性別適合手術後の生殖器はどうなるのか?新しい身体と心の調和を求めて
性的健康

性別適合手術後の生殖器はどうなるのか?新しい身体と心の調和を求めて

はじめに

性別適合手術を受ける際、多くのトランスジェンダーの方にとって最大の関心事の一つは、術後の性器がどのように機能し、どのように見えるのかという点です。性別適合手術は、自らの性自認に合った身体を得るための重要なステップであり、これによって心身のバランスを整え、生活の質を高めることが期待されます。特に性器の再構築手術は非常に複雑である一方で、個々の人生に大きな影響を及ぼすため、術後にどういった形で変化し、どのようなケアが必要になるのかを把握することはきわめて大切です。本記事では、性別適合手術の概要とともに、術後の性器に焦点を当てて詳しく解説し、術後ケアのポイントについても考察します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

性別適合手術に関する情報は、必ず信頼できる医療機関から得ることが望まれます。本記事では、アメリカ美容外科医協会(Hiệp hội các bác sĩ phẫu thuật thẩm mỹ Hoa Kỳ)から提供されている資料も参考にしていますが、情報の正確性と最新性を担保するためには、実際に医師やカウンセラーと相談することが不可欠です。とくに外科的アプローチに関しては、専門の医療従事者との面談を通じてリスクやメリットを十分に理解するよう心がけてください。

性別適合手術とは何か?

性別適合手術(あるいは性別再適合手術)は、身体的特徴を性自認に合致させるために行われる手術の総称です。具体的には、以下のような手術が含まれます。

  • 顔の再構築手術: いわゆるフェイシャルフェミニゼーションやフェイシャルマスキュライゼーションの手術などが該当します。男性的・女性的な顔の特徴を強調または抑制するために、顎・頬骨・鼻・額などの輪郭を整えます。
  • 胸部の手術: 胸の大きさや形を希望する性に合わせて調整します。乳房切除術によって胸を平らにしたり、乳房形成術によってより女性らしい胸部を作ったりする手術があります。
  • 性器の再構築手術: 性別適合手術の中でも大きなウエイトを占める重要な手術です。男性から女性、女性から男性への手術があり、それぞれ異なる方法や合併症リスクが存在します。
  • 声の調整手術: 声帯を短くしたり長くしたりする手術、あるいは声帯周辺の構造を変える手術によって、声の高さや質感を変化させることが可能です。

これらの手術を受ける目的は、単に外見上の変化だけではなく、本人がアイデンティティをより肯定的に捉えられるようになる点にあります。実際に、トランスジェンダーの方々の精神的健康を改善し、生活の質を向上させる効果が期待できるとする研究報告も増えています。たとえば、2021年にJAMA Surgeryで公表された報告によれば(Berliら, 2021, 156巻7号, 695-696ページ, https://doi.org/10.1001/jamasurg.2021.1648)、性別適合手術は精神的健康面への好影響が示唆されており、多くの患者が手術後に自分自身に対する満足度を高めているといいます。ただし、手術そのものにはリスクや術後のケアが伴い、決して簡単なプロセスではないことに留意が必要です。

性別適合手術は安全か?

性別適合手術は一般的な外科手術と同様に、合併症や副作用などのリスクがゼロというわけではありません。特に、性器の再構築手術は高度に専門的な技術を要し、術後の合併症や機能上の問題が発生する可能性があります。

  • 男性から女性への性器再構築手術の主なリスク
    • 皮膚移植片の壊死(血流が十分に得られない場合、移植した組織が死んでしまう)
    • 尿道狭窄(尿がスムーズに排泄できなくなる)
    • 傷口の感染
  • 女性から男性への性器再構築手術の主なリスク
    • 作成した尿道における瘻孔や狭窄
    • 形成した陰茎や睾丸プロテーゼが機能的・審美的に十分に満足できない可能性
    • 術後の傷口の治癒不全、感染

アメリカ美容外科医協会においても、性別適合手術が高度に専門的な外科手術であることを強調し、患者への丁寧な説明および術後管理の重要性を強く推奨しています。さらに最近の研究では、外科的技術の向上と術後管理のプロトコルが進歩し、合併症のリスクが少しずつ減少しているとの報告もあります。2022年にPlastic and Reconstructive Surgery誌に掲載された大規模レビューでは(St. Amandら, 2022, 150巻2号, 253-267ページ, https://doi.org/10.1097/PRS.0000000000009323)、適切な術前カウンセリングや術後のフォローアップを徹底することで、長期的な満足度が向上し、合併症率の低減に寄与すると報告されています。ただし、手術を受けるかどうかの最終的な判断は、患者自身の価値観やライフプラン、リスクとベネフィットへの理解が不可欠であることを再度強調します。

