息苦しい(呼吸困難)原因と対処法|危険なサイン・診療ガイドラインに基づく治療法を徹底解説
呼吸器疾患

息苦しい(呼吸困難)原因と対処法|危険なサイン・診療ガイドラインに基づく治療法を徹底解説

息苦しさは「命に関わる危険なサイン」から「生活習慣やストレス」まで原因が多様です。この記事では、日本の最新ガイドラインに基づき、危険な兆候の見極め方、今すぐご自身でできる対処法、受診の適切な目安、そして専門的な治療と再発予防について、分かりやすく整理して解説します。

この記事の信頼性について

本記事は、日本の主要な学会が発行する診療ガイドラインや査読付き学術論文など、信頼性の高い一次資料を最優先の根拠としています。JHO編集部がAI技術を活用して各情報を精査・検証し、読者にとって分かりやすく、かつ正確であるよう努めて編集しました。外部の医師や専門家の直接的な関与はありません。

記事内で言及される主な情報源は以下の通りです:

  • 心不全:日本循環器学会(JCS)および日本心不全学会(JHFS)の「心不全診療ガイドライン2025年改訂版」(19, 26)
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)&COPD:日本呼吸器学会(JRS)の各診療ガイドライン(18)
  • がん関連呼吸困難:米国臨床腫瘍学会(ASCO)のガイドライン(34)
  • 重症呼吸器疾患の症状緩和:欧州呼吸器学会(ERS)のガイドライン(36)

この記事の要点

  • 危険なサインを最優先で確認:胸の激痛、意識の変化、顔色が悪くなる(チアノーゼ)などの症状は、命に関わる可能性があるため、直ちに救急要請が必要です。(17)
  • 原因に応じた適切な対処:息苦しさの原因は、心不全、喘息、COPD、感染症、ストレス(過換気)など多岐にわたるため、原因別の適切なアプローチが不可欠です。
  • 非薬物療法も有効:症状の緩和には、薬だけでなく「口すぼめ呼吸」「前傾・起座位(座って体を前に倒す姿勢)」「顔への送風」といった非薬物療法が有効であることが示されています。(36)
  • 正確な数値基準の理解:在宅酸素療法(HOT)の導入は、安静時のSpO2が88%以下(PaO2が55mmHg以下)が一般的な目安です。自己判断での酸素使用は危険なため避けましょう。

息苦しさ(呼吸困難)とは?単なる「息切れ」との違い

まず、「息苦しさ」という感覚を医学的に正しく理解することが、適切な対処への第一歩です。「息苦しさ」は、専門用語で呼吸困難(dyspnea)と呼ばれ、「呼吸時の不快な主観的感覚」と定義されています。(51) これは、あくまで患者さん本人が感じる個人的な体験であり、他者が数値で測るものではありません。

これに対し、「呼吸不全」は客観的な指標で判断される病的な状態です。具体的には、動脈血中の酸素濃度が著しく低下したり、二酸化炭素濃度が異常に上昇したりする状態で、動脈血ガス分析によって診断されます。日本のガイドラインでは、室内気を吸っている状態で動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr(mmHgにほぼ相当)以下になる状態を呼吸不全と定義しています。(18) また、運動後に感じる「息切れ」は、身体活動によって酸素需要が増えることに対する正常な生理的反応であり、休息すれば自然に回復します。しかし、これまで問題なかった軽い動作で息切れを感じたり、安静にしているにもかかわらず息苦しさがあったりする場合は、何らかの病的な原因が潜んでいる可能性を疑う必要があります。

緊急!すぐに救急車を呼ぶべき危険なサイン

以下の症状が息苦しさと同時に現れた場合、心筋梗塞や肺塞栓症、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)など、生命を脅かす緊急事態が強く疑われます。ためらわずに直ちに救急車(#7119への相談も可)を要請してください。

  • 胸の激しい痛み:締め付けられる、押しつぶされるような痛みが胸の中心や左側にあり、その痛みが肩、首、左腕、顎などに放散する場合(心筋梗塞の典型的な症状)。
  • チアノーゼ(Cyanosis):顔、唇、手足の爪が青紫色や土色に変色する状態。これは血液中の酸素が極度に不足している危険なサインです。
  • 意識の変化:突然意識が遠のく、朦朧とする、混乱して話がかみ合わない、呼びかけにほとんど反応しない。
  • 会話が困難になる:息が苦しくて、単語を途切れ途切れにしか話せない、または全く話すことができない。
  • 異常な呼吸音:呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった喘鳴(ぜんめい)が聞こえる、または息を吸う際に「ストライダー」と呼ばれる高い音(ヒューという音)がする場合。
  • 顔や喉の急激な腫れ:特に、じんましんを伴う顔、唇、舌、喉の急な腫れは、気道を閉塞させるアナフィラキシーの兆候である可能性があります。

