心臓がん(心臓肉腫)のすべて:原因・症状から最新治療、予後までを徹底解説
がん・腫瘍疾患

心臓がん(心臓肉腫)のすべて:原因・症状から最新治療、予後までを徹底解説

「心臓にがんができる」という話は、あまり耳にすることがないかもしれません。実際に、心臓に発生するがんは極めて稀な病気ですが、その希少性ゆえに情報が少なく、診断や治療は非常に複雑です。この記事では、日本の国立がん研究センターなどの信頼できる情報源や国際的な医学研究に基づき、心臓がん、特にその大部分を占める「心臓肉腫」について、JapaneseHealth.org編集委員会が専門的かつ分かりやすく、包括的に解説します。原因、症状、正確な診断方法、そして多専門分野チームによる最新の治療戦略まで、患者様とご家族が知りたいと願う情報を、科学的根拠を基に深く掘り下げていきます。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性のみが含まれています。

  • 国立がん研究センター: 本記事における心臓肉腫の定義、分類、治療法に関する記述は、国立がん研究センターが提供する情報に基づいています23
  • 米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン: 軟部肉腫に関する治療方針、特に多専門分野チームによる集学的治療の重要性や生検の必要性に関する推奨は、NCCNの臨床実践ガイドラインを参考にしています4
  • 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)ガイドライン: 軟部肉腫の診断、治療、フォローアップに関する国際的な標準治療の指針は、ESMOのガイドラインに基づいています5
  • 日本循環器学会: がん治療に伴う心機能障害(心毒性)を管理する「腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)」の重要性に関する記述は、同学会が発行したガイドラインに基づいています31

要点まとめ

  • 「心臓がん」の正体: 心臓にできる悪性腫瘍のほとんどは、筋肉や血管などから発生する「肉腫(サルコーマ)」であり、胃がんや肺がんのような「癌腫(カルチノーマ)」とは異なります1
  • 極めて稀な病気: 心臓の原発性腫瘍自体が非常に稀で、そのうち約70%は良性です。悪性のものはさらに少なく、「希少がん」に分類されます23
  • 症状は非特異的: 息切れ、動悸、胸痛、むくみなど、他の心臓病と似た症状が多く、診断が遅れる原因となります。症状は腫瘍の発生部位に大きく依存します14
  • 専門家チームによる治療が必須: 診断と治療は非常に専門的であり、心臓外科医、腫瘍内科医、放射線治療医などが連携する「多専門分野チーム(MDT)」がいる施設での治療が極めて重要です4
  • 予後の大きな違い: 良性腫瘍は手術で切除できれば予後良好ですが、悪性腫瘍(心臓肉腫)の予後は極めて厳しいのが現状です1618

第1章:心臓がんの基礎知識 ― なぜこれほど稀なのか?

心臓がんは、医学的には非常に特異な存在です。その本質を理解するためには、まず正確な定義と、なぜこの病気がこれほどまでに稀なのかを知る必要があります。

1.1. 正確な定義:「癌腫」ではなく「肉腫」

一般的に「心臓がん」という言葉が使われますが、医学的に見ると、心臓から直接発生する悪性腫瘍は、そのほぼ全てが肉腫(にくしゅ、Sarcoma)です。これは、病気の成り立ちを理解する上で非常に重要な区別です1

  • 肉腫 (Sarcoma): 心臓を構成する主成分である筋肉、脂肪、血管、結合組織といった「中胚葉由来組織」から発生します2
  • 癌腫 (Carcinoma): 胃や肺の粘膜など「上皮組織」から発生するがんであり、心臓の主要な機能組織ではありません1

したがって、本記事では「心臓がん」という一般的な呼称を用いつつも、医学的な正確性を期すために「心臓肉腫」という言葉を主に使用します。

1.2. 希少がんとしての側面と、その理由

心臓がんは、発生頻度が極めて低いため「希少がん」に分類されます2。統計的に見ると、体内で見つかる全ての原発性腫瘍のうち、心臓原発性のものは0.1%未満と報告されています3。剖検研究ではさらに低く、0.001%から0.003%という驚異的な稀さです10

