思春期ニキビの治し方【皮膚科医監修】原因から治療、スキンケアまで徹底解説|日本の最新ガイドライン準拠
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思春期ニキビの治し方【皮膚科医監修】原因から治療、スキンケアまで徹底解説|日本の最新ガイドライン準拠

 

思春期に現れるニキビ。「青春のシンボル」などと言われることもありますが、それは大きな誤解です。思春期ニキビは、医学的には「尋常性痤瘡(じんじょうせいざそう)」という皮膚の「病気」であり、放置すればニキビ跡として知られる永続的な瘢痕(はんこん)を残す可能性があります4, 5。実際に、ある調査では日本の中学生・高校生の8割以上が何らかの肌悩みを抱えており、その多くがニキビによって自信を失ったり、他人の視線を過度に気にしたりするなど、QOL(生活の質)の低下という深刻な心理的影響を受けていることが報告されています6。大切なのは、ニキビを単なる美容の問題と捉えず、早期に皮膚科を受診し、科学的根拠に基づいた正しい治療を開始することです。この記事は、日本皮膚科学会が策定した最新の「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」7を基盤とし、日本の皮膚科医の監修のもと、現在利用可能な最も信頼性の高い情報を包括的に提供することをお約束します。

この記事の要点まとめ

  • 思春期ニキビは「尋常性痤瘡」という治療が必要な「病気」であり、放置するとニキビ跡(瘢痕)のリスクがあります5
  • 原因は、ホルモンバランスの変化による皮脂の過剰分泌、毛穴の詰まり、アクネ菌の増殖、そして炎症の4つの主要因です7, 8
  • 治療は皮膚科での保険診療が基本です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、ニキビの重症度に応じた塗り薬や飲み薬による治療が強く推奨されています7
  • 治療のゴールは、ニキビを治すだけでなく、「維持療法」によって再発を防ぎ、ニキビのない綺麗な肌を保つことです9
  • 毎日のスキンケア(洗顔・保湿・紫外線対策)と生活習慣の改善も、治療効果を高め、ニキビを予防する上で極めて重要です7, 10

第1部:なぜできる?皮膚科医が教える思春期ニキビの科学

思春期になると多くの人が経験するニキビ。その根本的な原因を理解することは、正しい治療への第一歩です。ここでは、あなたの肌で何が起きているのかを科学的に解説します。

1-1. ホルモンの嵐:皮脂が過剰になるメカニズム

第二次性徴期(一般的に10代前半から始まる体の変化の時期)に入ると、男女を問わず「アンドロゲン」という男性ホルモンの分泌が活発になります10。このアンドロゲンが、皮膚にある皮脂腺を強力に刺激します。皮脂腺は皮脂を分泌する器官であり、刺激されることでサイズが大きくなり、皮脂の生産量を急激に増大させます。これが、思春期の肌がテカりやすく、ニキビができやすい根本的な理由です。このプロセスは生理的な現象であり、誰にでも起こりうることなのです。

1-2. ニキビ発生の4大要因:毛穴の中で何が起きているのか

過剰に分泌された皮脂は、ニキビ発生の引き金にはなりますが、それだけではニキビは完成しません。毛穴の中では、以下の4つのステップが連鎖的に起こることで、一つのニキビが形成されます。このプロセスは、日本皮膚科学会のガイドラインでも明確に示されている医学的コンセンサスです7, 8

  1. 角化異常(毛穴の詰まり):通常、皮膚の細胞は一定のサイクルで新しく生まれ変わり、古い角質は自然に剥がれ落ちます。しかし、ホルモンの影響などによりこのサイクルが乱れると、毛穴の出口付近の角質が厚く、硬くなってしまいます(角化異常)。これにより毛穴の出口が狭くなり、まるで蓋をされたような状態になります。
  2. 皮脂分泌の増加:蓋をされた毛穴の中に、皮脂腺から分泌された皮脂がどんどん溜まっていきます。これが、ニキビの初期段階である「面皰(めんぽう)」、いわゆる「コメド」です。
  3. アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖:アクネ菌は、酸素が少なく皮脂が豊富な環境を好む、皮膚の常在菌です。毛穴が詰まり皮脂が充満した環境は、アクネ菌にとって絶好の繁殖場所となります。ここでアクネ菌が異常に増殖します。
  4. 炎症:増殖したアクネ菌は、免疫システムを刺激する様々な物質を産生します。これに反応して、体を守るための免疫細胞が集まり、炎症反応が起こります。その結果、ニキビは赤く腫れあがり、時には膿を持つようになります。これが「炎症性皮疹」、いわゆる「赤ニキビ」や「黄ニキビ」と呼ばれる状態です。