これらの兆候は、日本救急医学会などのガイドラインでも重要な観察項目とされており、一刻も早い専門的な医療介入が不可欠です。(17)

まず試せる応急処置と呼吸を楽にする基本姿勢

上記の危険なサインが見られない場合や、救急車の到着を待つ間に、症状を少しでも和らげるために試せる対処法があります。パニックになると呼吸がさらに浅く速くなってしまうため、できる限り落ち着いて行動することが重要です。

応急処置

  • 安静を保ち、冷静になる:まず、行っている全ての活動を中止し、静かで安心できる場所に座って休みます。不安や恐怖心は呼吸困難を増悪させるため、意識的にリラックスするよう努めましょう。(1)
  • 衣服を緩める:ネクタイ、シャツの襟元のボタン、ベルト、コルセットなど、首周りや胸、腹部を圧迫しているものを全て緩めます。(1)
  • 新鮮な空気を取り入れる:窓を開けて室内の空気を入れ替えるか、うちわや扇風機、送風機などで顔にゆっくりと風を送ります。顔の三叉神経領域に冷たい空気の流れを感じることで、脳が呼吸困難感を和らげる効果があることが、欧州呼吸器学会(ERS)のガイドラインなどでも非薬物療法として推奨されています。(32, 36)

呼吸を楽にする姿勢(前傾姿勢)

特定の姿勢をとることで、呼吸を補助する筋肉が効率的に働き、呼吸が楽になることがあります。これは国内の多くの医療機関でも指導されている基本的な方法です。(4)

  • 座った姿勢(座位):椅子に少し浅めに座り、足を肩幅に開きます。上半身をゆっくりと前に倒し、肘を太ももやテーブルの上に乗せて体重を支えます。頭は自然に垂らすか、腕で支えるようにして、首や肩の力を抜きましょう。
  • 立った姿勢(立位):壁に背中をもたせかけるか、テーブルや椅子の背もたれのような安定した場所に手をついて体を支えます。足を少し前後に開き、リラックスして上半身をやや前に傾けます。

これらの前傾姿勢は、重力によって横隔膜の上下運動を助け、通常は使われない首や肩の呼吸補助筋の負担を軽減します。結果として、気道が広がりやすくなるという力学的な利点があります。

【原因別】息苦しさの正体を探る|主な病気とセルフチェック

息苦しさは非常に多くの病気のサインとなり得ます。ここでは、症状が現れる典型的な状況別に、考えられる主な原因疾患を解説します。これは自己診断を促すものではなく、医療機関を受診する際の参考情報としてご活用ください。

シナリオ1:夜中や横になるときに息苦しい

就寝時や体を横たえたときに特に息苦しさを感じる場合、主に以下の疾患が考えられます。

  • 心不全:心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態です。横になると、日中に下半身に溜まっていた余分な水分(体液)が上半身、特に肺へと移動します。これにより肺がうっ血(水がたまった状態)し、酸素の取り込みが妨げられるため息苦しくなります。(5) これを起座呼吸(orthopnea)と呼び、「枕を高くしないと眠れない」「座っている方が呼吸が楽」といった特徴があります。(6) 日本循環器学会(JCS)の2025年版心不全診療ガイドラインでは、この症状は心不全を疑う極めて重要な兆候と位置づけられています。(19)
  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS):睡眠中に喉の奥の空気の通り道(上気道)が繰り返し塞がり、一時的に呼吸が止まる病気です。無呼吸によって血液中の酸素濃度が低下すると、脳が危険を察知して体を覚醒させようとするため、突然息苦しくなって目が覚めることがあります。(8) 大きないびきや日中の耐えがたい眠気も典型的な症状です。日本呼吸器学会(JRS)のガイドラインは、SASが放置されると高血圧や心血管疾患のリスクを著しく高めるため、適切な診断とCPAP療法などの治療が不可欠であると強調しています。(18)
  • 気管支喘息:アレルギーなどが原因で気道に慢性的な炎症が続く病気です。喘息の発作は、自律神経やホルモンの日内変動の影響で、夜間から早朝にかけて悪化しやすいという特徴があります。また、寝室のダニやホコリといったアレルゲンに長時間さらされることも発作の誘因となります。(6)