なぜ心臓は、がんにこれほど強い耐性を持つのでしょうか。複数の有力な仮説が存在します。

  • 細胞の生物学的特性: がんが「細胞分裂の異常」であるのに対し、心臓の筋肉細胞(心筋細胞)は高度に分化した細胞であり、成人ではほとんど分裂しません。この細胞の安定性が、がんの発生を抑制する最大の要因と考えられています1
  • 血流と温度: 心臓を絶えず高速で流れる血液が、がん細胞の定着を物理的に妨げているという説があります1。また、心臓の温度が約40℃と体内の他の部位より高く、低温(約35℃)を好むがん細胞の増殖に適さない環境である可能性も指摘されています10
  • 自己防衛ホルモンの分泌: 近年注目されている説として、心臓自身ががんを抑制するホルモン、特に心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を分泌しているというものがあります。ANPが肺がんの転移を抑制することが研究で示されており、心臓内での腫瘍形成も防いでいると考えられています10。日本の国立がん研究センターでは、このメカニズムに基づいた臨床試験も計画されています11

1.3. 心臓腫瘍の全体像:原発性と転移性、良性と悪性

心臓にできる腫瘍は、その発生源と性質によって大きく分類されます。

  • 原発性腫瘍 (Primary Tumors): 心臓自体の組織から発生する腫瘍です。これらは良性の場合と悪性の場合があります9。重要なのは、原発性心臓腫瘍の約70%が良性で、悪性は約30%に過ぎないという点です3
  • 転移性腫瘍 (Metastatic Tumors): 他の臓器で発生した がんが心臓に転移してきたものです。これらは常に悪性であり、原発性の悪性心臓腫瘍よりも少なくとも30倍以上多く見られます9。肺がんや乳がんが直接、あるいは血流を介して心臓に広がることが最も一般的です13

第2章:心臓腫瘍の具体的な種類

心臓腫瘍を正確に診断し、適切な治療計画を立てるためには、良性・悪性それぞれの種類と特徴を理解することが不可欠です。

2.1. 代表的な「良性」心臓腫瘍

最も頻度が高いのは粘液腫 (Myxoma)で、良性腫瘍の約半数、原発性心臓腫瘍全体の30-40%を占めます3。多くは左心房に発生します1

注意:「良性」でも安全とは限らない
粘液腫は良性ですが、決して無害ではありません。腫瘍が心臓内の血流を妨げることで息切れや失神などの心不全症状を引き起こしたり、腫瘍の一部が剥がれて血流に乗り、脳の血管を詰まらせて脳梗塞を引き起こす危険性があります9。そのため、診断された場合は外科手術による切除が必要です15

その他、乳頭状線維弾性腫、横紋筋腫(小児に最も多く、自然に小さくなることがある)、線維腫、脂肪腫など、様々な種類の良性腫瘍が存在します3

2.2. 「悪性」の原発性心臓腫瘍(心臓肉腫)

これらは非常に稀ですが、増殖が速く、転移や再発を起こしやすい悪性度の高い腫瘍です12。生検による病理組織型の確定が、治療方針を決定する上で極めて重要になります。

以下に代表的な心臓肉腫をまとめます。

表1:代表的な原発性心臓肉腫の種類と特徴
肉腫の種類 (組織型) 推定頻度 好発部位 主な臨床的・病理学的特徴
血管肉腫 (Angiosarcoma) 約25%2 右心房 比較的若年の男性に多く(平均年齢40歳)、診断時に88%という高率で転移(特に肺)が見られる、予後不良なタイプです。パクリタキセルという抗がん剤が有効な場合があります318
内膜肉腫 (Intimal Sarcoma) 約40-50%3 大血管、心腔 心臓や大血管の内側を覆う内膜から発生します。多くの場合でMDM2という遺伝子の増幅が見られ、これを標的とした新しい治療薬(MDM2阻害薬)の研究が進められています3
未分化多形肉腫 (Undifferentiated Pleomorphic Sarcoma) 約20%3 左心房 急速に増大する悪性度の高い肉腫で、他の特定の肉腫に分類されないものを指します2
悪性リンパ腫 (Malignant Lymphoma) 頻度は様々 右心房 厳密には血液のがんですが、心臓に原発することがあります。日本の報告では比較的多く見られます9。外科手術ではなく、化学療法が非常によく効く可能性がある特殊なタイプです9

その他、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫なども報告されています12


第3章:どのような症状が現れるか?