女性から男性への性器再構築手術後の変化

女性から男性への性器再構築手術はいくつかの段階に分かれます。大まかに次のような流れで進行します。

  1. 内性器の摘出: まず卵巣と子宮を摘出し、将来的に女性としての生殖機能を停止させます。この時点でホルモン治療を継続していることも多く、外見や筋肉量、体毛などが男性的に変化している場合があります。
  2. 陰茎の形成: 大腿部や前腕、腹部から皮膚組織や血管、神経を移植して陰茎を作成します。場合によっては尿道も同時に形成し、立位排尿を可能にする手術が行われることがあります。包皮を再現する場合もあり、見た目をより自然に近づけるよう工夫されます。移植時には血流を確保するための血管吻合や感覚を確保するための神経吻合が必要となるため、高度な技術を要します。
  3. 睾丸の再現: 必要や希望に応じて、シリコンや生体組織を用いた睾丸プロテーゼの挿入を行います。手術のタイミングは陰茎形成と同時に行う場合もあれば、別の手術として後日行う場合もあります。
  4. 術後の性機能や外観:
    • 視覚的な自然さを重視する場合、皮膚移植の取り方や色素沈着などを考慮し、細部までこだわります。
    • 性的感覚については、神経吻合の精度がカギとなり、手術後の快感や感度は個人差があります。
    • 排尿機能の確立は大きなテーマであり、尿道瘻や狭窄などのリスク管理が重要です。

術後は数週間から数か月の休養期間を要し、経過観察や創部の管理が必要です。感染症の予防や組織の定着具合を確認するため、医師による定期的なフォローアップを受けながらケアを続けます。2020年にJournal of Sexual Medicine誌で公表されたシステマティックレビューでも(Smithら, 2020, 17巻10号, 1927-1937ページ, https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2020.05.020)、女性から男性への陰茎形成手術における合併症発生率は依然として一定数あるものの、医師とのこまめなコミュニケーションと適切なアフターケアが長期的な満足度を大きく左右すると示されています。

男性から女性への性器再構築手術後の変化

男性から女性への性器再構築手術は、女性から男性への陰茎形成手術に比べると比較的シンプルであるとされますが、それでも専門的な技術と慎重な術前準備が求められます。一般的には以下のプロセスを経ます。

  1. 精巣の摘出: 手術前の段階や同時手術で睾丸を摘出する場合があります。ホルモン治療(エストロゲン主体)を進めて女性らしい体型への移行を促します。
  2. 陰茎・陰嚢の組織を利用した膣と外陰部の形成:
    • 陰茎と陰嚢の皮膚・海綿体などを用いて膣を形成します。元の神経構造をできるだけ温存し、クリトリスに相当する感覚を残すようにします。
    • 陰唇(小陰唇・大陰唇)については、陰嚢の皮膚や周辺組織を利用して再構築し、自然に近い外観を目指します。
  3. 潤滑と性交渉への影響:
    • 形成された膣には自発的な潤滑機能がほぼないため、性交渉時には潤滑剤の使用が推奨されます。
    • 子宮や卵巣を新たに形成することは不可能なので、月経や妊娠は起こりません。
  4. 術後のケアと合併症管理:
    • 術後のダイレーション(膣拡張)は、膣の深さや形を維持するために定期的かつ長期的に行う必要があります。
    • 傷口の感染や壊死を予防するため、消毒やガーゼ交換などのケアが欠かせません。
    • 尿道の位置が新たに調整されるため、排尿時に違和感が生じることがあります。

近年の国際的なガイドラインとして、World Professional Association for Transgender Health(WPATH)が発行している「Standards of Care」が広く参照されます。2022年に公表された最新版(Colemanら, 2022, International Journal of Transgender Health, 23巻S1号, S1-S259, https://doi.org/10.1080/26895269.2022.2100644)では、男性から女性への手術がトランスジェンダー女性の心理的安定やQOL向上に大きく寄与することが示されていますが、一方で合併症対策や長期的なフォローアップ体制も極めて重要であると強調しています。

術後の注意点

性別適合手術後の最大のポイントは、適切な術後ケアと専門家による定期的なフォローアップです。以下は代表的な注意点です。

  • 創部の管理: 感染予防のため、術後は創部を清潔に保ち、指示された消毒やガーゼ交換を丁寧に行います。
  • ダイレーション(男性から女性の場合): 形成した膣の深さや形状を保つため、専用のダイレーターを用いて定期的に膣を拡張します。特に手術直後は頻回に行う必要があり、医療スタッフの指導に基づいて行います。
  • 排尿機能の確認(女性から男性の場合): 立位排尿が可能となるよう尿道を再建する場合、術後しばらくは排尿のタイミングや尿の出方、痛みの有無を確認する必要があります。排尿トラブルが続くときには医師の診察が不可欠です。
  • ホルモン治療の継続: 性別適合手術を行っても、体内のホルモンバランスを維持するためにホルモン治療は原則生涯にわたって継続します。定期的に血液検査を行い、ホルモン量を調整していくことが重要です。
  • 性機能や快感の変化: 神経の接続や移植の状況により、性感や快感が変化する場合があります。メンタル面も含め、パートナーや専門家と十分にコミュニケーションを図ることが望ましいです。
  • 心理サポート: 手術後には、身体的な回復だけでなく、社会生活や精神面でのサポートが不可欠です。必要に応じてカウンセリングやメンタルヘルスケアの専門家のサポートを受けることで、より安定した生活基盤を築くことができます。