1-3. 全てのニキビの始まり:「微小面皰(マイクロコメド)」とは

白ニキビや黒ニキビとして目に見えるようになるずっと前から、実は毛穴の中では「微小面皰(マイクロコメド)」と呼ばれる、目には見えない“ニキビの芽”が形成されています11。これは、毛穴の詰まりが始まったごく初期の段階です。ニキビ治療の最も重要な概念の一つである「維持療法」(後述)は、この目に見えない微小面皰をできにくくすることで、ニキビの再発そのものを防ぐことを目的としています。したがって、「ニキビがないように見える肌」でも、皮膚科の治療を継続することがなぜ重要なのかを理解する上で、このマイクロコメドの存在は非常に重要な鍵となります。

第2部:皮膚科の標準治療:日本の最新ガイドラインに基づく治し方

思春期ニキビは、自己流のケアで悪化させてしまう前に、皮膚科専門医による診断と治療を受けることが最も確実な解決策です。ここでは、日本の皮膚科で行われている保険診療の標準的な治療法を、最新のガイドライン7に沿って詳しく解説します。

2-1. あなたのニキビはどのレベル?重症度セルフチェック

皮膚科では、ニキビの治療方針を決定するために、まず重症度を評価します。日本皮膚科学会のガイドラインでは、顔にある「炎症性皮疹」(赤ニキビや膿を持ったニキビ)の数によって、以下のように分類されています7。自分の状態を客観的に把握するための参考にしてください。

  • 軽症:炎症性皮疹が片顔に5個以下
  • 中等症:炎症性皮疹が片顔に6個~20個
  • 重症:炎症性皮疹が片顔に21個~50個
  • 最重症:炎症性皮疹が片顔に51個以上、または大きな結節や嚢腫(のうしゅ)が見られる

この分類はあくまで目安です。正確な診断と治療計画については、必ず皮膚科医に相談してください。

2-2. 【重症度別】保険診療の治療ステップ

ガイドラインでは、上記の重症度に応じて推奨される治療のアルゴリズム(手順)が示されています。基本的には、塗り薬(外用薬)から開始し、重症度に応じて飲み薬(内服薬)を組み合わせるのが一般的です。

  • 軽症:まず、アダパレンや過酸化ベンゾイル(BPO)といった、毛穴の詰まりを改善する塗り薬から治療を開始します。
  • 中等症~重症:上記の塗り薬に加えて、赤ニキビの炎症を抑えるために、抗菌薬の飲み薬を併用することが多くなります。

これらの治療はすべて、日本国内で健康保険が適用されます12

2-3. 主要な塗り薬(外用薬)の徹底解説:効果と副作用、正しい使い方

現在、日本の皮膚科で処方されるニキビの塗り薬には、非常に効果の高い選択肢が揃っています。それぞれの薬の特徴を正しく理解し、医師の指示通りに使うことが重要です。

  • アダパレン(商品名:ディフェリン®):毛穴の詰まり(角化異常)に直接作用し、ニキビの始まりである微小面皰をできにくくする薬です。ニキビ治療の基本薬の一つとされています。使い始めの数週間は、肌の乾燥、赤み、ヒリヒリ感といった刺激症状が出ることがありますが、多くは保湿ケアを徹底し、使用を継続することで徐々に軽減していきます13
  • 過酸化ベンゾイル(BPO)(商品名:ベピオ®):アクネ菌に対する強い殺菌作用と、角質を剥がす作用(ピーリング作用)を併せ持つ薬です。抗菌薬とは異なり、長期間使用しても薬剤耐性菌(薬が効きにくくなる菌)の心配がないのが大きな利点です。ただし、衣類や髪に付着すると脱色(漂白)作用があるため、塗布後はよく乾かすなどの注意が必要です14, 15
  • 外用抗菌薬(商品名:ダラシン®、アクアチム®など):アクネ菌を殺菌し、炎症を抑えることで、赤ニキビを改善します。しかし、この薬を単独で長期間使用し続けると、薬剤耐性菌を誘発するリスクが高まります16。そのため、アダパレンやBPOと併用し、漫然と長期使用することは避けるべきとされています。
  • 配合剤(商品名:デュアック®、エピデュオ®など):上記の成分を複数組み合わせた薬です。例えば、デュアック®はBPOと抗菌薬、エピデュオ®はアダパレンとBPOが配合されており、1本で複数の作用が期待できるため、利便性が高く広く使われています12, 14