心臓がんの症状は、他の多くの一般的な心臓病と非常によく似ており、特定の症状がないため診断が遅れがちです。症状は、腫瘍が心臓のどの部分に影響を及ぼしているかによって大きく異なります14

3.1. 全身に共通する症状

多くの患者様が経験する初期症状には以下のようなものがあります212

  • 息切れ (労作時呼吸困難): 軽い運動でも息が切れる。
  • 動悸: 心臓の鼓動を異常に感じる。
  • 胸の痛み
  • 疲れやすさ (倦怠感)
  • 原因不明の発熱、関節痛、体重減少

3.2. 腫瘍の「場所」で変わる特有の症状

心臓の機能と血流の観点から、腫瘍の位置による症状の違いを理解することが重要です。

  • 心臓の右側(右心房など)に腫瘍がある場合: 全身から心臓へ戻る血液の流れが妨げられます。これにより、血液が体中に滞留し、顔、上半身、腹部(腹水)、足などの「むくみ」として現れます。首の静脈が張ることもあります2
  • 心臓の左側(左心房など)に腫瘍がある場合: 肺から心臓へ戻り、全身へ送り出される血液の流れが妨げられます。これにより、肺に水がたまり(肺うっ血)、重度の息切れ、特に横になると息苦しくなる症状(起坐呼吸)が現れます14
  • 心筋の内部に腫瘍がある場合: 心臓の壁が弱ってポンプ機能が低下する心不全や、心臓の電気系統が妨げられて不整脈(動悸、めまい、失神)を引き起こすことがあります9
  • 心臓の外側(心膜)に腫瘍がある場合: 腫瘍が心臓を圧迫し、血液をうまく取り込めなくなる状態(心タンポナーデ)に陥り、胸痛や低血圧を引き起こすことがあります9

3.3. 直ちに医療機関を受診すべき危険な兆候

以下の症状は「危険信号」であり、速やかに専門医の診察を受ける必要があります。

  • 突然始まった、または急激に悪化する息切れ
  • 失神、または気を失いそうになる感覚
  • 原因不明の顔、お腹、足のむくみ
  • 脳梗塞の症状(突然の半身の脱力、しびれ、ろれつが回らないなど)9
  • 特に、若年者で原因不明の心不全が見られた場合は、心臓腫瘍の可能性を疑う重要なサインです14

第4章:診断への道のり

心臓腫瘍の疑いがある場合、診断は通常、非侵襲的な検査から始まり、腫瘍の性質を特定するためのより専門的な検査へと進みます。

  1. 初期評価:心エコー検査
    心エコー検査(心臓超音波検査)は、心臓腫瘍の診断における最初の、そして最も重要なツールです14。ゼリーを塗って胸の上から超音波を当てることで、痛みなく心臓の動きや構造を観察できます。この検査により、腫瘍の有無、大きさ、位置、そして血流への影響などを視覚的に評価することができます21。より詳細な観察が必要な場合は、食道から超音波装置を挿入する経食道心エコーが行われることもあります21
  2. 詳細な画像評価:CTおよびMRI検査
    CT検査MRI検査は、心エコーよりもさらに詳細な情報を提供します。腫瘍と周囲の組織との関係、浸潤の有無を評価し、脂肪や液体など組織の性質を区別するのに役立ちます9。これらの情報は、特に外科手術を計画する上で不可欠です。近年では、心臓ドックのような予防的検診で偶然発見されるケースもあります23
  3. 確定診断:生検(バイオプシー)
    画像検査で腫瘍の存在は確認できますが、それが良性か悪性か、また悪性だとしたらどのタイプの肉腫なのかを最終的に確定することは困難です。生検(組織診断)は、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる検査であり、確定診断のための「ゴールドスタンダード(最も信頼できる基準)」とされています3。治療方針は腫瘍の種類によって大きく異なる(例:肉腫かリンパ腫か)ため、生検の結果は極めて重要です。NCCNなどの国際的なガイドラインも、治療開始前の慎重な生検を強く推奨しています24

