含まれ、総合的な栄養補給源として優秀です。なかでも、サケ、マグロ、イワシ、サバなどはとくにEPAやDHAを豊富に含むため、週に2~3回は食べるのが望ましいでしょう。加熱方法は塩焼き、煮付け、蒸し料理など、お好みに合わせて調整してください。

さらに、2023年にBrain Behavior and Immunity – Health誌で公表されたシステマティックレビュー(Hsuらによる研究、doi:10.1016/j.bbih.2022.100591)では、オメガ3系脂肪酸のサプリメントがうつ病患者の主観的ウェルビーイングを改善する可能性を示すデータがあるとも言及されています。ただし、サプリメント使用時は用量や組成、個人差にも注意が必要です。過剰摂取は副作用や出血傾向を高める恐れがあるため、服用前に必ず専門家へ確認しましょう。


4. 二枚貝(ハマグリやアサリなど)

貝類は日本人にとって身近な食材であり、ビタミンB群(とくにビタミンB12)が豊富に含まれています。ビタミンB12は神経細胞の維持やヘモグロビン合成にも欠かせない栄養素で、不足すると貧血だけでなく神経伝達物質の産生にも支障が出る可能性があります。ビタミンB12が足りないと、脳内のS-アデノシルメチオニン(SAM)という抗うつ作用が示唆される分子量物質の合成が滞る場合があるという報告も存在します(参考文献5, 6)。

うつ症状がある人の中には、微量栄養素の不足が誘因・増悪因子になっているケースもあるため、貝類(ハマグリ、アサリ、シジミなど)を定期的に摂るのは一案です。ビタミンB12はほかに牛肉、レバー、卵、乳製品などでも補いやすいので、偏りなく食べることが大事です。


5. ナッツ・シード類

アーモンドやクルミ、カシューナッツ、ピーナッツ、ヒマワリの種、カボチャの種などは日本の食卓でも取り入れやすい食品群で、たんぱく質や良質な脂質、食物繊維が豊富です。また、メンタルヘルスの面で着目されるのは、これらに含まれるトリプトファンです。トリプトファンは体内でセロトニン合成の材料となる必須アミノ酸であり、不足すると気分の安定が損なわれる可能性があります。

  • ある10年におよぶ追跡研究(15,980人を対象とした観察研究)では、ナッツやシード類を適度に取り入れた食生活を送る群で、うつリスクが相対的に23%低かったとする結果が示唆されました(参考文献7で引用されているMIND食や地中海式食事法にも通じる考え方)。
  • さらに2021年のInternational Journal of Preventive Medicineに掲載されたRaeisi Tらのシステマティックレビュー(doi:10.4103/ijpvm.IJPVM_194_20)では、乳製品も含む複数の食材が精神面に影響を与え得ると考察されていますが、ナッツやシード類などの植物性食品とあわせて取り入れることで相乗効果が見込める可能性があるとの示唆もあります。

もちろん、ナッツやシードにも脂質が多いため、1日にどのくらい食べるか量に注意しましょう。目安として一握り程度(25~30g)を、間食やサラダのトッピングなどに活用すると、継続しやすいです。


6. バナナ

バナナは朝食やおやつなど、気軽に取り入れやすい果物として知られています。その特徴としてビタミンB6やカリウム、食物繊維、そしてレジスタントスターチなどを含む点が挙げられます。とくにビタミンB6は脳内でドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質を合成するうえで欠かせない補酵素です。

  • 大きめのバナナ1本(約130~140g)には、16g前後の糖質と3g程度の食物繊維が含まれ、糖質吸収を比較的穏やかに進める効果が期待できます。急激な血糖値の乱高下はイライラ感や気分変動をもたらしやすいため、バナナのように自然な形で食物繊維を含む果物は、血糖値が安定しやすいメリットがあります。
  • さらに、まだ完熟しきっていない(やや青みがかった)バナナには腸内細菌を育てるプレバイオティクス作用が高いデンプン質が含まれ、腸内環境を整える観点からメンタル面へも良い影響が期待されます。

日頃からストレスを感じやすい方や、朝の食欲があまりない方でもバナナなら摂りやすいので、ぜひ取り入れてみてください。ただし、バナナ自体にも糖分は含まれるため、1~2本を目安に加減しながら利用するのがよいでしょう。


結論と提言

うつ症状や抑うつ気分は、ストレスや睡眠不足、ライフイベント、環境、遺伝的要因、身体疾患などが複雑に絡み合って起こるものです。そのため、食生活や栄養面だけで「すべて解決」とはいきません。しかし、日々の食事を見直し、脳や神経に良いとされる特定の栄養素を意識的に摂ることは、症状の改善や再発予防に少なからずプラスに働く可能性があります。

  • ダークチョコレート:フラボノイドやカフェイン類の組み合わせが脳機能に良い影響を与える可能性。ただしカロリー過多に注意。
  • 発酵食品:腸内細菌バランスとメンタルヘルスとの関連が認められており、セロトニン生成を助けるかもしれない。
  • 脂肪分の多い魚(青魚やサケなど):オメガ3脂肪酸(DHA, EPA)が脳の神経伝達をサポート。週2~3回の魚食習慣を目標に。
  • 二枚貝(アサリやハマグリ):ビタミンB12補給源としてうつリスク低減が期待される。ほかに卵や牛肉でも可。
  • ナッツ・シード類:トリプトファンや良質脂質、食物繊維により脳機能を支える。1日一握り程度の摂取が目安。
  • バナナ:ビタミンB6が神経伝達物質の合成を助け、プレバイオティクス効果も期待できる。適量を心がける。

栄養は身体面だけでなく、精神面にもかかわる大切な要素です。ただし、症状が重度または急性の場合は薬物療法やカウンセリングなど適切な専門治療が不可欠です。食事改善はあくまでサポートとして捉え、併行して医師やカウンセラーの指導を受けるようにしましょう。

(参考:推奨される相談先)

  • 精神科・心療内科
  • 内科やかかりつけ医
  • 心理カウンセラー・臨床心理士

特に長引く憂うつ感や不安障害が疑われる場合、早めの相談が回復への近道となります。恥ずかしがらず、できるだけ早期に専門家の力を借りてください。


参考文献


重要
この記事で紹介した情報は、あくまで一般的な参考意見です。実際の治療や診断は医師や専門家の判断が最優先となります。特にうつ症状や気分障害が疑われる場合は自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。もし現在治療中の場合は、主治医の方針を優先しながら、食事や生活習慣の改善をぜひサポートとして活用いただければ幸いです。

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