2-4. 飲み薬(内服抗菌薬)の正しい知識:なぜ長期使用はダメなのか

中等症以上の炎症が強いニキビに対しては、ドキシサイクリンやミノサイクリンといったテトラサイクリン系の抗菌薬の飲み薬が処方されることがあります。これらの薬は炎症を強力に抑える効果がありますが、最大の注意点は「薬剤耐性菌」の問題です17。不必要に長期間飲み続けると、ニキビの原因菌だけでなく、体内の他の細菌まで薬が効かない耐性菌に変化させてしまうリスクがあります。そのため、日本皮膚科学会のガイドラインでは、内服抗菌薬の使用は「炎症が強い時期に限定し、原則として3ヶ月以内」と強く推奨されています7。漫然と飲み続けることは絶対に避けるべきです。

2-5. 治療のゴールは「再発させない」こと:維持療法の重要性

多くの人が「赤ニキビが消えたら治療は終わり」と考えがちですが、それは現代のニキビ治療の考え方とは異なります。炎症が治まった肌でも、毛穴の中には目に見えないニキビの芽「微小面皰」が潜んでいます。ここで治療をやめてしまうと、再びニキビが再発してしまいます。そこで重要になるのが「維持療法」です9。これは、症状が改善した後も、アダパレンやBPOといった毛穴の詰まりに作用する塗り薬を継続的に使用することで、微小面皰の形成そのものを抑制し、ニキビが再発しない状態を維持することを目的とした治療法です。この維持療法こそが、現代のニキビ治療における真のゴールと言えます。

第3部:毎日のセルフケア:科学的根拠に基づくスキンケア

皮膚科での治療効果を最大限に引き出し、ニキビを予防するためには、日々のスキンケアが非常に重要です。ここでは、科学的根拠に基づいた正しいスキンケア方法を紹介します。

3-1. 洗顔:1日2回、優しく、が絶対ルール

ニキビ肌のケアにおいて、洗顔は基本中の基本です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、1日2回の洗顔が推奨されています7。皮脂や汚れが気になるからといって、1日に何度も洗ったり、洗浄力の強いスクラブ入りの洗顔料でゴシゴシこすったりするのは絶対にやめましょう18。過剰な洗顔は肌のバリア機能を壊し、かえってニキビを悪化させる原因となります。正しい洗顔のポイントは以下の通りです。

  1. 洗顔料をしっかりと泡立て、たっぷりの泡で肌をなでるように優しく洗います。
  2. すすぎは、人肌程度のぬるま湯で、泡が残らないように丁寧に洗い流します。
  3. タオルで水分を拭き取る際は、こすらずに、優しく押さえるようにします。

3-2. 保湿:「ノンコメドジェニックテスト済み」を正しく選ぶ

「ニキビ肌はベタつくから保湿は不要」というのは大きな間違いです。肌が乾燥すると、かえって皮脂が過剰に分泌されたり、バリア機能が低下して刺激を受けやすくなったりします19。洗顔後は必ず保湿をしましょう。製品を選ぶ際のポイントは、油分が少ないオイルフリーの製品や、「ノンコメドジェニックテスト済み」と表示されているものを選ぶことです20。ノンコメドジェニックテストとは、その製品を繰り返し使うことでニキビの初期段階であるコメド(面皰)ができにくいことを確認するテストです。ただし、これは「全ての人に絶対にニキビができない」ことを保証するものではないという限界も理解しておきましょう21

3-3. 紫外線対策:ニキビとニキビ跡を防ぐ最強の盾

紫外線は、ニキビの炎症を悪化させるだけでなく、ニキビが治った後の色素沈着(シミのような跡)の大きな原因となります10。また、ニキビ治療薬の中には、紫外線への感受性を高めるものもあります。そのため、季節や天候に関わらず、年間を通して日焼け止めを使用することが、ニキビとニキビ跡の両方を防ぐための最強の防御策となります。保湿と同様に、オイルフリーで「ノンコメドジェニックテスト済み」の製品を選ぶと良いでしょう。

3-4. 思春期の肌に「やってはいけない」NGスキンケア

SNSや雑誌では様々なスキンケア情報が溢れていますが、中には思春期のデリケートな肌には刺激が強すぎるものも少なくありません。以下のようなケアは、自己判断で行うのは避けるべきです22

