心筋虚血の原因とは?理解して未然に防ぐために
心血管疾患

心筋虚血の原因とは?理解して未然に防ぐために

はじめに

心臓に十分な血液が行き渡らない状態、いわゆる虚血性心疾患の中でも、心筋虚血(いわゆる「心筋の血液不足」)は多くの日本人にとって大きな懸念となっています。心筋が酸素や栄養を適切に得られないと、狭心症や心筋梗塞など重大な合併症につながる可能性があり、生活の質を大きく損ねる要因にもなります。とくに動脈硬化や血栓(血管が詰まる状態)が進行すると、心臓を栄養する冠動脈の血流が阻害され、心筋が酸素不足に陥ることがあります。こうした状態が心筋虚血です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

今回のテーマは「心筋虚血が起こる主な原因と予防策」です。もともと症状が徐々に進行するケースもあれば、一気に血栓が詰まって重症化するケースもあります。心筋虚血は日本において高齢化や生活習慣の変化に伴い、より身近なリスクとなってきました。本記事では、日常生活を送るうえで知っておきたい背景・原因・危険因子・予防法などを包括的に解説いたします。心筋虚血を予防するためには、何をどう改善すべきか、一緒に考えてみましょう。

専門家への相談

本記事の内容は、信頼性の高い医療情報をもとにまとめていますが、個々の状態により対処法は異なります。記事内で引用している海外の医療機関(Mayo ClinicCleveland Clinic など)は世界的に著名な組織であり、各種疾患に対するガイドラインや最新研究を公表しています。さらに、日本国内でも動脈硬化や冠動脈疾患の研究が進んでおり、多くの臨床データが蓄積されています。本記事はそれらの情報を参照しながら、わかりやすくまとめたものです。

なお、記事の監修医として記載されているThạc sĩ – Bác sĩ CKI Ngô Võ Ngọc Hương(Bệnh viện Nhân dân 115)は、本来の執筆元において心臓疾患を含む内科領域で豊富な実績と経験をお持ちの方です。本記事では、元の情報を日本向けに再構成し、できる限り最新の知見を交えて解説を行います。あくまでも参考情報としてお役立ていただき、ご自身の健康状態に不安のある方は、必ず医師へ直接ご相談ください。

心筋虚血とは

心筋虚血とは、冠動脈(心臓の筋肉である心筋に酸素と栄養を供給する血管)が何らかの理由で狭くなったり閉塞したりし、心筋に十分な酸素が届かなくなる状態を指します。主に狭心症心筋梗塞という形であらわれ、動脈硬化や血栓形成、冠動脈のけいれん(けいれん性狭心症)などが大きな要因となります。動脈硬化は日本での生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症など)とも密接に関係しており、近年ますます注意が必要です。

心筋虚血が起こる主な原因

1. 冠動脈の動脈硬化(アテローム硬化)

多くの場合、冠動脈の動脈硬化(アテローム硬化)が最大の原因とされています。動脈硬化とは、コレステロールや中性脂肪が血管壁に蓄積し、プラーク(粥腫)を形成することで血管が狭く、硬くなる状態です。このプラークが蓄積すると血管の内腔が狭くなり、心筋への血流が減少してしまいます。さらにプラークが破綻すると血栓ができやすくなり、血流が急激に途絶して心筋梗塞に至るおそれがあります。

  • プラークによる血管内腔の狭小化
    プラークは血管内膜に付着し、徐々に内腔を塞ぎます。日本人を含む多くの人々で、長年の食習慣や運動不足が影響し、プラークの形成が進行しやすいといわれています。
  • プラーク破綻と血栓形成
    プラークが破れて内容物が血管内に露出すると、血小板が活性化され血栓が形成されます。この血栓が冠動脈を完全に詰まらせると、心筋への酸素供給が途絶して心筋梗塞を引き起こすリスクが高まります。