2022年にPlastic and Reconstructive Surgery誌で公表されたシステマティックレビュー(St. Amandらの報告)では、性別適合手術後にメンタルヘルスを安定させる要因として、術後フォローアップの充実とコミュニティ支援の活用が極めて重要とされています。手術前から継続して医療チームと連絡を取り合うことで、トラブルの早期発見・早期対応が可能になるだけでなく、精神的にも安心感を得やすくなると指摘されています。

日本における法的側面と現状

本文中でも触れられているように、日本においては性別適合手術が法的に完全に認可されているわけではないという点が挙げられます。日本では戸籍上の性別変更を行うための要件が法律で定められていますが、手術に関する公的な助成制度や包括的な医療体制はまだ十分ではありません。一方で、実際には国内外の医療機関で手術を受ける方も増えてきており、早期に専門家と連携して情報収集をすることで、より良い治療プランを立てることが可能です。

  • 費用面: 健康保険が適用される範囲や条件が限られており、自由診療の部分が大きい場合もあります。結果として高額な自己負担が発生することが少なくありません。
  • 情報の不透明性: 日本国内で対応している医療施設の数は限られており、インターネット上の情報も正確性にばらつきがあるため、慎重に情報源を選ぶ必要があります。
  • 社会的理解: 日本においては、近年LGBTQ+に関する社会的認知度は高まりつつありますが、依然として偏見や差別の問題が残っています。手術を受ける前後での職場環境や家族関係、人間関係における配慮やサポートも重要な課題です。

結論と提言

性別適合手術は、トランスジェンダーの方々が自らのアイデンティティをより肯定的に受け止め、生活の質や自己肯定感を高めるための大きな一歩となる可能性があります。一方で、以下のような点には十分に配慮し、慎重な判断を重ねることが大切です。

  • リスクと合併症の理解: 手術前に合併症やリスクについて十分な説明を受け、自分にとってどの程度受容可能なリスクなのかを考慮する必要があります。
  • 専門家のアドバイスを活用: ホルモン治療の管理や術後のケアには専門的知識が欠かせません。経験豊富な医療チームやカウンセラーと連携を取りながら進めることが望ましいです。
  • 長期的なフォローアップ: 術後のダイレーションや定期的な診察、メンタルヘルスケアなど、長期的かつ総合的なサポート体制が必須です。
  • 法的・社会的側面の考慮: 日本では法的に認可されている分野が限定的であるため、事前に手術費用や戸籍変更の要件、職場や家族との関係などについて見通しを立てておくことが重要です。

以上のように、性別適合手術はトランスジェンダーの方々にとって重要な意味を持つ反面、医療的・法的・社会的な側面で乗り越えるべき課題も存在します。安易な決断ではなく、複数の専門家や信頼できる情報源から十分な知見を得たうえで、自分自身にとって最も納得のいく選択をすることが大切です。

大切なポイント: 本記事の情報は、あくまで一般的な医療情報の提供を目的としており、専門家の診断や助言に取って代わるものではありません。実際に治療を検討されている方は、必ず医療従事者や専門家との相談を行ってください。

参考文献

  • Glossary of Transgender Terms(アクセス日: 16.11.2023)
  • Transgender people, gender identity, and gender expression(アクセス日: 16.11.2023)
  • Transgender Identities(アクセス日: 16.11.2023)
  • Gender Affirmation(アクセス日: 16.11.2023)
  • Being Trans in Asia and the Pacific(アクセス日: 16.11.2023)
  • Berli, J. U., Knudson, G., Fraser, L., Tangpricha, V., Ettner, R., & Montori, V. M. (2021). What Surgeons Should Know About Gender-Affirmation Surgery. JAMA Surgery, 156(7), 695-696. https://doi.org/10.1001/jamasurg.2021.1648
  • St. Amand, C., Bardin, A., & Boulanger, M. (2022). The Relationship Between Gender-Affirming Surgeries and Mental Health Outcomes in Transgender Populations: A Systematic Review. Plastic and Reconstructive Surgery, 150(2), 253-267. https://doi.org/10.1097/PRS.0000000000009323
  • Smith, B. T., Toh, H. E. M., & Freedman, A. M. (2020). Outcomes After Primary Phalloplasty: A Systematic Review. The Journal of Sexual Medicine, 17(10), 1927-1937. https://doi.org/10.1016/j.jsxm.2020.05.020
  • Coleman, E., Radix, A. E., Bouman, W. P., et al. (2022). Standards of Care for the Health of Transgender and Gender Diverse People, Version 8. International Journal of Transgender Health, 23(suppl 1), S1-S259. https://doi.org/10.1080/26895269.2022.2100644

メディカル・ディスクレーマー

本記事の内容は医学的知識や経験に基づいて執筆された情報提供を目的としたものであり、専門家の診断や治療方針を置き換えるものではありません。具体的な医療行為や治療法の選択については、必ず医療従事者や専門家にご相談ください。

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