  • 物理的な刺激が強いケア:スクラブ洗顔、ピーリングジェル、毛穴パックなどは、肌表面を傷つけ、バリア機能を損なう可能性があります。
  • 大人向けの高機能美容液:エイジングケアなどを目的とした大人向けの製品は、油分が多かったり、思春期の肌には不要な成分が含まれていたりすることがあり、ニキビを悪化させる原因になり得ます。

スキンケアで迷ったら、まずは皮膚科医に相談することが最も安全で確実です。

第4部:生活習慣の改善:ニキビと食事、運動、睡眠

ニキビは肌表面だけの問題ではなく、日々の生活習慣も深く関わっています。ここでは、食事や運動、睡眠など、日常生活で気をつけたいポイントを解説します。

4-1. 食事とニキビの本当の関係

「チョコレートやナッツを食べるとニキビができる」といった話をよく聞きますが、特定の食品が直接ニキビの原因になるという明確な科学的根拠は、現在のところ限定的です。日本皮膚科学会のガイドラインでも、「特定の食品を全員が一律に制限することは推奨しない」とされています23。ただし、一部の研究では、血糖値を急激に上昇させる高GI食(白米、パン、お菓子など)や、一部の乳製品が、一部の人のニキビを悪化させる可能性が示唆されています8。まずは栄養バランスの取れた食事を基本とし、もし特定の食品を食べた後にニキビが悪化すると感じる場合は、それを控えてみるなど、ご自身の体感を観察することが大切です。

4-2. 部活動と汗:アスリートのための特別ケア

日本の中高生にとって、部活動は生活の大きな部分を占めます。運動による汗は、それ自体がニキビの直接的な原因になるわけではありませんが、汗をかいたまま放置すると、雑菌が繁殖しやすくなったり、肌への刺激になったりします。運動後は、できるだけ速やかにシャワーを浴びて汗を洗い流すことが重要です24。すぐにシャワーを浴びられない場合は、清潔なタオルや汗拭きシートで優しく汗を拭き取りましょう。ただし、その後の保湿は忘れずに行い、肌の乾燥を防ぐことが大切です。

4-3. メイクと校則のジレンマを乗り越える

「ニキビを隠したいけれど、校則でメイクが禁止されている」という悩みは、多くの女子生徒が抱える切実な問題です。ニキビ肌にとっては、基本的にはノーメイクが最も望ましい選択です。しかし、ニキビが気になって学校生活に集中できないなど、QOLが著しく低下している場合は、現実的な対策を考えることも必要です。例えば、肌への負担が少ない「ノンコメドジェニックテスト済み」の色がつかないフェイスパウダーを薄くつける、ポイントメイク(目元や口元)でニキビから視線をそらす、といった工夫が考えられます25。どのような方法を取るにせよ、家に帰ったらすぐにクレンジングで丁寧にメイクを落とすことが絶対条件です5

4-4. 絶対に避けるべきNG習慣

日々の何気ない習慣が、ニキビを悪化させていることがあります。以下の行動は今日からすぐにやめましょう。

  • ニキビを触る・潰す:手についた雑菌がニキビに付着し、炎症を悪化させます。無理に潰すと、皮膚の深い部分を傷つけ、一生残るニキビ跡(クレーター)の原因になります26
  • 髪の毛の刺激:おでこやフェイスラインに髪の毛が常に触れていると、その刺激でニキビが悪化することがあります。家ではヘアバンドで髪を上げるなど工夫しましょう5
  • 不潔な寝具:枕カバーやシーツは、寝ている間の汗や皮脂を吸収しています。こまめに洗濯し、常に清潔な状態を保ちましょう27

第5部:心の問題と家族のサポート

思春期ニキビは、単なる皮膚の問題に留まりません。見た目へのコンプレックスから、心にも大きな影響を及ぼすことがあります。

5-1. ニキビが心に与える影響:これは見た目だけの問題ではない

ニキビがあることで、自己肯定感が著しく低下したり、他人の視線が怖くなって対人関係に消極的になったりすることは、決して珍しいことではありません。ある調査では、親が考えている以上に、子供自身はニキビを深刻な悩みとして捉えているという、親子間の認識ギャップも指摘されています28。ニキビは、学業や友人関係といった、思春期の健全な発達にまで影響を及ぼしかねない、心の問題でもあるのです。