実際、日本国内でも動脈硬化性疾患は虚血性心疾患の主要因として挙げられています。世界各国の大規模研究で、「食生活の欧米化や喫煙率の高さ、運動不足などが動脈硬化の進行を加速させる」と示されています。動物性脂肪やトランス脂肪酸の過剰摂取はプラーク形成を促す一因となり、日本人でも例外ではありません。

2. 冠動脈の血栓(血のかたまり)

前述の動脈硬化に伴うプラーク破綻などが原因で、冠動脈内に血栓が形成される場合があります。血栓が徐々に大きくなるか、あるいは突然破裂して血流を阻害することで、心筋への酸素供給が急激に不足し、急性冠症候群(急性心筋梗塞や不安定狭心症など)に至る可能性があります。短時間で血管が詰まるため、激痛を伴う狭心症発作や心筋梗塞が起こり、場合によっては数分のうちに致命的な不整脈(心室細動など)を引き起こすリスクがあります。

  • 急性心筋梗塞とその重大性
    血栓による急性冠症候群の代表例が急性心筋梗塞です。血栓によって冠動脈が閉塞し、その先の心筋が壊死に至るため、迅速な治療が不可欠です。日本国内でも年々、急性冠症候群の発症率は大きくは減少していません。
  • 血栓形成を招く因子
    高LDLコレステロール(悪玉コレステロール)や高トリグリセリド(中性脂肪)、喫煙や高血圧、糖尿病などが血栓形成リスクを高めるとされています。

3. 冠動脈のけいれん(血管スパズム)

冠動脈が一時的に強くけいれん(スパズム)を起こし、血管が急激に細くなることで心筋への血流が減少することがあります。これを冠動脈れん縮性狭心症と呼びます。日本人には比較的まれともいわれますが、一部で夜間や早朝に胸痛が出現するケースが報告されています。

  • けいれんの主な誘因
    喫煙、ストレス、気温の変化、あるいは特定の薬物が誘因となり得ます。
  • 短時間での血流遮断
    血栓とは異なり、一時的な血管壁の過剰収縮なので、発作が収まれば血流が戻ることがあります。しかし、繰り返すうちに血管内皮が傷つき、動脈硬化を進める可能性も指摘されています。

4. 冠動脈解離(非常に稀な例)

非常に稀なケースとして、冠動脈自体が解離(内膜が裂けること)して血流が障害される冠動脈解離があります。これは妊娠中や産後の女性、または結合組織疾患を持つ方にまれにみられる原因ですが、発生頻度は極めて低いため本記事では詳細には触れません。

心筋虚血の危険因子と発症を高める背景

心筋虚血は、単一の原因ではなく複数の要因や生活習慣が重なることで発症リスクが高まります。以下に代表的な危険因子を挙げます。

  • 喫煙
    タバコに含まれる化学物質は血管内皮を損傷し、動脈硬化を加速させるだけでなく、血小板の凝集を促進して血栓を作りやすくします。受動喫煙も同様にリスクを高めるとされています。
  • 糖尿病
    血糖値が慢性的に高い状態が続くと、血管内皮の機能が低下し、動脈硬化を加速します。糖尿病患者は心筋虚血を含む心血管イベントのリスクが一般の数倍になることが知られています。
  • 高血圧
    慢性的に血圧が高い状態が続くと、血管壁に負荷がかかり、内皮が損傷しやすくなります。動脈硬化や血管狭窄のリスクを増大させ、心筋虚血につながりやすくなります。
  • 脂質異常症(高LDLコレステロール・高トリグリセリド)
    LDLコレステロールやトリグリセリドが過剰になると、血管壁に蓄積してプラークを形成しやすくなります。特にLDLが高いと動脈硬化を促進し、心筋虚血の主要要因となります。
  • 肥満や内臓脂肪の蓄積
    日本人の場合でも内臓脂肪型肥満が増えており、糖尿病や脂質異常症、高血圧などの合併を招きやすいです。腹囲が大きいほど代謝リスクが高いことが報告されています。
  • 運動不足
    週に数回程度の有酸素運動は心肺機能を高め、血管を柔軟に保ちやすくしますが、運動不足だと肥満や脂質異常症、インスリン抵抗性が進行しやすくなります。
  • ストレス・精神的負荷
    過度なストレスは自律神経バランスを乱し、交感神経が優位になることで血圧や心拍数の上昇を招きます。また、一時的に血管が収縮しやすくなるため、心筋虚血の誘因となることもあります。
  • その他(食生活、過度の飲酒など)
    高脂質・高カロリーの食事や塩分過多の食生活、過度のアルコール摂取も動脈硬化の発症を早めます。