シナリオ2:ストレスや不安を感じると息苦しい

精神的なストレスや強い不安を感じたときに息苦しくなる場合、以下の状態が考えられます。

  • 過換気症候群(過呼吸):強い不安や緊張から、無意識のうちに呼吸が異常に速く、深くなる状態です。これにより、血液中の二酸化炭素(CO2)が過度に排出されてしまい、血液がアルカリ性に傾きます。その結果、血管が収縮し、息苦しさに加えて、めまい、手足のしびれやけいれん、動悸などを感じ、その身体症状がさらに不安を増大させるという悪循環に陥ります。(11, 16)
  • パニック発作:明らかな理由なく、突然、強烈な恐怖感や「死んでしまうのではないか」というほどの不安感に襲われ、動悸、めまい、吐き気、そして窒息するような息苦しさを伴う発作です。多くの場合、過換気症候群を伴います。

注意:これらの状態に対する対処法として、かつては紙袋を口に当てて吐いた息を再度吸う「ペーパーバッグ法」が推奨されていましたが、現在は国内外の多くのガイドラインで推奨されていません。血中の酸素濃度が危険なレベルまで低下する(低酸素血症)リスクがあるためです。日本呼吸器学会も市民向けの情報で注意喚起しています。代わりに、息をゆっくりと吐き出すことを意識する「口すぼめ呼吸」や、意識を呼吸から別のものにそらすなどのリラクゼーション法が安全で有効です。

シナリオ3:咳や痰、発熱を伴う息苦しさ

風邪のような症状(咳、痰、発熱)と共に息苦しさが現れた場合、気道や肺の感染症が強く疑われます。

  • 肺炎:細菌やウイルスが肺に感染し、酸素交換の場である肺胞に炎症が起きて液体や膿がたまる病気です。ガス交換の効率が著しく低下するため、息苦しさ(特に低酸素血症)が生じます。(2)
  • 急性気管支炎:主にウイルス感染によって気管支に強い炎症が起こり、激しい咳や痰が出る病気です。炎症による気道の腫れや、多量の痰が気道を塞ぐことが息苦しさの原因となります。
  • COPDの急性増悪:慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者さんが、ウイルスや細菌の感染をきっかけに症状が急激に悪化する状態です。息苦しさ、咳、痰の量や色が普段よりも著しく悪化するのが特徴です。

これらの場合、聴診や胸部X線検査、血液検査などによる正確な診断と、原因に応じた専門的な治療(例:細菌性肺炎に対する抗菌薬投与)が不可欠なため、早期に医療機関を受診することが極めて重要です。

シナリオ4:運動や階段の上り下りで息苦しい(労作性呼吸困難)

身体を動かしたときにのみ息苦しさを感じる「労作性呼吸困難」は、身体が要求する酸素量に供給が追いつかないサインであり、多くの慢性疾患の初期症状として現れることがあります。

  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD):主に長年の喫煙が原因で、肺の組織(肺胞)が壊れたり気管支が狭くなったりして、息をスムーズに吐き出しにくくなる病気です。日本呼吸器学会の2022年版ガイドラインによると、日本の40歳以上の人口において推定500万人を超える患者がいるとされますが、その多くが未診断・未治療であると問題視されています。(55)
  • 間質性肺炎:肺胞の壁(間質)に炎症や線維化(硬くなること)が起こり、肺が硬く膨らみにくくなる病気の総称です。乾いた咳(空咳)と労作時の息切れが典型的な症状です。(48)
  • 心不全:労作性呼吸困難は、心不全の最も典型的かつ初期の症状の一つです。JCS/JHFSのガイドラインでも、この症状の有無や程度を評価することが、診断と重症度判定の第一歩として重視されています。(19)
  • 貧血:血液中で酸素を運搬するヘモグロビンが減少すると、全身の組織が酸素不足に陥り、少しの運動でも心臓が代償的に多くの血液を送り出そうとするため、動悸や息切れを感じやすくなります。

診療ガイドラインに基づく専門的な治療法

息苦しさの治療は、原因となっている疾患を正確に診断し、その根本的な治療と、症状を和らげる対症療法を組み合わせて行われます。日本の各専門学会が発行する診療ガイドラインは、科学的根拠に基づいた標準的な治療方針を決定する上で最も重要な基盤となります。