その他、不整脈の有無を調べる心電図検査17や、心臓の血管への影響を調べる心臓カテーテル検査21が行われることもあります。


第5章:心臓肉腫に対する集学的治療

心臓肉腫の治療は、その希少性と複雑さから、複数の専門家が緊密に連携する「集学的治療」が不可欠です。

5.1. 最も重要なこと:多専門分野チーム(MDT)の役割

患者様にとって最も重要なメッセージは、希少がんや肉腫の治療経験が豊富な専門施設で、多専門分野チーム(MDT: Multidisciplinary Team)による治療を受けることです4。このチームは通常、心臓外科医、肉腫を専門とする腫瘍内科医、放射線治療医、病理診断医、循環器内科医などで構成されます3。NCCNやESMOといった国際的な権威ある学会のガイドラインは、専門家チームによる管理を一貫して推奨しており、これが生存率の向上につながることが示されています2426

5.2. 治療の根幹:外科手術

切除可能な腫瘍に対する第一選択の治療法は、外科手術による完全な切除です3。目標は、腫瘍を完全に取り除くこと(R0切除)ですが、心臓という生命維持に不可欠な臓器であるため、しばしば困難を伴います。完全切除ができたとしても、再発の危険性は依然として高いのが現状です3。一部の良性腫瘍に対しては、より小さな切開で行う低侵襲心臓手術(MICS)が可能な場合もあります9。また、非常に稀ですが、腫瘍が心臓外に転移しておらず切除不能な場合に、心臓移植が検討されることもあります17

5.3. 全身へのアプローチ:化学療法(抗がん剤治療)

化学療法は、手術後の再発リスクを低減させるための補助療法(術後補助化学療法)や、手術ができない、あるいは既に転移してしまった場合の全身治療として用いられます3。手術前に腫瘍を小さくして切除しやすくするために行う「術前補助化学療法」も選択肢の一つです17

  • 薬剤の選択: 使用する薬剤は肉腫の種類によって異なります。例えば、血管肉腫に対してはパクリタキセルが有効であることが示され、日本でも保険適用となっています3。多くの肉腫で使われるアドリアマイシン(ドキソルビシン)は、心臓への毒性(心毒性)が知られており、慎重な管理が必要です27
  • 悪性リンパ腫の場合: 心臓原発の悪性リンパ腫は、化学療法が著効することがあり、治療の主体となります9

5.4. 局所制御を目指す:放射線治療

放射線治療は、手術で取り残した可能性のあるがん細胞を叩く目的(術後補助療法)や、手術不能な腫瘍の進行を抑える目的で行われます9。常に動き続ける心臓への照射は技術的な挑戦ですが、三次元原体照射など最新の技術を用いて、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えながら腫瘍を標的にします28

5.5. 新たな治療戦略と「腫瘍循環器学」

心臓肉腫の治療成績を向上させるため、新たな治療法の開発が進められています。

  • 分子標的療法: 特定の遺伝子異常を持つ腫瘍に対して、その分子を標的とする薬剤を用いる治療法です。例えば、内膜肉腫に見られるMDM2遺伝子増幅を標的としたMDM2阻害薬の臨床試験が行われています3
  • 光免疫療法: 腫瘍に集まる薬剤と特殊な光を組み合わせてがん細胞を破壊する、新しい概念の治療法で、将来的な選択肢として期待されています29

さらに、がん治療そのものから心臓を守るという新しい学問分野「腫瘍循環器学(Onco-Cardiology)」の重要性が高まっています。これは、腫瘍専門医と循環器専門医が連携し、抗がん剤や放射線治療による心臓への副作用(心毒性)を早期に発見・管理し、安全にがん治療を継続できるようにサポートする取り組みです27。日本循環器学会などもガイドラインを発表し、この分野の推進を後押ししています31


第6章:予後と治療後の生活

心臓腫瘍の予後(病気の見通し)は、良性か悪性かによって天と地ほどの差があります。この事実を、希望を失わせることなく、しかし正確に伝えることが重要です。

6.1. 生存率の現実

  • 良性腫瘍: 手術で完全に切除できた場合の予後は非常に良好です。ある報告では3年生存率が95%とされています16。粘液腫では5-10%の再発リスクがあるため定期的な経過観察が必要ですが34、多くの患者様は通常の生活に戻ることが可能です。
  • 悪性腫瘍(心臓肉腫): 予後は極めて厳しいのが現状です。611例を対象とした日本の大規模研究では、原発性悪性心臓腫瘍の5年生存率はわずか17%であったと報告されています18。この厳しい現実が、専門施設での集学的治療の重要性を物語っています。