なお、「身体が酸素や栄養をより多く必要とするとき」に血流が間に合わず心筋虚血が生じるケースもあります。具体的には、

  • 過度の身体運動・労作
  • 強い感情ストレス
  • 厳しい寒冷環境
  • 大量の食事
  • コカインなどの薬物乱用
  • 性行為時の激しい負荷
    などが心筋への需要を急上昇させ、虚血を起こしやすくするとされています。

心筋虚血による症状の特徴

心筋虚血がある程度進行すると、狭心症の胸痛が代表的な症状として現れます。胸の中央部(胸骨裏側あたり)の圧迫感や締め付け感、場合によっては左肩や背中にかけて痛みが放散します。労作(運動)時や強いストレス時に起こりやすく、安静にすると治まることが多いです。
また、血栓などで急激に冠動脈が閉塞すると、激烈な胸痛とともに大量の発汗、吐き気、呼吸困難、不整脈などが生じる急性心筋梗塞となり、迅速な救急対応が必要です。

予防の重要性と具体的な対策

心筋虚血の原因を理解することは、予防策を講じるうえで非常に重要です。動脈硬化の進行を抑え、血管を健康に保つためには、以下のような生活習慣の改善が有効とされています。

  • 禁煙
    喫煙は血管を収縮させ、内皮機能を障害するなど心筋虚血の最大リスク因子のひとつです。受動喫煙も含め、煙草の有害物質が血管に与える影響をできる限り避けることが大切です。医師や禁煙外来などを活用して、完全禁煙を目指しましょう。
  • 基礎疾患の管理(糖尿病・高血圧・脂質異常症)
    すでに何らかの生活習慣病を持つ方は、適切な治療と自己管理が不可欠です。血糖値や血圧、LDLコレステロールなどを定期的にチェックし、医師の指示のもと薬物療法や食事療法を行いましょう。

    • 糖尿病:血糖コントロールを適切に行うことで、動脈硬化の進行を抑制します。
    • 高血圧:降圧薬の使用や減塩食などにより血圧を管理し、血管壁への負担を軽減させます。
    • 脂質異常症:スタチンなどの薬物治療や食生活改善によりLDLを適正範囲に保ちます。
  • バランスの良い食事
    飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を過剰に含む食品(揚げ物や高脂質の肉加工品など)を控え、野菜や果物、魚、大豆製品、食物繊維を多く含む穀物などを取り入れた和食中心の食事が推奨されます。脂質異常や肥満を防ぎ、動脈硬化リスクを下げるうえで重要なポイントです。
  • 適度な運動習慣
    有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、水泳など)を週に150分以上、可能なら毎日少しずつでも行うと良いでしょう。有酸素運動は心肺機能を高め、血管内皮を保護する効果があり、肥満や糖代謝異常の改善にもつながります。
  • 体重管理
    肥満と内臓脂肪の増加は、糖尿病や脂質異常症など複数のリスクを同時に高めます。BMI(体格指数)や腹囲を定期的に測り、標準範囲を超えないよう注意しましょう。日常生活で消費エネルギーを増やす工夫をすることも大切です。
  • ストレスマネジメント
    精神的負荷が大きいと交感神経が優位になりやすく、血管が収縮しやすくなります。心筋虚血予防のためにも、適度な休息や睡眠、リラクゼーション法、趣味を通じた気晴らしなど、ストレスを溜め込みにくいライフスタイルを心がけましょう。