薬物療法

  • 気管支拡張薬・吸入ステロイド薬:COPDや気管支喘息の治療の基本となる薬剤です。吸入薬として用いることで、気道を直接広げ、炎症を強力に抑えて呼吸を楽にします。日本アレルギー学会や日本呼吸器学会のガイドラインでは、症状の重症度に応じてこれらの薬剤を段階的に使用することが推奨されています。(29, 18)
  • 心不全治療薬:利尿薬、ACE阻害薬/ARB/ARNI、β遮断薬など、心臓の負担を軽減する複数の薬剤が基本となります。近年では、SGLT2阻害薬が心臓の保護効果を持つとして、JCS/JHFSの2025年版ガイドラインでも中心的な役割を担う薬剤として位置づけられています。(19)
  • オピオイド(医療用麻薬):モルヒネなどのオピオイドは、がんの末期やその他の進行性疾患において、他の治療法ではコントロールが難しい重度の呼吸困難を緩和する目的で、専門医の厳格な管理のもとで使用されます。これは苦痛を和らげる緩和ケアの一環であり、米国臨床腫瘍学会(ASCO)や欧州呼吸器学会(ERS)のガイドラインでも有効な選択肢として示されています。(34, 36)

酸素療法と呼吸補助

  • 在宅酸素療法(HOT):慢性的な呼吸不全により、安静時でも血液中の酸素濃度が低い患者さんに対して行われます。導入の目安は、動脈血ガス分析に基づき、一般に安静時の動脈血酸素分圧(PaO2)が55mmHg以下(これに相当する経皮的動脈血酸素飽和度SpO2の目安は88%以下)の場合に検討されます。自己判断での使用は極めて危険です。
  • CPAP(持続陽圧呼吸)療法:中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対する第一選択の治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから持続的に圧力をかけた空気を送り込むことで、気道が塞がるのを物理的に防ぎます。(18)

呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションは、単なる呼吸訓練ではありません。運動療法、疾患に関する正しい知識の教育、栄養指導、心理的サポートなどを組み合わせた包括的なプログラムです。特にCOPDなどの慢性呼吸器疾患の患者さんにおいて、息苦しさを軽減し、運動能力(耐容能)と生活の質(QOL)を著しく改善させることが、多くの科学的研究で証明されています。(56)

日常生活でできる予防とセルフケア

息苦しさの原因となる病気を予防し、症状をコントロールするためには、日々の生活習慣の見直しが極めて重要です。

  • 禁煙:COPDの最大の原因は喫煙であり、禁煙は発症予防と病状の進行抑制において、他のどの治療よりも効果的な手段です。心臓病のリスクを減らす上でも不可欠です。現在では、医療機関の禁煙外来で保険診療による禁煙補助薬の処方を受けることも可能です。(57)
  • 適度な運動:ウォーキング、軽いジョギング、水泳など、自身の体力に合わせた有酸素運動を定期的に行うことは、心肺機能を高め、息切れしにくい身体を作ります。無理のない範囲から始めることが大切です。(57)
  • 体重管理:肥満は心臓と肺に常に余分な負担をかけ、特に睡眠時無呼吸症候群の大きな原因となります。バランスの取れた食事と運動により、適正体重を維持することは、呼吸器系・循環器系双方の健康にとって非常に重要です。(58)
  • 環境整備:アレルギーが原因の場合、室内のアレルゲン(ダニ、カビ、ペットのフケなど)を減らすために、こまめな掃除や換気を心がけましょう。空気清浄機の使用や、寝具の防ダニ対策も有効です。(49)

よくある質問

横になると息苦しくなるのはなぜですか?

心不全による「起座呼吸」や、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が典型的な原因です。心不全では、横になることで下半身の余分な水分が肺に戻り、肺うっ血を引き起こします。SASでは、喉の気道が塞がりやすくなります。寝具の角度を調整すること(上半身を高くする)で一時的に楽になることもありますが、根本的な原因を調べるため早期の受診を強く推奨します。

ストレスで苦しい時の安全な対処法は?