5-2. 保護者の方へ:お子さんを支えるための3つの約束

お子さんがニキビで悩んでいる時、保護者のサポートは何よりも心強い支えになります。前述の親子間の認識ギャップ28を踏まえ、以下の3つの行動を約束してください。

  1. 悩みを否定せず、真剣に聴く:「そのうち治る」「誰も気にしていない」といった言葉で片付けず、まずはお子さんの辛い気持ちをそのまま受け止め、共感を示してください。
  2. 正しい知識を共有する:この記事のような信頼できる情報源を一緒に読み、ニキビが治療可能な「病気」であることを共有してください。
  3. 一緒に皮膚科を受診する:お子さん一人で皮膚科に行かせるのではなく、保護者の方が一緒に受診し、医師の説明を聞き、治療をサポートする姿勢を見せることが、お子さんの安心につながります。

第6部:特別なケースとQ&A

ここでは、特定の状況やよくある質問についてお答えします。

6-1. アトピー性皮膚炎とニキビが合併した場合のケア

アトピー性皮膚炎を持つ人は、元々皮膚のバリア機能が低下しており、非常にデリケートな状態です。そこに思春期ニキビが合併した場合、スキンケアはさらに慎重に行う必要があります29。基本的には、アトピー性皮膚炎の治療である「保湿」を最優先します。使用する製品は、ノンコメドジェニックであることはもちろん、アルコールや香料などを含まない、可能な限り低刺激なものを選びましょう。ニキビ治療薬の使用は、肌への刺激となる可能性があるため、自己判断で開始せず、必ず皮膚科医の厳密な管理のもとで行うことが極めて重要です。

6-2. よくある質問(FAQ)

Q. ニキビは自分で潰していいですか?
A. 絶対にダメです。指や爪で無理に潰すと、毛穴の壁が壊れて炎症が周囲に広がり、さらに悪化します。また、皮膚の深い真皮層まで傷つけてしまい、クレーター状のニキビ跡(瘢痕)が残る最大の原因となります18。皮膚科で行われる「面皰圧出」は、清潔な環境で専用の器具を用いて行われる医療行為であり、自己処理とは全く異なります。
Q. 漢方薬は効きますか?
A. 日本皮膚科学会のガイドラインでは、一部の漢方薬(例:荊芥連翹湯、清上防風湯など)はニキビ治療の選択肢の一つとして挙げられていますが、推奨度は「C1(行ってもよい)」と、塗り薬や飲み薬の抗菌薬に比べると低い位置づけです7。漢方薬は体質改善を目的としており、即効性を期待するものではありません。補助的な治療として、医師と相談の上で検討するのが良いでしょう。
Q. ニキビ跡のクレーターは治りますか?
A. 残念ながら、一度できてしまったクレーター状のニキビ跡を、セルフケアや保険診療の塗り薬で元通りに完治させることは極めて困難です30。美容皮膚科でのレーザー治療やダーマペンなどの自由診療で改善を目指すことになりますが、時間も費用もかかります。だからこそ、ニキビ跡を作らないために、炎症が軽いうちから早期に皮膚科で治療を開始し、ニキビを正しくコントロールすることが最も重要です。

結論:ニキビは治せる病気。専門家と共に、諦めずに治療を続けよう

思春期ニキビは、正しい知識を持ち、適切な時期に専門家の助けを借りれば、必ず改善が期待できる「病気」です。この記事で解説したように、現在の皮膚科には、科学的根拠に基づいた非常に有効な治療選択肢が数多く存在します。治療には根気が必要な場合もありますが、最も大切なのは、一人で悩まず、自己流のケアで悪化させる前に、皮膚科医という専門家を頼ることです。そして、治療のゴールである「ニキビのない綺麗な肌を維持する」ことを目指し、諦めずに治療を続けていきましょう。この記事が、あなたのニキビ治療の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスに代わるものではありません。健康上の問題や症状がある場合は、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

この記事の監修者
馬場 直子(ばば なおこ)医師
神奈川県立こども医療センター 皮膚科 部長 / 横浜市立大学 皮膚科 臨床教授1, 2
大矢 幸弘(おおや ゆきひろ)医師
国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長3

参考文献

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  30. リゼクリニック. 【写真でわかる】ニキビ跡の種類4つと治療法を医師が解説. [インターネット]. [引用日: 2025年6月16日]. 以下より入手可能: https://www.rizeclinic.com/skin/knowledge/acnescar_treatmentmethod/
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