最新の研究動向(2020年以降の知見)

心筋虚血や冠動脈疾患に関する治療・予防のガイドラインや研究は、欧米や日本の大規模臨床試験・長期追跡調査をもとに随時更新されています。以下のような研究・ガイドラインが近年注目されています。

  • 2019 ESC Guidelines for the Diagnosis and Management of Chronic Coronary Syndromes(2020年発行)
    [Knuuti J, Wijns W, Saraste A, et al. (2020). 2019 ESC Guidelines for the diagnosis and management of chronic coronary syndromes. Eur Heart J. 41(3): 407-477. doi:10.1093/eurheartj/ehz425]
    欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインで、慢性冠症候群(安定した狭心症を含む)の管理や評価方法を総合的に示しています。リスク層別化、画像診断(CT、MRI)や冠動脈造影の選択基準、生活習慣改善と薬物療法の併用が推奨されており、日本の臨床現場にも応用しやすい内容です。
  • 2020 ESC Guidelines for the Management of Acute Coronary Syndromes in Patients Presenting without Persistent ST-segment Elevation(2021年発行)
    [Collet JP, Thiele H, Barbato E, et al. (2021). 2020 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes in patients presenting without persistent ST-segment elevation. Eur Heart J. 42(14): 1289-1367. doi:10.1093/eurheartj/ehaa575]
    非ST上昇型急性冠症候群(不安定狭心症や非ST上昇型心筋梗塞)の診断・治療ガイドラインが示されています。血小板凝集抑制薬の適切な使い分けや早期侵襲的治療のタイミングなど、日本でも重要視されている内容です。
  • Complete revascularization versus infarct-related artery-only percutaneous coronary intervention in ST-segment elevation myocardial infarction and multivessel disease: meta-analysis(2022年発行)
    [Zimmermann FM, et al. (2022). Circulation, 145(20): 1557-1566. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057194]
    ST上昇型心筋梗塞かつ多枝病変を有する患者を対象に、「完全血行再建」(閉塞した冠動脈だけでなく、狭窄のある別の冠動脈も治療する)を行った場合の長期転帰に関するメタ分析です。多枝病変を持つ患者に対し、段階的に冠動脈形成術を行うほうが予後改善に有効である可能性が示唆され、日本でも治療方針の決定に影響を与えています。

これらの研究は主に欧州でのデータではありますが、日本を含むアジア人にも多くが参考になると考えられ、実臨床においてもガイドラインを適宜取り入れて治療戦略を立てる例が増えています。

早期発見と定期健診の重要性

心筋虚血は、初期には無症状で進行することが多く、重大な合併症を起こしてから発覚する場合もあります。そのため、定期的な健康診断人間ドックで血圧、血糖値、脂質(LDL、HDL、中性脂肪)などを確認することが大切です。特に以下のポイントに注意すると、早期の兆候を把握しやすくなります。

  • 胸の違和感
    動作時に胸の奥が重苦しくなる、圧迫感がある、といった初期の軽い症状を見逃さない。
  • 血液検査
    LDLコレステロールやトリグリセリド、空腹時血糖やHbA1cなどの数値が上昇していないか定期的にチェックする。
  • 血圧測定
    自宅血圧計などで朝晩の血圧を計測し、基準値を継続的に超えていないかを把握する。
  • 心電図検査
    定期健診での安静時心電図だけでなく、負荷心電図(トレッドミルなど)を受けることで、運動時の虚血の有無を早期に発見できる場合があります。