「口すぼめ呼吸」「楽な姿勢をとる」「顔に風を送る」といった方法が推奨されます。特に口をすぼめてゆっくり息を吐く呼吸法は、パニックを鎮め、呼吸を落ち着かせるのに効果的です。かつて言われた紙袋(ペーパーバッグ)を口に当てる方法は、低酸素血症のリスクがあるため現在は推奨されていません。

咳・痰・発熱と息苦しさが同時にある場合は?

肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症の可能性が高い状態です。肺でのガス交換が妨げられているサインであり、特に高齢者や持病のある方は重症化しやすいため、自己判断で様子を見ずに、速やかに医療機関を受診し、胸部X線検査などを受けることが重要です。

運動すると息切れがひどいのですが…

COPDや心不全、貧血などの初期サインである可能性があります。「年齢のせい」と片付けず、どの程度の運動で息切れが出るのかを把握し、医師に相談することが大切です。心肺運動負荷試験(CPET)などで客観的に評価し、原因に応じた治療を開始する必要があります。

在宅酸素療法の基準を教えてください。

医師が動脈血ガス分析で判断しますが、一般的な目安は安静時のSpO2が88%以下(PaO2が55mmHg以下)です。ただしこれはあくまで目安であり、個々の病状に応じて総合的に判断されます。自己判断で市販の酸素製品を使用することは非常に危険ですので、必ず医師の診断と処方に従ってください。

喘息とCOPDの違いは何ですか?

気道の炎症という点は共通していますが、喘息はアレルギーが関与し発作性に気道が狭くなるのに対し、COPDは主に喫煙により肺組織が破壊され、常に息が吐き出しにくい状態です。発症年齢(喘息は若年、COPDは中高年)、症状の可逆性(喘息は治療で改善しやすい)などが主な鑑別点となり、肺機能検査で評価します。

がん患者の強い呼吸困難はどうすれば?

がん自体や治療の副作用による呼吸困難は、患者さんの生活の質を著しく損ないます。モルヒネなどの医療用麻薬(オピオイド)が、呼吸中枢に作用して苦痛感を和らげることが知られており、緩和ケアの標準的な治療法です。専門医(緩和ケア医)に相談することが重要です。(34)

【研究者向け】呼吸困難の主な評価尺度は?

臨床研究や実臨床では、NRS(Numerical Rating Scale)やVAS(Visual Analogue Scale)、修正ボルグスケール(mBorg scale)といった主観的評価尺度が一般的に用いられます。質問票形式では、CDS(Cancer Dyspnea Scale)など疾患特異的なものも存在します。臨床試験における評価エンドポイントの標準化は依然として課題の一つです。

結論

息苦しさ(呼吸困難)は、私たちの身体が発する重要な警告信号です。その背景には、ストレスのような心因性のものから、COPDや心不全といった命に直接関わる重大な疾患まで、実に様々な原因が潜んでいます。本記事で詳述したように、最も重要な初動は、危険なサインを正しく認識し、ためらうことなく医療機関に助けを求めることです。そして、専門家による正確な診断のもと、日本の各学会が推奨する診療ガイドラインに沿った適切な治療を受けることが、症状の改善と長期的な健康の維持につながります。同時に、禁煙、運動、体重管理といった日々のセルフケアが、息苦しさを予防し、より良い生活の質を保つための揺るぎない土台となることを、心に留めておいてください。

免責事項:この記事は一般的な情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言、診断、治療に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合や、ご自身の健康状態に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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更新履歴

最終更新:2025年10月08日(Asia/Tokyo) ― 詳細を表示
  • 日付:2025年10月08日(Asia/Tokyo)
    編集者:JHO編集部
    変更種別:P0(事実訂正)およびP1(表現修正・参照強化)
    対象範囲:酸素療法の基準、過換気症候群の対処法、要点、FAQ

    変更内容(要約):

    • 在宅酸素療法(HOT)の導入目安を「安静時SpO2≲88%(PaO2≤55mmHg)」と正確な数値に訂正し、一次資料に基づき更新。
    • 過換気症候群におけるペーパーバッグ法の非推奨を、国内学会(JRS)の情報を基に強化し、安全な「口すぼめ呼吸」へ誘導。
    • 心不全やSASに関する記述において、JCS 2025やJRS 2020のガイドラインを主引用として明確化。
    • 全体の可読性向上のため、長文の段落を分割し、構成を調整。
    理由:EVIDENCE-LOCK++およびRank-Safeの監査結果に基づく、日本国内の医療実態への適合性向上と読者の安全性確保のため。
    監査ID:JHO-REV-20251008-01
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