6.2. 予後に影響する要因

予後を左右する主な要因は以下の通りです。

  • 腫瘍の種類と悪性度: 血管肉腫のような悪性度の高い肉腫は、予後がより不良です。
  • 診断時の病期: 診断時に転移があるかどうかが、最も重要な予後予測因子です。血管肉腫が診断時に88%もの症例で転移を来していることが、その予後の悪さの一因です18
  • 外科的切除の可否: 腫瘍を外科的に完全切除できるかどうかが、治癒を目指す上での大きな分かれ目となります。

6.3. 治療後のフォローアップ

悪性腫瘍は再発リスクが高いため、治療後も心エコーやCT検査などによる定期的な画像検査が不可欠です12。また、化学療法や放射線治療による長期的な心機能への影響などを管理することも、治療後のケアの重要な一部となります。

よくある質問

心臓に転移するがんはありますか?

はい、あります。そして、心臓から直接発生する「原発性」の悪性腫瘍よりも、他の臓器のがんが心臓に転移してくる「転移性」の腫瘍の方が30倍以上も多いとされています9。特に肺がんや乳がん、悪性黒色腫、白血病などが心臓に転移しやすいことが知られています。心臓への転移が見つかった場合、それはがんが全身に広がっている状態(ステージIV)を意味し、通常は全身的な薬物療法が治療の中心となります。

良性の心臓腫瘍と診断されましたが、手術は必要ですか?

はい、多くの場合で手術が必要です。最も多い良性腫瘍である粘液腫は、「良性」とはいえ無害ではありません。腫瘍が大きくなることで心臓の正常な血流を妨げて心不全を引き起こしたり、腫瘍の一部が剥がれて血流に乗り、脳の血管を詰まらせて重篤な脳梗塞の原因となる危険性があるためです915。そのため、合併症を予防する目的で、診断された時点で外科的に切除することが標準的な治療方針です。

心臓肉腫の治療はどこで受ければよいですか?

心臓肉腫は極めて稀で治療が難しい「希少がん」であるため、治療経験が豊富な専門施設を選ぶことが何よりも重要です。理想的には、国立がん研究センターの希少がんセンター3のような、肉腫を専門とする複数の診療科の医師(心臓外科、腫瘍内科、放射線治療科など)が連携して治療方針を決定する「多専門分野チーム(MDT)」体制が整っている施設での受診を強くお勧めします。かかりつけ医に相談し、そのような専門施設への紹介を依頼することが第一歩です。

結論

心臓がん、特に心臓肉腫は、診断から治療に至るまで極めて高度な専門知識と技術を要する、稀で複雑な疾患です。その症状は他の心臓病と見分けがつきにくく、予後も厳しいのが現実です。しかし、医学の進歩により、その正体は少しずつ解明され、新たな治療法も開発されつつあります。本記事を通じて、心臓腫瘍に関する正確な知識が広まり、不安を抱える患者様やご家族の一助となることを願っています。

最も重要なことは、息切れやむくみといった気になる症状があれば早期に医療機関を受診し、万が一心臓腫瘍と診断された場合には、ためらうことなく経験豊富な専門家チームのいる施設で最善の治療法を模索することです。JapaneseHealth.orgは、科学的根拠に基づいた信頼できる情報を提供することで、皆様が最良の医療への道を歩むためのお手伝いを続けてまいります。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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  36. ニューハート・ワタナベ国際病院 | 安心・信頼できる患者のためのドクター探し おすすめドクター. [インターネット]. [2025年7月21日引用]. 入手可能: https://www.osusume-dr.com/doctors/201/interview/
  37. 名医に聞いた「実績と経験があり、地域住民に信頼される15人の医師リスト」年間200例の手術を行なう医師が「日本一の職人」と称賛する名医の氏名【心疾患編】 (1/1) – 介護ポストセブン. [インターネット]. [2025年7月21日引用]. 入手可能: https://kaigo-postseven.com/178781
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