推奨される受診タイミングと診療科

  • 動悸や胸部不快感がある場合
    早めに循環器内科を受診し、心電図や心エコー、必要に応じて冠動脈CTなどの検査を行います。
  • 糖尿病・高血圧・脂質異常症などの既往がある場合
    定期的に主治医のもとで全身状態を把握し、追加検査が必要かどうかを確認します。
  • 家族歴(親や兄弟が心臓病を発症)
    冠動脈疾患の家族歴がある場合、リスクが高い可能性があるため、特に若いうちから生活習慣を見直し、健診を怠らないようにしましょう。

生活習慣の具体的なポイント

心筋虚血を予防するには、日常生活のなかで以下の点に留意することが勧められます。

  1. 食事コントロール
    • 脂質の質に着目し、魚介類やオリーブオイルなど不飽和脂肪酸を多く含む食品を取り入れる。
    • 食塩摂取量を控えめにし、高血圧を防ぐ。
    • 野菜や果物でビタミン、ミネラル、食物繊維を摂取する。
  2. 運動習慣の確立
    • ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動を習慣化する。
    • 通勤時にエスカレーターやエレベーターを使わず階段を利用する、こまめに体を動かすなど、日常活動量を高める工夫をする。
  3. ストレス軽減
    • 深呼吸法や筋弛緩法、趣味の時間を確保するなど、心身をリラックスさせる時間を意識的につくる。
    • 十分な睡眠をとり、自律神経のバランスを保つ。
  4. 適度なアルコール摂取
    • 過度なアルコール摂取は血圧上昇を招き、肥満や肝機能障害のリスクも高める。適量(日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本程度/日)を守るように心がける。
  5. 服薬管理
    • 医師から降圧薬、脂質異常症治療薬、抗血小板薬などが処方された場合は、決められた用量・用法を守る。
    • 自己判断での服薬中断は危険。副作用などで問題があれば主治医に相談する。

心筋虚血を疑ったら

  • 胸の痛みが数分間持続したり、冷や汗や嘔気を伴う場合は、ただちに救急対応を行いましょう。
  • 症状が落ち着いても、早めに循環器科を受診して詳しい検査を受けることで、重症化を防ぐことができます。

心筋虚血の今後の治療・管理の方向性

近年、経カテーテル治療(PCI)の技術進歩や新たな抗血小板薬、抗凝固薬の登場により、心筋虚血による死亡率は先進国を中心に減少傾向にあります。しかし、日本においては高齢化の進展や生活習慣の欧米化によって、心筋虚血の患者数は依然として多いのが現状です。今後は以下の点に注目が集まっています。

  • 個別化医療(Precision Medicine)の進展
    遺伝子情報やバイオマーカー分析を通じて、一人ひとりのリスクや病態に合った治療戦略を立てるアプローチが注目されています。
  • 新世代の画像診断技術
    冠動脈CTやMRI、OCT(光干渉断層法)などの画像技術がさらに進化し、プラークの性状や血管内の微細な病変を把握しやすくなると期待されています。
  • 二次予防と在宅管理
    一度、心筋虚血イベントを経験した患者に対して、在宅での遠隔モニタリングや生活指導システムを活用し、再発を抑える試みが行われています。

推奨される受診のめやすと医療連携

心筋虚血を未然に防ぎ、あるいは再発を防ぐためには、循環器内科医、糖尿病や脂質異常症の専門医、管理栄養士、理学療法士など多職種連携が理想的です。地域のかかりつけ医や、適宜紹介してもらう形で専門医を受診することで、総合的な健康管理を行うとよいでしょう。

注意喚起とまとめ

  • 定期的な健診
    症状がなくても最低年1回の健康診断を受け、血圧・血糖・コレステロールなどをチェックしましょう。
  • 生活習慣の総点検
    喫煙習慣、運動不足、偏った食事、過度の飲酒、ストレス過多などは、すべて心筋虚血を引き起こす要因になり得ます。
  • 早期対応が重要
    胸の痛み、胸の圧迫感、息切れ、冷や汗などの症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関へ相談し、必要に応じて検査を受けましょう。

推奨される対策はあくまで一般論です

ここまで解説してきた内容は、いずれも日常生活で実践しやすい対策や、一般的に推奨される治療や検査についてまとめたものです。しかし、実際には個々の体質や病歴、合併症の有無などによって最適解は異なります。特に、糖尿病や高血圧、腎臓病などの基礎疾患がある方は、処方薬の種類や用量調整が必要になる場合が多く、専門医による個別の診断・指導が不可欠です。

医療的アドバイスではなく参考情報です

本記事は、日本国内で一般的に推奨される生活習慣改善や国際的なガイドラインを踏まえて、心筋虚血の予防と管理について解説しています。ただし、診断や治療方針の最終的な決定は医師の判断が必要です。症状や数値に不安を感じる方は、早めに医療機関を受診し、適切な指導や治療を受けてください。

まとめ

  • 心筋虚血は冠動脈の狭窄や閉塞により、心筋へ十分な酸素が届かなくなる状態を指す。
  • 主な原因は動脈硬化によるプラーク形成や血栓、冠動脈けいれんなどで、糖尿病や高血圧、脂質異常症、喫煙など複数の要因が重なることでリスクが高まる。
  • 予防には、禁煙や食事・運動習慣の改善、基礎疾患の適切な治療、ストレスマネジメントが重要。
  • 症状がなくても定期健診で血圧・血糖・脂質プロファイルをチェックし、早期発見と早期対応に努めるべき。
  • 急性冠症候群(急性心筋梗塞など)の可能性を疑う場合、ただちに医療機関を受診して救急対応を行う必要がある。

生活習慣を見直し、必要に応じて専門家の力を借りながら、心臓を健康に保つことは、長期的な健康寿命をのばすうえで欠かせません。


免責事項:
本記事で紹介している情報は、医療専門家による診断や治療行為を代替するものではありません。あくまで参考情報としてご利用ください。健康状態に関する具体的な疑問や不安がある場合は、必ず医師や医療専門家にご相談ください。

参考文献

  • Myocardial ischemia. Mayo Clinic. アクセス日: 2022年11月22日
  • Causes of myocardial ischemia. Mayo Clinic. アクセス日: 2022年11月22日
  • Myocardial Ischemia. Cleveland Clinic. アクセス日: 2022年11月22日
  • Myocardial Ischemia. Sparrow. アクセス日: 2022年11月22日
  • Myocardial ischemia. Middlesex Health. アクセス日: 2022年11月22日
  • Heart Muscle Ischemia. ScienceDirect. アクセス日: 2022年11月22日
  • The pathophysiology of myocardial ischaemia. NCBI. アクセス日: 2022年11月22日
  • Knuuti J, Wijns W, Saraste A, et al. (2020). 2019 ESC Guidelines for the diagnosis and management of chronic coronary syndromes. Eur Heart J. 41(3): 407-477. doi:10.1093/eurheartj/ehz425
  • Collet JP, Thiele H, Barbato E, et al. (2021). 2020 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes in patients presenting without persistent ST-segment elevation. Eur Heart J. 42(14): 1289-1367. doi:10.1093/eurheartj/ehaa575
  • Zimmermann FM, et al. (2022). Complete revascularization versus infarct-related artery-only percutaneous coronary intervention in ST-segment elevation myocardial infarction and multivessel disease: meta-analysis. Circulation, 145(20): 1557-1566. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.121.057194

本記事は健康に関する一般的な情報を提供するものであり、医師による個別診断・治療の代替とはなりません。定期的な受診と検査を継続しながら、早期発見・早期治療に努めてください。特に高リスク因子を複数抱える方は、医療機関との連携を密にし、最適な治療および生活習慣改善を行うことを強くおすすめします。今後も各種ガイドラインや研究の更新情報を参考にし、より正確かつ包括的に健康管理を進めていきましょう。

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